天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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新規カップリング反応と環変換反応を鍵としたチオペプチド抗生物質群の迅速合成法の確立
天池 一真武藤 慶伊丹 健一郎山口 潤一郎
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p. Oral37-

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抄録

 チオペプチド抗生物質はグラム陽性菌のタンパク質合成阻害剤として、現在急速に注目を集めている(Figure 1)。例えばNovartis社はチオペプチド抗生物質GE2270Aをリード化合物とした誘導体LFF571を開発し、臨床試験(Phase II)を行っている。このような背景の中、チオペプチド抗生物質群の効率的合成法の確立が求められている。構造的特徴としてはアゾール環(チアゾール、オキサゾール)を置換基とした多置換ピリジン骨格を含む大環状ペプチド構造を有しており、誘導体は50種類以上存在する極めてユニークな化合物群である。これらの化合物の主骨格である多置換ピリジン部位の構築は、付加環化反応によるピリジン合成[1]や有機金属化合物と有機ハロゲン化物のクロスカップリング反応[2]によって行われることが多かった。しかしながら、いずれの合成法においても前駆体の調製を必要とし、合成に多段階を要するため、より直接的な多置換ピリジン骨格構築法が望まれている。

 Figure 1. GE2270 and its derivative, LFF571

 そこで我々はチオペプチド抗生物質群の迅速合成法の確立を指向し、多置換ピリジン骨格を構築する新手法、「カップリング反応/環変換反応」を考案した(Scheme 1)。すなわち、オキサゾール誘導体を2つの新規カップリング反応により、ジアリールオキサゾールへと誘導した後、2炭素ユニットとの[4+2]付加環化反応を進行させ、トリアリールピリジンを合成する手法である。有機金属化合物や有機ハロゲン化物を用いないカップリング反応の開発は近年盛んに研究が行われており、例えば炭素–水素結合(C–H結合)直接アリール化反応を用いた5員環ヘテロ芳香環の位置選択的多アリール化反応は多く知られている[3]。一方で、6員環ヘテロ芳香環の位置選択的な多アリール化反応は現在でも未だ困難を極める。今回、5員環ヘテロ芳香環をC–H結合直接アリール化反応を含む「脱エステル型カップリング反応」でアリール化した後、環変換反応(5員環→6員環)により6員環ヘテロ芳香環を合成する手法を用いて、チオペプチド抗生物質群の合成を試みた。

 Scheme 1. Synthetic Strategy toward Triarylpyridines

【脱エステル型カップリング反応の開発】

 オキサゾールのC–H結合直接変換反応におけるアリール化剤は、芳香族ハロゲン化物、芳香族ホウ素およびケイ素化合物、フェノール誘導体などが用いられてきた。我々は独自に開発した新規ニッケル触媒 (Ni(cod)2/dcype: bis(dicyclohexylphosphino)

ethane)の存在下、アゾール類に対し、アリール化剤に芳香族エステル(Ar–CO2Ph)を用いることで、脱エステル型C–H結合アリール化反応が進行することを見出した(Scheme 2)[4]。本反応は、電子不足芳香環であるピリジンをはじめ、電子豊富芳香環であるフラン、チオフェン、チアゾールなど様々なヘテロ芳香環において反応が良好に進行した。さらに、本反応を用いて複雑天然物muscoride Aの形式全合成にも成功した。

 Scheme 2. Decarbonylative C–H Coupling of Azoles and Aryl Esters

 

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