Tetsu-to-Hagane
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Reduction Potential Evaluation Index of Various Reducing Agents in Blast Furnace
Akihiko Shinotake
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2014 Volume 100 Issue 2 Pages 319-324

Details
Synopsis:

In blast furnace operation, reducing agent ratio (RAR) is an important index. The RAR is defined as only sum of weight, without considering the kind of reducing material. Here the author proposes a new reducing potential index, "ReP", which considers the difference of reducing material composition under the real blast furnace condition that gas utilization ratios (ηco, ηH2) are 50%. Namely, ReP is set as

C=3, H=0.5, O=–2, (N=0) (ReP/kmol).

This index evaluates reduction potentials of various reducing materials in a uniformed manner. Latter part of this report includes an example of blast furnace operation analysis using "ReP". Extended case studies which concern utilization of partially reduced ore, utilization of mixture of ferrous and carbonous materials, and gas utilization ratio changes far from 50%, are performed. When gas utilization ratios change from 50%, "ReP" is available if extended ReP is set as C=2+2ηco, H=ηH2, O=–2, (N=0) (ReP/kmol).

1. 緒言

高炉においては,近年コークス比(CR)低減が指向され,微粉炭比(PCR)を高める操業が進められてきている。また,長期的には,排出CO2の削減が求められるため,天然ガス,コークス炉ガス(COG),バイオマスなど各種還元材の吹き込みも実施または探索されている。高炉での還元材の使用原単位を表す指標として「還元材比」(RAR)が用いられているが,還元材比は還元材の種類にかかわらず,溶銑1tあたりの還元材(コークス,微粉炭(PC)など)の重量合計で表されている。還元材は種類によって成分が異なり,重量には還元に寄与しない灰分も含まれている。「還元材比」は工業的には原料使用量を管理しやすい指標であるが,学術的には大雑把な指標である。例えば「CR380+PCR100=RAR480(kg/t)」と「CR290+PCR200=RAR490(kg/t)」はどちらがよい操業であるか比較ができない。PCR,CRには石炭の銘柄の差も考慮されていない。PC中には酸素(O)も存在し,Oは化学的には酸化剤であって還元剤ではない。すなわち全部重量で合計するのは科学的ではない。本報では,還元材の種類の違いを考慮できる新しい還元性能評価指標を提案する。

2. 高炉における還元の化学反応

高炉において酸化鉄Fe2O3をFeに還元する反応を考える。還元剤としてCO,H2,C,CH4を考えた場合,還元の化学反応式は(1)~(4)のように表される。

   Fe2O3+3CO → 2Fe+3CO2 ……… (1)   

   Fe2O3+3H2 → 2Fe+3H2O ……… (2)   

   Fe2O3+(3/2)C → 2Fe+(3/2)CO2 ……… (3)   

   Fe2O3+(3/4)CH4 → 2Fe+(3/4)CO2+(3/2)H2O ……… (4)   

上のように考えれば,CO,H2,C,CH4の還元性能比は1:1:2:4である。しかし,高炉においては正しくない。

FeO+CO → Fe+CO2,FeO+H2 → Fe+H2O

の還元平衡(Fig.1に示すRist線図1,2,3,4,5,6)のW点)の制約から,炉頂ガス(A点)は完全酸化(全量CO2,H2Oまでの酸化)されることはなく,ガス利用率

Fig. 1.

 Reduction equilibrium in blast furnace.

co=CO2/(CO+CO2),ηH2=H2O/(H2+H2O))

は50%程度である。

そこで,ガス利用率を考慮した高炉での還元反応式を考える。

ガス利用率ηcoH2=50%と仮定すると,CO,H2,C,CH4による還元は(5)~(8)のように書き直せる。

   Fe2O3+6CO → 2Fe+3CO+3CO2 ……… (5)   

   Fe2O3+6H2 → 2Fe+3H2+3H2O ……… (6)   

   Fe2O3+2C → 2Fe+CO+CO2 ……… (7)   

   Fe2O3+(6/5)CH4 → 2Fe+(3/5)CO+(3/5)CO2+(6/5)H2+(6/5)H2O ……… (8)   

すなわち,右辺をガス利用率に合わせ,左辺と右辺に同じものがあっても約さずにあえて残した。上のように考えると,CO,H2,C,CH4の還元性能比は1:1:3:5となる。

