天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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11. 制限酵素阻害アッセイによるChromomycin A3の繰り返しDNAに対する同時結合性の評価(口頭発表の部)
*村瀬 裕貴野口 幹晴脇坂 元太郎Wu Ting佐々木 茂貴
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p. 61-66-

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抄録

【序論】  Chromomycin A3 (CMA3) はStreptmyces griseusから単離・精製されたaureolic acid型の抗腫瘍活性物質である(Fig. 1)。Mg2+などの二価金属イオンを介して形成されるCMA3二量体は、GC-richな二本鎖DNAマイナーグルーブに強く結合することで、DNA複製やRNAへの転写を阻害する[1]。以前は、抗がん剤として臨床使用されていたが、重度の副作用から使用が停止された経緯がある。しかしながら、DAPIなどの一般的なAT選択的マイナーグルーブ結合分子とは異なり、CMA3はGC選択性を有することから、現在もCMA3のDNA結合解析は精力的に研究されている。一方で、我々はDNA繰り返し配列に結合性を示す分子の開発を目指している。繰り返し配列は正常ゲノム中にも存在するが、この繰り返しの異常伸長により疾患を引き起こすことが知られている。このような背景のもと、我々はCMA3のDNA 繰り返し配列に対する結合特性に興味を持った。本研究ではDNA 繰り返し配列に対する同時結合性を評価するアッセイ法を独自に構築したが、興味深いことに、CMA3はDNA 繰り返し配列に対する同時結合性を示すことが明らかになった。そこで、本研究ではCMA3の分子構造をモチーフとした新規合成リガンド開発について検討し、DNA 繰り返し配列に選択的に集積する低分子リガンドを見出すことに成功した。 【同時結合性を評価可能なアッセイ法の開発】  CMA3のDNA結合は、Mg2+錯体形成、DNAとの複合体形成、DNAのコンフォメーション変化を順に伴うため、等温滴定型熱量測定(ITC)などによる結合解析が非常に複雑化する。一般的なフットプリンティング法ではDNA鎖の一か所の切断を観測するため、同時結合性の評価は困難である。そこで我々は、連続するDNA結合部位に対するリガンド結合性を簡便に評価可能な、制限酵素阻害アッセイ法を開発した (Fig. 2)。制限酵素は特定の塩基配列を認識し特異的に切断するエンドヌクレアーゼである。結合分子がDNAの酵素認識部位に結合していると制限酵素のDNAへの接近が阻害されDNA切断が阻害される。本研究ではCMA3結合配列d(CGCG)2を複数個もつDNA鎖を基質として用い、この部位を切断する制限酵素Acc IIの切断阻害を観測し

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