Tetsu-to-Hagane
Online ISSN : 1883-2954
Print ISSN : 0021-1575
ISSN-L : 0021-1575
Regular Article
Change in Temperature Dependence of Creep Rupture Life of High Cr Ferritic Steel
Kouichi MaruyamaJunya NakamuraKyosuke Yoshimi
Author information
JOURNALS FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2014 Volume 100 Issue 3 Pages 414-420

Details
Synopsis:

Conventional time-temperature-parameter (TTP) methods often overestimate long-term creep rupture life of high Cr ferritic steels. The cause of the overestimation is examined paying attention to temperature and stress dependence of creep rupture life of Gr.91, 92 and 122 steels. In stress-rupture data of all the three steels there are four regions with different values of stress exponent n for rupture life. Activation energies Q for rupture life in the regions take at least three different values. The values of n and Q decrease in a longer-term region. The decrease in Q value is the cause of the overestimation of long-term rupture life predicted by the conventional TTP methods unable to deal with the change in Q value. Therefore, before applying a TTP analysis to stress-rupture data, the data should be divided into several data sets so that Q value is unique in each divided data set. When this multi-region analysis is adopted, all the data points of the steels can be described with higher accuracy, and their long-term rupture life can be evaluated more correctly.

1. 序論

高温構造材料の許容応力は,多くの場合105 hでクリープ破壊する応力によって決められる。しかし,105 hのクリープ試験は実施困難なので,高温や高応力で105 hより短時間の試験を行ない,その結果を外挿して105 hクリープ破断強度を推定する。その際,短時間のクリープ破断時間を定式化するために,次式が広く使われている。   

tr=tof(σ) exp(Q/R T)(1)
  
tr=10C exp (g(σ) /R T)(2)

ここでtoは材料定数,f(σ)とg(σ)は応力σの関数,Rは気体定数,Tは絶対温度である。活性化エネルギーQとLarson-Miller定数Cは,破断時間の温度依存性を定量化する指標である。f(σ)とg(σ)には,次のようなlnσの多項式が使われる。   

lnf(σ) or g(σ)=a0+a1lnσ+a2(lnσ)2+a3(lnσ)3+a4(lnσ)4+a5(lnσ)5(3)

ここでa0からa5は回帰曲線と実測データが最も良く合致するように決める定数である。この応力関数は破断時間の応力依存性を記述するのに十分な自由度を持ち,この応力関数が原因で長時間強度を過大評価することはない。これとは逆に(1)と(2)式は,「解析するデータ内でQCの値が変化しない」という自由度のない仮定をしている。そのため,以下のような問題が生ずる。Fig.1は一定応力下での破断時間と温度の関係の模式図である。太い実線は実測値のデータバンド,細い実線はこのデータに対する回帰直線を示す。Fig.1(a)のように活性化エネルギーQが変化しないデータでは,回帰直線はデータバンドと一致し,回帰直線をそのまま外挿すれば,長時間の破断時間が正しく評価できる。次に,Fig.1(b)のように2つの活性化エネルギーQHQLをとるデータ領域があり,長時間側のQLが小さくなる場合を考えよう。このデータに(1)式をそのまま適用すると,細い実線の回帰直線を得る。この回帰直線を外挿すると,長時間の破断時間を過大評価する。このQ値の低下を原因とする過大評価は,オーステナイトステンレス鋼1,2)でしばしば起きてきた。そして,Ni基超合金3)でも起きることは明らかである。この過大評価を防ぐために,クリープデータの領域区分解析法1)が提案されている。この方法ではまず,その領域内では(1)式のQが一定となるように,クリープ破断データをいくつかの領域に区分する。次に,各領域毎に,(1)式を使ってクリープ破断データを定式化する。

Fig. 1.

 Correlation between data band (thick solid line) and its regression line (thin solid line) determined by Orr-Sherby-Dorn or Larson-Miller analysis of the creep rupture data. (a) Single region with activation energy Q and (b) two regions with different activation energies QH and QL.

