天然有機化合物討論会講演要旨集
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海洋シアノバクテリア由来のリポペプチドの構造
澄本 慎平岩﨑 有紘大野 修犬塚 俊康照屋 俊明末永 聖武
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p. Oral21-

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海洋シアノバクテリア由来のリポペプチドの構造

【概要】

 海洋シアノバクテリアは多様な二次代謝産物を生産している。これらの化合物には特異な生物活性を示すものが多く含まれる。また、近年のゲノム解析の結果からシアノバクテリアは他の生物が持たない特異な修飾酵素を有することが示唆されている1。以上の背景より、私たちの研究室では海洋シアノバクテリアより特異な構造を持つ新規生物活性物質の探索を行ってきた。今回、私たちは南西諸島で採集した海洋シアノバクテリアより新規リポペプチドkanamienamide (1) とminnamide類 (2-5) を発見した。これらの化合物の単離、構造決定、生物活性について報告する。

1. Kanamienamideの単離、構造、生物活性

1-1. Kanamienamideの単離・構造決定

 鹿児島県徳之島の沿岸にて海洋シアノバクテリアMoorea bouillonii 1000 g (湿重量) を採集した (Figure 1)。このものをメタノール抽出し、得られた抽出物を酢酸エチル/水で分配した後、有機層をヘキサン/90%メタノールにて分配した。90%メタノール画分に対し、HeLa細胞への増殖阻害活性を指標として各種クロマトグラフィーにて分離・精製を行い、kanamienamide (1, 11.0 mg) を単離した。

 平面構造は各種スペクトル解析を通じて明らかとなった(Figure 2)。また、Kanamienamide (1) の11員環部分の相対立体配置はプロトン間の結合定数およびNOESYスペクトルの解析により決定した(Figure 3)。

\﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽5),we基の絶対立体配置を決定し、\﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽5),we基の絶対立体配置を決定し、

 Kanamienamide (1)を酸加水分解して得たN-Me-LeuをキラルカラムHPLCにより分析したところL体であった (Scheme 1)。以上の結果、kanamienamideの絶対立体配置を決定した。

 結果として、KanamienamideはN-Me-Leuを含む11員環のリポペプチドであり、天然には珍しいエノールエーテル構造とエナミド骨格を有していた。

1-2. Kanamienamide (1) の生物活性

 Kanamienamide (1) の細胞増殖阻害活性の評価をMTTアッセイにより行った。その結果、1 はHeLa細胞に対して増殖阻害活性を示すことが明らかとなった (IC50 : 2.5 μM)。また、kanamienamide (1) の添加によって引き起こされる細胞死が形態的にアポトーシスと類似していたため (Figu

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【概要】

 海洋シアノバクテリアは多様な二次代謝産物を生産している。これらの化合物には特異な生物活性を示すものが多く含まれる。また、近年のゲノム解析の結果からシアノバクテリアは他の生物が持たない特異な修飾酵素を有することが示唆されている1。以上の背景より、私たちの研究室では海洋シアノバクテリアより特異な構造を持つ新規生物活性物質の探索を行ってきた。今回、私たちは南西諸島で採集した海洋シアノバクテリアより新規リポペプチドkanamienamide (1) とminnamide類 (2-5) を発見した。これらの化合物の単離、構造決定、生物活性について報告する。

1. Kanamienamideの単離、構造、生物活性

1-1. Kanamienamideの単離・構造決定

 鹿児島県徳之島の沿岸にて海洋シアノバクテリアMoorea bouillonii 1000 g (湿重量) を採集した (Figure 1)。このものをメタノール抽出し、得られた抽出物を酢酸エチル/水で分配した後、有機層をヘキサン/90%メタノールにて分配した。90%メタノール画分に対し、HeLa細胞への増殖阻害活性を指標として各種クロマトグラフィーにて分離・精製を行い、kanamienamide (1, 11.0 mg) を単離した。

 平面構造は各種スペクトル解析を通じて明らかとなった(Figure 2)。また、Kanamienamide (1) の11員環部分の相対立体配置はプロトン間の結合定数およびNOESYスペクトルの解析により決定した(Figure 3)。

\﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽5),we基の絶対立体配置を決定し、\﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽5),we基の絶対立体配置を決定し、

 Kanamienamide (1)を酸加水分解して得たN-Me-LeuをキラルカラムHPLCにより分析したところL体であった (Scheme 1)。以上の結果、kanamienamideの絶対立体配置を決定した。

 結果として、KanamienamideはN-Me-Leuを含む11員環のリポペプチドであり、天然には珍しいエノールエーテル構造とエナミド骨格を有していた。

1-2. Kanamienamide (1) の生物活性

 Kanamienamide (1) の細胞増殖阻害活性の評価をMTTアッセイにより行った。その結果、1 はHeLa細胞に対して増殖阻害活性を示すことが明らかとなった (IC50 : 2.5 μM)。また、kanamienamide (1) の添加によって引き起こされる細胞死が形態的にアポトーシスと類似していたため (Figure 4A)、caspase阻害剤であるZ-VAD-FMKの併用による殺細胞活性の変化を評価した。その結果、kanamienamideを低濃度 (1-10 μM) で添加した場合はZ-VAD-FMKにより殺細胞活性が抑制されたが、高濃度 (30 μM) で添加した場合は抑制されなかった (Figure 4B)。

