鉄と鋼
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論文
迅速X線回折法(Q-XRD)および共晶点レーザー顕微鏡を用いた焼結反応における連続冷却変態(CCT)挙動の解明
木村 正雄村尾 玲子
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2014 年 100 巻 2 号 p. 170-179

詳細
Synopsis:

In this study, the formation of calcium ferrites during heating and cooling was investigated by in situ and real-time observation using a newly developed system, i.e., in situ "quick X-ray diffraction (Q-XRD)," and an in situ laser microscope. In the new Q-XRD, a specimen was heated up to 1773 K, and X-ray diffraction patterns were measured using a pixel-array area detector with an interval as short as a few seconds. In situ observation both of crystal structure and microstructure successfully revealed the effects of heating and cooling rates on the sintering reaction in the CaO-Fe2O3 system with special attention to overheating and overcooling phenomena. The first continuous cooling transformation (CCT) concept for iron ore sintering was proposed to understand overcooling phenomena when the molten oxide cooled down to room temperature and magnetite (Fe3O4), hematite (Fe2O3), and various types of calcium ferrites were formed. The CCT diagram for sintering provides crucial and fundamental information on the sintering accompanying solidification, precipitation, and formation of calcium ferrites from the molten oxide, and can be used as a guideline for controlling sintering processes.

1. 緒言

焼結鉱は,アジア−太平洋地域のほとんどの国において高炉操業の主要な鉄源である。従って,焼結鉱の品質を常に高水準に保つことは高炉操業の上で非常に重要となる。一般に,焼結鉱の品質は焼結鉱を構成する個々の鉱物相の種類,大きさ,形状,粒度分布および鉱物相間の相互作用,さらには焼結過程で形成される微細組織等の因子に大きく影響を受ける1,2,3,4,5)。焼結鉱製造プロセスでは,鉄鉱石,石灰石フラックスおよびコークス粉を混合・造粒して得られる擬似粒子をコークス粉の燃焼反応により加熱し,コークス粉の周辺(およそ10−1mの領域)の領域を1450-1600K(CaO-Fe2O3系の共晶温度:1478Kよりも高温,Fig.1(a)参照)の温度に数分間保持して焼結鉱を得ている。Fig.1(a)にFe2O3-CaO擬2元系状態図を示す6)。融液の生成と構成物質の相互拡散,それに続く液相焼結によって鉄鉱石粒子同士の結合が進行する。Fig.1(b)に総説文献2,4,7,8,9)を基に作成した液相焼結のモデル図を示す。焼結鉱の基本組織は,鉄鉱石粒子,その表層部分が反応して形成された融着層,気孔から構成されている。融着層にはカルシウムフェライト(CaO-Fe2O3)系酸化物,多元系酸化物である四元系カルシウムフェライトsilico-ferrites of calcium and aluminum(SFCA),スラグ(CaO-SiO2)系酸化物,とこれらの固溶体などの,様々な相が含まれている2)。最終生成物である焼結鉱の組織は,焼結反応における加熱および冷却過程で様々な相が生成することに強く影響される10,11)

Fig. 1.

 (a) Phase diagram of the quasi-binary Fe2O3-CaO system6) and (b) schematic diagram of the sintering reaction on heating and cooling. (Online version in color.)

Ca-Fe-O系に見られる結晶相の安定性と結晶構造はこれまでに広く研究され,報告されている6)。Fe2O3-CaO擬二元系には3種類のカルシウムフェライト結晶相Ca2Fe2O5(C2F)12),CaFe2O4(CF)13),CaFe4O7(CF2)14)が存在する。ここでC=CaO,F=Fe2O3,およびW=FeOである。CaFe2O4(CF)は高温相で1428-1499Kの温度範囲でのみ安定である。一方,酸素分圧によってはFe2+を含むα-CFF,β-CFF,およびγ-CFF相が1323Kで生成し15),1393KではCa2Fe9O13(C2W5F2),Ca2Fe7O11(C2W3F2)16),CaFe3O5(CWF),CaFe4O6(CW2F),およびCaFe5O7(CW3F)17)が生成することが知られている。これらは,熱力学的平衡に近い条件においても生成相の種類や共存する相の割合が加熱条件や反応履歴に敏感であることを示している。

