天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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28. タンデムラジカル反応を基軸とするハリクロニンAの形式合成(口頭発表の部)
*浦山 泰洋小嶺 敬太保坂  拓山下 裕貴福田  隼石原  淳畑山  範
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 163-168-

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抄録

【緒言】 ハリクロニンA(1)はチェジュ島近海の海綿Haliclona sp. から単離構造決定された大環状アルカロイドである1)。本天然物は黄色ぶどう球菌を始めとする多様な細胞に対し抗菌活性を示し、ヒト白血病細胞K562に対して中程度の細胞毒性 (IC50 = 15.9 μg/mL) を有する。1は特異なアザビシクロ[3.3.1]ノナン骨格を母核とし、Z,Z-スキップジエンを含む15員環と17員環の二つのアンサ鎖で架橋した複雑な四環性構造を有する。この多様な生物活性と特異な構造から合成標的として大変魅力的であり、世界中で合成研究が展開されている。2016年にはHuangらによる初の全合成が報告され2)、最近、福山、横島らも合成研究を報告している3)。我々は、タンデムラジカル反応を基軸とする独自の方法による合成を検討し、今回、その形式合成を達成したので報告する。 【合成戦略】 我々は1のアザビシクロ[3.3.1]ノナン骨格に注目し、本部位をタンデムラジカル反応にて一挙に構築することを計画した(Scheme 1)。すなわち、セレノカルバメートから求核的なカルバモイルラジカルが生じれば、求電子的な,-不飽和ケトンと容易に反応し、分子内6-exo環化した中間体が生じる。生じた-ラジカルは求電子的ラジカルであり、求核的なアリルスズと反応する。この際、ビシクロ骨格のconvex面から選択的に反応が進行することが期待される。最終段階で生じたスズラジカルは再び基質と反応し、触媒サイクルが完成する。本反応は、中性条件かつ一挙に望む二環性骨格を選択的に生じることから、有機合成的にも非常に魅力的と言える。 Scheme 1.

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© 2018 天然有機化合物討論会電子化委員会
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