天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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26. Tunicamycin Vの全合成と構造に基づいたMraY選択的阻害剤への変換(口頭発表の部)
*山本  一貴市川  聡
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 151-155-

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抄録

【研究背景】  Tunicamycin類は、1971年に放線菌Streptomyces属から単離されたヌクレオシド系天然物であり1)、細菌のペプチドグリカン生合成酵素の一つであるphospho-MurNAc-pentapeptide transferase (MraY)を阻害することでグラム陽性菌に対して抗菌活性を示す(Figure 1)。一方で、真核生物の糖タンパク質糖鎖生合成酵素の一つであるUDP-GlcNAc:dolichyl-phosphate GlcNAc-phosphotransferase (GPT)を阻害することで、ヒト細胞に対する強力な細胞毒性を示すため、抗菌剤として用いることはできない。本研究では、1) tunicamycin V (1)の全合成、2) tunicamycin-GPT複合体構造の解明、3) 構造に基づいた薬物設計によるMraY選択的阻害剤の創製について取り組んだ。 【tunicamycin V (1)の逆合成解析】  Tunicamycinが有する、D-ガラクトサミンとウリジンがC5'-C6'で連結したtunicaminyluracil骨格、11',1''-トレハロース型グリコシド結合という特異な構造は合成化学的にも興味深く、3例の全合成と8例の合成研究が報告されている2)。これまでの合成法はガラクトサミンを原料とした合成法であるが、本研究では、合成終盤で置換基導入を行うde novo糖合成法に基づいた合成計画を立案した(Scheme 1)。誘導体合成を見据え、脂溶性側鎖3、GlcNAc部4は合成終盤で導入することとし、MraY阻害活性に重要と考えられるtunicaminyluracil 2を先に構築することとした。Tunicaminyluracil保護体2は、アリルアミン5のジヒドロキシル化により導くこととし、5の10'-アミノ基は、カーバメート6のアリルシアネート転位により立体特異的に導入することとした。カーバメート6は、ピラノン7のTBS保護とLuche還元により導くこととし、ピラノン7は、ウリジンから導くこととした。

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