これらの研究の多くは,平衡あるいは等温条件で作成した試料や焼結体中に含まれる二元系および四元系カルシウムフェライトの相安定性に着目している(例えば,焼結反応後の評価やex situ測定による)。しかし,実際の焼結鉱製造プロセスは非平衡,非等温反応であり,具体的には,T=1473−1873Kの温度範囲を昇温過程は102s,冷却過程は2×102sオーダーの短時間で進行する。そのため,最終的に得られる焼結鉱の微細組織や含まれる相は加熱条件,特に昇降温速度,酸素分圧(PO2)などの雰囲気に影響される。反応が進む温度・ガス雰囲気中での“その場(in situ)観察”,さらに,実際の反応が進む短時間での“ダイナミック(dynamic)観察”は,非平衡条件で進行する反応のメカニズムを解明するための有効な手法の一つである。しかし,Ca-Fe-O系融液の生成を伴う反応の研究は,高温(T>1473K)かつ短時間反応(<2×102s)であるという実験上の困難があったことから,これまでほとんど行われていなかった。四元系カルシウムフェライト相の形成に関して,走査電子顕微鏡(SEM)18)およびin situ X線回折(XRD)19,20)の手法を用いて広く調査した報告がある。類似の系での研究として,溶融CaO-SiO2の結晶化過程についてホットサーモカップル(HTC)を用いて調べられている21)。但し,これらのin situ観察は,主に平衡状態における反応過程に着目しているため,実際の製造プロセスのような早い昇・降温速度条件で,非平衡条件下での反応観察を行った報告は少ない。さらに,焼結反応のメカニズム解明のためには重要であるにも関わらず,結晶構造だけでなく微細組織の変化も含めてその両方を観察した結果はこれまで報告されていない。

本研究では,(a)新規に開発した迅速X線回折法(Q-XRD)を用いた結晶構造変化のin situ & dynamic観察,(b)レーザー顕微鏡を用いた微細組織のin situ & dynamic観察の2つの手法によりCaO-Fe2O3系におけるカルシウムフェライトの生成過程をリアルタイムで調べたので報告する。また,これらの実験手法で得られた知見に基づき,焼結反応における初の連続冷却変態(CCT)曲線の概念を提案する。

2. 迅速X線回折測定(Q-XRD)システムの開発

迅速X線回折測定(Q-XRD)システムは高温反応中の結晶構造の変化をin situ & dynamic観察するために開発した。Q-XRDシステムは(a)X線源,(b)二次元ハイブリッドピクセルアレイ検出器,(c)反応炉により構成される。Fig.2にQ-XRDの光学系の模式図を示す。

Fig. 2.

 X-ray geometry of the Q-XRD system with X-ray sources of (a) a rotating-anode and (b) synchrotron radiation. (Online version in color.)

コバルトターゲット回転対陰極(λ=0.17889nm)あるいは放射光(λ=0.17889nm)を入射X線源として用いた。入射X線の波長は試料からの蛍光X線強度/回折強度比を低減すること,二次元検出器を用いて測定する回折角2θの角度範囲と分解能を考慮して選択した。回転対陰極を用いる場合,ターゲットから発生したX線はタングステン−シリコン多層膜ミラーを用い発散角度0.05°以内に擬平行化している。この人工格子の格子面間隔は平行ビームが得られるように傾斜が付けられている。典型的な入射X線のビームサイズは0.5×2.0mm2である(Fig.2(a))。

放射光を用いたQ-XRD測定は,高エネルギー加速器研究機構物質構造材料科学研究所放射光科学研究施設(KEK, IMSS, PF)のBL-6Cで実施した。入射X線はSi(111)二結晶モノクロメータで単色化し,白金コートされた円筒湾曲ミラーを用いて集光した。典型的な入射X線のビームサイズは0.5×1.0mm2である(Fig.2(b))。

Debye-Scherrer環の部分象限に相当する回折パターンは二次元ハイブリッドピクセルアレイ検出器,PILATUS®22,23)を用いて測定した。この検出器の主要な仕様は以下のとおりである;ピクセルサイズ=0.172×0.172mm2,ピクセル数487×195,有効面積=83.8×33.5mm2,カウントレート:>2×106 electron/pixel/s,読み出し時間=3ms。回転対陰極X線源を用いる場合には,試料が水平に保持されるようにX線源および検出器を配置した(Fig.2(a))。

Fig.3に(a)Q-XRDシステムの反応室および(b)加熱炉の試料周辺部の模式図を示す。反応室の中央に炉体を設置し,入射X線および散乱線を透過可能なベリリウム窓を用いた。ベリリウム窓は加熱室に接着材で接着し,窓付近は温度が約350K以下になるように水冷している。炉体の周囲は多孔質アルミナの断熱材で覆い,断熱材にはX線が透過するように窓を設けている。断熱材の窓材には入射X線のKβ線を除去するような金属箔を用いており,本研究においては,厚さ5μmのニッケル箔を使用した。

Fig. 3.

 (a) Schematic diagram of the reaction chamber in the Q-XRD system and (b) details of the heating unit around the specimen. (Online version in color.)

