主催: 第60回天然有機化合物討論会実行委員会
会議名: 第60回天然有機化合物討論会
開催地: 久留米シティプラザ
開催日: 2018/09/26 - 2018/09/28
p. 205-210-
パクタマイシンはStreptomyces pactum NBRC13433が生産する抗腫瘍抗生物質であり、炭素五員環アミノサイクリトールが3-アミノアセトフェノン(3AAP)や6-メチルサリチル酸(6MSA)などにより高度に修飾された興味深い構造を有している(Fig. 1)1。Rinehartらによる取り込み実験から、炭素五員環アミノサイクリトールはグルコースに由来すること、3AAPのアミノ安息香酸ユニットはシキミ酸経路の中間体から派生して構築されること、6MSAはポリケチド経路により生合成されることが示唆されている2-3。3AAPのメチル基も酢酸に由来することから、3-アミノ安息香酸(3ABA)と酢酸ユニットとの縮合後、脱炭酸反応を経て構築されると推定されている。また、メチオニンの取り込み実験から、炭素五員環アミノサイクリトールの炭素骨格がC-メチル化されて生合成されることが示唆されている。本研究ではパクタマイシンの生合成機構を酵素反応レベルで解明することを目指した。結果として現在までに、パクタマイシン生合成遺伝子クラスターを特定し、生合成に関わる鍵酵素の機能を解明することができたので報告する。 <遺伝子クラスターの特定と推定生合成経路> まず、パクタマイシン生合成遺伝子を特定する手がかりとして、ラジカルS-アデノシル-L-メチオニン(SAM)C-メチル化酵素の関与を推定した。パクタマイシン生産菌のゲノム配列を探索した結果、3つのラジカルSAM C-メチル化酵素をコードする遺伝子を含む生合成遺伝子クラスターを見出すことができた(Table 1)4。