Tetsu-to-Hagane
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Evaluation of Defect Distribution in Continuously-Cast Slabs by Using Ultrasonic Scanning System and Effect of Electromagnetic Brake on Decreasing Unbalanced Flow in the Mold
Kohei FurumaiYutaka MatsuiTakeshi MuraiYuji Miki
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2014 Volume 100 Issue 4 Pages 563-570

Details
Synopsis:

In order to clarify the mechanism of suppression of unbalanced flow in the mold under high throughput conditions in continuous casting, the relationship the distribution of defects entrapped in the solidified shell was measured by ultrasonic defect detection, and the correlation between the defects distribution and the unbalanced flow in the mold when using an electromagnetic brake was investigated. The main results are summarized as follows.

(1) By using a new ultrasonic testing system, rapid and accurate measurement could be achieved for the depth of defects with diameters of more than 0.6 mm in the region 2-10 mm from the slab surface.

(2) The measured value of the effect of the electromagnetic brake on decreasing molten steel momentum was consistent with the calculated value. Molten steel momentum could be reduced by more than 50% when the Stuart number was more than 3.5.

(3) The position of entrapped defects in the solidified shell in the mold was influenced by the throughput condition and the magnetic flux density of the electromagnetic brake.

1. 緒言

連続鋳造時に凝固シェルに捕捉され,スラブ内に残存した気泡や介在物は,熱間もしくは冷間圧延時の疵発生の原因になる場合がある。近年,高生産性と高品質化の両立が要求されており,高速,高スループット鋳造時の鋳片品質を向上させることが課題となっているが,連続鋳造での高速,高スループット鋳造時には,一般的にスラブ品質が悪化する。その原因は,鋳造速度が大きいため,鋳型内の介在物浮上効果が小さく,鋳型下方へ介在物の潜り込みが生じやすいこと1)や,浸漬ノズルからの吐出流速が大きくなるため,メニスカス部の湯面変動量増大によるモールドフラックス巻き込みが起こること2)等が挙げられる。これらに対し,鋳型内で電磁ブレーキを印加することで,浸漬ノズルから吐出する溶鋼流速を低減し,鋳型下方への介在物の潜り込みやメニスカス部での湯面変動増大の抑制が可能である3)。また,二孔型の浸漬ノズルを用いた場合,浸漬ノズル内部やスライディングゲート周りに,アルミナ等の介在物が付着する等の原因により,ノズルからの吐出流速が各孔で不均等になり,鋳型内の溶鋼流動が,スライディングゲートの開閉方向(鋳型幅方向或いは厚み方向)で偏りを生じ,特に高スループット下において,偏流の程度が大きくなることが知られている4,5,6,7)。二孔型の浸漬ノズル吐出孔からの鋳型幅方向への溶鋼吐出流は短辺面凝固シェルに衝突後,分岐して上昇流および下降流となるが,鋳型幅方向で偏流が生じた場合,短辺面衝突部からの反転上昇流速が大きい領域では,鋳型内短辺近傍のメニスカス部に激しい湯面波動が発生し,メニスカス部の湯面変動の増加によるモールドフラックス巻き込み8)が起こる。また,短辺面衝突部での鋳型下方への下降流に乗った介在物は,鋳型下方へ潜り込み,鋳片内部の凝固シェルに捕捉され欠陥となる9)。流速の小さい領域では,凝固界面での介在物や気泡の洗浄作用低下により鋳片品質が悪化する懸念がある10)。操業面においても鋳型内の溶鋼偏流が大きい場合,吐出流速の大きい側での短辺面衝突部での凝固シェルの再溶解によりブレイクアウトを引き起こすことも考えられる11)。これらより,鋳型内での,溶鋼運動量低減および偏流抑制は,高生産性と高品質化を満たす上で重要な技術課題である。

