Tetsu-to-Hagane
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Effects of Ash Amount and Molten Ash’s Behavior on Initial Fe-C liquid Formation Temperature due to Iron Carburization Reaction
Ko-Ichiro OhnoShohei TsurumaruAlexander BabichTakayuki MaedaDieter SenkHeinrich Willhelm GudenauKazuya Kunitomo
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2016 Volume 102 Issue 12 Pages 677-683

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Synopsis:

In the current trend, a low carbon operation of blast furnace is going to make liquid permeability severe condition due to thinning of coke layer around cohesive zone. An iron carburization reaction is one of the most important reactions at the cohesive zone, because an enhancement of the reaction has a positive possibility to improve a metal dripping behavior from cohesive zone. Although it is thought ash of carbonaceous material has a negative effect on the reaction, there is not enough correctly focused knowledge on behavior of the ash in iron carburization reaction. In this study, several kinds of carbonaceous material samples with ash remove treatment by acid solution were prepared. The carbonaceous material samples were applied for “in-situ” observation of molten iron formation behavior due to iron carburization reaction under a constant heating rate condition with inert gas atmosphere. It was found that the acid treatment decreased not only amount of the ash in the carbon samples but also Na concentration of the ash. Decreasing of ash content in carbonaceous material decreased initial Fe-C liquid formation temperature because obstruction on reaction area of iron carburization reaction was decreased. Decreasing of Na content in ash caused changing of molten ash’s properties, increasing of melting temperature and decreasing of wettability to iron and carbon. In case of without the acid treatment, it was thought molten ash could behave as a barrier at a reaction interface of iron carburization due to good wettability from lower temperature than initial Fe-C liquid formation temperature.

1. 緒言

製鉄プロセスにおいて炭材は,熱源,鉱石還元のための還元剤,浸炭反応のための炭素源など,様々な重要な役割を担っている。グリーンエネルギーとして注目を集めている水素を,炭材の代替原料として製鉄利用する可能性も見出されているが1,2,3,4,5,6),炭材が担っている全ての役割をとって変わることは出来ない。その最も大きな理由の一つに鉄の浸炭反応が挙げられる。この反応は炭素源無しには進行せず,製鉄プロセスにおける炭素使用量を削減させるためには,浸炭反応そのものを効率良く進行させるのに効果的な炭材が必要不可欠である。

浸炭反応効率の向上は,融着帯底部における溶鉄の分離・滴下挙動を直接的に改善することができると考えられる。CO2排出量制限の厳格化により,これまで以上の低炭素操業が求められた際には,溶鉄の融着帯からのスムーズな滴下が,最も重要な高炉操業因子の一つとなりうる。高炉における低炭素操業はすなわちコークス層の薄層化を意味し,高炉融着帯近傍における通液性に深刻な影響を与える7)。融着帯からの溶鉄のスムーズな分離滴下を行うためには,より低い温度からの迅速なFe-C融液の生成が必要不可欠であり,浸炭反応の高効率化が強く求められる大きな理由の一つである。

製鉄プロセスにおける浸炭反応は様々な研究者8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18)によって調査されてきた。浸炭反応における炭素源は基本的には金属鉄と直接接触するコークス,もしくはそれを取り囲む浸炭性のガスであると考えられてきた。反応速度論的な比較を両者で行った結果から,高炉内反応においては直接接触による浸炭反応が支配的であると報告されている8)。このことから,浸炭反応の高効率化には直接接触による浸炭反応に適した炭材が必要であると言える。

前報9)から,炭素の結晶構造は浸炭反応に明確な影響を与えることが明らかとなり,炭素結晶性の低い炭材ほど浸炭反応に有利であることがわかった。さらに,炭材中灰分が浸炭反応に対して大きな影響を与える可能性も示唆されている。これまでにも浸炭反応に灰分が与える影響に注目した報告11,12,13,14,15,16,17,18)は多くなされてきたが,それらの考察はコークス,石炭,グラファイトなどの異種炭材間での比較をベースとしたものであり,灰分以外の要素(特に炭素結晶性など)が与える影響を排除したものとはなっていなかった。そこで,炭素結晶性を変化させずに灰分の影響のみに注目することを目的として,同一の木炭に灰分除去処理を加えた試料による検討18)も行っている。その結果から,木炭の灰分量は一般的には非常に低いと考えられているにもかかわらず,微量の灰分も明らかに浸炭反応に影響を及ぼすことが明らかとなった。

