天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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ネオマクロフォリン類の単離・構造決定及び生理活性
橋本 勝廣瀬 あかね本村 優奈日下部 一晃上杉 祥太殿内 暁夫前多 隼人根平 達夫木村 賢一
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抄録

白神山地は1993年に登録されたUNESCO世界自然遺産として知られている。報告者らはこの地域の微生物を遺伝子資源ととらえ、有用二次代謝物の探索研究を展開、これまで複数の新規天然物を単離してきた。今回、弘前大学白神自然観察園で採取したDaedaleopsis tricolor(チャカイガラタケ)に寄生するTrichodermasp. 1212-03の培養液から新規ドリマン型ジテルペンであるネオマクロフォリン I-VI (1-6)、及びその生合成前駆体と考えられるプレマクロフォリン (7)を単離した1

【単離と構造決定】

Trichodermasp. 1212-03培養液の酢酸エチル抽出物をシリカゲルクロマトグラフィーなどを用いてこれら化合物を精製した。まず、ネオマクロフォリンI (1) の構造を解析した。ESIMSスペクトルはプロトン化した分子イオンをm/z477.2493に与えたことから分子式C26H36O8を推定、さらにNMR解析により3-位にアクシアル水酸基を有するドリマン誘導体であると決定した。H-9はH-5’との間に明確なNOEを与えたが、分子モデリングの結果、(9S*,5’R*)-異性体では、安定配座(図1)においてH‑9/H‑5’間距離は近く観測したNOEを説明できるが、その異性体の安定配座ではこれを説明出来ないことから、ドリマン環部とエポキシキノン環部との相対立体配置を決定した。

側鎖のC-4”メチル基は19.51 ppmに観測された。複数の2,3-ジヒドロキシブタン酸エステルの文献値を調査したところ、threo-体の場合4-位メチル基は19.5 ppm付近に、erythro-体のそれは17.5 ppm付近に普遍的に現れることを見出し、threo-体と決定した。また、プロトン非デカップリング13Cスペクトル等より3JCH, 3JHH値(3JC-1”/H-3” = ca 1 Hz, 3JH-2”/H-3” = 2.3 H, 3JH-3”/C-4” = 2.0 Hz)を帰属したところ、図2のような関係を帰属し、先の相対配置に矛盾しないことを確認した。

2では13C NMRカルボニルシグナルが1個減少した。NMRの解析により、2は1の4’-位アルコール体であると結論した。JH-4’/H’-5は0.9 Hzであり二面角H‑C4’‑C5’‑H90°が示唆された。分子モデリング等によりトランス配置と推定したが、シス異性体でも対応する二面角は約60°であり、観測したスピン結合を完全に否定できるものではなかった。最終的には後述するECDによる絶対配置の議論の中で確定した。3, 4はそれぞれ2, 1の2”-位についてのデオキシ体であることが判明した。側鎖3”-位水酸基の立体化学はメタノリシスにより3-ヒドロキシブタン酸メチルとした後、キラルGCにより標品と比較することにより絶対配置として(3”S)-配置を決定した。5, 6は1”-4”側鎖を持たないC7’アルコール体であることが判明した。さらに培養液を検索したところ、ドリマン部が環化していない7を単離し、これをプレマクロフォリンと命名した。このものでは、7’-位も酸化されておらずメチル基のままである。

ドリマン骨格では両鏡像体の天然物が知られていることから、他のマクロフォリン類の報告などから一意的に決定す

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