天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
58
会議情報

海綿Petrosia alfianiから得られた新規xestoquinone類縁体petroquinonesの構造と生物活性
加藤 光田之頭 夏希久木田 沙菜子根平 達夫塚本 佐知子
著者情報
会議録・要旨集 フリー HTML

p. Oral20-

詳細
抄録

1.はじめに

 Xestoquinoneは、海綿Xestospongia sapraから単離された五環性キノンで1)、その類縁体は細胞毒性や抗菌活性、Na,K-ATPaseの阻害活性など、さまざまな生物活性を示すことが知られている。本研究室では海洋生物資源から生物活性物質を探索しており、今回、インドネシア近海で採集した海綿のエキスについてスクリーニングした。その結果、海綿Petrosia alfianiのエキスに、脱ユビキチン化酵素であるubiquitin-specific protease 7 (USP7) の阻害活性が認められた。USP7は、自己ユビキチン化したMdm2からユビキチンを除去する働きをしている。Mdm2は、がん抑制遺伝子産物p53に対するE3酵素であることから、USP7阻害物質は、有望ながん治療薬になると考えられる。そこで、海綿のエキスからUSP7阻害物質を探索したところ、新規骨格を含む16種のxestoquinone類縁体 (1-16) を得たので、それらの構造と生物活性について報告する。

2.新規xestoquinone類縁体(1-16) の単離と構造解析

インドネシア北スラウェシ州で採集した海綿P. alfiani(湿重量1 kg) を、エタノールで抽出した。抽出物を液々分配後、各種オープンカラムクロマトグラフィーおよびHPLCにより精製し、16種の新規化合物であるpetroquinone A (1, 0.14 mg)、B (2, 2.5 mg)、C (3, 2.9 mg)、D (4, 0.72 mg)、E (5, 1.7 mg)、F (6, 4.2 mg)、G (7, 3.6 mg)、H (8, 1.3 mg)、I (9, 2.7 mg)、J (10, 8.3 mg)、K (11, 0.5 mg)、L (12, 2.8 mg)、1-(2-hydroxyethyl)xestoquinone (13, 6.1 mg)、1-(1-hydroxyethyl)xestoquiononeのC-21のエピマーの混合物 (14と15, 5.9 mg) および3S-3-hydroxyxestoquinone (16, 3.8 mg) を得た。

Petroquinone AとB (1と2) は、高分解能ESIMSにより、どちらもC60H36O12の分子式を有することが分かった。1の1Hおよび13C NMRスペクトルはxestoquinone (17) とよく類似していたが、17のquinone部分に由来する2本のCH由来のシグナルが認められず、新たに2個の四級炭素の存在が認められた (dC 140.4と140.6)。これらのデータは、1がquinone部分で新たな環構造を形成し、対称的な三量体を形成していることを示唆している。一方で、2の1Hおよび13C NMRスペクトルには1に由来する3対分のシグナルが認められたので、2は非対称な三量体であることが示唆された。1と2の6、6’ および6’’ 位の立体配置は、同じ海綿から単離した単量体17が6S体であることから、6S,6’S,6’’Sであると考えられる。1の最安定配座を密度汎関数 (DFT) 法を用いて計算したところ、大きなねじれを有するプロペラ型の配座であることが分かった (図1a)。そのため、1は17や2に比較して比旋光度が非常に大きく (1: +389 (c 0.1, CH3CN); 17: +22 (c 0.1, CH3CN); 2: -6 (c 0.1, CH3CN))、また、ECDスペクトルでも大きな強度を示した(図1b)。

Petroquinone C-H (3-8) は、17を構成単位とする二量体であった。それらの中でも、3は g- および d-lactone環が1個の炭素を共有して結合している構造であることがわかった。これまでに多くの g- あるいは d-lactone環を有する化合物が天然資源から単離され合成されてきたが、2個のlactone環がそのように結合した構造を有する化

(View PDFfor the rest of the abstract.)

著者関連情報
© 2016 天然有機化合物討論会電子化委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top