本報においては,炭材中灰分が浸炭反応に影響を与える機構を明らかにすることを目的として,炭材中灰分含有量とその溶融挙動が及ぼす影響についての調査を行った。

2. 実験方法

炭材中灰分が浸炭反応に及ぼす影響を調査するために,本研究では不活性雰囲気中等速昇温条件下において,浸炭反応に伴うFe-C初期融液生成挙動の直接観察を行った。

本研究においては以下の4種類の炭材を用いた。灰分を含まない炭材として黒鉛粉を,灰分を多く含む炭材としてコークス粉を,コークスよりも灰分含有量が少ない炭材として2種類の木炭粉を用意した。全ての炭材は,粒径が45-75 μmとなるように粉砕・整粒した。コークス粉と木炭粉はHCl溶液とHF溶液に所定時間浸漬し灰分除去処理18)を行った。灰分減少量はJIS M 8812に基づき1088 K大気中で燃焼させ重量法により測定した。酸処理後の灰分除去量はFig.1に示すように,処理時間に依存することがわかった。

Fig. 1.

 Relationships of each carbonaceous materials between ash residue amounts and acid treatment duration.

灰分処理前後の灰分組成分析はX線回折分析装置(Multiflex,リガク製)および,蛍光X線分析装置(EDX-800HS,島津製作所製)により行われた。Fig.2に灰分のX線回折パターンを示す。木炭灰はその残留量が非常に少なく,その回収は困難であったため,ここではコークス灰組成についてのみ検討を行った。灰分処理前後のコークス灰の比較を行った結果,鉱物相はその前後で変化しないことがわかった。

Fig. 2.

 X-ray diffraction patterns of ashes.

Table 1には,蛍光X線分析から見積もられた,コークス灰と木炭灰のCaO-SiO2-Al2O3-Fe2O3-MgO五元系の灰組成を示す。木炭灰にはMgOが含まれることがわかった。コークス灰は灰分除去処理によって,Fe2O3成分が減少しAl2O3成分が増加する傾向を示したが,灰分の主成分であるSiO2成分量は変化しなかった。このSiO2成分の安定性とX線回折分析の結果から,本研究における灰分除去処理の前後では,灰分の主要成分は変化しないものと仮定した。NaやKなどのアルカリ金属は,灰分中に含まれる微量成分として知られており,それらは灰分の溶融挙動に対して顕著な影響を与えると考えられている。灰分中のNa含有量を測定することを目的として,本研究ではさらにICP発光分析装置(ICPS-1000IV,島津製作所製)を用いた分析を行った。灰分処理前後のコークス灰をHCl溶液とHF溶液を用いて溶解し,その水溶液をICP発光分析に供した。その結果,処理前のコークス灰中にはNa2Oとして0.519 mass%が含まれ,処理後灰分中からNaは検出されなかった。このNa量の変化はコークス灰の溶融挙動に大きな影響を与えると考えれるため,以下の検討を行った。

Table 1.  Ash compositions of coke and charcoal evaluated by XRF (mass%).
CaO SiO2 Al2O3 Fe2O3 MgO
Coke without acid treatment 13.4 45.2 10.0 31.4
Coke with acid treatment 10.5 47.4 27.1 15.0
Oak’s charcoal  76.06   0.75   5.43 17.8
Eucalyptus’s charcoal 44.4   3.39   5.33   8.12 38.7

赤外線イメージ加熱炉を備えたレーザー顕微鏡19)を用いて,コークス灰の溶融挙動の直接観察を行った。5 mgコークス灰をステンレス製の金型を用いて,3 mmφ×0.5 mmのタブレット状に成型した。灰タブレットはPtルツボ(5 mmφ×3 mm)内に装入し,そのルツボは赤外線イメージ加熱炉内部のPt製試料ホルダーに設置した。試料はAr雰囲気下で1323 Kまで60秒で急速昇温し,その後50 K/minで等速昇温での加熱を行った。

炭材の主要構成成分は一般に,固定炭素,灰分,揮発成分である。前報9,18)では,固定炭素の炭素結晶構造が浸炭反応において顕著な影響を持つことが明らかとなった。本研究では,灰分および固定炭素の影響のみに注目するため,本研究で用いた全て炭材の揮発成分はAr雰囲気下1273 Kで3600秒間の熱処理を行うことで除去した。

前報9)と同様に,揮発分処理後炭材の炭素結晶構造はFig.3に示すようにラマン分光分析(Xplora,堀場製作所製)によって評価した。これらのスペクトルは1580 cm−1および1360 cm−1付近に特徴的な二つのピークを持ち,それぞれG band,D bandとして知られている。G bandは黒鉛構造に起因するピークであり,D bandは黒鉛構造の欠陥に関連するピークである。さらに,これらの2つのピークの谷の部分には,ランダム構造に起因するピークが隠れているとことが知られている。本研究では炭素結晶構造の評価指標として,Fig.3に示すように,この谷部とG bandの強度比IV/IGを前報同様に採用した。IV/IGは黒鉛構造の不完全さを示す指標20)である。前報18)同様,炭素結晶構造は灰分処理によって明確な変化は現さなかった。

Fig. 3.

