日本転倒予防学会誌
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特集
東日本大震災を経験して
大井 清文
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2018 年 4 巻 3 号 p. 7-10

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抄録

 今回の大震災,特に岩手県においては被害の本質は大津波であった。従って,阪神淡路大震災とは違い,ある意味手探りの状態で支援を開始するものであった。その様な状態であっても,当初の避難所へのリハ支援は,生活不活発病予防のための運動指導や転倒予防のための基本動作指導(起き上がり,立ち上がりおよび歩行等)が主となった。 リハ支援を行うにあたり遭遇したもう一つの問題は,被災地に避難している被災者の支援(被災地支援)以外に,内陸部に避難している被災者の支援(内陸部支援)も必要なことであった。この内陸部支援での特徴は,当センターの保健師および看護師も同時に派遣し,当該市町村の保健師と共に避難所の健康相談を行ったことである。その結果,圧倒的に内科疾患が多く,内科的疾患管理の必要性が示唆された。転倒は決して整形外科疾患のみに発生するものではなく,内科的疾患でも出現する場合があり,それゆえ内科的疾患の管理が重要である。    その後,岩手県の仮設住宅は8 月11 日までに全13,984 戸が完成したが,今回の震災における仮設住宅の問題点は,①利便性のないところに立つ仮設住宅,②障害者を考慮しないバリアだらけの住宅,③ 狭くて介助の出来ない浴室,④夏は暑く,冬は本当に寒い(床から冷える),⑤隣の音が聞こえる(ストレスが溜まる),⑥カビの問題(3年目の問題)等であった。さらには建設を急ぐ余り,当初は住宅の周囲も砂利道であり,居住スペースも狭く,障害者は住めない状況であった。以上の問題は,行政に訴えたことで次第に改善されて来たが,今後起こりうる震災時には,当初よりこれらの問題にも考慮した仮設住宅建設が必要である。 最後に,東日本大震災におけるリハ支援は,岩手県のみならず全国の関係各位のご協力のもとに支援がなされたものであり,心より感謝申し上げる。

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