天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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ヒンクデンチンAの不斉全合成
道木 和也小野 裕之下川 淳福山 透北村 雅人
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p. Oral2-

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抄録

【序論】

 ヒンクデンチンA (1)は1987年にHincksinoflustra denticulataから単離された海洋産アルカロイドであり,7員環ラクタムとトリブロモインドロ[1,2-c]キナゾリンが4置換炭素を介して結合した構造が特徴的である.小さな骨格の中に官能基が凝縮した,合成化学的に大変興味深い構造を持っていることから,挑戦的な合成ターゲットとしていくつかの合成研究がなされており,これまでにラセミ体の合成が1例報告されている.我々は,本化合物の合成において最も困難が予想される不斉4置換炭素中心の構築法を開発し,1の不斉合成法を確立することを目的として研究に着手した.

【逆合成解析】

 これまでの合成研究から1の有する3つの臭素原子の位置選択的な導入はアミジン部位構築後に行うことが困難であることが知られている.そこで合成終盤において2つのアニリン部位のうち片方をアシル化して電子状態を制御した2のような中間体に対してブロモ化を行うことにより,位置選択的なブロモ化が実現できると予想とした(Scheme 1).2の構造において最も構築困難だと予想される不斉4置換炭素中心は,3のようなインドールに対する2位選択的な脱芳香的不斉結合形成反応により導入することを計画した.基質合成をより単純化するべく,7員環ラクタムとアミジンの窒素原子は後に導入することとし,インドール4を基質とした脱芳香的環化反応の実現を最初の課題として設定し,不斉触媒の探索を行うことを計画した.

【不斉脱芳香的環化反応の開発】

 文献既知のインドールより2段階で調製した4を基質として不斉脱芳香化の検討を行った(Table 1).パラジウム触媒を用いる条件において各種不斉配位子の探索を行ったところ,単座配位子であるホスホロアミダイト(S,R,R)-6aを用いる条件において不斉脱芳香化反応が進行し,良好な収率,エナンチオ選択性で目的とするインドリン5が得られることを見出した(entry 1).Entry 2-4における配位子の構造最適化検討の結果,窒素上の置換基がエナンチオ選択性に影響することが明らかとなり,(S,R,R)-6cを配位子に用いる条件下において98%収率,93:7のエナンチオ選択性で不斉4置換炭素中心を有するインドリン5を得ることに成功した(entry 3).さらに溶媒検討を行った結果,DMAやDMSOのような非プロトン性高極性溶媒を用いる条件下においては,高い反応性を示すもののエナンチオ選択性が低下した(entry 5, 6).一方,ジオキサンやジクロロエタンなどの低極性溶媒を用いる条件下においては,高いエナンチオ選択性を発現するものの反応速度の低下に由来する収率の低下が見られ(entry 7, 8),トルエンを用いた際には反応の進行が見られなかった(entry 9).配位子(S,R,R)-6cを用いて得られるインドリン5の絶対立体配置をVCD法により確認したところ(S)-5であることを見出した.これはヒンクデンチンAの有する不斉4置換炭素中心の絶対立体配置とは逆であった.そのため,これ以降の全合成研究には反応検討に用いたものとは逆の立体化学を有するホスホロアミダイト(R,S,S)-6cを配位子として鍵反応を行っている.

【7員環ラクタ

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