 Raman spectra of carbonaceous materials with IV/IG values.

本研究においては高純度鉄薄膜を鉄試料として用意した。その純度は99.99%であり,厚さ0.3 mmの薄膜を3 mm四方に切断したものを試料として供した。この鉄試料は浸炭反応に伴う初期Fe-C融液生成挙動の直接観察,および灰分除去処理を行ったコークス灰と行わなかったコークス灰の鉄に対する濡れ性の比較検討に用いた。同様に純度99.99%の黒鉛板も溶融コークス灰の黒鉛に対する濡れ挙動を観察するために用意した。直径3 mmの円板状で厚みは0.3 mmとした。濡れ性を評価する鉄および黒鉛試料はその表面荒さを統一するために,1 μmのダイアモンドペーストを用いて研磨したものを用いた。

浸炭反応によるFe-C初期融液生成温度は,赤外線イメージ加熱炉を備えたレーザー顕微鏡による直接観察19)によって測定された。この実験装置では,試料を急速加熱することによって,対象の温度以下の影響を極力排除することが可能である。0.1 mgの各炭素試料を鉄薄膜試料の上に乗せ,Fig.4に示すようにアルミナ坩堝内に装入した。試料を装入したアルミナ坩堝は,200 ml/minの精製Ar流通下において赤外線イメージ加熱炉内のPt製試料ホルダーに設置した。対象温度以下の影響を排除するために1323 Kまで60 sで急速昇温した後,50 K/minで等速昇温しながらFe-C初期融液生成挙動をレーザー顕微鏡を用いて直接観察した。

Fig. 4.

 Schematic illustration and photograph of sample for direct observation of initial Fe-C liquid formation behavior.

浸炭反応時の鉄試料と炭素試料の反応界面の挙動に注目するために,急冷試料を作製した。試料は所定の温度まで加熱された後,赤外イメージ加熱炉の電源を切ることによって急冷した。この操作によって,試料は1000 K/min以上の冷却速度で急冷された。急冷試料は樹脂に埋めこんだ後,Fig.4に示すように反応界面が観察可能な断面で切断し,1 μmのダイアモンドペーストを用いて研磨を行った。急冷後試料断面では,エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX500,島津製作所)を用いて,反応界面近傍における灰分の分散状態の分析を行った。

溶融灰の鉄と炭素に対する濡れ挙動を簡易に見積もるために,鉄板上と黒鉛板上における灰分の溶融挙動の直接観察をそれぞれ行った。浸炭反応の実験にも用いた鉄薄膜は本実験においての鉄基板として用いた。黒鉛板も前述のように研磨したものを黒鉛基板として用いた。灰試料としては灰分除去処理前後のコークス灰を15 mgずつ用いて,直径3 mm高さ1 mmのタブレット状に圧粉整形したものを用いた。灰タブレット試料は鉄または炭素基板上に設置し,それらをアルミナ坩堝内に装入した。本試料は1473 Kまで60 sで急速加熱し120 s保持した後,浸炭実験と同様の方法で急冷した。

3. 結果と考察

Fig.5にレーザー顕微鏡による浸炭反応の直接観察結果の一例を示す。初めに,Fe-C初期融液の生成に伴う鉄試料表面の変化が生じる。そしてFe-C融液量は鉄試料上で徐々に増加する。このFe-C初期融液の生成開始が観察された温度のことを,本研究では浸炭反応による初期融液生成温度と定義した。

Fig. 5.

 Sequential laser micrographs of initial Fe-C liquid formation behavior between Fe plate and carbonaceous materials.

炭素試料中の灰分量と,初期融液生成温度の関係をFig.6に示す。灰分含有量が少ない試料ほど,低い温度からFe-C融液が生成している。また,4種類の炭材間で炭素結晶構造による影響も明確に表れている。

Fig. 6.

 Relationship between ash content in carbon samples and initial Fe-C liquid formation temperature.