3. 新還元性能指標RePの提案

ガス利用率がηcoH2=50%のときCO,H2,C,CH4の還元性能比は1:1:3:5であることを表現するために,新還元性能指標として,新単位ReP(Reduction Potential またはReduction Powerの意味)を提案する。

還元材分子の構成原子に注目し,各原子の還元性能を

   C=3 H=0.5 O=−2(N=0) ……… (9)   

で与え,分子の還元性能を構成原子の還元性能の合計として計算する。

還元性能の単位は,ReP/kmolで定義するものとする。

(9)式の各元素の還元性能を用いてCO,H2,C,CH4の還元性能を計算すると,

CO=1 H2=1 C=3 CH4=5(単位:ReP/kmol)

と計算され,還元性能比に一致する。

4. 各種単体物質の還元性能比較

構成原子の還元性能

C=3 H=0.5 O=−2(N=0)(ReP/kmol)

を用いて,各種単体の還元性能を比較することができる。

①基本還元材

CO=1,H2=1,C=3(ReP/kmol)

②炭化水素系(例)

CH4=5,C2H6=9,C2H4=8,C3H8=13(ReP/kmol)

③還元材でないものにも還元性能を拡張することができる。

CO2 = −1,H2O = −1,O2 = −4(ReP/kmol)

マイナスの還元性能は高炉内において酸化剤として働くことを表す。

新還元性能指標RePの化学的意味は,以下のように記述できる。

(1)高炉におけるガス利用率(ηco,ηH2)が50%のとき,COの還元性能を1としたときの,還元材の相対的な還元性能。

(2)1kmolのFe2O3を2kmolのFeに還元するために必要な還元性能が6RePであると規定される。

5. 固体,液体還元材の還元性能

還元材が単体でなく,コークス,石炭,廃プラスチック,木材チップなどのバイオマス,重油など,固体,液体の混合物質の場合の還元性能は重量あたりで計算する。

C=3ReP/kmol=3ReP/12kg=0.25ReP/kg

H=0.5ReP/kmol=0.5ReP/1kg=0.5ReP/kg

O=−2ReP/kmol=−2ReP/16kg=−0.125ReP/kg

として,還元材の組成から重量あたりの還元性能を計算する。

ただし,石炭などの場合,Oは揮発成分中の有機O(反応に関与)はカウントし,Ash中の無機酸化物O(反応に非関与)はカウントしないものとする。厳密には,Ash中にSiO2またはFeOとして存在するOは反応に寄与する分もあるが,簡単のため除外する。

ここに,各物質の還元性能を,重量あたりで定義できるように拡張した。

6. 各種還元材の還元性能比較事例

(1)石炭(高炉吹き込み用微粉炭)

成分の異なる石炭について,C=0.25 H=0.5 O=−0.125(ReP/kg)を用いて計算した石炭100kgあたりの還元性能比較をTable 1に示す。元素組成は1例である。

Table 1. Comparison of ReP of coal and coke.
CoalAsh (%)VM (%)C (%)H (%)O (%)ReP/100kgReP (Coke=1)
Coal Alow ash 0.810.490.63.5 2.424.101.10
Coal Bsemi-anthracite 8.413.083.13.9 2.722.391.02
Coal Chigh VM 8.634.977.05.1 6.820.950.95
Coal Dhigh VM 1.544.273.45.019.218.450.84
Coke(comparison)12.088.00.0 0.022.001.00

重量あたりの還元性能は,コークスに比べて,Coal A(低Ash炭):優位,Coal B(半無煙炭):同等,Coal C, D(高VM炭):劣位となる。下の例1と例2を比較すると,PCRはいずれも150kg/tであるが,還元材比が高い例2の方が還元性能としては少ないRePしか投入されていないことになる。

例1:コークス340kg+Coal B 150kg(RAR490kg/t) 108.4ReP/t

例2:コークス350kg+Coal C 100kg+Coal D 50kg(RAR500kg/t) 107.2ReP/t

異なるPCを使用する場合は,単に「PCR(微粉炭比)」「RAR(還元材比)」で比較するのではなく,溶銑t あたりの「合計投入還元性能」を還元材比と併用することを推奨したい。

(2)ガス系補助還元材

微粉炭ではなく天然ガスやコークス炉ガス(COG)を羽口から吹き込んで補助還元材として使用している高炉もある。ガス系補助還元材の還元性能の比較をTable 2に示す。Gas Eは天然ガスの主成分であるCH4ガス,Gas Fはコークス炉ガスの組成を仮定した例,Gas Gは,Gas FのCOG中に含まれるCH4等を水蒸気改質してH2含有率を高めた改質COGの組成である。

