天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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P1-2 ヨウシュヤマゴボウ培養細胞が営む水酸化、メチル化および配糖化にかんする酵素的知見
*濱田 博喜上杉 大介藤高 侑也下田 恵小崎 紳一和氣 駿之中山 亨福田 庸太井上 豪
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 271-276-

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抄録

【目 的】 近年, グリーンケミストリーの観点から微生物や酵素などの生体触媒を利用した有機合成が注目されている. 一般的にこれまでの企業は安く大量に製品を作ることを第一目標とし, 研究開発を行ってきた. 言い換えれば「環境汚染しないように」注意を向けてきた. 現在では, 出来た物を処理するのではなく, 「汚染物質そのものを作らないようにする」という考えが広まってきている. つまり, 環境問題に根本から考え直そうということである. 根本的に汚染物質を使用せず, また出さずに欲しいものを作る手段を模索する学問が「グリーンケミストリー」である. 我々は現在定められているグリーンケミストリーの12箇条の中の「できるだけ生体触媒を使う」という点に注目し, 植物培養細胞に注目をして研究を行っている. 植物細胞培養技術は,細胞の生育,代謝に必要な成分を含んだ培地で,植物の組織の一部を培養し,細胞を増殖する技術である.植物や糸状菌, 細菌などは, 二次代謝産物と呼ばれる特定の種特異的で多様な化合物群を生合成し, 自らの生存戦略に利用している. 植物培養細胞が行う反応には酵素が関与しており, 有機化学合成のような過激な反応条件を必要としない. また, 植物培養細胞は元の植物の遺伝情報を全て備えているため, 物質代謝に関しても同様の情報を持っていることを示している. よって, 植物培養細胞が植物成分の生産手段となりうることが原理的に期待できる. そこで, 植物細胞, 器官および組織をin vitroで大量に培養することで, 有用な植物成分を計画的に生産し, その安定供給を行う試みが,近年進められている. 植物培養細胞は, 植物培養細胞に含まれない外来物質に対して,水酸化, 酸化, 還元, メチル化, 配糖化などの変換を, 微生物を利用したときと同様に行うことが知られている. なかでも,芳香族系の化合物を効率よく配糖化することができる. この配糖化反応は植物の特徴であり, 微生物では稀にしか起こらない. 外来物質として, サリチル酸, カプサイシン, ジギトキシゲニンなどが植物培養細胞によって効率的に配糖化されている. ヨウシュヤマゴボウ培養細胞は, 当研究室において高い配糖化能力が見出されている. これまでに多くの植物由来の酵素の結晶解析が報告されているが, ヨウシュヤマゴボウ由来の酵素の構造は知られていない. 本研究では, ヨウシュヤマゴボウ培養細胞を生体触媒として, 機能性化合物の物質変換研究を行った. さらに, ヨウシュヤマゴボウ培養細胞の変換メカニズムの解明を目的として, 培養細胞へ基質を投与した際に発現したⅿRNAを単離し糖転移酵素(PaGT2, PaGT3)およびメチル化酵素(PaOMT1~4)を精製した. また, 精製したPaGTによる位置選択的配糖化機構を明らかにすることを目的として, PaGT2の結晶構造解析を行ったので報告する.

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© 2018 天然有機化合物討論会電子化委員会
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