天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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Surugamideによる放線菌の形態分化制御作用の解明
二宮 章洋勝山 陽平倉永 健史宮崎 征行能木 裕一岡田 茂脇本 敏幸大西 康夫松永 茂樹高田 健太郎
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p. Oral37-

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抄録

【序論】

Streptomyces属放線菌は生育の過程で複雑な形態分化を示す。胞子が発芽すると,フィラメント状の基底菌糸が培地中に形成される。基底菌糸は気中菌糸へと分化し,気中菌糸中に隔壁が形成された後,それぞれの区画が胞子となる。この形態分化を制御する微生物ホルモンとして,A-factorが知られている1。A-factorは特定の転写活性化因子の転写量を上昇させ,形態分化や二次代謝に関わる様々な遺伝子の活性化を通して,気中菌糸形成や二次代謝産物生産を誘導する。今回,我々が過去に単離したsurugamide 類が,A-factorをはじめとした既知のシグナル分子とは異なる機構で,Streptomyces属放線菌の形態分化を制御することを示す結果を得たので報告する。

Surugamides A–E(SA–SE,図1)は,海洋放線菌Streptomyces sp. JAMM992から単離された環状オクタペプチドである2。放線菌ライブラリをLC-MSにより分析した結果,異なる海域の底泥から分離された複数のStreptomyces属放線菌,および同属の陸上放線菌がSAを生産することを明らかにした。さらに,Thorsonらは,米国の炭鉱から分離された同属放線菌がSAを生産することを報告している3。このように,地理的に離れ,異なる環境から分離されたStreptomyces属放線菌が共通してSAを生産することから,我々は,SAが生産菌において重要な生理機能を持つと推測した。SAが細菌の生育阻害活性を示すとの報告があるが3,最小発育阻止濃度が10 μMと高いため,SAに異なる生理機能があると考え,機能解明に着手した。

【Surugamide類生合成遺伝子クラスターの同定とsurugamide Fの発見】

 SAの生理機能を解析するため,JAMM992株のSA非生産性変異株を作製し,野生株と変異株の表現型を比較することを企図した。変異株を作製するにあたり,まずSA–SEの生合成遺伝子を同定することとした。SB–SEはSAに含まれる4つのIle残基のうちいずれか1つがValに置換した構造を有しており,対応する残基の絶対配置がSA–SE間で保存されていることから,SA–SEは,非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)によって生合成され,アデニル化ドメイン(A-ドメイン)の低い基質選択性により類縁化合物が生じると考えた。そこで,次世代シーケンサーを用いてJAMM992株のゲノム配列を解析した後,antismashを用いて配列解析をおこなった結果,18のモジュールをコードする,4つの連続したNRPS遺伝子surA,surB,surC,surDを含む遺伝子クラスターを発見した(図2a)。予想される各A-ドメインの基質アミノ酸,および,エピメラーゼドメイン(E-ドメイン)の位置情報をもとに,SA–SE はSurAおよびSurDの組み合わせにより生合成されると推定した(図2b,表1)。一方で,SurBとSurCからは10残基のペプチドが生合成されることが予想されたが,このような代謝物は未知であった。NRPSpredictor2を用いた解析では,SurB/SurCの推定生合成産物のC末端には6つの脂肪族アミノ酸が連続すると予測されたことから(表1),LC-MS/MSを用いて培養液中の代謝物を精査したところ,m/z 1057に分子イオンピークを与え,C末端の配列が-Val-Ala-Val-Alaであるペプチド,surugamide F(SF,図2c)を発見した。このC末端のアミノ酸配

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