焼戻しマルテンサイトラス組織で強化された高Crフェライト鋼でも,領域区分しないクリープデータに時間温度パラメータ法をそのまま適用すると,しばしば破断時間の過大評価が起きる4,5,6,7,8)。このことは11Cr-2.6W-0.1Mo-CoVNbロータ鋼9),9Cr-1Mo-VNb(Gr.91)鋼6,10,11)や11Cr-2W-0.4Mo-CuVNb(Gr.122)鋼12,13)でも報告されている。これらの材料でも,過大評価に対応して,長時間側で破断時間の活性化エネルギーの低下が確認されている4,7,9,12,13)。また,領域区分解析法を使えば,これらの材料でも長時間挙動を正しく評価できる7,12)

上述のことからすると,高Crフェライト鋼で長時間のクリープ破断時間を正しく評価するには,この種の鋼の破断時間の温度依存性に関する普遍的挙動を理解しておく必要がある。そこで本論文ではGr.9114,15,16),92(9Cr-1.8W-0.5Mo-VNb)17)および12218)鋼のクリープ破断時間の温度依存性を詳細に調査した。そして,3鋼種の類似点や相違点を調べるとともに,活性化エネルギーが低下する理由も検討した。このような調査は,工業的に重要な上記耐熱鋼の長時間強度を正しく評価するのに役立つと考えられる。

2. 破断時間の温度,応力依存性

2・1 Gr.91鋼

解析に使ったGr.91鋼のクリープ破断データ14,15)Fig.2(a)に示す。図には,最近報告された長時間の追加データ16)を含む。ここでは,(1)式のf(σ)としてlnσの1次式を仮定し,次式を使ってデータを解析した。   

ln tr=ln ton lnσ+Q/R T(4)

Fig. 2.

 (a) Stress and (b) temperature dependence of creep rupture lives of Gr.91 steel together with their regression lines (solid lines) determined in each region.

ここで,toは定数,nは応力指数である。Fig.2(a)から,n値の異なる4つの領域の存在が分かる。それらを次のように名付ける。

H:高応力,短時間領域(n=19)

M:中応力,短時間領域 (n=8.8)

L1:低応力,短時間領域(n=6.0)

L2:長時間領域(n=2.5)

Fig.2の実線は各領域毎にデータを解析して求めた回帰曲線であり,点線は領域間の境界である。各領域内ではn値は等しく,その値を上記カッコ内に示す。Fig.2(b)は,各領域での破断時間と試験温度の関係である。領域Hでは240 MPa,Mでは120 MPa,L1とL2では60 MPaでの回帰曲線上の値を読み図示した。図中には各領域でのQの値も示す。領域HからL1の間では,応力低下とともに,Q値が少しずつ低下する。長時間の領域L2ではQ値が非常に小さい値となる。

2・2 Gr.122鋼

Gr.122鋼(11%Cr)のクリープ破断データ18)Fig.3(a)に示す。この材料でも,n値が異なる4領域が出現する。領域H(n=16),M(8.1),L1(4.1),L2(3.5)。各領域における破断時間の温度依存性をFig.3(b)に示す。ここでも,所定の応力において各領域の回帰曲線上の値を読んで図示した。図中に,Qの値も示す。この鋼でも,低応力の領域ほど,また長時間の領域L2で,Qが低い値をとる。領域H(180MPa)では,550°Cの破断時間が,実線の回帰直線より短時間へずれている。このことは,同じ領域Hでも,長時間(低温)になるとQ値が低下する可能性を示唆する。以上から明らかなように,Gr.122鋼の破断時間の応力,温度依存性は,Gr.91鋼と基本的に同一である。

Fig. 3.

 (a) Stress and (b) temperature dependence of rupture lives of Gr.122 steel together with their regression lines (solid lines) determined in each region. The numbers explaining the marks in (a) are creep testing temperature in °C.

2・3 Gr.92鋼

Gr.92鋼のクリープ破断データ17)Fig.4(a)に示す。この鋼でも,他の鋼と類似の4領域が観察される。領域H(n=18),M(12),L1(5.9),L2(3.1)。各領域の所定応力での破断時間の温度依存性をFig.4(b)に示す。図中にはQの値も示してある。この鋼でも低応力の領域ほどQ値が低い。この鋼で特筆すべきことは,同じ領域内でも,低温(長時間)になるとQ値が低下することである。なおこの挙動は,Gr.122鋼の領域Hでも観察されている(Fig.3(b))。

Fig. 4.