Table 2. Comparison of ReP of mixed gases.
GasCH4 (%)H2 (%)CO (%)N2 (%)ReP/kmolReP/100Nm3kg/kmolReP/100kg
Gas E100 0 0 05.0022.3216.0031.25
Gas F 3357 0102.22 9.91 9.2224.08
Gas G  07817 50.95 4.24 7.7212.31
Coke (ref.)22.00

CO=1 H2=1 CH4=5(ReP/kmol)であるから,Gas E(CH4)は5ReP/kmolあるが,Gas Fは2.22ReP/kmolとGas Eの半分以下,Gas Gは0.95ReP/kmolでさらにGas Fの半分以下となる。言い換えれば,同等の還元性能を投入するには,Gas FはGas Eの2倍以上,Gas GはGas Fの2倍以上の体積原単位が必要である。

実在する高炉の操業諸元を用いて計算した例をTable 3に示す。BF-Aは微粉炭を,BF-Bは天然ガス(NG)を吹き込んでいる高炉である。コークス,石炭,天然ガスの詳細な組成は不明であるのでそれぞれTable 1およびTable 2のCoke,Coal B,Gas Eの組成を仮定してRePを計算した。天然ガス吹き込み高炉(BF-B)は微粉炭吹き込み高炉(BF-A)に比べて重量基準の還元材比(RAR)は低いが,投入還元性能(ReP)は高くなり,RARとRePでは大小が逆転する場合があることがわかる。

Table 3. Comparison of RAR and ReP by blast furnace operation data.
CR kg/tHMPCR kg/tHMNG kg/tHMinput C kg/tHMinput H kg/tHMinput O kg/tHMash,other kg/tHMRAR kg/tHMReP/tHM
BF-A324158 0416 6455482107
BF-B395  07840620047473111

7. 高炉において酸化鉄の還元に必要な還元性能

解析を簡単にするため溶銑1tあたりFe≒950kg(残りC, Si, Mn, P, S,…)と仮定すれば,Fe 950/55.85≒17kmol(Fe2O3 8.5kmol),Fe2O3 1kmolを還元するのに必要な還元性能が6RePであるから,溶銑1t製造に必要な還元性能=6・8.5=51RePである。

O(酸素)の還元性能が−2ReP/kmolであるから,51RePは,実は8.5kmol−Fe2O3の被還元酸素量(−2*3*8.5)(符号は正負逆)を意味する。

これはRistモデルの考え方1,2,3,4,5,6)とつながっている。酸化鉄(固体)中の酸素も送風(気体)中の酸素も化学的には同じOで,排ガス中のCO,CO2の酸素がどちらから来たかを区別する必要はない。

高炉において,ガス利用率ηco=50%と仮定したとき,COおよびCによる還元反応は2章の(5),(7)式のように書き表せる。

溶銑1tあたり必要な還元材当量を計算すると,炭素(C)換算で,

   CO(1ReP/kmol)還元では,12・51=612kg−C ……… (10)   

   C(3ReP/kmol)還元では,12・51/3=204kg−C ……… (11)   

必要である。すなわち,CO還元(10)ではC還元(11)の3倍の炭素が必要である。実高炉では熱バランスが関係するため,発熱反応であるCO還元(5)と吸熱反応であるC還元(7)が高炉の熱バランスを満足するような比率で起こり,C消費量は(10)と(11)の中間の値になる。

同様にH2およびCH4による還元は2章の(6),(8)式のように書き表せる。

溶銑1tあたり必要な還元材当量は,

全量H2(1ReP/kmol)還元では,

   51kmol−H2=102kg−H2 ……… (12)   

全量CH4(5ReP/kmol)還元では,

   10.2kmol−CH4=163.2kg−CH4 ……… (13)   

必要となる。ただしこれらは還元のみに必要な物質当量であり,(6)(8)は吸熱反応であるから,熱補償分は別途必要である。

8.高炉におけるRePを用いた簡易的な物質・熱バランス解析

(1)高炉の物質バランス

高炉における簡易的な物質バランスモデルの例をFig.2に示す。コークス比348kg/t,コークス中C88%,微粉炭比150kg/t,微粉炭中C84%の操業例を示した。この例では,溶銑1t(Fe950kg)あたり,コークスと微粉炭から合計432kg-Cが投入されている。モデルの単純化のため,H2,H2O系は考えないものとする。SiO2Si,MnO→Mnなどの還元反応も省略した。

Fig. 2.