本システムでは粉末,ペレット,シート状など様々な形状の試料を測定可能である。試料は試料皿に充てんし,試料容器を白金製の試料ホルダーにのせて測定した。本研究における典型的な試料容器の寸法は18mm(長さ(X線幅方向))×8mm(幅)×1mm(深さ)である。アルミナの基体に白金ヒーター線を巻きつけた炉体に試料ホルダーを設置して加熱およびX線回折測定を行った。試料の加熱は,円筒状の炉体に巻き付けたヒーターと,試料台近傍(背面および両端)に巻き付けたヒーターで行い,1773Kまでの温度域で,温度勾配が数K未満で加熱可能であることを確認した。

3. 実験

3・1 試料調整

α-Fe2O3(99.99%)とCaCO3(99.99%)の試薬粉末をTable 1およびFig.1のFe2O3-CaO系擬二元系状態図中に示した組成比となるように,メノウ乳鉢とメノウ乳棒を用い混合した。Fe90Ca10は一般的な製銑プロセスで使用される典型的な焼結鉱の平均組成に相当する。Fe80Ca20は共晶組成(Fe2O3 57.2 mol.%)付近,Fe64Ca36はそれよりも高Ca濃度の領域を,それぞれ模擬している。実験に用いたα-Fe2O3とCaCO3の粒子径はそれぞれおよそ1-2および2-3μmである。これらは焼結鉱組織中の大きなFe2O3粒子の周囲に存在する付着粉層の微粉径に相当する。実プロセスにおいて,大きなFe2O3粒子(数mm)はFe2O3,CaCO3,脈石およびコークスの微粉に覆われている。融着層領域の化学組成はこれらCaOやFe2O3を含む付着粉層が局所的に見て,どの程度混合しているのかに大きく依存するが,平均組成より若干高Ca濃度のFe80Ca20は融着層が形成する領域の平均的な化学組成の代表値に近いと考えられる。

Table 1. Composition of samples for quick-XRD measurements.
SpecimensFe2O3 (mass %)CaO (mass %)
Fe64Ca3664.036.0
Fe80Ca2080.020.0
Fe90Ca1090.010.0

3・2 迅速X線回折(Q-XRD)測定

2節に述べたQ-XRDシステムを用い高温反応中の結晶構造の変化を調べた。粉末混合物あるいはペレット成型体を白金製容器に充てんし,ゴニオメータの中心に設置した加熱炉にセットした。試料は大気中で室温からT=1773Kまで昇温速度5.0×10−1K/sで加熱し,冷却速度−8.3×10−1K/sまたは−8.3×10−2K/sで673Kまで冷却した。

昇温および冷却過程における試料の結晶構造の変化は二次元検出器で観察した。リアルタイムでのin situ観察を行うため,検出器は一定の角度に固定し,角度スキャンを行わずに連続して回折像を撮影した。試料から検出器までのカメラ長を200mmに設定し,回折角2θ=23.5−46.5°にて,Debye-Scherrer環の円弧角度の範囲Δβ=10°の領域を角度分解能Δ2θ=Δβ=0.05(ピクセルサイズに依存)で測定した。回折像を撮影する典型的な露光時間は10-20秒である。

3・3 高温レーザー顕微鏡観察

微細組織の変化は米倉製作所が開発した1.5kWハロゲンランプを用いたイメージ炉に共晶点レーザー走査顕微鏡を搭載した高温レーザー顕微鏡(Fig.4)を用い,観察した。本装置ではT=1773Kまでの微細組織の変化を,最大倍率1100倍,分解能0.30μmで観察することが可能である。

Fig. 4.

 Outline of the confocal laser scanning microscope combined with an image furnace.

典型的な測定条件として,50mgの粉末混合物試料を5mmφ×5mmHの白金容器に圧粉充てんした。加熱および冷却中の雰囲気はAr/O2=80vol%/20vol%とした。試料は室温からT=1773Kまで昇温速度5.0×10−1K/sで加熱し,冷却速度−3.3K/sあるいは−8.3×10−1K/sでT=673Kまで冷却した。Ar/O2混合ガス流量は3.38×10−2Pa・m3/sとした。試料近傍のガス流れを調整することにより,試料からガスが発生する場合においても,石英ガラス窓の曇り無しに明瞭に組織像の変化を観察することが出来た。

液相からの固相析出現象を理解するには,熱平衡状態と実際の試料中の熱勾配(熱分布)から,固相の核生成・核成長反応を明らかにする必要がある。本研究では,厚さ0.5-1mmの酸化物融液を底面側から加熱し,冷却している。In situ Q-XRD測定,高温レーザー顕微鏡観察のいずれにおいても,測定領域は試料表面近傍,侵入深さ数μmの領域である。したがって,底面(酸化物融液と試料容器の界面)から表面(酸化物融液と大気の界面)の間に3-5K程度の温度勾配ができることは避けられず,さらに,白金製容器の表面粗さが核形成サイトの要因となる。従って,得られた実験結果,特に過加熱および過冷却温度は,測定試料の量にある程度影響されると考えられる。本研究での試料量は1g規模だが,実際の工業生産では1kg規模であるため注意が必要であるので,スケール因子を注意深く考慮して,反応過程,特に過冷却等の観察結果を考察した。