 (a) Stress and (b) temperature dependence of rupture lives of Gr.92 steel together with their regression lines (solid lines) determined in each region. The numbers explaining the marks in (a) are creep testing temperature in °C.

3. Q値が変化する起源

Fig.4(b)から明らかなように,実験で求まる活性化エネルギーQ値は少なくとも3つの異なる値をとる。850 kJ/mol,650-690 kJ/mol,420-480 kJ/mol。このことは他の2つの鋼種でも同様である。高応力・短時間領域で観察されるQ値の最大値は,フェライト鋼中での格子拡散の活性化エネルギーQd(約300 kJ/mol)に比べて非常に大きい。この原因については,未だに明らかになっていない。一方,クリープ早期にラスマルテンサイト組織の熱的回復が十分に進行する領域L2では,Q値はQdに近い値となる。このようにQ値が変化する起源について,その可能性を考えてみよう。

短時間側で起きる粒内変形に律速された破壊(粒内変形に律速された粒界破壊を含む)では,破断時間は粒内変形速度に逆比例し,その活性化エネルギーQは一般にQdに近い値となる7)。長時間側で出現しうる粒界拡散に律速された粒界破壊では,Q値は粒界拡散の活性化エネルギと一致し,Qdより小さい値である7)。本研究が対象とする高Crフェライト鋼のクリープ破断データでは,Gr.91鋼の領域L2を除けば,Q値はQdと同等か大幅に大きい値となった。したがってこれらの鋼のクリープ破壊は,粒内変形に律速されていると考えられる。これらの鋼は転位クリープで変形しており,クリープ破断時間trは基本的に次式で表現される。   

tr=S(σ/E)nexp(Qd/R T)(5)

ここで,Sは組織(微細な亜結晶粒や析出物など)による強化量に依存する材料定数,Eはヤング率である。

この節では,Qdと区別するために,次式で定義され実験で求まる活性化エネルギーを,Qaと標記する。(5)式によれば,QaQdの間に次の関係がある。   

Qa=R[d ln tr/d(1/T)]=QdRT2[(1/S)(dS/dT)+(n/E)(dE/dT)](6)

組織による強化量は高温ほど減少するのが一般で,dS/dT<0である。Eも高温ほど低下する。したがって,Fig.2~4で見たようにQaQdより大きくなること自体は,十分起きうることである。

(6)式の第3項すなわちE低下の寄与は,応力指数nに比例し,nが小さくなるほど減少する。このことは領域HからL1の間で起きたQaの低下は,(6)式第3項の寄与の減少で説明できる可能性を示唆する。しかし実際に計算すると,第3項の寄与は,Qaの変化を説明するには小さすぎる。

高Crフェライト系耐熱鋼は,微細な亜結晶組織(焼戻しラスマルテンサイト)によって強化されている19,20)。そして,ひずみ誘起の回復と熱的回復による亜結晶粒径の増大が,3次クリープ域から破壊へ導く主たるクリープ損傷である13)。ひずみ誘起の回復は,どんなクリープ条件でも常に起きる。これに対して熱的回復は,亜結晶粒界の移動抵抗となるM23C6やMX粒子の凝集に支配されて進行する。そのため,クリープ中の原子の拡散距離が焼戻し中の拡散距離より短い領域HやMでは,析出物の凝集は起きず,したがって熱的回復も起きない。これらの領域で観察されるQdより非常に大きいQaの値は,ひずみ誘起の転位組織回復の温度依存性と関係しているはずである。M23C6やMX粒子のピン止め力は,ひずみ誘起の転位組織回復にも影響するであろう。高Crフェライト系耐熱鋼の状態図からすると,これら析出物の体積比は高温では減少する。したがって高温でのひずみ誘起の回復速度は拡散係数の変化から予想される以上に増加し,(5)式のSは高温ほど低下する可能性がある。このことが,領域HやMにおける大きいQa値の主原因と考えられる。但しその機構の詳細については更なる研究が必要である。

