天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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低酸素環境選択的がん細胞増殖阻害物質dictyoceratin類の標的分子解析
古徳 直之荒井 雅吉河内 崇志住井 裕司福田 昭典田中 駿小林 資正
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p. Oral30-

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抄録

 近年、がん細胞と周辺環境との相互作用が、がん細胞の生存や増殖に深く関与していることが明らかにされ、がん微小環境におけるがん細胞の応答や代謝が、がんに対する新しい薬剤標的として注目されている。特に、がん微小環境の特徴の1つである低酸素環境に適応したがん細胞の性状に関しては、低酸素環境下で発現誘導される転写因子Hypoxia Inducible Factor-1 (HIF-1) αを中心に研究が行われ、HIF-1αが発現誘導されることにより、血管新生の促進、転移や浸潤に関わる因子が産生される事が明らかとなっている。加えて、低酸素微小環境はがん特有の環境であり、正常組織ではほとんど観察されないため、低酸素環境選択的に細胞増殖阻害活性を示す化合物は、副作用の少ない、新たな抗がん剤シーズとなる事が期待される。

 この様な背景のもと、我々は、がんに対する新しい医薬シーズの探索研究の一環として、HIF-1αを含め、がん細胞の低酸素環境適応に関わる分子全体を標的にできるフェノタイプスクリーニングを用いて探索研究を行ってきており、インドネシア産海綿Dactylospongia elegansの抽出エキスから、フラノセスタテルペンfurospinosulin-1を低酸素環境選択的な細胞増殖阻害活性物質として見出している。Furospinosulin-1に関しては、腫瘍移植モデルマウスに対して、経口投与で顕著な抗腫瘍活性を示すことを明らかにするとともに、作用メカニズムの解析を行った結果、その標的分子が2つの転写制御因子、LEDGFおよびp54nrbであることを見出し、第55回本討論会にて報告している。1,2

 最近著者らは、同海綿の抽出エキスをさらに精査した結果、新たな活性成分としてセスキテルペンフェノールdictyoceratin-C (1)を見出した。Dictyoceratin-C (1)は、1 ~ 30 μMまで濃度依存的かつ低酸素環境選択的にヒト前立腺がんDU145細胞の増殖を阻害することが明らかになった。また、著者らが以前に単離した1と類似の化学構造を有する数種のセスキテルペンフェノール / キノン類についても同スクリーニング系を用いて評価した結果、dictyoceratin-A (2)が、1と同等の活性を示すことを見出した (Figure 1)。3

こうした背景下、今回著者らは、化合物1, 2が低酸素微小環境を標的とする有用な抗がん剤シーズになり得ると考え、化合物の量的供給と構造活性相関の解析を指向した合成研究を展開するとともに、プローブ分子を用いた作用メカニズム解析を行った。

<Dictyoceratin類の全合成と構造活性相関>

化合物1については、これまでその絶対立体構造に関する報告例がなかった。一方、2の絶対立体構造については、既知化合物への変換によって決定された報告がある一方で、2と鏡像異性体の関係にある化合物として単離されたsmenospondiolの旋光度の符号が2と同じであると報告されているなど、疑問が残されている状況にあった。そこで、両化合物の絶対立体構造を明らかにするとともに、さらなる活性評価のための量的供給に向けて、不斉全合成に着手した。類縁化合物の合成例を参考に、出発物質の確保やスケールアップの容易さなどを考慮して、Scheme 1 に示す方法、すなわち両鏡像異性体を容易に大量合成可能な化

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© 2016 天然有機化合物討論会電子化委員会
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