天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
58
会議情報

麻痺性貝毒生合成中間体の同定と生合成経路の解明
土屋 成輝長 由扶子吉岡 廉平美野輪 高之此木 敬一長澤 和夫大島 泰克山下 まり
著者情報
会議録・要旨集 フリー HTML

p. Oral42-

詳細
抄録

[背景]

サキシトキシン(saxitoxin, STX, 1)とその類縁体は麻痺性貝毒(paralytic shellfish toxins, PSTs)と呼ばれ、海産渦鞭毛藻や淡水産藍藻により生産されることが知られている1-2。食物連鎖により二枚貝に蓄積され、死亡率の高い食中毒を引き起こす。Shimizuら3は、渦鞭毛藻Gonyaulax tamarensis (Alexandrium tamarense)や藍藻Aphanizomenon flos-aquaeを使った、13C、15N標識アミノ酸、酢酸の取り込み実験を行った。その結果、酢酸、Arginine、S-adenosylmethionine (SAM)がSTX骨格構造に必須であることを明らかにし、初めて生合成経路を提唱した(Figure 1)。その後、Kellmannら4は藍藻Cylindrospermopsis raciborskii T3のゲノム中からSTX生合成遺伝子クラスターを発見した。さらに、他の藍藻(Anabaena circinalis, Lyngbya wollei)や渦鞭毛藻(A. fundyense, A. minutum)のゲノム中にも類似の遺伝子が存在することも明らかになり5-6、Shimizuらとは異なる生合成経路を提唱した (Figure 1)。しかし、いずれの経路においても、生合成中間体の同定は不十分であり、化学的な実証はなされていなかった。

我々は、これまでに推定生合成中間体Int-A’ (6), Int-C’2 (12)を合成し、麻痺性貝毒生産藍藻A. circinalis (TA04)、渦鞭毛藻A. tamarense (Axat-2)の細胞内に存在することを報告した7-8

本研究では、Int-C’2 (12)以降の経路を明らかにすることを目指し、Int-A’ (6)、Int-C’2 (12)、及び新たな関連化合物Cyclic-C’ (13)の安定同位体標識体を合成して、藍藻A. circinalis (TA04)を用いた取り込み実験を行なった。その結果より、遺伝子配列を基に推定された初期の生合成経路を実証し、中期においては、新規生合成中間体11-hydroxy Int-C’2 (20)の存在や、シャント経路を発見したので、報告する。

1. 推定生合成中間体Int-A’ (6), Int-C’2 (12), Cyclic-C’ (13)の標識体合成9

推定生合成中間体6, 12が、麻痺性貝毒の真の前駆体であることを示すため、それぞれ安定同位体(15N)標識体を合成した。[2,5-15N2]l-ornithine(14’)を出発物質として、既知の方法10に従い選択的にグアニジノ化を行い、エチルケトンに変換した後、Boc基を脱保護し、[15N2]Int-A’ (6’)を得た。[15N2]Int-C’2 (12’)も、[15N2]l-ornithine (14’)から合成した。三環性の[15N2]Cyclic-C’ (13’)11(後述)は、Pd/C存在下での環化反応により[15N2]Int-C’2 (12’)から得た(Scheme 1)。

2. Cyclic-C’ (13)の同定

Int-C’2 (12)を化学合成する過程で、エチルケトン17のCbz基をPd/C, H2で脱保護すると、Int-C’2 (12)とともに三環性の副生成物Cyclic-C’ (13)が得られた(scheme 2)。一方、エチルケトン18をTFAで脱保護した際には、目的のInt-C’2 (12)のみが得られた。Cyclic-C’ (13)を生成する反応条件を確認すると、Int-C’2 (12)を塩基性、Pd/C存在下、空気中で撹拌することで、定量的に環化が進行して

(View PDFfor the rest of the abstract.)

著者関連情報
© 2016 天然有機化合物討論会電子化委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top