4. 実験結果および考察

4・1 Q-XRDを用いた結晶構造変化のin situ観察

最初に,試料容器として最適な材質の検討を行った。CaO-Fe2O3系の加熱実験では,Al2O3やZrO2などの酸化物はT=1450K以上で試料と反応するため,試料容器として適していないことが判明した。したがって,本研究では試料との反応性が低い白金製の試料容器を主に用いた。十分な量の試料を充てんし,かつX線照射位置が平滑な面になるように,特に試料の充てん方法に注意をはらった。試料の充てん量は特に重要である。なぜなら,溶融に伴い試料の体積が非常に減少し,試料面がX線照射位置からしばしば外れてしまうためである。

試料温度は試料容器側面に設置したPt-Rh熱電対で測定した。熱電対温度と試料温度のずれは,いくつかの標準物質の相転移温度をX線回折法で求めることにより校正した。さらに広い温度範囲にわたってα-Al2O3の熱膨張をX線回折で測定し,温度校正を行った(Fig.5)。熱電対で測定した温度(Tobs.)はα-Al2O3の熱膨張係数と格子定数の関係24)から推定した試料温度(Tsample)よりも30-50K低い傾向であった。300Kから1773Kの範囲で求めた相関関係(Fig.5)を用い温度校正を行った。

Fig. 5.

 Relationship between the temperature measured by the thermocouple (Tobs.) and that of the sample (Tsample), estimated from the relationship of thermal expansion data and the lattice constants of α-Al2O3 powder measured by in situ X-ray diffraction.

試料を1400K以上に加熱した場合,あるいは酸化物融液を冷却して固相を析出させた場合には,結晶粒の成長や析出が特定の結晶方位に従った結果として,しばしば結晶粒の優先配向が観察される。本研究でも酸化物融液から冷却した際にこうした現象が観察され,Debye-Scherrer環が不連続になる原因となった。こうした条件下でも回折強度を定量的に求めるために,本研究で開発したシステムでは,Debye-Scherrer環を二次元検出器で観測し, Debye-Scherrer環を円周方向に積分することにより回折強度を求めた。一例として,CaO:Fe2O3=25:75mass%試料のT=1473Kにおける回折像をFig.6に示す。得られたDebye-Scherrer環の強度は不均一であるが(Fig.6(a)),Debye-Scherrer環の円周方向に積算することにより,S/N比の高い明瞭な回折パターンが得られる(Fig.6(b))。Fig.6(c)は同じ測定条件で,検出器のみをシンチレーションカウンターに置き換え,検出器をスキャンさせて測定した回折パターンである。測定時間を20秒以下に短縮しても,より明瞭な回折像を得られることから,二次元検出器を用いた本システムが高温反応のin situ観察に非常に有用であることが明瞭である。

Fig. 6.

 (a) X-ray diffraction intensities of the specimen CaO:Fe2O3=25:75 mass% at T=1473 K measured with the area detector, (b) average intensities along the diffraction angle (2θ), and (c) intensities measured with a scintillation detector. (Online version in color.)

白金製試料容器の底面が十分な量の酸化物融液で覆われるように注意を払った(およその融液厚さ>0.3mm)。放射光をX線源として用いた場合(Fig.2(b)),試料容器を5-10°程度傾けて測定したが,酸化物融液はほとんど動かず,容器底面を覆った状態を保っていた。

4・2 昇温過程における構造の変化

昇温過程において,共晶温度以下では粒子間の固相拡散により反応が進行し,共存する相の種類と割合が変化する。したがって,これらの変化については主にQ-XRDでin situ観察を行った。Fig.7にFe90Ca10の昇温速度5.0×10−1K/sで300から1773Kまで加熱した場合の昇温過程におけるX線回折パターンの温度変化を示す。

Fig. 7.

 Temperature evolutions of X-ray diffraction patterns measured byin situ Q-XRD for Fe90Ca10 on heating from 300 to 1773 K with a rate of 5.0×10–1 K/s. Only parts of measured patterns at each temperature interval of ca. 25 K are shown in Fig.7. Patterns at the bottom show the calculated one for reference phases: α-Fe2O3 (F), Fe3O4 (WF), Ca2Fe2O5 (C2F)12), CaFe2O4 (CF)13), CaFe4O7 (CF2)14) and CaFe4O6 (CW2F)17). (Online version in color.)

この昇温速度は実焼結プロセスの1350-1600Kの温度範囲における昇温速度の1/4程度に相当する。Fig.7に25K毎に測定した回折パターンの一部を示した。図中,下段に示した回折パターンは参考試料α-Fe2O3(F),Fe3O4(M),Ca2Fe2O5(C2F)12),CaFe2O4(CF)13),CaFe4O7(CF2)14),およびCaFe4O6(CW2F)17)の計算パターンである。参考試料の回折パターンは結晶構造データを基に算出した6)