これまでに,浸漬ノズル形状,鋳型内での電磁撹拌や浸漬ノズル部への電磁ブレーキによる鋳型内の溶鋼運動量低減および偏流抑制の検討が行われている12,13,14)。しかしながら,鋳型内の溶鋼運動量低減に対する電磁ブレーキの効果,鋳型内での偏流の程度と実際の鋳片内での欠陥捕捉分布との相関および偏流に対する電磁流動制御の影響等の詳細は分かっていない。

今回,鋳型内上部および下部の二段に電磁ブレーキを有するスラブ連鋳機で鋳造した鋳片内の溶鋼運動量および欠陥分布を測定し,電磁ブレーキの溶鋼運動量および偏流低減効果,鋳型内での偏流状況と鋳型内での欠陥捕捉位置の相関を評価した。

2. 超音波を用いた欠陥分布評価

緒言で述べたように,鋳型内での偏流は鋳片内に残存する欠陥(気泡や介在物)の分布に影響すると考えられる。鋳型内の偏流の影響を評価するためには,鋳片内に存在する欠陥の幅方向および鋳片表面からの深さ方向での欠陥分布の評価を行う必要がある。

本論文では,欠陥分布を評価する手法として,超音波探傷法を用いた。超音波探傷法は,超音波を試料内部に送信し,試料内部にある欠陥からの反射波を受信し,その送信から受信までに要した時間から欠陥の存在する深さ,反射信号の大きさから欠陥サイズを推定できることから,鋳片内の欠陥分布評価に適している。しかし,鋳型内から鋳型直下では,凝固シェル厚は数 mm~数10 mm程度であるため,できるかぎり表層部分に存在する欠陥分布を調査する必要があると考えられる。

極表層部に存在する欠陥を探傷するために,Fig.1に示す超音波の送信プローブと受信プローブを分割した方式を採用した。通常の超音波探傷法では,Fig.2に示すように表面からの反射波を受信することで,探傷できない範囲(不感帯)が生じる。

Fig. 1.

 Measurement principle of ultrasonic flaw detection adopted in this research.

Fig. 2.

 Measurement principle of conventional ultrasonic flaw detection.

Fig.1に示す手法は超音波の送信プローブと受信プローブをV状に配置し,さらに,各プローブ間に表面からの反射波を遮断する遮断部を設けることで,Fig.2に示した試料表面からの反射波による不感帯を抑制することが可能である。

Fig.3は超音波の送受信に要した時間から計算される欠陥深さと,実際に超音波指示部を切断して切り出し,表面から徐々に研磨して欠陥深さ位置を調査した結果との対比である。本手法により表層2~10 mmに存在する欠陥を精度よく探傷できていることがわかる。また,本手法で大きさが約0.6 mm以上の欠陥を測定できることを確認した。

Fig. 3.

 Accuracy of defect depth measured by ultrasonic flaw detection.

3. 実験方法

本試験は,鋳型内の上部および下部のコイルにより鋳型内に電磁ブレーキを印加することが可能なFCモールドが設置された連鋳機3)で鋳造を実施した。

Fig.4にFCモールドの模式図を示す。FCモールドでは,鋳型内の,上部磁極の磁場のピーク位置と下部磁極の磁場のピーク位置の間に浸漬ノズルの吐出孔が位置し,鋳型長さを1とすると,メニスカスからの距離が約0.1の位置が上部磁極の中心,約0.6の位置が下部磁極の中心である。上段ブレーキでのメニスカス流速低減および下段ブレーキでの介在物潜り込み低減効果により,スラブの高生産性と高品質化の両立が可能である15)。今回,三層式スライディングゲートを用い,開閉方向は,鋳型幅方向にし,鋳型内の浸漬ノズル(2孔型,底部がpool形状)を通しArガスを吹き込み,鋳造を行った。また,鋳造速度,鋳型幅,鋳型厚み,FCモールドの磁束密度,溶鋼成分はTable 1の条件で試験を行った。

Fig. 4.

 Schematic illustration of FC mold3).

