天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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ヌクレオシド系抗生物質アリステロマイシンの生合成遺伝子のゲノムマイニング
工藤 史貴角田 毅高島 惇宮永 顕正江口 正
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p. Oral39-

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抄録

 Aristeromycin(Fig. 1)は、1968年にKusakaらによって放線菌Streptomyces citricolor培養液から単離されたヌクレオシド系抗生物質の一つであり1、リボース部位が炭素五員環に置換されていることが構造上の特徴である。類縁天然物としてneplanocin Aが知られており、aristeromycin が有する抗ウィルス活性に加えて、抗腫瘍性を有することから注目を浴び、その構造活性相関研究が盛んに行われてきた。

 Aristeromycinとneplanocin Aの生合成研究に関しては、Parry らによる取り込み実験により、グルコースの2位と6位に由来する炭素間での結合形成反応により炭素五員環構造が形成されることが明らかにされている(Fig. 1)2。一次代謝系における糖質を基質とする炭素環形成酵素としては、myo-イノシトール-1-リン酸合成酵素(MIPS)と3-デヒドロキナ酸合成酵素(DHQS)が知られており、それらと類似の反応機構で環形成されると推定された。すなわち、MIPSと類似する反応では、フルクトース-6-リン酸(F6P)の5位がNAD(P)+により酸化され6位の水素原子が引き抜かれることでC5-C6エノラートが生じ、C6炭素とC2カルボニル炭素間でのアルドール型縮合反応により炭素環が形成される(Fig. 2A)。酸化されたC5カルボニル基は生じたNAD(P)Hにより還元される。DHQSと類似する反応では、F6PのC4位がNAD(P)+により酸化され6位リン酸基のβ脱離によりC5-C6エノラートが生じ、先と同様なアルドール型縮合反応により炭素環が形成される(Fig. 2B)。酸化されたC4カルボニル基は生じたNAD(P)Hにより還元される。またTurnerらによる生合成遮断変異株を用いた研究から、Fig. 1に示したサイクリトールが生合成中間体であること及びアデニン環とサイクリトール中間体が直接結合してneplanocin Aが形成されることが示唆されている3-5

 本研究では、この興味深いaristeromycinの生合成機構を酵素反応レベルで解明することを目的とし、まず生合成遺伝子クラスターの特定を試みた。Aristeromycin生産菌Streptomyces citricolorのゲノム解析の結果、DHQS遺伝子は1つしか見出すことは出来なかったが、MIPS遺伝子に関しては、一次代謝におけるMIPS遺伝子1つに加えて、それとは低い相同性を示すMIPSタイプ遺伝子を1つ見出すことができた。このMIPSタイプの酵素遺伝子は二次代謝遺伝子と考えられ、おそらくaristeromycin生合成における炭素五員環形成に関与すると推定した。そこで、この遺伝子を含む領域を、生産菌ゲノムDNAからコスミドベクターを用いてクローニングし、異種放線菌Streptomyces albusにて発現させた。その結果、aristeromycinの異種菌生産が確認され、ユニークなMIPSタイプ遺伝子(ari2)を含む31個の読み枠からなる遺伝子クラスターがaristeromycin生合成に関与することが明らかとなった6

 次にMIPSタイプのAri2が、Fig. 2Aで推定したような炭素環形成反応を触媒するか検証

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