共存する結晶相の原子配列の変化はQ-XRDでの観察により明瞭に得ることが出来た。T=1355Kにおいて,固相拡散の速度が十分に早くなり,安定相のCF相が生成する。さらに昇温するとT=1513KにおいてCF相とα-Fe2O3(F)が反応し(CaFe2O4+Fe2O3→CaFe4O7),CF2相が生成する。さらに昇温するとCF,CF2およびFe2O3は互いに反応してT=1558Kにおいて液相を形成する。CaFe2O4+Fe2O3→CaFe4O7およびCaFe2O4+CaFe4O7→Liquidの反応において,過加熱温度はそれぞれΔT1c=85KおよびΔTLc=80Kであった。ここで,ΔTxYは加熱あるいは冷却条件Yにおいて,反応Xが起こる温度と平衡温度のずれの大きさ(過加熱あるいは過冷却温度)を表している。さらにT=1678KにおいてFe2O3相はFe3O4相に相転移したが,これは平衡状態よりも47K高い温度である(ΔTWFc=47K)。これらの過加熱温度は一般に昇温速度,α-Fe2O3およびCaCO3粉末の粒子サイズ,および粒子の混合状態に依存する。α-Fe2O3およびCaCO3の微粉末を十分に混合して用いた場合,過加熱温度は比較的小さくなると考えられる。

同様の観察を試料Fe64Ca36およびFe80Ca20に対しても行った。Fig.8に組成が異なる3つの試料の回折パターンの典型例を示した。Fig.9は昇温速度5×10−1K/sで300Kから1773Kまで加熱した場合のin situ XRD観察結果から求めた(a)Fe64Ca36,(b)Fe80Ca20および(c)Fe90Ca10に関する反応経路の模式図である。Fe80Ca20において,CF相はT=1443Kで生成し始める。さらに加熱するとCF相はα-Fe2O3(F)相と反応するため(CaFe2O4+Fe2O3→CaFe4O7),T>1453KにおいてCF2の量が増加した。これは平衡状態よりも25K高いことを示している(ΔT1b=25K)。CF相とCF2相の混合物はT=1490Kにおいて共融して液相を形成する。共融温度は12K高かった(ΔTLb=12K)。Fe64Ca36試料において,C2FおよびCF相がおよそT=1493Kで形成した。これは平衡温度よりも4K高い温度である(ΔT1a=4K)。C2FとCFの混合物はT=1710Kまで残存するが,温度の上昇に伴いC2F相の割合は増加傾向にあった。

Fig. 8.

 Typical X-ray diffraction patterns measured byin situ Q-XRD for specimens: (a) Fe64Ca36, (b) Fe80Ca20, and (c) Fe90Ca10 when heated from 300 to 1773 K with a rate of 5.0×10–1 K/s. (Online version in color.)

Fig. 9.

 Reaction schemes obtained byin situ Q-XRD for the specimen (a) Fe64Ca36, (b) Fe80Ca20, and (c) Fe90Ca10 when heated from 300 to 1773 K with a rate of 5.0×10–1 K/s. In Fig.9, existing phases are shown by solid lines, where horizontal and vertical directions correspond to the ratio Fe2O3/(Fe2O3+CaO) and temperature, respectively.

(a)Fe64Ca36,(b)Fe80Ca20および(c)Fe90Ca10の昇温過程での微細組織の変化を,イメージ炉に搭載した共晶点レーザー走査顕微鏡(Fig.4)を用い,昇温速度5.0×10−1K/s,温度範囲300Kから1773Kの条件で観察した。いずれの試料においても1173-1350Kの温度範囲で,炭酸カルシウムの分解反応(CaCO3→CaO+CO2)による発泡が生じていることを示唆する表面形状に変化が観察された。さらに昇温したが,溶融温度よりも低い温度ではカルシウムフェライトの形成に起因する明瞭な組織変化は観察されなかった。溶融温度に到達すると,数秒で観察視野(およそ200μm角)に溶融状態が広がり,すべての粒子が融解し融液となった。

これら三つの試料の昇温過程での反応経路を比較すると,次のような特徴があることが分かる(Fig.9)。(1)試料Fe90Ca10におけるCF2生成反応とCF2からの融液生成反応の過加熱温度はそれぞれ85K,59Kであった。一方,試料Fe80Ca20におけるこれらの反応の過加熱温度はそれぞれ25K,12Kであった。これらの違いは次のように説明可能である。Fe80Ca20において,組成が共晶組成に近く,融点が低い(T=1478K)ことから拡散は促進される。さらに,CF2相の結晶構造は複雑で,CF相と比較し,長い周期構造を持つ。そのため,CF2構造の形成にはより長い反応時間あるいは高温が必要とされる。 (2)Fe濃度の高い試料(Fe90Ca10およびFe80Ca20)において,Ca濃度の高いCF相が最初に形成した。一方,Ca濃度の高い試料Fe64Ca36ではFe濃度の高いCFが先に形成した。この結果はCaOがFe2O3中に拡散するには,より長い反応時間あるいは高温が必要であることを示唆している。

