天理医学紀要
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天理よろづ相談所学術発表会 2015
直接経口抗凝固薬投与のリスク管理のための臨床検査部の取り組み
下村 大樹
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2016 年 19 巻 2 号 p. 81-89

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抄録

 我々は,直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant; DOACs)が投与される患者のために,腎機能を簡便に評価するシステム,および抗凝固作用の評価として,PT およびaPTTの検査値に服用後経過時間を併記するシステムを構築した.DOACsは腎排泄率が高い薬剤であるため,重度腎機能障害の患者へ投与が禁忌とされている.DOACs投与時の腎機能評価は,Cockcroft-Gault計算式によるクレアチニンクリアランス(creatinine clearance; CCr)が採用されている.国内で頻用されている糸球体濾過量推算式(estimated glomerular filtration rate; eGFR)と比較すると,日本人に多い小柄な高齢者はCCrよりeGFRが高くなる傾向があり,eGFRでは代用できない.そのため,当院ではCCrを検査システムに取り入れ,禁忌症例の判断,処方前および定期的な腎機能評価に活用している.DOACsは固定用量の投与で,抗凝固作用評価(モニタリング)が不要とされているが,出血リスクの高い患者にはモニタリングすることが推奨されている.DOACsは半減期が短く血中濃度の変動が大きいため,服用からの経過時間により検査値が大きく異なる.当院では,検査技師が採血時に患者から聴取したDOACsの服用時間を検査結果に併記し,服用後経過時間を考慮してPTあるいはaPTTを評価することにより,DOACsのリスク管理を行っている.

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© 2016 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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