Table 1.  Chemical composition of molten steel and casting conditions.
Slab width [mm] 1600-1700
Slab thickness [mm] 260
Casting speed [m/min] 1.2-1.7
Throughput [ton/min] 3.7-5.3
Magnetic flux density (T) 0.04-0.30
C Si Mn P Al
0.0015-0.0018 0.01-0.02 0.15-0.16 0.015-0.020 0.025-0.031

[Wt%]

鋳型内での電磁ブレーキによる溶鋼運動量低減効果を評価するために,鋳片内のデンドライト傾角を測定し,Esakaらによって提案されている(1)式16)を用いて溶鋼流速の算出を行った。凝固定数(2.58×10−3 m/s1/2)は,実鋳造時に鋳型内に鉄−硫黄合金を添加し,鋳造後の鋳片内のS濃度分布により求められた凝固シェル厚により(2)式を用いて算出し,(1)式中の凝固速度は(3)式に示す凝固シェル厚の時間変化から求めた。溶鋼流速の調査は,鋳型内での短辺衝突後の上昇流速を測定するために,鋳片短辺側からサンプルを切り出し,研磨およびピクリン酸腐食後に,顕微鏡を用いて1 mm間隔毎にデンドライト傾角を測定した。   

θ = ( 0.35 C 0 2 C 0 2 + 0.0005 + 0.65 ) 11.5 V F 0.177 log ( 5.38 10 1 V F 2.08 V ) (1)
  
D = K t = K Z / V c (2)
  
V = d D d t (3)

ここで,θ:デンドライト傾角[degree],VF:溶鋼流速[m/s],V:凝固速度[m/s],C0:炭素濃度[mass%],D:凝固シェル厚[m],K:凝固定数[m/s1/2],t:時間[s],Z:メニスカスからの距離[m],Vc:鋳造速度[m/s]

また鋳型内の偏流が欠陥分布に及ぼす影響評価は,2章で述べた超音波探傷法により鋳片内の欠陥分布測定を行った。具体的には,Fig.5に示すように,鋳造後に,全幅鋳片試料(幅1600-1700 mm)を鋳造方向に300 mm長さで採取し,採取した試料を,スラブ上面,および下面から30 mmの厚みに加工,さらに,黒皮凹凸部を除去する目的で表面1 mmを研削した。その後,大型の超音波探傷装置内に設置し,試料表面を超音波センサー(5 MHz)で,走査速度0.3 m/sでスキャンさせることにより,欠陥位置(幅方向位置,長さ方向位置),深さ,欠陥径を迅速に測定した。

Fig. 5.

 Measurement procedure of ultrasonic defect detection.

4. 数値計算方法

鋳型内溶鋼流速への電磁ブレーキの効果を考察するために数値計算を行った10)。数値計算は,汎用の流体解析プログラムFluentを用い17),乱流モデルには標準k-εモデル18)を使用した。Fluentに含まれる,質量保存式,運動量保存式(Navier-Stokes方程式),エネルギー保存則を(4)~(6)式に示す。   

v x x + v y y + v z z = 0 (4)
  
ρ [ v t + ( v ) v ] = p + η 2 v + F (5)
  
ρ [ T t + ( v ) T ] = k C p 2 T + Q C p (6)

ここで,v:速度[m/s],ρ:溶鋼密度[kg/m3],p:圧力[Pa],η:溶鋼粘性係数[0.0057 Pa・s]19)F:外力[N/m3],T:温度[K],k:熱伝導率[34 W/K/m]20)Cp:定圧比熱[753 J/kg/K]21)Q:凝固潜熱凝固界面流束[J/m3/s],x:鋳型幅方向,y:鋳型厚み方向,z:鋳造方向

凝固潜熱凝固界面流束は,エネルギー方程式から凝固界面を計算し,温度場より固相率を特定,サブルーチンを用いて粘性係数を変化させることにより,流動計算とカップリングし計算を行った。

電磁ブレーキ力の効果評価は,静磁場の外部磁場Bを設定し,(7)~(8)式を用いて計算を実施した。   

J = σ ( E + V + B ) = 1 μ × B (7)
  
B t + ( v ) B = 1 σ μ 2 B + ( B ) v (8)

