天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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CD1dの脂質認識部位への高親和性を指向した新規リガンドの創製研究
井貫 晋輔相羽 俊彦平田 菜摘市原 収吉留 大輔喜多 俊介前仲 勝実深瀬 浩一藤本 ゆかり
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p. Oral28-

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抄録

背景・目的

脂質抗原受容体CD1dは樹状細胞等に存在しT細胞の分化、活性化を制御することが知られている。CD1dは糖脂質リガンドと結合すると、ナチュラルキラーT(NKT)細胞上のT細胞抗原受容体(TCR)に認識され、様々なサイトカイン(INF-g、IL-4、IL-10など)を誘導する1)。これらのサイトカインは免疫応答のバランス制御に関わっており、制御を可能とするリガンドの創製は重要な研究課題である。既知のCD1dリガンドとしては海洋天然物を基盤に開発された糖脂質a-GalCer (KRN7000) が知られている(Fig.1)2)。これまでのa-GalCerの構造活性相関研究によりCD1dに対するリガンド結合様式の解明が精力的に進められてきたが3)、CD1dの疎水性ポケットにおける脂質リガンド認識機構の詳細な解析はあまり行われていない。このような背景のもと、我々はa-GalCerの長鎖アルキル基の構造展開を基に、CD1dの脂質結合部位におけるリガンド認識機構の解明とその制御を目指し、本研究に着手した。

化合物デザイン・合成

糖脂質やリン脂質など生体関連脂質分子は、主に糖やリン酸基等の親水性ヘッドグループと長鎖アルキル基等の疎水性領域から構成されている。長鎖アルキル基等は、脂質認識タンパク質中の非極性アミノ酸から構成される疎水性ポケットによって疎水性相互作用を介して認識される。しかしながら、いくつかの脂質認識タンパク質において、これらの疎水性ポケット中の、非常に限定的な領域に、極性アミノ酸を見出すことができる。疎水性領域における水素結合はタンパク質表面などの親水性領域における水素結合と比較し、より安定な結合を形成することが報告されているが4)、脂質認識において疎水性ポケット中の親水性アミノ酸残基に着目して、水素結合形成を狙う試みは限られている。我々は、これらの親水性残基との水素結合形成による活性制御を指向したリガンド構造のデザインを行った。報告されているmCD1d—a-GalCer複合体のX線結晶構造(PDB: 3G08)5)を精査した結果、a-GalCerの長鎖アルキル基との相互作用領域である疎水性ポケット(A’ pocket)中に、水素結合可能な親水性領域(Ser28およびCys12, His38周辺部)を見出した(Fig.1)。これまでにこれらの親水性領域との相互作用を意図したリガンドとして、脂質末端に水酸基を含むa-GalCer誘導体が報告されているが、詳細な構造活性相関研究は行われていない6) 。今回、我々は親水性領域に対して水素結合等を介して相互作用可能なアミド基をa-GalCerの長鎖アルキル基に導入することを計画した(Fig.2)。まずCD1d のSer28との相互作用が予想される部位近傍にアミド基を導入した5数種のリガンド(1a-e)を合成した。またCys12, His38との相互作用を意図したリガンド(2a、2b)も併せて合成した。

生物活性評価

最初にmCD1dタンパク質とNKTハイブリドーマ(2E10)7)を用いたサイトカイン誘導能評価を行った(APC-free assay)8)。すなわち、CD1dをプレートに固定化し、各リガンドを加えた後、NKTハイブリドーマを加え、誘導されるサイトカイン(IL-2)の量を定量した(Fig.3)。1a、1bはa-GalCerと比較し、

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