これらの反応過程は,CaO-Fe2O3系において共晶組成に近い領域では,平衡条件における融点が低いのみではなく過加熱温度も低いことを示唆している。言い換えると,Q-XRDによる観察結果は焼結反応が非平衡条件で進行する焼結鉱の量産プロセスにおいて,CaO-Fe2O3系の共晶組成に近い領域で液相が低い温度で形成することを明瞭に示している。

4・3 冷却過程における結晶構造および組織の変化

酸化物融液の冷却によるカルシウムフェライトの形成過程について,Q-XRDおよび高温レーザー走査顕微鏡を用いたin situ観察を行った。

4・3・1 試料Fe80Ca20

Fig.10は1773Kから300Kまで冷却速度(a)8.3×10−1K/sおよび(b)−8.3×10−2K/sの条件で冷却した場合の冷却過程におけるX線回折パターンの変化を示している。カルシウムフェライト(CF, CF2)およびヘマタイト(F)は酸化物融液から共晶反応(L→CF+CF2)で析出する。冷却速度−8.3×10−1K/sの場合,反応温度はT=1450Kで共晶温度よりも28K低く,冷却速度−8.3×10−2K/sの場合はT=1470Kで共晶温度よりも28K低温であった(Table 2)。高温相のCF2相はT=1428−1499Kの温度範囲でのみ安定であり,これらの冷却速度条件においては,CFとヘマタイトに分解する分解反応(CF2→CF+F)が起こるため,室温まで完全に急冷凍結することは出来ない。尚,Fig.1(a)および(b)に示すような反応で融液から析出した固相は強い結晶配向を示すため,共存相の割合をX線回折のみで定量するのは困難である。

Fig. 10.

 X-ray diffraction patterns measured byin situ Q-XRD for the specimen Fe80Ca20 when cooled from 1773 to 300K with rates of (a) –8.3×10–1 K/s and (b) –8.3×10–2 K/s, and for Fe90Ca10 with rates of (c) –8.3×10–1 K/s and (d) –8.3×10–2 K/s, respectively. (Online version in color.)

Table 2. Overcooling temperatures for phase transformations of the specimen Fe80Ca20.
Cooling rate (K/s)ΔTL → CF + CF2 / K
–8.3× 10–1–28
–8.3× 10–2–8

4・3・2 試料Fe90Ca10

試料Fe90Ca10について,Q-XRDによる観察と高温レーザー顕微鏡in situ観察を行い,得られたデータを基に焼結鉱の分野では初めての連続冷却曲線(CCT)図を作成した。Fig.10(c)および(d)はFe90Ca10について,冷却速度(c)−8.3×10−1K/s,(d)−8.3×10−2K/sの条件で1773Kから300Kまで冷却した場合の冷却過程のin situ X線回折図形である。カルシウムフェライト(CF, CF2)とヘマタイト(F)はほぼ同時に生成する(L+F→CF+CF2+F)。反応温度は冷却速度ではT=1483K,冷却速度−8.3×10−2K/sではT=1491Kであった。これらの反応温度は平衡条件での反応温度(1499K)と比較しそれぞれ−16K,−8K低い結果である(Table 3)。これらの冷却速度条件では,CF,CF2,Fのすべてが酸化物融液からほぼ同時に生成していることから,CFが融液から直接析出する反応が,T<1428Kの領域で起こると考えられる固相反応CF2→CF+F(Fig.1(a))よりも優勢であることを示唆している。また,これらの冷却速度条件では,析出したCF,CF2,Fの存在比率は室温まで冷却しても変化量が小さかった。焼結鉱の工業プロセスにおける典型的な冷却速度と比較し,本研究の冷却速度はほぼ同等のオーダーであることを考慮すると,Q-XRDによるin situ観察で得られた知見,即ち1480K−1500Kの温度領域でのカルシウムフェライト生成反応の過冷却現象が,量産プロセスで実際に得られる焼結鉱中に含まれる相の種類と割合に大きな影響を与えていると考えられる。

Table 3. Overcooling temperatures for phase transformations of the specimen Fe90Ca10.
Cooling rate (K/s)ΔTL→L+WF / KΔTL+WF→L+F / KΔTL+F→CF+CF2+F / K
–3.3–63–132
–8.3× 10–1–36–84–16
–8.3× 10–2–8–11–8

平衡状態において,L→L+WFの相変態は1733Kで起こるが,冷却速度−8.3×10−1K/s および−8.3×10−2K/sで酸化物融液を冷却した場合,それぞれ,1483K,1491Kよりも高温の領域では明瞭な回折線は得られなかった。この原因として,融液中に存在するFe3O4およびFe2O3微粒子が優勢配向し,かつその量が微量である場合には,これら析出粒子からの回折線を観測することは困難であると考えられる。実際に,Fig.10(c)および(d)に示すように,Fe3O4あるいはFe2O3の回折線は,液相共存領域(L+WFおよびL+F)では,非常に弱く,断続的にしか観察されなかった。従って,このように析出初期の微量の析出物を含む酸化物融液において,反応過程を解明するには例えば高温レーザー顕微鏡などを用いたin situ組織観察技術を併用することが重要となる。本研究では,Q-XRDによる結晶構造の変化と,高温レーザー顕微鏡による組織の変化の両方のin situ観察結果を複合して,相転移の温度を決定した。

