天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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オトギリソウ科Hypericum属およびTriadenum属植物から単離した新規ベンゾフェノン誘導体の構造
田中 直伸矢野 優希大屋 厚小林 淳一柏田 良樹
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抄録

 オトギリソウ科植物に含有されるメロテルペンや、ベンゾフェノン誘導体を含むアシルフロログルシノール誘導体は、特異な生物活性や化学構造を有することから、医薬リードならびに全合成研究のターゲットとして注目されている。我々の研究グループは、オトギリソウ科植物に含まれる成分の探索研究を行っており、これまでに、Hypericum属の植物から種々のメロテルペンやアシルフロログルシノール誘導体を単離・報告している1)。この研究の一環として、徳島県産Hypericum patulumならびに北海道産Triadenum japonicumの抽出エキスについて、詳細な成分探索を行った。その結果、8種の新規ベンゾフェノン誘導体1–8を単離したので、それらの構造と生物活性について報告する。

1. 抽出・分離

徳島県で採集したH. patulum の地上部をMeOHで抽出後、抽出物をn-hexaneと水で分配した。n-Hexane可溶部を各種クロマトグラフィーで繰り返し分離し、新規ベンゾフェノン誘導体hypatulin A (1) および B (2) を単離した (Chart 1)。

Chart 1. Structures of hypatulins A (1) and B (2) from Hypericum patulum, and (–)-nemorosonol (3) and trijapins A–E (4–8) from Triadenum japonicum.

 北海道で採集したT. japonicum地上部のMeOH抽出エキスについても同様に成分を探索し、新規ベンゾフェノン誘導体 (–)-nemorosonol (3) ならびにtrijapin A–E (4–8) を単離した。

2. Hypatulin A (1) およびB (2) の構造

 Hypatulin A (1) は光学活性な無色非結晶性の固体として単離され、HRESIMSより分子式C32H40O4が明らかになった。1D NMRスペクトルの解析から、1は3個のプレニル基と1個のメチル基、ならびにベンゾイル基を有する化合物であると示唆された (Table 1)。1H-1H COSYとHMBCスペクトルを詳細に解析し、三環性のoctahydro-1,5-methanopentalene部分の構造と、前述の置換基の結合位置を明らかにした (Fig. 1A)。3位水酸基の存在は、重水素置換シフトから支持された。NOESYスペクトルを解析し、6位および8位の相対配置をFig. 1Bに示した配置と帰属した。

 Hypatulin A (1) の絶対立体配置を、ECDスペクトルの実測値と計算値の比較により明らかにした。すなわち、2種のエナンチオマーのECDスペクトルをTDDFT法により計算し、実測値と比較したところ (Fig. 2)、1S,3R,4R,6R,7R,8S体のスペクトルが実測値と類似していたので、1の絶対立体配置をChart 1に示した配置と帰属した。

 Hypatulin B (2) の分子式はC33H44O5であり、1D NMRスペクトルの解析から1と同様の置換基をもつ化合物であることが示唆された。各種2D NMRスペクトルの解析 (Fig. 3) から、2の構造をbicyclo[3.2.1]octane部分に3個のプレニル基、1個のメチル基、1個の水酸基、および1個のカルボン酸メチルが結合した構造と推定した。Hypatulin A (1) をメタノール中4-ジメチルアミノピリジンで処理し、得られた1aとhypatulin B (2) の1H NMR スペクトルと比旋光度が一致したことから、2の絶対立体配置をChart 1に示した配置と帰属した。

Table 1. 1D NMR data for hypatulins A (1) and B (2) in CD3OD.

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© 2016 天然有機化合物討論会電子化委員会
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