天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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無保護α-ピラノースを用いるSN2型グリコシル化
上田 善弘竹内 裕紀藤森 悠介永石 優古田 巧川端 猛夫
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p. Oral6-

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抄録

 糖関連物質は次世代の医薬品候補化合物の宝庫として注目されているが、その化学合成は多段階を要することが多い。その主要因は糖類に多数存在する水酸基の保護-脱保護操作に起因している。グリコシル化反応は糖関連物質合成の中心的位置を占める鍵工程であるが、保護糖を用いるのが一般的である。1一方、光延反応条件下、無保護糖を用いるグリコシル化がGrynkiewiczら2、正田ら3によって報告されているが、立体選択性に問題があった。我々は条件を精査することでほぼ完全にβ選択的なグリコシル化が進行する事を見出した。4また、ジカルボン酸のダブルグリコシル化を鍵とする二量体エラジタンニンcoriariin Aの短工程全合成への展開を昨年度の本討論会にて報告した (Scheme 1)。5本研究では無保護糖を用いるβ選択的グリコシル化の更なる展開を視野に、立体選択性発現機構の解析を行った。その結果、市販のD-グルコースがほぼ単一のα体であり、そのSN2置換反応によって立体選択性が制御される事が明らかとなった。さらにD-マンノースへと適用することで、構築が困難な1,2-cis-マンノシドの立体選択的合成を行った。

【β選択性発現機構解析】

β選択性発現機構としてScheme 2に示す三通りの機構が想定される。

1) α-及びβ-グルコースの平衡混合物から生じるオキシホスホニウムイオンの内、α-オキシホスホニウムイオンに対し選択的なSN2置換

2) 市販のグルコースがα体のみであり、生じるα-オキシホスホニウムイオンに対しSN2置換

3) オキシホスホニウムイオンからSN1機構で生じたオキソカルベニウムイオンに対し求核剤がβ面選択的に付加

これらのうちいずれの機構で選択性が発現しているか実験的に検証を行った。

 光延反応はSN2置換反応として広く用いられる手法であるため、まず原料の異性体混合率を1H NMRにより求めたところ、市販のD-グルコースがほぼ単一のα体であることがわかった (Figure 1)。糖は溶液中でアノマー異性体の混合物として存在することが知られているが、製造工程中で選択的に結晶化したと考えられる。6次に原料の異性体混合比が生成物の立体化学に反映されるか検証を行った (Table 1)。既報告の条件であるDMF溶媒中では立体選択性は完全に消失した (entry 1)。一方1,4-dioxane中では原料と生成物の立体化学に相関があり、原料のα体比率が多いほど生成物のβ体比率が増加することが分かった (entries 2–4)。以上の結果から、溶媒によってメカニズムが異なり、ジオキサン中ではScheme 2-2に示すSN2機構で進行することが示唆された。

 さらに、本反応における13C速度論的同位体効果 (KIE) の測定を行ったところ、アノマー炭素上でのKIEは三回平均で1.27と算出された (Scheme 3)。グリコシル化反応におけるアノマー炭素のα一次同位体効果の報告7 (SN1: KIE ≤1.01, SN2: KIE = 1.02–1.06) と比較する事で、本グリコシル化反応がSN2型で進行することが明らかとなった。

【推定反応機構】

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© 2016 天然有機化合物討論会電子化委員会
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