天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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8. NRPS-PKSモジュール酵素リプログラミングによる新規デプシペプチド生産(口頭発表の部)
*淡川 孝義藤岡 拓真張 驪駻星野 翔太郎胡 志娟橋本 絢子小曽根 郁子池田 治生新家 一男劉 文*阿部 郁朗
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 43-48-

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抄録

ポリケタイド、非リボソームペプチドは医薬品資源の宝庫として知られるが、その生合成酵素は巨大なモジュール酵素(複数の触媒ドメインが単一のポリペプチドに存在した構造)であることが多く、酵素の反応改変による新規化合物生産は容易ではない。モジュール酵素は、個々の触媒ドメインの基質特異性、中間体の受け渡しが厳密に制御されており、モジュール、ドメインを組換えた場合には、生成物が生成しない、またはその収量が大きく低下する場合が多く知られている。この問題を打破するためには、触媒ドメインあるいはモジュールの構造情報による、触媒メカニズムの解明が必要であるが、モジュール酵素は分子量200 kDaを超える巨大タンパク質であり、X線結晶構造解析、クライオ電子顕微鏡などでの構造解析は容易ではなく、現在その解析技術の発展が待たれている状態である。本研究では、いまだに酵素エンジニアリングの報告例が少ない、非リボソームペプチド合成酵素-ポリケタイド合成酵素(NRPS-PKS)をターゲットとして、その改変による新規物質生産モジュール酵素の創出を目的とした。 医薬品資源としてのポテンシャルを秘めるantimycin化合物群のモジュール改変による新規類縁体合成に着手した。本化合物群は、ジラクトンantimycin、トリラクトンJBIR-06、テトララクトンneoantimycinなど、共通のホルムアミドサリチル酸(FSA)のスターター基質から合成されるものの、ラクトン環サイズの異なるデプシペプチド構造を持つ(図1)。これらの合成酵素はそれぞれアミノ酸相同性が高く、いわば”天然の改変酵素”と呼ばれるものである。これらの触媒ドメインやドメイン、モジュール間の繋ぎ目となる、リンカー、ドッキングドメイン(モジュール間を連結するドメイン)の配列を詳細に比較することで、モジュール、ドメインの組換えが円滑に進行することが期待された。そこで、本研究では、それぞれの生合成酵素群のアミノ酸配列比較に基づく機能改変によって、新規antimycin化合物の合成を試みた。それぞれの化合物の生合成遺伝子クラスターはBACベクターpKU5181,2にて放線菌発現宿主に導入し、それぞれの目的に応じて遺伝子組換え手法を用いて改変を行い、モジュール構造を作り変えることで物質生産を行った。 図1 Antimycin化合物群の化学構造

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© 2018 天然有機化合物討論会電子化委員会
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