ここで,J:電流密度[A/m2],E:電場[V/m],B:磁束密度[T],σ:電気伝導度[7.14×106 S/m]22),μ:透磁率[1.26×10−6 H/m]23)

5. 実験結果および考察

5・1 溶鋼運動量に対する電磁ブレーキの効果

Fig.6に鋳型内の溶鋼運動量に対する,電磁ブレーキの磁束密度の影響を示す。ここで図中縦軸は,デンドライト傾角から算出した実測運動量もしくは数値計算から求めた運動量を,(9)~(13)式で表されるImamuraら24)によって提案された,磁場の影響のない場合の運動量で除したものとしている。   

V d = γ ( 1 ζ 4 ) ( 1 ζ 3 ) 2 g [ c 2 ( h T D + l 1 ) + l 2 + l 3 ) ] (9)
  
c = 0.364 q 0.65 (10)
  
ζ 3 = 1.1 ( 1 a B ' ) 2 (11)
  
ζ 4 = 1.16 0.015 ϕ (12)
  
ρ V e = ρ V d ( X 6.3 d ) 1 (13)

Fig. 6.

 Relationship between magnetic flux density and ratio of difference of molten steel momentum in mold by eq.(11) and measured or calculated value.

ここで,Vd:浸漬ノズルからの吐出流速[m/s],γ:浸漬ノズル吐出部最大流速と平均流速の比,g:重力加速度[m/s2],hTD:タンディッシュ浴深さ[m],l1:上ノズル長[m],l2:下ノズル長[m],l3:下ノズル~浸漬ノズル内湯面間距離[m],c:浸漬ノズル内自由落下流における流出係数,q:スループット[ton/min],a:浸漬ノズル内の落下流の断面積[m2],B’:浸漬ノズル内断面積[m2],φ:浸漬ノズルの吐出角度[degree],Ve:短辺面衝突流速[m/s],X:浸漬ノズル吐出口~鋳型壁面までの水平距離[m],d:浸漬ノズル吐出口径[m]

磁束密度が小さいと,磁場の影響のない(13)式の場合と実測での運動量が同等であるのに対し,磁束密度を大きくし,電磁ブレーキを大きく作用させると実測運動量が小さくなり,電磁ブレーキを印加しない場合に比べ最大で運動量を約半減できることが確認できた。また,(13)式で与えられる運動量に対する数値計算で求めた運動量との比を見てみると,スループット4.7および5.3 ton/minの両場合において,(13)式と実測値の比によく一致することが分かった。

鋳型内で電磁ブレーキ使用時におけるNavier-Stokes方程式(5)の外力Fは,電磁ブレーキ力(ローレンツ力)であるため,式(14)であらわすことができる。   

F = J × B (14)

Fig.7にスループット5.3 ton/minの場合において,電磁ブレーキの磁束密度が,0.07 Tおよび0.27 Tの条件での数値計算のローレンツ力および流速分布を示す。電磁ブレーキの磁束密度を大きくすることにより,溶鋼に働くローレンツ力が大きくなり,鋳型短辺での溶鋼衝突運動量が低減していることが分かる。

Fig. 7.

 Calculation results of Lorentz force and flow velocity.

また,磁場の影響を与える指標である,Stuart数Nは(15)式のように外力項と慣性力項の比で与えられる23)。   

N = | σ ( v × B ) × B | | ρ ( v ) v | = B 2 σ L ρ v (15)

ここで,L:代表長さ[m]

Fig.8に,異なるスループットにおける磁束密度とNの関係を示す。磁束密度を大きくすることにより磁場の影響度が大きくなる。また,慣性力に比べ電磁ブレーキ力の影響を大きくするためには,大スループット時は低スループット時に比べ,より大きな磁束密度を印加する必要がある。このことからも,スループットの増大に応じて,適切な電磁ブレーキ力を与えることが重要であることが分かる。

Fig. 8.

 Relationship between magnetic flux density and Stuart number N.