Fig.11は冷却速度(i)−3.3K/sおよび(ii)−8.3×10−1K/sの条件で1770Kから300Kまで冷却する過程で観察した試料Fe90Ca10における組織画像の一部である。(i),(ii)の冷却速度はFig.12中に示した点に対応している。Fe90Ca10を冷却するとL→L+WFの反応により,最初に融液からマグネタイト(Fe3O4)の針状結晶が析出する。針状結晶は核から特定の角度に成長し,三角形を形成する。これはマグネタイトがスピネル型fcc構造であることと対応している。また,この結晶成長の特徴はL+WF領域において,{ hkl }={ 006 }面からの回折線が観察された結果と対応している(Fig.10(c)および(d))。マグネタイト析出反応について,冷却速度(i)−3.3K/sの場合の過冷却温度ΔTiL→L+WF,(ii)−8.3×10−1K/sの過冷却温度ΔTiiL→L+WFはそれぞれ−63Kおよび−36Kであった。各反応の過冷却温度はTable 3にまとめた。

Fig. 11.

 Typical microstructures obtained byin situ laser microscopy for the specimen Fe90Ca10, when cooled from 1773 to 300 K with rates of (i) –3.3 K/s and (ii) –8.3×10–1 K/s, where cross symbols with (i-1), (i-2), ... correspond to points shown in Fig.12.

Fig. 12.

 First continuous cooling transformation (CCT) diagram for sintering of specimen Fe90Ca10. Solid lines show the time-temperature curves for cooling rates: (i) –3.3 K/s, (ii) 8.3×10–1 K/s, and (iii) –8.3×10–2 K/s. Dotted thin lines (blue) show the temperatures of phase transformation at equilibrium: L→L+WF, L+WF→L+F, L+F→CF2+F and CF2+F→CF+F. ΔTxY denotes the overcooling temperature of the reaction X when cooled down with a rate of Y (= i, ii, or iii). Broken lines (red) show those of L→L+WF and L+WF→L+F under non-equilibrium cooling conditions determined in this study. The dotted bold line (red) shows that of L+F→CF2+CF+F under non-equilibrium cooling conditions determined in this study. Boundaries determined by laser microscopy are shown by diamonds. Cross marks show the time and temperature where typical microstructures obtained by in situ laser microscopy are shown in Fig.11. Typical conditions for industrial sintering processes are shown by the hatching area (green). (Online version in color.)

さらに冷却すると,L+WF→L+Fの変態が起き,3−8秒の間にマグネタイトの結晶が成長して,大きなヘマタイトの結晶粒子が形成される(Fig.11(i-2)および(ii-2))。が進行して大きな粒子が形成される。過冷却温度ΔTiL+WF→L+FおよびΔTiiL+WF→L+FTable 3に示す。

冷却速度が速い条件(i)−3.3K/sでは,Fig.11(i-2)に示すように,析出した結晶粒子の形状は三角形に近い。一方,遅い冷却速度条件(ii)−8.3×10−1K/sで得られる結晶の形状は比較的ランダムな傾向が見られる。これは,冷却速度が遅い場合,析出したマグネタイトの形状がヘマタイトへの相変態反応によって容易に変化し,さらに融液からの析出物が三角形の結晶粒の周囲に成長してランダムな形状の結晶を形成するためと考えられる。

さらに冷却が進行すると,固相-固相反応CF2+F→CF+Fが進行する。この反応は前述のQ-XRDにより明瞭にin situ観察されている。この反応の過冷却温度は冷却速度(ii)−8.3×10−1K/sで−16K,冷却速度(iii)−8.3×10−2K/sで−8Kであった(Table 3)。

In situQ-XRDおよびレーザー顕微鏡観察の結果より得られた焼結反応における過冷却現象は連続冷却変態(CCT図)の概念を用いて定量的に理解することが出来る。言うまでもなく,CCT図は鋼材の熱処理の分野では広く用いられている25)Fig.12に本研究で作成した焼結プロセスに関する初のCCT図を示す。試料はFe90Ca10である。冷却速度(i)−3.3K/s,(ii)8.3×10−1K/s,および(iii)−8.3×10−2K/sにおける時間−温度曲線を図中に実線で示した。平衡状態における反応L→L+WF,L+WF→L+F,L+F→CF2+F,およびCF2+F→CF+Fの反応温度を点線(青)で示した。ΔTxYは冷却速度Y(=i, ii, iii)の条件で冷却した場合の過冷却温度を示している。破線(赤)は本研究で決定した非平衡条件で冷却した場合のL→L+WFおよびL+F→CF2+CF+Fの反応温度を示している。組織観察により求めた相境界は菱型で示した。尚,十字はFig.11に示した組織観察像に対応する反応時間−温度を示している。

