天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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36. [4+2]環化付加反応におけるデカリン合成酵素Fsa2の機能解析
*加藤 直樹野川 俊彦滝田 良衣笠 清美金井 美紗衣内山 真伸長田 裕之高橋 俊二
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 211-216-

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抄録

天然物の特徴のひとつとして、不斉炭素に富んだ複雑な構造が挙げられる。その立体配置は特徴的な生物活性に大きく寄与しており、グルタミン酸やリモネンなどを始め、立体異性体の間で生物機能が異なることも多い。有機合成化学の分野では,立体異性体の一方を選択的に合成する手法が、不斉合成として大きな発展を遂げ、医薬・農薬開発に大きな貢献をした。一方、天然物の生合成経路を構成する酵素の多くは、厳密な位置・立体選択性を有しており、本来とは異なる立体異性体が産み出されることはほとんどない。もし、その厳密な選択性を自在に操ることが出来れば、天然にはない立体配置を有する新規天然物誘導体の創製が可能となる。天然物生合成経路において、立体配置を規定する鍵酵素を同定し、その反応機構を理解することは「不斉生合成」の実現に向けた第一歩である。 【立体選択的[4+2]環化付加反応を触媒する酵素Fsa2】 [4+2]環化付加反応は、有機合成化学では炭素骨格構築における最重要反応の1つである。一方、天然物化学においては、本反応が関わると考えられる構造は数多く存在するものの、それを触媒する酵素の詳細は永らく不明であったが、近年のゲノム解読技術の飛躍的な発展に伴い、本反応を触媒する酵素の発見が相次いでいる1)。Fusarium属糸状菌の生産するequisetin (1) 2)の生合成経路において、立体選択的デカリン形成を担うFsa2もその1つである3)。しかしながら、それらの進化的起源は異なっており、各々の生合成経路に特化していることから、酵素機能の統合的な理解には至っていない。 化合物1に代表される、デカリン含有2-ピロリジノン化合物(Fig. 1A)は糸状菌によって生産される二次代謝物の一群であり、多様な生物活性を示すことが知れられている4)。PKS-NRPSハイブリッド酵素により生合成される多様な構造を有する直鎖状ポリエン中間体が、Fsa2とそのホモログ5)が関与する[4+2]環化

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© 2018 天然有機化合物討論会電子化委員会
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