天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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Cotylenin Aの不斉全合成研究
永谷 幸太郎上森 理弘星野 雄之介南 篤志中田 雅久
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抄録

【背景・目的】 

cotylenin A (1)は、植物成長調整物質としてCladosporium属の代謝産物から単離されたジテルペン配糖体である1。1は前骨髄性白血病細胞に対して分化誘導活性を示し、更にINF-α存在下、種々の固形がん細胞に対してタンパク質間相互作用に基づく腫瘍増殖抑制活性を示す2。このため1は新規抗がん剤として注目されているが、1の生産菌の継代培養が途絶えているため、有機合成による供給が望まれている。しかし、これまでに1のアグリコンの全合成については報告されているものの3、1の全合成は報告がない。そこで、1の構造と生物活性、また量的供給に対する興味から1の不斉全合成を計画した。

【逆合成解析】 

cotylenin A (1)の逆合成解析をScheme 1に示す。1はジアルデヒド2の分子内ピナコールカップリングによる八員炭素環の構築と、グリコシル化により得られるものとし、2はA環フラグメント3とC環フラグメント4のカップリング反応とその後の変換によって得られると考えた。また、3、4はそれぞれジアゾ体7、8の触媒的不斉分子内シクロプロパン化(CAIMCP) 4とシクロプロパンの開環反応を経由して合成できると考えた。α-ジアゾ-β-ケトスルホンのCAIMCPは1の持つ不斉中心を効率的に構築する上で有用であり、CAIMCPの生成物は再結晶により光学的に純粋にすることができ、各種官能基変換により多彩な化合物に変換可能であるため有用である。

【A環フラグメントの合成】

CAIMCPを経由するA環フラグメントの合成に着手した。市販化合物より数工程で合成したα-ジアゾ-β-ケトスルホン9を用いて鍵反応となるCAIMCPの検討を行った(Table 1)。その結果、スルホン上の置換基がメシチル基の場合、(E)体、(Z)体いずれの基質においてもTable 1に示したビスオキサゾリン配位子とCuClとNaBARFを用いることで、所望のシクロプロパン体10が高収率で高エナンチオ選択的に得られることを見出した。

9-(E)、9- (Z)体からそれぞれ得たシクロプロパン体10-(E)、10-(Z)はDMSO中、NaCNを用いてシクロプロパンを開環させることにより単一の生成物として開環体11-(E)、11-(Z)へ変換することに成功した(Scheme 2)。得られた生成物11-(E)、11-(Z)はそれぞれ単結晶X線結晶構造解析によって絶対配置を確認した。その結果、10-(E)体から得た生成物11-(E)がcotylenin Aの持つ立体配置を有していることが分かった。得られた11-(E)より6工程の官能基変換によりcotylenin AのA環フラグメント3の合成を達成した(Scheme 3)。

       

【C環フラグメントの合成】

cotylenin AのC環フラグメント4の合成においてもCAIMCPを用いた(Scheme 4)。市販化合物より数工程で合成した8のCAIMCPにより高収率、高エナンチオ選択的にシクロプロパン体6を得ることができ、PhSKとの反応によりシクロプロパンの開環体12を得た。続いてヨウ化サマリウムを用いて脱スルホン化を行い、生じたサマリウムエノラートをホルマリン水溶液で処理すると、ワンポットで13を得ることができた。13から種々の官能基変換を経ることでC環フラグメント4の

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