Tetsu-to-Hagane
Online ISSN : 1883-2954
Print ISSN : 0021-1575
ISSN-L : 0021-1575
Introduction to Selected Papers
Introduction to “Dissection of Blast Furnaces and Their Inside State (Report on the Dissection of Blast Furnaces-1), Tetsu-to-Hagane, 62 (1976), pp.535-546 by Kenjiro Kanbara, Tomoro Hagiwara, Akitoshi Shigemi, Shin-ichi Kondo, Yuji Kanayama, Ken-ichi Wakabayashi and Nobuyoshi Hiramoto”
Morimasa Ichida
Author information
JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2014 Volume 100 Issue 2 Pages R3-R4

Details

【選定理由】

本論文で記載されている3基の高炉解体調査は,日本の高度経済成長のさなかの1960年代後半から1970年代初頭にかけて実施された。日本鉄鋼業が拡大生産に向かい,粗鋼生産量1億トンを目標にして更なる飛躍を目指していた時代である。当時の大学関係者,企業関係者を交えた高炉操業に関する議論では,個々人の経験に基づき構築された微妙に異なる高炉内イメージに立脚した千差万別な意見が交わされていたと諸先輩から聞いている。それは,高炉の炉内状態に関するイメージ(具体的には,装入された鉱石層,コークス層の降下挙動,鉱石層の溶融挙動,温度分布,ガス流れ,羽口前や炉床状態,ほか)が上記の関係者間で共有されていなかったためである。

まず東田5高炉(646m3)を昭和43年に,ついで広畑1高炉(1407m3)を昭和45年に,さらに洞岡4高炉(1407m3)を昭和46年に操業状態のまま注水冷却して炉内状況を調査した。この一連の高炉解体調査の最大の収穫は,炉内に融着層が整然と存在することであった。その融着層ができるまでは鉱石層とコークス層が明確に保たれており,炉内を降下するにつれて層厚が薄くなり傾斜はフラットになってくる。そしてその融着層は炉内の温度分布に対応して整然と分布してガス流の分布機能を有すると同時に,その分布状況や炉内における位置が高炉の操業状況により異なることであった(Fig.1)。上記の高炉内イメージが企業の操業技術者や研究者,大学関係者の間で共有され積極的な議論がなされることによって,ガス流分布を決める鉱石層とコークス層の層厚や粒度の半径方向分布を制御する装入物分布制御技術,融着帯制御技術の重要性が認識されるようになり,炉内イメージをより明確にした高炉研究が飛躍的に増大した。そして,高炉解体調査により明らかになった様々な知見が,従来の層頂(装入物表面)での粒度偏析とコークス崩れに期待したベル式装入装置の装入物制御方式に加えて,これらに期待せず異なる発想に基づいた旋回シュートによる各半径位置での装入物粒度と層厚を制御することを目的とした新しいベルレス式装入装置の実用化を後押ししたと思われる。上記の一連の高炉解体調査では,羽口先の状況や湯溜りの状況を正確に調査するため,3基目の洞岡4高炉では炉底出銑のみならず最終出銑も行わないで吹き止め,羽口先状況の保存に努めた(Fig.2)。また本研究論文に続く3連報では,炉内での焼結鉱の粒度分布や塊状帯・軟化帯・融着帯での還元性状・溶落ち性状,アルカリを含む各種成分の挙動,コークス性状が膨大なデータに基づいて綿密に調査されている。当時の製銑関係者の強烈な意気込みと壮大な夢を感じざるを得ない論文である。

Fig. 1.

 Distribution of softening-melting layers in blast furnaces.

Fig. 2.

 Vertical section in front of tuyere. (Kukioka No.4B.F.)

このような操業状態(出銑比,装入物分布)の異なる3基の高炉で壮大な実炉試験を企画実行した当時の技術者,研究者やその実施の判断を下した経営陣に対して,最大限の敬意を表したいと思う。この高炉解体調査を契機に日本の鉄鋼各社では様々な視点からの高炉解体調査が実施され,その知見をベースにして開発された中心流操業技術で日本は世界をリードした。これからも日本の製銑部隊が世界をリードするためには,もう一度当時の技術者の意気込みに思いを起こし,先進的な技術に挑戦する強い精紳力と不屈の実行力を持ち続けることであると思っている。

 
© 2014 The Iron and Steel Institute of Japan

This article is licensed under a Creative Commons [Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International] license.
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
feedback
Top