 Example of material balance of blast furnace.

ここで,酸素のバランスに注目すると,Oの還元性能=−0.125ReP/kgを用いて,インプット酸素は,酸化鉄中のO…408kg(−51Rep),送風中のO…369kg(−46ReP)である。

炭素のバランスを考えると,432kg-Cは還元性能0.25(ReP/kg)・432kg=108RePとなる。浸炭に44kg-Cが消費されているとすると,還元に51ReP,燃焼に46ReP,浸炭に11ReP使われている計算になる。

総括反応式で書くと,(8.5kmol-Fe2O3あたり)

   Fe2O3+3.8C+1.35O2 → 2Fe+1.9CO+1.9CO2(97ReP) ……… (14)   

分解すると,

   Fe2O3+2C → 2Fe+CO+CO2 (還元) (51ReP) ……… (15)   

   1.8C+1.35O2 → 0.9CO+0.9CO2 (燃焼) (46ReP) ……… (16)   

もしくは,以下のように表現することもできる。

   2.7C+1.35O2 → 2.7CO (還元ガス製造) (69ReP→23ReP) ……… (17)   

   0.45Fe2O3+2.7CO → 0.9Fe+1.35CO+1.35CO2 (CO還元) (23ReP) ……… (18)   

   0.55Fe2O3+1.1C → 1.1Fe+0.55CO+0.55CO2 (C還元) (28ReP) ……… (19)   

この他に0.43C(11ReP)が浸炭材として消費され,4.23C(Fe2O3とCのモル比)(108ReP)が使われる。浸炭分のCは転炉ガスとして排出される。

(2)高炉還元の熱バランス

酸化鉄の分解熱は,

   Fe2O3 → 2Fe + 1.5O2−820.2MJ/kmol−Fe2O3 ……… (20)   

還元性能6RePの還元材がCO=CO2,H2=H2O(mol比)まで酸化される発熱量は,

   6CO+1.5O2 → 3CO+3CO2+848.1MJ/6kmol−CO ……… (21)   

   6H2+1.5O2 → 3H2+3H2O+719.7MJ/6kmol−H2 ……… (22)   

   2C+1.5O2 → CO+CO2+528.7MJ/2kmol−C ……… (23)   

   1.2CH4+1.5O2 → 0.6CO+0.6CO2+1.2H2+1.2H2O+504.9MJ/1.2kmol−CH4 ……… (24)   

合計で書くと,(kmol-Fe2O3あたり)

   Fe2O3+6CO → 2Fe+3CO+3CO2+27.9MJ ……… (25)   

   Fe2O3+6H2 → 2Fe+3H2+3H2O−100.5MJ ……… (26)   

   Fe2O3+2C → 2Fe+CO+CO2−291.5MJ ……… (27)   

   Fe2O3+1.2CH4 → 2Fe+0.6CO+0.6CO2+1.2H2+1.2H2O−315.3MJ ……… (28)   

すなわち,CO還元は熱余剰となるが,H2,C,CH4還元は熱不足となり,熱補償が必要である。

Fig.2の物質バランスモデルで熱バランスを計算すると,Table 4のようになる。操業条件と物性値はTable 4中に記載のように仮定した。Table 4に示すように,還元以外にも銑滓の顕熱など熱が必要である。

Table 4. Heat balance in blast furnace (example).
Assumption
Blast temperature1200 °C
Exhaust gas temperature200 °C
Hot metal, slag temperature1500 °C
Sensible heat of hot metal1192 MJ/tHM
Sensible heat of slag2092 MJ/t-slag
Heat of slag formation586 MJ/t-slag
Input /tHM
C (coke) combustion heat5777.7 MJ
PC combustion heat2306.4 MJ
Sensible heat of hot blast1835.0 MJ
Heat of slag formation175.6 MJ
Total (input)10094.7 MJ
Output /tHM
FeOx reduction6975.8 MJ
Sensible heat of hot metal1192.4 MJ
Sensible heat of slag627.1 MJ
Sensible heat of exhaust gas438.6 MJ
Heat loss860.7 MJ
Total (output)10094.7 MJ

9. 還元性能RePの拡張ケーススタディー

(1)鉱石の一部が部分還元されている,または還元鉄を使用する場合

O = −2 ReP/kmol = −0.125 ReP/kg

を用いて,溶銑1tあたりの被還元酸素量から必要還元性能を計算する。

例えば,鉱石がFe3O4の場合

溶銑1t(Fe 17kmol)あたりの被還元酸素=17/3・4(kmol-O)