CCT図(Fig.12)は,次のような知見を明瞭に示している。

(1)特定の反応Xの過冷却温度(ΔTXY)は冷却速度Yが低下するに伴い,低下する。:すなわち次式の関係がある。

ΔTXi>ΔTXii>ΔTXiii

但し,(i)−3.3K/s,(ii)−8.3×10−1K/s,(iii)−8.3×10−2K/sである。

(2)同一冷却速度における各反応Xの過冷却温度ΔTXYを比較すると,次のような関係がある。

ΔTYL+F→CFx+F<<ΔTYL→L+WF<ΔTYL+WF→L+F

(1)の現象は,焼結反応経路(Fig1(b))を考慮すると全く妥当である。つまりL→L+WF,L+WF→L+F,およびL+F→CFx+Fの反応はすべて液相から固相が析出する反応であることと対応している。

(2)の現象は,3つの反応のエンタルピーの変化量,ΔHの比較により解釈できる。各反応のΔHを熱力学計算ソフトウェア(FactSage)を用い,算出した結果,L→L+WFではおよそΔH=10kJ/mol,L+WF→L+Fではおよそ5kJ/mol,そしてL+F→CF2+Fではおそよ25kJ/molと求められた。一般に,エンタルピーの変化量ΔHが小さいと,大きな過冷却温度ΔTになることが予測される。

焼結反応のCCT図から,凝固・析出,つまり酸化物融液からのカルシウムフェライトの形成反応を伴う焼結反応に関する基礎的な知見を得ることが出来る。

Fig.12に工業プロセスにおける一般的な冷却速度領域2,4,7,8,9)を網掛けで示した。この冷却速度領域では,L+WF→L+FおよびL+F→CF2+Fの反応温度の冷却速度依存性が大きい。言い換えれば,冷却温度パターンのわずかな変化で共存相の割合と最終生成物の組織が変化すると予測される。従って,目的とする組織を得るためにCCT図に基づいて,実際の焼結プロセスの温度パターンを設計することが可能である。目標とする温度パターンがわかれば,例えばコークス量や燃焼条件の制御などの手法により加熱・冷却条件を制御して焼結鉱を製造し,その組織が目的とするものに近いかどうかを確認することができる。

CCT図に基づくこうした試行実験の結果を蓄積することにより,焼結プロセスでの擬似粒子間の液相焼結の素反応メカニズムの理解が進むと考える。その結果,焼結鉱の量産プロセスにおいて,複雑にからみあう反応条件(温度, 酸素分圧,粒子間の化学組成分布など)の関係を定量的に解明し,プロセスを最適化することにつながると期待できる。

5. 結言

本研究では,加熱および冷却過程におけるカルシウムフェライトの生成反応について,迅速X線回折法(Q-XRD)および高温レーザー顕微鏡を用いリアルタイムでin situ観察を行った。

(1)Q-XRDでは試料を1773Kまで加熱することが可能であり,ピクセルアレイ検出器を用い,秒単位の短時間で回折情報を得ることが出来た。

(2)量産条件を模擬して,Fe2O3:CaO=64:36,80:20,および90:10(mass%)試料の加熱実験を行った。1773Kまで昇温速度5.0×10−1K/sで加熱し,異なる冷却速度条件−3.3K/s,−8.3×10−1K/s,および−8.3×10−2K/sで冷却を行った。反応経路は基本的には擬二元系平衡状態図から予測される反応と同様であった。さらに,結晶構造変化と微細組織変化の両方をその場観察し,特に過加熱および過冷却現象に着目することにより,CaO-Fe2O3系の焼結反応における,加熱および冷却速度の効果を初めて解明することが出来た。

(3)酸化物融液を室温まで冷却し,マグネタイト,ヘマタイトおよび何種類かのカルシウムフェライト相が生成する場合に見られる過冷却現象を解明するため,焼結鉱の反応に関する初めての連続変態挙動(CCT図)からアプローチ法を提案した。焼結反応のCCT図から凝固,析出,カルシウムフェライトの生成反応を伴う焼結プロセスに関して重要かつ基礎的な知見を得ることが出来た。CCT図を用いた知見を蓄積することにより,焼結プロセスの制御指針の提示につながることが期待できる。

謝辞

日鉄住金テクノロジー(株)の太田典明氏にQ-XRD実験の支援をいただいたことを感謝します。Q-XRDおよびレーザー顕微鏡を用いた実験は,それぞれ(株)リガクと(株)米倉製作所の技術支援のもとに実施しました。KEK,PF,BL-6Cでの実験にあたり,東京工業大学の佐々木聡博士,奥部真樹博士の支援を頂きました。なおQ-XRDの放射光実験は,当社と高エネルギー加速器研究機構との共同研究により実施されました。関係者の皆様に感謝申し上げます。

文献
 
© 2014 一般社団法人 日本鉄鋼協会

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