2. Minnamide類の単離、構造、生物活性

2-1. Minnamide類の単離・構造決定

 沖縄県水納島の沿岸で採集した海洋シアノバクテリアOkeania hirsuta 60 g (湿重量) (Figure 5) のメタノール抽出物より、HeLa細胞への増殖阻害活性を指標としてminnamide A (2, 17.0 mg)、B (3, 16.3 mg)、C (4, 6.7 mg)、D (5, 5.7 mg)を単離した。

 Minnamide AとBは各種スペクトル解析により平面構造を決定した (Figure 6)。その結果、23は同じ脂肪酸部を持つ鎖状リポペプチドであり、アミノ酸の配列が一部異なる事が判明した。

 41H NMRスペクトルにおいて2と類似したスペクトルを与えたもののメチル基、オキシメチン基、メチレン基に相当するシグナルの消失が認められた (Figure 7)、5も同様に3からメチル基、オキシメチン基、メチレン基に相当するシグナルの消失した1H NMRスペクトルを与えた (data not shown)。また、マススペクトルによる解析の結果、45はそれぞれ12よりも86マスユニットずつ小さい化合物であることが示唆された。さらにMS/MS解析の結果、4のアミノ酸配列は2と同じであることを裏づける結果を得た (Figure 8)。以上より45はそれぞれ23よりも脂肪酸部の繰り返し構造が1つ少ない化合物であると推定した。

 Minnamide A (2) に含まれる各アミノ酸の立体化学は酸加水分解によって得られたフラグメントに対しキラルカラムHPLCもしくはマーフィー法2による分析を行うことで決定した。また、2に対して穏和な酸加水分解を行うことで脂肪酸鎖とロイシンからなるフラグメントを得た。このフラグメントに対し新モッシャー法3を適用することで脂肪酸の11位の絶対立体配置がRであることを明らかとしたが、その他の水酸基については異常値を示したため絶対立体配置の決定には至らなかった (Figure 9)。

 このため、モッシャー試薬の当量を制限することで8種のモノMTPAエステルを調製した (Figure 10)。現在はこれらのMTPAエステルの解析を行い、水酸基の絶対立体配置の決定を試みている。

2-2. Minnamide類の生物活性

 Minnamide類のHeLa細胞に対する増殖阻害活性をMTTアッセイにより評価した (Table 1)。その結果、minnamide A (2) が最も強い増殖阻害活性を示し (IC50値 : 0.17 μM)、脂肪酸鎖の長さやアミノ酸配列の異なる類縁体 3-5では活性が低下した。このことより、minnamide類のHeLa細胞に対する増殖阻害活性は脂肪酸鎖の長さとアミノ酸部位の構造が重要であることが明らかとなった。

 また、minnamide A (1) がHeLa細胞に対してネクローシス様の細胞死を誘導することが形態観察により示唆された (Figure 11A)。さらにcaspase阻害剤であるZ-VAD-FMK存在下においてminnamide AのHeLa細胞に対する殺細胞活性が促進された (Figure 11B)。近年、caspase 8の阻害により促進されるネクローシス様のプログラム細胞死 (ネクロプトーシス) が報告されている4。現在は、minnamide Aがネクロプトーシスを誘導する可能性を視野に入れて作用機序を解析している。

【総括】

 私たちは南西諸島で採集した海洋シアノバクテリア2種より新規生物活性物質であるkanamienamideとminnamide類をそれぞれ単離した。

 Minnamide Aの誘導する細胞死はcaspase阻害剤によって抑制されなかったため、アポトーシスとは異なる経路で細胞死を誘導していることが示唆された。今後はそれらの詳細な作用機序解明を行う予定である。

【参考文献】

1) Calteau, A.; Fewer, D. P.; Latifi, A.; Coursin, T.; Laurent, T.; Jokela, J.; Kerfeld, C. A.; Sivonen, K.; Piel, J.; Gugger, M. BMC Genomics 2014, 15, 977. 2) Marfey, P. Carlsberg Res. Commun. 1984, 49, 591−596. 3) Ohtani, I.; Kusumi, T.; Kashman, Y.; Kakisawa, H. J. Am. Chem. Soc. 1991, 113, 4092−4096. 4) Vercammen, D.; Beyaert, R.; Denecker, G.; Goossens, V.; Loo, G. V.; Declercq, W.; Grooten, J.; Fiers, W.; Vandenabeele P.J. Exp. Med. 1998, 187, 1477-1485.

 
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