天理医学紀要
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天理よろづ相談所学術発表会 2015
後天性血栓性血小板減少性紫斑病の診断と治療
飯岡 大下村 大樹
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2016 年 19 巻 2 号 p. 105-113

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抄録
 血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura; TTP)は,全身の微小血管に血小板血栓が形成され,血小板減少と溶血性貧血を呈し,時に虚血性臓器障害を合併する疾患である.von Willebrand 因子(VWF)を特異的に切断する酵素であるADAMTS13(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motif 13)活性の著減が病態に関与している.原因不明の血小板減少と破砕赤血球を伴う溶血性貧血(細血管障害性溶血性貧血)の所見があれば,発熱や臓器障害がなくてもTTPを疑いADAMTS13活性を測定することが重要で ある.ADAMTS13活性が10%未満に著減していればTTPと診断し,ADAMTS13に対するインヒビターが陽性であれば後天性TTPと診断する.インヒビターが陰性の場合は先天性TTP(Upshaw-Schulman症候群;USS)が考えられるが,確定診断のためにはADAMTS13遺伝子解析が必要である.後天性TTPの標準治療は,血漿交換療法である.ADAMTS13を補充し,ADAMTS13自己抗体と超高分子量VWF重合体(unusually large VWF multimers; UL-VWFM)を除去する効果がある.ステロイド療法が併用されることが一般的で,これらの治療により,発症早期の予後は劇的に改善した.しかし,治療早期に再増悪をきたす例があることや,寛解後の再発率が高いことなどの問題がある.最近は,抗CD20キメラ抗体であるリツキシマブを併用することで,高い治療奏効率と長期の寛解維持効果を示した報告が続いている.(2015年現在,TTPに対するリツキシマブは,本邦では保険未適応である.)
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© 2016 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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