天理医学紀要
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症例報告
顕著な肝腫大と多クローン性高γグロブリン血症で発症したALアミロイドーシスの1例
大野 仁嗣戸田 有亮鴨田 吉正岡部 誠本庄 原
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2017 年 20 巻 1 号 p. 63-72

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抄録

 症例は65歳女性.顕著な肝腫大と多クローン性高γグロブリン血症のため紹介受診した.総蛋白8.9 g/dL,アルブミン35.6%,グロブリン40.2% (35.8 mg/mL),アルカリフォスファターゼ730 IU/L.CT上で計測した頭尾側方向の肝の長さは24.2 cm であった.肝生検では,肝実質は好酸性の無構造の物質に置換され,それはコンゴーレッド染色陽性,偏光顕微鏡下でapple greenの複屈折を示し,アミロイド沈着であることが判明した.アミロイド沈着は胃粘膜と骨髄にも認められた.免疫固定法では血清・尿中にM成分を認めなかったが,血清遊離軽鎖(free light chain, FLC) はκ鎖に著しく偏倚していた(FLC-κ, 1,290 mg/L; FLC-λ, 86 mg/L).骨髄ではクローン性の形質細胞を10.4%認め,FISHでCCND1遺伝子と免疫グロブリン重鎖遺伝子の融合シグナルを認めた.ALアミロイドーシスと診断し,ボルテゾミブを含む化学療法を開始したところ速やかに血液学的効果を認め,very good partial responseの効果判定基準を満たした.肝腫大は2年以上にわたるボルテゾミブの投与によって徐々に縮小した.初診時の多クローン性高γグロブリン血症は,肝でのアミロイド沈着に対する反応性・炎症性過程を反映していたと考えられる.形質細胞を標的とした治療は臓器のアミロイド沈着を減少させ,低下した機能を回復させる可能性がある.

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© 2017 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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