必要還元性能 = 17/3・4・2 = 45.3 ReP

であり,Fe2O3(51Rep)の8/9になる。(Fe2O3 = Fe6O9,Fe3O4 = Fe6O8)

(2)鉄源と還元材の混合原料を使用する場合

例えば,含炭塊成鉱,ダストペレット・ブリケット,HBI,フェロコークスなど,鉄源と還元材の混合原料を使用する場合は,以下の2つの方法がある。

(方法1)混合原料中の鉄源部と還元材部に分け,鉄源部の被還元酸素量から必要還元性能を,還元材部から還元性能を算出する。

(方法2)混合原料全体の成分分析値から,

C = 0.25ReP/kg,H = 0.5ReP/kg,O = −0.125ReP/kg

を用いて重量あたりの還元性能値を計算する。

混合物,その他の鉄源の使用原単位から,混合物を除く還元材の必要還元性能を計算する。

(3)ガス利用率が50%からずれた場合,もしくは高炉以外の還元プロセスへの拡張

ガス利用率(ηco,ηH2)が50%のとき,ガス利用率を考慮した還元反応式(5)~(8)に基づき,C=3 H=0.5 O=−2と定義して,CO = 1 H2 = 1 C=3 CH4=5(ReP/kmol)と表現できた。

これに対し,例えばガス利用率(ηco,ηH2)が60%に上昇した場合を考えると,

ガス利用率を考慮した還元反応式は,

   Fe2O3+5CO → 2Fe+2CO+3CO2 ……… (29)   

   Fe2O3+5H2 → 2Fe+2H2+3H2O ……… (30)   

   Fe2O3+(15/8)C → 2Fe+(6/8)CO+(9/8)CO2 ……… (31)   

   Fe2O3+(15/14)CH4 → 2Fe+(6/14)CO+(9/14)CO2+(6/7)H2+(9/7)H2O ……… (32)   

となり,1kmolのFe2O3を2Feに還元するのに必要な還元性能が6RePであるから,還元性能はCO=1.2 H2=1.2 C=3.2 CH4=5.6(ReP/kmol)に上昇する。

すなわち,構成原子の還元性能は,C=3.2 H=0.6 O=−2と変化する。

ガス利用率がηco,ηH2の場合に一般化すると,構成原子の還元性能は,C=2+2ηco H=ηH2 O=−2となり,CO,H2,C,CH4それぞれの還元性能は,CO=2ηco,H2=2ηH2,C=2+2ηco,CH4=2+2ηco+4ηH2(ReP/kmol)で表せる。

ガス利用率と各物質の還元性能の関係をTable 5に示す。

Table 5. Gas utilization ratio and ReP.
ηco, ηH250%60%100%
CO11.22
H211.22
C33.24
CH455.68
CO2−1−0.80
H2O−1−0.80
O2−4−4.0−4

CO,H2,C,CH4の還元性能比はガス利用率が50%のときは1:1:3:5であったが,ガス利用率が100%のときには1:1:2:4になる。これはすなわち,完全にCO2,H2Oまでの酸化反応が進行するとして記述した還元反応式(1)~(4)で示される各物質の前にかかる係数の逆数の比である。

ガス利用率が上昇した場合,溶銑1t製造に必要な還元性能(Fe2O3還元では51ReP)は変化しないが,同じ還元材でも還元性能(ReP/kmol)が上昇する。したがって還元に必要な還元材のモル数または重量は少なくてすむことになる。

10. 結言

高炉において操業指標として用いられている「還元材比」は還元材の種類を考慮せず単に重量合計で定義されているため,還元材の成分の違いを考慮できる指標として,新還元性能指標RePを考案した。

高炉におけるガス利用率ηcoH2=50%であるとき,

C=3 H=0.5 O=−2(N=0)(ReP/kmol)

重量基準では,

C=0.25 H=0.5 O=−0.125(N=0)(ReP/kg)

この指標を用いて,種々の還元材の還元性能を統一的に比較できる。

RePを用いた高炉の物質,熱バランス解析例を示した。さらに,鉱石の一部が部分還元されている場合,鉄源と還元材の混合原料を使用する場合,ガス利用率が50%からずれた場合について拡張ケーススタディーを実施し,これらの場合にもRePの概念が拡張して使用可能であることを示した。

文献
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© 2014 The Iron and Steel Institute of Japan

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