Tetsu-to-Hagane
Online ISSN : 1883-2954
Print ISSN : 0021-1575
ISSN-L : 0021-1575
Preface
Preface to the 100th Volume Memorial Special Issue of Tetsu-to-Hagané
Hisao Esaka
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2014 Volume 100 Issue 1 Pages 1

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巻頭言

日本鉄鋼協会の論文誌「鉄と鋼」は平成26年(2014年)に記念すべき第100巻に到達しました。震災もあり,大恐慌もあり,大戦もありと危機は多く,実に大変であったと思われますが,ここまで継続できたのは諸先輩の努力の賜物であります。

論文誌編集委員会では第100巻記念特集号を刊行するため,「鉄と鋼」第100巻特命小委員会を2012年5月に発足させ,種々準備を進めてきました。「鉄と鋼」の第100巻記念特集の1号は「鉄鋼技術,その100年の足跡」として,レビュー特集号といたしました。各工程を代表する方にお願いし,それぞれの歴史観,技術観に基づいて執筆いただきました。技術に対する評価については,十分定着したものもあれば,はっきりしないものもあります。華々しく登場しても,時代や情勢の変化のために比較的早期に消えた技術もあります。鉄鋼業はまさに時代の変化に伴って,製造プロセスを変化させてきた産業であり,鉄鋼材料の特性を向上させてきた産業です。これらを振り返ることによって,今後の我が国の鉄鋼業のあるべき姿を思っていただけたら幸いです。

2号以降は「次世代に向けた鉄鋼科学技術の変遷」を共通テーマに,それぞれの技術分野の特集号が概ね隔月で発刊される予定です。サブタイトルは,2号:資源拡大と低炭素化を目指した製銑技術,4号:製鋼の科学技術,6号:資源生産性を高める技術,7号:鉄鋼分析技術の課題と展開,9号:組織制御と材料特性,10号:材料評価技術,12号:圧延・成形加工,です。これらは数編のレビュー論文と公募論文からなります。また,巻末には「私が選んだ一編」として,「鉄と鋼」に掲載された論文や技術報告から,特筆すべき記事をその選定理由とともに紹介していただきました。1年間の長丁場ですが,会員の皆様にとって,有益な情報が提供できることを願っております。

さて,「鉄と鋼」は,現在は論文だけを掲載していますが,「ふぇらむ」が平成8年(1996年)に分冊化される以前は,論文誌と会報誌の両方を具備した月刊の総合誌として刊行されてきました。当初は,技術論文のほかに外国雑誌に掲載された論文の抄録,特許情報,さらに商況までもが掲載されており,忙しい鉄鋼技術者にとってこれ一冊あれば全てがわかると言えるほど,多くの必要な情報が提供されていたものと思われます。しかし近年,瞬時に全世界の出来事が手に取るように得られるようになり,時代が大きく変化しました。論文の形態も大きく変化してきました。第一にグローバル化です。発信は世界に対して,ということが当たり前になり,日本語では多くの人に読まれなくなりました。好むと好まざるとにかかわらず,科学技術の共通言語は英語になりました。第二にオンライン化です。日本鉄鋼協会でも2010年から「鉄と鋼」「ISIJ International」の無料公開を始めました。

日本語による表現はグローバル化にとってはハンディーを持ちますが,逆に特徴もあります。微妙な表現や国内での団結力の向上などです。この特徴を生かし,「鉄と鋼」は鉄鋼科学という学問分野,技術分野を結集し,オールジャパンで混乱の時代を生き抜くための場の提供の役割があると考えられます。また,鉄鋼業は導入技術から独自技術を発展させ,熟成させてきました。その熟成の過程で大きな役割をしてきたのが日本鉄鋼協会であり,「鉄と鋼」であると考えられます。学生や技術者・研究者を鍛える場であり,産業界のニーズを発信する場であり,またシーズの紹介の場であったはずです。この機能は今後も維持することが必要であると考えられます。これらを通して,鉄鋼科学という総合科学が発展し,我が国の鉄鋼業がますます活況を帯びることを願っております。

 
© 2014 The Iron and Steel Institute of Japan

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