天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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14. アンフォテリシンBとステロールが形成するチャネル複合体の構造研究(口頭発表の部)
*山本 智也梅川 雄一中川 泰男鈴木 大河山上 正輝土川 博史花島 慎弥村田 道雄松森 信明Seo Sangjae篠田 渉
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p. 79-84-

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抄録

アンフォテリシンB (AmB 1, 図1a) は放線菌Streptomyces nodosusが生産する抗真菌剤であり、真菌症の治療薬として広く用いられている。AmBの薬理活性はイオン透過性チャネル複合体の形成に由来すると考えられており、ヒト細胞膜中のコレステロール(Chol, 図1a)よりも、真菌特有のエルゴステロール (Erg, 図1b) と選択的に会合し、樽板型モデルのチャネル複合体 (図1b) を形成することで選択毒性を示すと考えられている1)。 図1 (a)AmBおよびステロールの化学構造; (b)樽板モデル.  我々は、AmBの作用機構の全容解明を目指して、固体NMRを用いたチャネル複合体の構造解析を行っている。これまでの分子間距離情報を基盤とした構造解析では、AmBとErgに13Cまたは19F標識を導入し、REDOR測定により標識核間距離を得ることで、分子間距離を測定してきた2)。これらの研究によって、第57回の本討論会ではAmB/Erg二分子複合体の構造解析について報告している3)。   一方、これまでの分子間距離情報を基盤とした構造解析では得られる情報が限定されるという問題があった。分子間距離情報に基づいた解析では、チャネルを構成する分子の相対位置を解明できる一方で、チャネル複合体の脂質二重膜に対する配向を取得することは困難である。AmBの配向はチャネル複合体構造を決定する上でも、必要不可欠な情報である。特に近年新たな活性モデルとして提唱されているステロールスポンジモデル (図2a) ではAmBが膜法線に対して垂直に配向するが、従来の樽板型モデル (図2b) ではほぼ平行に配向するため、AmBの配向を測定することで、これらのモデルを明確に区別できる。またAmBのβグリコシド結合まわりの配座は自由度が高く、チャネル複合体の構造解析やステロール選択性の解明において必要不可欠な情報であるが、分子間距離情報を元にこの配座を推定することは困難であった。過去のMD計算や構造活性相関から、マイコサミン部分の立体配座がチャネル形成に重要であること、およびマイコサミン部分がステロールと相互作用し、βグリコシド結合を固定することで活性やステロール選択性を制御しているこ

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© 2018 天然有機化合物討論会電子化委員会
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