Tetsu-to-Hagane
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Preface
Preface to the 100th Volume Memorial Special Issue on Steelmaking
Takeshi Yoshikawa
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2014 Volume 100 Issue 4 Pages 433

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巻頭言

「鉄と鋼」が第100巻を迎え,本年は第1号の「鉄鋼技術,その100年の足跡」につづき,ほぼ隔号で各技術分野の特集号が発刊されます。この4号は製鋼分野にクローズアップした特集号です。第1巻が発刊された約100年前の1915年の製鋼技術を振り返りますと,同年は第1次世界大戦勃発した翌年で,製鋼法の主体がトーマス転炉から平炉に移り変わる時期でした。「鉄と鋼」は既にインターネット公開されていますので,第1巻も常時手にすることができます。同年の製鋼関連の論文では,例えば「ミネット地方に於ける平爐法と鹽基性ベセマー法との經濟の比較」(Vol.1, No.2, 1915, 199-215)にて経済性・生産性が検討され,「轉爐製鋼作業により生ずる熱量」(Vol.1, No.5, 1915, 529-535)では排ガス顕熱の熱回収の重要性が指摘されるなど,製鋼分野の長期的な課題がこの時期から既に取り上げられています。

その後,製鋼分野は,一次精錬法が底吹き転炉法,上底吹き転炉法へ,鋳造工程が造塊法から主に連続鋳造法へと大きく様変わりし,それに加えて鋼材への品質要求に応えるべく溶銑予備処理法が開発され,二次精錬法が進化してきました。また各精錬工程は,統合・複合化を経たのちに,機能分化した分割精錬へと変わってきました。時代のニーズに合わせて日々進化する鉄鋼製錬プロセスの中でも,製鋼技術は目に見えた変化を数多く遂げてきているように思われます。高炉から送られた溶銑を整流しながら,要求品質を満たす鋼材へと進化させたうえで下工程に供給する,中継的な役割の中で,長期にわたり生産性・経済性・品質を最適化しつつ要素技術を発展させてきた製鋼分野について,変遷を振り返りつつ将来の発展へと繋げる機会となるよう本特集号を企画しました。

今号のレビュー論文4報は,高炉−転炉法に焦点を当て,現在の製鋼技術の根幹の「溶銑予備処理法」,「上底吹き転炉法」,「二次精錬法」,「連続鋳造法」について,それぞれの技術開発の経緯と研究の展開をご紹介いただく内容となっています。加えてこの4報はそれぞれ,産と学の観点を融合すること,20年先を見据えて展望と課題を挙げ,若手執筆者が将来フィードバックすることをテーマとして,企業の熟練研究者と大学の若手教員の方々に,共同執筆をお願いいたしました。

また,製鋼分野の要素技術は日々進歩し,研究・開発では計算機シミュレーション,可視化,物性制御・測定においてそれぞれ著しく進展していますので,一般論文を敢えて特定のテーマを設定せず,最新の製鋼技術やそれに関わる基礎研究について広く募集いたしました。製鋼分野の上流にあたる溶銑予備処理工程から下流の連続鋳造工程まで,各要素技術でほぼ均等の,計12報のご投稿を頂いております。「鉄と鋼」掲載論文の中で一読をお奨めする「私の選んだ一編」については,製鋼分野の熟練研究者の方々に,精錬反応,凝固,物性研究にそれぞれエポックをもたらした論文をご紹介いただいています。本特集号を纏めるに当たり高温プロセス部会と各フォーラムメンバーの皆様に多々ご支援いただきましたことをこの場をお借りして感謝申し上げたいと思います。

この製鋼分野の特集号が,製鋼技術・科学のさらなる発展へ向けた幕開けとなることを祈念いたしまして巻頭のご挨拶とさせていただきます。

 
© 2014 The Iron and Steel Institute of Japan

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