Fig.9にStuart数と(13)式で与えられる運動量に対する実測値もしくは数値計算での運動量との比の関係を示す。図中の浸漬ノズル先端から斜めに伸びる破線は浸漬ノズル吐出孔からの溶鋼吐出方向を示す。Stuart数と(13)式で与えられる運動量に対する実測値もしくは数値計算での運動量との比に相関があり,Stuart数が大きいほど鋳型内での電磁ブレーキによる運動量低減効果が大きいことが分かる。今回の結果より,異なるスループット,磁束密度条件においてもStuart数を約3.5以上になる磁束密度を印加すれば電磁ブレーキが無い場合に比べ鋳型内の溶鋼運動量を,約50%低減できると考えられる。

Fig. 9.

 Relationship between Stuart number N and ratio of difference of molten steel momentum in mold by eq.(11) and measured or calculated value.

5・2 鋳型内での偏流

Fig.10に今回の実験材の鋳片中において,超音波探傷法で指示があった欠陥部の走査型電子顕微鏡像およびエネルギー分散型X線分光測定結果の例を示す。介在物組成は,アルミナもしくはモールドフラックスの組成であり,鋳片内に残存した欠陥は,いずれも気泡を伴い,気泡内にアルミナもしくはモールドフラックスが付着している2種類の欠陥であった。これらより,欠陥は,メニスカス部の湯面変動増大により,溶鋼内に巻き込まれたモールドフラックス,もしくは溶鋼中のアルミナが浸漬ノズルを通し鋳型内に吹き込んだAr気泡と衝突した後に,鋳型内の凝固シェルに捕捉されたものと考えられる。

Fig. 10.

 Defect investigation by SEM image and SEM-EDX.

次に超音波探傷法により鋳片内の欠陥分布を測定した結果から,鋳片表面から欠陥部までの欠陥深さを,鋳型内での欠陥捕捉位置(メニスカスからの距離)に置き換えて,プロットしたものを,Fig.11に示す。鋳型内での鋳造方向位置は,鋳片内の欠陥深さ位置から(16)式を用い,メニスカスからの距離に換算した。   

Z = V c ( D k ) 2 (16)

Fig. 11.

 Position of surface defects in investigation of cast slab.

鋳型内での電磁ブレーキの磁束密度を一定にした時の,スループット4.2 ton/minおよび4.6 ton/minの場合で比較すると,鋳型内での欠陥捕捉位置分布が大きく異なっており,スループット4.6 ton/minの場合,鋳型内で欠陥捕捉の分布が幅方向で偏っている。これらのスループットの違いにより欠陥捕捉位置が大きく異なっていることから,鋳型内の流動状況も異なっていることが考えられる。

鋳型内左右で欠陥個数に差が出る原因を評価するために,電磁ブレーキの磁束密度を0.17 T一定にした場合の,鋳型左右短辺での溶鋼衝突部における溶鋼上昇流速をデンドライト傾角から算出し,鋳型内両短辺での溶鋼上昇運動量差,即ち鋳型内幅方向での偏流の程度と,スループットの関係を調べた結果をFig.12に示す。スループットの増加に伴い鋳型内の溶鋼運動量差が大きくなっていることが分かるが,これは,磁束密度を一定にしたため,スループットの増大と共に鋳型内の偏流の度合いが大きくなったためと考えられる。

Fig. 12.

 Difference of molten steel momentum on left and right sides of mold.

鋳型内の偏流は,スライディングゲート起因で発生する場合があることがこれまで知られている。Fig.13に,Kuboら4)によるスライディングゲート起因による,2孔浸漬ノズルの左右のノズル吐出孔からの,それぞれの吐出流速の計算結果を示す。Fig.13に示すように計算に用いられている,スライディングゲートは3層式,浸漬ノズルは2孔型の底部がpool形状であり,これらは今回の実験と同条件である。計算結果から,これらのスライディングゲートおよび浸漬ノズルを用いた場合,スライディングゲート開方向の浸漬ノズル吐出孔からの流速の方が大きい傾向が得られている。これは,今回の実験と同様の結果であり,偏流の起因はスライディングゲートであると考えられる。

Fig. 13.