長時間の領域L1とL2では,ひずみ誘起の亜結晶組織の回復に,亜結晶組織の熱的回復が加わる13,19,20)。その結果,この長時間域では亜結晶組織の回復が早期に進み,亜結晶粒による強化がほとんど無い状態でクリープの後半部分が進行すると考えられる。このようなクリープ条件では,純金属や単相合金に近い状態になり,Sはほとんど温度依存性を持たず,dS/dTは非常に小さくなる。これが領域L2で見られるQdに近いQaの値に対応する。領域L1でも,下記の別なことが起きなければ,QaQdに近い値となるはずである。ところで状態図から予想されるように,高温になるとM23C6等の析出物の数密度が急激に減少する。その結果,時効による硬さ低下の活性化エネルギーは,領域L2では格子拡散の活性化エネルギーと同程度であるが,領域L1ではそれより大きくなる19)。このことが原因して,高温側にある領域L1Qa値は低温側にあるL2でのQa値より増大すると考えられる。

以上のように,組織による強化量(S)が高温ほど減少することがQa低下の主原因であるなら,Qaの値は大きな値からQdに近い値に向けて連続的に変化している可能性がある。但し実際上は,クリープ破断データを類似のQa値をとるいくつかのグループに領域分けすることができている。後に説明するTable 1に示すように,実験で求まるQaの値は,各鋼や各領域で特定の値ではなく様々な値をとる。これは,上述のQa値が本来は連続的に変化していることと符合しうるものである。

Table 1. Stress exponent n and activation energy Q for creep rupture life in each region of Gr.91, 92 and 122 steels
HML1L2
Gr.91n = 20
Q = 720 kJ/mol
8.9
622
5.9
618
2.4
213
Gr.122n = 16
Q = 714 kJ/mol
7.9
714
4.1
563
3.4
338
Gr.92n = 19126.13.1
Q = 659 kJ/molMS
835
ML
659
L1S
656
L1L
499
L2S
> 540
L2L
433

4. クリープ破断データの解析

4・1 領域区分解析

クリープ破断データの領域区分解析2,7,12)では,まず最初にデータを同じ応力指数nと同じ活性化エネルギーQをとるいくつかの領域に区分する。次に,(4)式に基づいて,各領域毎にクリープ破断データを回帰分析する。そして,実測データと回帰曲線が最もよく一致するように,定数tonQの値を決定する。このようにして得たGr.91鋼の領域区分解析結果をFig.5(a)に示す。ここでも,データは領域H,M,L1とL2に区分されている。実線は回帰曲線であり,隣接する2つの領域の回帰曲線のうち短い破断時間を与える方を採用してある。点線は,隣接する2つの領域の回帰曲線上の破断時間が等しくなる場所を示し,各領域間の境界となる。各領域でのnQの値をまとめてTable 1に示す。Gr.91鋼の4つの応力における破断時間と温度の関係をFig.5(b)に示す。図中の実線は回帰直線である。低温・長時間側でQ値が低下することを,この図でも確認できる。Gr.92と122鋼のクリープ破断データを領域区分解析し,結果をFig.6に,nQの値をTable.1にまとめてある。Gr.122鋼の解析結果は,Gr.91鋼の結果とよく似ている。領域H,M,L1とL2というn値の異なる4領域が出現することはGr.92鋼でも同じである。但しこの鋼では,領域M,L1とL2を,Q値が大きい短時間(S)とQ値が小さい長時間(L)領域に更に区分する必要がある。

Fig. 5.

 Stress-rupture data of Gr.91 steel together with their regression lines (solid lines) determined by the multi-region analysis. (a) Stress and (b) temperature dependence of rupture life.

Fig. 6.

 Stress-rupture data of (a) Gr.122 and (b) Gr.92 steels together with their regression lines (solid lines) determined by the multi-region analysis. The numbers explaining the marks are creep testing temperature in °C.

Fig.56から分かるように,領域区分してデータを解析すれば,回帰曲線はすべての実測値をより正しく再現する。したがって,この回帰曲線を外挿した結果も,長時間の破断時間をより高い精度で予測してくれると期待される。

