天理医学紀要
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原著
Cup-like核形態を認めた急性骨髄性白血病-電子顕微鏡所見に着目して-
鴨田 吉正下村 大樹津田 勝代林田 雅彦福塚 勝弘和泉 清隆丸山 亙永井 雄也飯岡 大赤坂 尚司大野 仁嗣
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2017 年 20 巻 1 号 p. 26-37

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抄録

 我々は,まず,cup-like核形態を認めた急性骨髄性白血病(AML) の1例を提示する.症例は63歳男性.ヘモグ ロビン10.0 g/dL,白血球数16.78 × 103/μL (芽球 94.6%),血小板数91 × 103/μL .骨髄は細胞密度20%,芽球87%.末梢血中の芽球の20%がcup-like核形態を示し,電子顕微鏡下で核嵌入部にミトコンドリアが集簇していた.芽球はペルオキシダーゼ陰性であったが,CD13, CD33 陽性で,CD34 陽性,HLA-DRの発現は減弱していた.染色体は正常核型.FMS-like tyrosine kinase 3-internal tandem duplication (FLT3-ITD) とnucleophosmin 1 (NPM1) 遺伝子変異は認めなかった。化学療法に反応したが短期間で再発し,初診から9か月で死亡した. 次に,当院では,これまでに合計6症例のcup-like AMLを診療した.年齢は62から80歳,男女比は3:3.2例はFrench-American-British分類M0,1例はM1,2例は骨髄単球性/単球性白血病,1 例は低形成白血病であった. 2例は高度の白血球増多で,2例は白血球減少で発症した.全例で骨髄球系の抗原を発現したが,CD34とHLA-DRのいずれかまたは両者の発現が減弱していた.全例で正常核型,4例でFLT3-ITDとNPM1遺伝子変異のいずれかまたは両者が認められた.全例で,核嵌入部のミトコンドリアの集簇を認めた.現時点では,cup-like AMLが特定の臨床病態,遺伝子変異,治療アウトカムと関連するかどうかは不明である.

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© 2017 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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