天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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抗生物質テトラセノマイシン類の不斉全合成
佐藤 翔吾阪田 慶一郎橋本 善光瀧川 紘鈴木 啓介
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p. Oral24-

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抄録

 テトラセノマイシンC(1)は、1979年にZeeckらによって放線菌Streptomyces glaucescensの二次代謝物として単離、構造決定された芳香族ポリケチド化合物である1a)。このものはL1210白血病細胞に対する強力な増殖阻害活性を示し、半合成を基盤とした構造活性相関研究から、酸化的に脱芳香化されたAB環部が活性発現の鍵を握ることが明らかにされた。また、C12a位水酸基がメチル化された誘導体であるテトラセノマイシンX(2)が、1より高活性を示すことも分っている1b)。こうした生物活性に加え、その特徴的な構造、すなわち高度に官能基化された直線型の4環性構造は、合成化学的にも興味深い。しかし、これまでの合成研究はテトラセノマイシンA2(3)のようにA環が芳香化された類縁体の合成に留まり2)、1や2の全合成は未報告である。今回、我々は、先に開発した骨格構築法を基盤とした1および2の効率的な合成経路を開拓し、不斉全合成を達成した。

1.合成計画

 合成における課題は、(1)多くの酸素官能基を有する4環性骨格の構築、ならびに(2)C4、4a、12a位に連続する不斉中心の立体選択的構築、である。これらを考慮し、1の逆合成解析を行った(図1)。まず、C4位の第2級アルコールは、テトラケトン4の位置、立体選択的なヒドリド還元による構築を想定した。この4の核間位に置換した2つの水酸基のうち、C12a位の方は先に報告したイソオキサゾール環の酸化反応によって導入できると考え3)、前駆体としてイソオキサゾール5を想定した。また、C4a位水酸基はトリアゾリリデン6を用いるベンゾイン環化反応によって導入することにし、その基質であるケトアルデヒド7をナフトニトリルオキシド8とo-キノンモノアセタール9との付加環化反応4)によって合成することを考えた。さらに、この8のニトリルオキシド部位は、シクロブテノンオキシム10の酸化的開環反応によって構築できると期待し、これを1,4-ベンズジイン11に対するケテンシリルアセタール12ならびにフラン13の付加環化反応によって合成できるものと考えた。

図1

2.ナフトニトリルオキシド8の合成

 上述の計画に基づき、まずフロログルシノール(14)から3工程の変換により1,4-ベンズジイン等価体15を合成した(図2)。この15は2箇所のヨードトシラート部位において逐次的にベンザインを発生させることができる。また、親アライン体との反応の際の位置選択性は、ベンザインのベンジルオキシ基の効果により制御可能である。実際、まず、15に対してn-BuLiを作用させて発生させたベンザインはケテンシリルアセタール12と位置選択的に [2+2]付加環化反応を起こし、ベンゾシクロブテン16を収率良く与えた。続いて、逆側のヨードトシラート部位で同様にベンザインを発生させ、フラン13との[4+2]付加環化反応を行うと、二重環化付加体17が得られた。この17に対して低原子価チタンを作用させ、還元的芳香化によりナフタレン環を形成させた後、シリルアセタールを加水分解し、生じたケトンをヒドロキシルアミンと縮合させて10へと変換した。

図2

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