4・2 σ0.2/2基準

領域区分解析では,Fig.56に示したように,クリープ破断データを同じnQの値を持ついくつかの領域に区分しなければならない。この領域区分を正しく行うには,十分な数のデータ点が必要である。しかし,十分な数のデータ点が得られないことも多く,領域区分は常に容易ではない。Kimuraら11)は,各温度で引張試験(ひずみ速度10−5s−1)をして得た0.2%耐力の半分の値を基準として,クリープ破断データを2つに区分することを提案した。このσ0.2/2基準は,領域区分が簡便に行えるという点で利点がある。彼ら11)は,Gr.91鋼のデータ14,15)のうちでσ0.2/2より低応力のデータのみを使って長時間の破断時間を予測した。一方Maruyamaら13)は,同じデータを領域区分解析の手順(Q値の変化する所で領域を区分)に従って解析し,破断時間を予測した。しかし,Kimuraらの予測結果はMaruyamaらのものよりかなり長い破断時間である。そこで,σ0.2/2という簡便な基準が外挿誤差を導入するかを検討してみよう。序論で述べたように,長時間側でQ値が低下することが,長時間の破断時間を過大評価する原因である。したがって,σ0.2/2基準には,Q値が変化する境界を予測することが望まれる。σ0.2/2基準ではQ値の異なる領域は2つのみと仮定しているが,Table 1から分かるように,実際にはQ値の異なる領域は3つ以上ある。したがって,σ0.2/2基準のみでは,Fig.5や6に出現する全ての境界は予測できない。ところで,実用的には,領域L2における破断時間の過大評価が問題であり,L2への境界が予測できれば,それだけでもσ0.2/2基準には実用的価値がある。Fig.5と6に,σ0.2/2に対応する境界を太い破線で示した。これらの境界は,3鋼種とも,L2への境界から大きくずれており,σ0.2/2以下の領域には領域L2より大きいQ値をとるデータが含まれる。したがって3鋼種のいずれにおいても,σ0.2/2基準を適用してデータを区分すると,領域L2の破断時間を過大評価することになる。これがKimuraらの予測がMaruyamaらのものより長い破断時間を予測する原因である。

Kimuraら11)は,σ0.2/2は微視的降伏応力に対応するとしている。鋼の微視的降伏応力をヤング率で規格化した値は,高温においても,負荷時のように十分に高速で変形すれば,温度にもひずみ速度にも依存しなくなる。この温度に依存しない降伏応力を非熱的微視的降伏応力σaと呼ぶ。σa以上の応力でクリープすると,負荷時に塑性変形が起き,転位組織が大幅に変化する。これに対してσa以下では,負荷時の塑性変形はなく,転位組織は変化しない。この違いのために鋼のクリープ挙動はσaを境として変化する21)。Gr.91鋼のあるヒートの非熱的応力−ひずみ曲線が文献22)に報告されている。それをFig.7に示す。横軸は負荷応力を各試験温度のヤング率Eで規則化した値であり,上の軸に450°Cでの応力を示す。文献21)に倣って0.02%耐力を非熱的微視的降伏応力σaとすれば,450°Cではσa=370 MPaである。σaはヤング率に比例するので,高温ではヤング率の低下分だけσaが減少する。したがって転位組織の回復が高温での負荷前に起きないとすれば,600°Cではσa=340 MPa,700°Cでは310 MPaとなる。これらのσaFig.5を比べれば,全てのクリープ試験はσa以下で行われていることが分かる。したがって,Fig.5(a)中に破線で示すσ0.2/2の値はクリープ挙動が変化すると予想されるσaとは一致せず,σ0.2/2がどのような微視的降伏応力に対応するのか,更なる検討が必要である。

Fig. 7.

 Instantaneous strain upon loading in creep tests of Gr.91 steel as a function of creep stress σ normalized with Young’s modulus E.

5. 結言

高クロムフェライト鋼のクリープ破断データを解析し,次の結論を得た。

(1)いずれの鋼のクリープ破断データにも共通して,破断時間の応力指数nが異なる4つの領域が出現する。これらの領域における破断時間の活性化エネルギーQは,少なくとも3つの異なる値をとる。そしてnQの値は,長時間の領域ほど低下する。

(2)Q値の変化を考慮できない時間−温度パラメータ(TTP)法を,長時間でQ値が低下するデータに適用すると,長時間の破断時間を過大評価することになる。過大評価を防ぐには,TTP法を適用する前にクリープ破断データをいくつかの領域に区分し,その領域内では(1)式の活性化エネルギーQや(2)式のLarson-Miller定数Cが一定値となるようにしておく必要がある。

(3)上記の領域区分をしたデータをTTP法で解析すれば,回帰曲線は全てのデータをより正確に表現できるようになる。したがって得られた回帰曲線は,長時間の破断時間もより高精度で評価できると期待される。

