天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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マクロラクタム抗生物質ビセニスタチン生合成酵素の構造機能解析に基づくβ-アミノ酸スターター部位構築機構の解明
宮永 顕正篠原 雄治岩沢 翔平Jolanta Cieslak工藤 史貴江口 正
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p. Oral33-

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抄録

 微生物が生産するポリケチド化合物は多様な化学構造と生物活性を有している。その構造多様性の一因としてポリケチド合成酵素(PKS)が用いるスターター基質の多様性が挙げられる。そのうち、マクロラクタム化合物は一般にアミノ基を有する基質をスターターとして形成され、様々な抗菌性や抗腫瘍性を有する化合物が多数知られている(図1)1。これらマクロラクタム化合物のスターター部位を生合成工学的手法により改変させることにより、生物活性が改善した類縁体の創製が期待できる。

 ビセニスタチンは、放線菌Streptomyces halstedii HC34が生産する20員環マクロラクタム抗生物質であり、ヒト大腸がん細胞に対して強い細胞毒性を示す2。ビセニスタチンのポリケチド骨格にはb-アミノ酸である3-アミノイソブタン酸(3-AIB)に由来するスターター部位が含まれている。当研究室ではこれまでに、その生合成において、アデニル化酵素VinNがb-アミノ酸である(2S,3S)-3-メチルアスパラギン酸(3-MeAsp)を選択的に認識して単独のアシルキャリアータンパク質 (ACP) であるVinLに受け渡すこと、脱炭酸反応後に生じた3-AIBユニットのアミノ基はアデニル化酵素VinMによりアラニル化されること、生じたジペプチドAla-3-AIBはアシル基転移酵素VinKによりPKS上のACPドメイン(VinP1LdACP)に転移されること、アラニル基は最終的にアミド加水分解酵素VinJにより除去されることを明らかにした(図2)3。また、他のマクロラクタム化合物であるクレミマイシンとインセドニンの生合成遺伝子クラスターを解析した結果、b-アミノ酸スターター部位の運搬に関わるVinN、VinL、VinM、VinK、VinJの各ホモログ酵素遺伝子が保存されていたことから、共通の機構によりb-アミノ酸がPKSへと運搬され、生合成されると提唱した1,4,5。今回、我々はこれら酵素のうち、VinN、VinL、VinK、VinJのX線結晶構造解析と変異体解析を行い、マクロラクタム化合物生合成におけるb-アミノ酸の選択的な認識機構とポリケチド構造への融合機構を原子・分子レベルで解明したので、報告する。

図2 ビセニスタチンの生合成機構

[アデニル化酵素VinNの結晶構造解析]

 アデニル化酵素VinNはビセニスタチン生合成におけるゲートキーパーの役割をしており、b-アミノ酸である3-MeAspを厳密に認識する。これまでに、a-アミノ酸を認識するアデニル化酵素の結晶構造はいくつか報告されており、これらによるa-アミノ酸の認識機構は明らかになっているものの、b-アミノ酸を認識するアデニル化酵素の結晶構造の報告例はない。そこで、VinNのb-アミノ酸認識機構を明らかにすべく、結晶構造解析を行った。その結果、VinNのN末ドメインと3-MeAspとの複合体構造を分解能2.2 Aにて決定することに成功した(図3)6。複合体構造において、3-MeAspの1位の(アデニル化されない側の)カルボキシ基はLys330とArg331の2つの塩基性残基により厳密に認識されていた。また、3-MeAspのb-アミノ基はAsp230により認識されていた。a-アミノ酸であるl-a-フェニルアラニンを認識するアデニル化酵素GrsAではa-アミノ基はAsp235により認識されていること

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