天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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Decarbamoyl-α-saxitoxinolの全合成
上野 壮平中崎 敦夫西川 俊夫
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p. Oral3-

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抄録

【背景】

 Saxitoxin (STX)は、麻痺性貝毒として知られるアルカロイドであり、電位依存性ナトリウムイオンチャネル(VGSC)を強力に阻害する(Figure 1)。その化学構造は、二つのグアニジンと水和型ケトンを含む複雑な三環性骨格から成り、共通の骨格を持つ多様な天然類縁体が存在する。これまで、1977年の岸らによる最初の全合成から、Jacobiら、Du Boisら、長澤ら、LooperらによってSTXとその類縁体の全合成が達成されている1。近年、STX誘導体がVGSCの生理学的研究のツールとして用いられるようになっており、さらに多様なSTX誘導体の供給が強く望まれている2。当研究室においても、VGSCの機能解明と制御を目指し、サブタイプ選択的阻害剤の創製に取り組んでいる3。これまで、独自に開発したホモプロパルギルグアニジンのブロモ環化反応を利用し、STX骨格構築法の開発に成功した4。しかしながら、三環性骨格を構築する際に全ての保護基を脱保護する必要があるため、多様な誘導体合成への展開は困難が予想された。そこで演者らは、より温和な条件で三環性骨格を構築でき、かつ誘導体化の容易な手法の開発に着手することとした。本講演では、プロパルギルグアニジンのカスケードブロモ環化反応を用いた新規STX骨格構築法の開発と北米産ラン藻類Lyngbya wolleiより単離されたSTX類縁体であるdecarbamoyl-a-saxitoxinol (dc-a-STXol, 1)5の全合成を達成したので報告する。

【合成計画】

 STX骨格の構築における最も大きな課題は、アミナール結合を含む不斉四級炭素をいかに合成するかである。演者らは、そのアミナール結合を含むBC環に着目し、末端にグアニジンもしくはグアニジンと合成的に等価なウレアを持つプロパルギルグアニジン2のカスケードブロモ環化反応を用いることでこの課題を解決することを計画した(Scheme 1)。すなわち、2に対して臭素カチオンを作用させると、アセチレンの活性化とグアニジンの5-exo-dig型環化が進行し、5員環グアニジン3が形成される。続いて、3はさらなる臭素化を受け、イミニウムイオン4へと変換される。次いで、末端の窒素原子が5-exo-trig型で付加することでアミナール結合を含むジブロモスピロアミナール5 (BC環)を一段階で合成できると期待した。続いて、gem-ジブロモメチレンの酸素官能基化と1,2-ジオールを酸化的に開裂することで生じるヘミアミナール6に対し、求核剤 (Nu-)としてシアニドを付加させることでアミノニトリル7を合成する。最後に、ニトリルの水酸基への変換を行うことで1の全合成が達成できると考えた。また、環化前駆体2はD-(+)-Arabitolより大量供給可能な既知の光学活性アルコールから導くこととした。なお、本合成法の特徴は、以下の3点である。①最も合成が困難な不斉四級炭素を含むBC環をカスケードブロモ環化反応により合成の前半で一挙に構築できる。また、これまでBC環を一段階で合成した例は無く、全く新しい戦略である。②カスケードブロモ環化反応により生じるgem-ジブロモメチレンは、1の水酸基に対応する位置にあるため、効率的な変換が期待できる。③合成の終盤に導入するニトリルは、水酸基だけでなく様々な官能基へ

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