 Schematic diagram of submerged entry nozzle (SEN) and velocity profile at SEN port4).

今回,幅方向の偏流を評価するために,鋳型内幅方向を2分割(以下,鋳型内左および右と呼ぶ)し,欠陥分布および溶鋼流動評価を行った。鋳型内の凝固シェルに捕捉される,幅方向の欠陥の偏在度合いを定量的に評価するため,(17)および(18)式で示す,鋳型幅方向左右で捕捉された欠陥の個数密度差を欠陥偏在度と定義した。   

A = | N R N L | N 100 (17)
  
N = N R + N L (18)

ここで,A:欠陥偏在度[%],N:全欠陥個数密度[個/m3],NR:鋳型内右側で捕捉された欠陥個数密度[個/m3],NL:鋳型内左側で捕捉された欠陥個数密度[個/m3]

欠陥個数は超音波探傷法での測定結果を用いた。

Fig.14に鋳型内左右の溶鋼運動量差と欠陥偏在度(メニスカスから200 mm以内)の関係を示す。鋳型内での溶鋼運動量差が大きい程,欠陥偏在度も大きく鋳型内の欠陥分布は,溶鋼運動量に大きく影響されることが確認できた。

Fig. 14.

 Relationship between difference of momentum of rising flow at left and right mold narrow sides and degree of unbalanced distribution of defects.

これらの,鋳型内の欠陥偏在度を抑制するには,鋳型内の溶鋼運動量を低減することが重要であり,Fig.9に示すようなStuart数で整理可能なスループットに応じた適切な電磁ブレーキ力を印加し,溶鋼運動量を低減することが有効であると考えられる。

5・3 湯面変動への電磁ブレーキの効果

高スループット条件で鋳造する場合,溶鋼メニスカス流速増大と共に湯面変動量が大きくなり,モールドフラックスが溶鋼中に巻き込まれ凝固シェルに捕捉される結果,鋳片品質が悪化することが懸念される。特に,鋳型内で溶鋼流動に偏流が有る場合は,偏流により鋳型内でメニスカス流速が大きい箇所が発生し,モールドフラックスの巻き込み影響が大きくなることが考えられる。今回,湯面変動量に対する電磁ブレーキの影響を評価した。Fig.15にStuart数と湯面変動量の関係を示す。溶鋼運動量と同様にStuart数を大きくすることにより,湯面変動量を低減可能であることが確認できた。これは,スループットの増大に応じて電磁ブレーキ力を大きくすることで鋳型内の溶鋼運動量を低減できたためと考えられる。

Fig. 15.

 Relationship between Stuart number N and mold level fluctuation.

6. 結言

電磁ブレーキによる,鋳型内での溶鋼運動量低減効果および溶鋼偏流抑制効果を評価し,以下の知見が得られた。

(1)極表層部に存在する欠陥を測定するために,送信プローブと受信プローブをV字状に配置し,さらに,各プローブ間に表面からの反射波を遮断する遮断部を設けた超音波探傷法により,欠陥径約0.6 mm以上,鋳片サンプル表皮下2-10 mmの欠陥分布を迅速に測定可能となった。

(2)鋳型内の電磁ブレーキによる溶鋼運動量低減効果は,実測値と数値計算値でよく一致した。また,電磁ブレーキによる運動量低減効果は,異なるスループット,磁束密度条件においても外力項と慣性力項の比であるStuart数で整理可能であり,Stuart数が3.5以上になるように電磁ブレーキ力を印加することにより,溶鋼運動量を50%以上低減可能であった。

(3)鋳型内の凝固シェルに捕捉される欠陥分布は,スループットと電磁ブレーキの磁束密度に大きく依存し,鋳型内の欠陥偏在度は,鋳型内の運動量差と相関があることが分かった。また,モールドフラックスの巻き込みに影響するメニスカス部の湯面変動量も溶鋼運動量と同様に,異なるスループット,磁束密度条件においてもStuart数で整理可能である。

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