天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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デブロモアプリシアトキシン単純化アナログ・aplog-1の構造最適化ならびにがん細胞増殖抑制機構の解析
花木 祐輔菊森 将之堀田 夏紀四方 雄貴井本 正哉岡村 睦美旦 慎吾柳田 亮入江 一浩
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p. Oral29-

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抄録

1. 緒 言

 プロテインキナーゼC(PKC)は10種類以上のアイソザイムから構成されるセリン・スレオニン特異的リン酸化酵素であり,細胞の増殖,分化,アポトーシスといった情報伝達の中枢を担っている.近年,がん細胞におけるPKC変異のほとんどが機能欠損型であることが明らかになった1.これより,PKCの活性化は有効な制がん戦略の一つと考えられることから,12-O-tetradecanoylphorbol 13-acetate(TPA)に代表される天然のPKC活性化剤は,抗がん剤としての応用が期待される.しかしながら,PKC活性化剤の多くは発がん促進性ならびに炎症性を示すことから,薬剤としての利用が懸念されていた.本研究グループは,アメフラシ由来のPKC活性化剤であるdebromoaplysiatoxin(DAT)から,発がん促進性および炎症性を取り除いた単純化アナログ・aplog-1の開発に成功したが2(図1),aplog-1のPKC結合能およびがん細胞増殖抑制活性はDATよりも10倍以上低かった.本研究では,aplog-1をリード化合物としてスピロケタール部位の系統的な構造修飾を行うことにより,DATを凌ぐがん細胞増殖抑制活性を有する誘導体・10-Me-aplog-1を開発した.また,10-Me-aplog-1の大量合成を行い,in vivoでの抗がん活性ならびにin vitroでのがん細胞増殖抑制機構を調べた.

図1 Debromoaplysiatoxinおよびその単純化アナログ

2. Aplog-1の構造最適化

 コンピューターによるドッキングシミュレーションによって,DATのスピロケタール部位のメチル基はPKCとの結合において重要な役割を担っていると予測された.そこで,aplog-1のスピロケタール部位の4,10,12位にDATと同じ立体配置のメチル基を系統的に導入した誘導体を5種類合成し,各種生物活性を評価した.その結果,10位にメチル基を導入した誘導体3種(10-Me-aplog-1,4,10-diMe-aplog-1,10,12-di-Me-aplog-1)がaplog-1よりも10倍以上高いPKC結合能およびがん細胞増殖抑制活性を示した3, 4.続いて,これらの誘導体の発がん促進活性をマウス皮膚二段階発がん試験によって評価した.10-Me-aplog-1ならびに10,12-diMe-aplog-1はDATが発がん促進性を示す量の5倍量を塗布してもまったく腫瘍を発生させなかった.一方で,4,10-diMe-aplog-1は5倍量の塗布によって約半分のマウスに腫瘍を発生させた(図2).また,マウス耳を用いた炎症試験においても,4,10-diMe-aplog-1は他2種の誘導体と比較してやや高い炎症活性を示した(図3).以上の結果より,強力ながん細胞増殖抑制活性を有し,かつ副作用をほとんど示さない10-Me-aplog-1および10,12-diMe-aplog-1が抗がん剤シードとして最適であると考えられた.

3. 10-Me-aplog-1のin vivoにおける抗がん活性評価

 構造最適化された誘導体の一つである10-Me-aplog-1のin vivoにおける抗がん活性を評価する目的で,本化合物の大量合成を試みた.当初はaplog-1の合成法を10-Me-aplog-1の合成にそのまま適用していたが,段階数が多く

図2 新規誘導体のマウス皮膚における発がん促進活性

図3 新規誘導体のマウス耳における炎症活性

大量合成には不適であると考えられたため合成経路の見直しを行った(図4).アルケンか

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© 2016 天然有機化合物討論会電子化委員会
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