(4)高温で10−5s−1の速度で引張試験して得た0.2%耐力σ0.2の半分の値は,簡便にデータを区分できる利点はあるが,Q値が低下する境界より短時間側にあることが多い。そのため,σ0.2/2以下のクリープ破断データを使って高Crフェライト鋼の破断時間を評価すると,長時間の値を過大評価する可能性がある。

謝辞

この研究の一部は(独)科学技術振興機構からの補助(戦略的創造研究推進事業)で行われた。他は文部科学省科学研究費による補助(No.23360296)で行われた。これらの支援に感謝する。また,(独)物質・材料研究機構が高精度な長時間クリープデータを公表していることに謝意を表する。

文献
  • 1)   K.  Maruyama,  E.  Baba,  K.  Yokokawa,  H.  Kushima and  K.  Yagi: Tetsu-to-Hagané, 80(1994), 336.
  • 2)   K.  Maruyama,  H.  Ghassemi Armaki and  K.  Yoshimi: Int. J. Press. Vess. Pip., 84(2007), 171.
  • 3)   M.F.  Ashby,  C.  Gandhi and  D.M.R.  Taplin: Acta. Metall., 27(1979), 699.
  • 4)   K.  Maruyama,  K.  Sawada and  J.  Koike: ISIJ Int., 41(2001), 641.
  • 5)   H.K.  Danielsen and  J.  Hald: Energy Mater., 1(2006), 49.
  • 6)   F.  Masuyama: Proc. High-temperature Defect Assessment-5, European Technology Development, Surry, UK, (2010), CD-ROM.
  • 7)   K.  Maruyama: Creep-resistant Steels, Woodhead Publishing, Cambridge, (2008), 350.
  • 8)   K.  Kimura and  Y.  Takahashi: ASME-PVP 2012, ASME, New York, (2012), Paper No.78323
  • 9)   K.  Sawada,  M.  Takeda,  K.  Maruyama,  R.  Ishii and  M.  Yamada: Materials for Advanced Power Engineering 1998, Forshungszentrum Julich GmbH, Julich, (1998), 575.
  • 10)   H.  Kushima,  K.  Kimura and  F.  Abe: Tetsu-to-Hagané, 85(1999), 841.
  • 11)   K.  Kimura,  K.  Sawada,  K.  Kubo and  H.  Kushima: ASME PVP, 476 (2004), 11.
  • 12)   K.  Maruyama and  K.  Yoshimi: Trans. ASME, J. Press. Vess. Technol., 129(2007), 449; Proc. Creep8, ASME, New York, (2007), Paper No.26150.
  • 13)   K.  Maruyama,  H.  Ghassemi Armaki,  R.P.  Chen,  K.  Yoshimi,  M.  Yoshizawa and  M.  Igarashi: Int. J. Press. Vess. Pip., 87(2010), 276.
  • 14)   NIMS  Creep Data Sheet No. 43, National Institute for Materials Science, Tsukuba, (1996).
  • 15)   NIMS  Creep Data Sheet No.D-1, National Institute for Materials Science, Tsukuba, (2007).
  • 16)   K.  Kimura,  K.  Sawada and  H.  Kushima: Advances in Materials Technology for Fossil Power Plants, ASM International, Materials Park, USA, (2011), 732.
  • 17)   NIMS  Creep Data Sheet No. 48A, National Institute for Materials Science, Tsukuba, (2012).
  • 18)   NIMS  Creep Data Sheet No. 51, National Institute for Materials Science, Tsukuba, (2006).
  • 19)   R.P.  Chen,  H.  Ghassemi Armaki,  K.  Yoshimi,  K.  Maruyama,  Y.  Minami and  M.  Igarashi: Tetsu-to-Hagané, 96(2010), 564.
  • 20)   H.  Ghassemi Armaki,  R.P.  Chen,  K.  Maruyama and  M.  Igarashi: Mater. Sci. Eng., A527(2010), 6581.
  • 21)  K.Maruyama K.Sawada, J.Koike, H.Sato and K.Yagi: Mater. Sci. Eng., A224(1997), 166.
  • 22)   NIMS  Creep Data Sheet No.D-2, National Institute for Materials Science, Tsukuba, (2008).
 
© 2014 The Iron and Steel Institute of Japan
feedback
Top