Fig.7に初期融液生成温度に及ぼす炭素結晶構造の効果を示した。炭素結晶構造の影響について注目し易くするために,Fig.6において各炭材において最も灰分含有量が少ない実験結果を本図中にまとめた。横軸の値はIV/IGであり各炭材試料の炭素結晶性の不完全性を示す指標である。この結果から,炭素結晶性が低い炭素試料ほど,Fe-C融液は低温から生じており,前報における報告9,18)と同じ傾向を示した。

Fig. 7.

 Relationship between IV/IG value and initial Fe-C liquid formation temperature.

これらの結果から,灰分含有量が少なく,炭素結晶性の低い炭材を選択することが,直接接触による浸炭反応を向上させる上で重要であることがわかった。

灰分の初期融液生成温度をFig.8に示すような直接観察画像から測定した。灰分除去処理によって灰分初期融液生成温度は1413 Kから1457 Kへと上昇していた。Fig.9にはNa含有量がコークス灰から減少した際の液相率の変化をFACTSAGE21)によって計算した結果を示した。本計算においては,次に示す仮定をおいた;灰分処理後の灰組成はTable 1のCaO-SiO2-Al2O3-Fe2O3四元系から見積もることとする。灰分処理前の灰組成はCaO-SiO2-Al2O3-Fe2O3-Na2O五元系とし,その組成は灰分処理後灰組成のCaO-SiO2-Al2O3-Fe2O3四元系に0.519 mass% Na2Oを加えたものとした。この計算結果からもNaは灰溶融温度に明らかに影響を及ぼしていることがわかった。

Fig. 8.

 Laser micrographs of initial melts formation from (a) ash without the acid treatment and (b) ash with 48 h the acid treatment.

Fig. 9.

 Comparison of calculated phase diagrams from FACTSAGE.

浸炭反応の反応界面における灰の挙動について詳細な調査を行うために,Fe-C初期融液が生成するより50 K低い温度で急冷した試料を作製した。Fig.10には,灰分除去処理を行った場合と行わなかった場合の断面写真およびEDSマッピングの比較を示した。この解像度では灰分除去処理後試料断面には灰分は見当たらないが,処理を行わなかったコークス試料中には灰分粒子が観察された。反応界面に灰分が存在する場合,鉄炭素間の反応界面積を減ずるため,浸炭反応には悪影響を与えると考えられる。しかしながら,灰分による反応界面積の減少量は小さく,その効果のみでは説明はできないと推察される。Fig.8で示したように灰分除去処理を行わなかった灰分は,より低い温度で溶融している。この溶融灰が反応界面で液膜による障壁を形成することによって悪影響を及ぼしている可能性が示唆される

Fig. 10.

 Comparison of cross-sectional photographs and results of EDS mapping analysis between acid treated coke and non-treated coke.

Fig.11に灰分除去処理を行った灰と行わなかった灰の鉄および炭素基板上における急冷試料を示す。灰分除去処理を行わなかった試料は両基板上ともにより良い濡れ性を示した。Naは灰分の溶融温度のみならず溶融灰の融体物性にも顕著な影響を及ぼすことが報告されている。特に,溶融酸化物の表面張力はNa含有量に強い依存性を示し22,23,24),Naは表面張力を減少すると考えられている。

Fig. 11.

 Comparison of molten ash wettability to iron and graphite between with acid treatment and without acid treatment.

濡れ挙動は式(1)に示すYoungの式に基づいた,固体,液体,およびその界面の表面張力のバランスにより決定されると考えられている。   

σ gs = σ ls + σ gl cos θ (1)

σlsσglσgsはそれぞれ,液固間,気液間,気固間の界面エネルギーである。この等式において,液相の表面張力が減少すると接触角は小さくなる。すなわち,灰分中のNaは液相の表面張力を減少させるため,濡れ性を向上させると考えることができる25)。さらに溶融灰と各固体間で生じる反応は,界面張力を減少させる可能性が示唆される。液相と固相間で反応が生じる際,その界面エネルギーは減少することが報告26)されている。この界面エネルギーの変化は界面張力を減少させる。Table 1に示したように,溶融灰は多くの元素を含んでおり,それらは炭素と反応する可能性を有している。これらの元素は炭素に対する濡れ性を改善する効果を有する。

以上の議論から,灰分除去処理を行った場合と行わなかった場合の灰の挙動はFig.12のように考えることができる。灰分除去処理を行わなかった場合,Fe-C初期融液生成前の1413 Kにおいて溶融灰が生成する。生成した溶融灰は鉄および炭素に良い濡れ性を示す。溶融灰は浸炭反応を阻害する障壁として振る舞う可能性がある。灰分除去処理を行った場合,Fe-C初期融液生成後の1457 Kにおいて溶融灰が生成する。生成した溶融灰の量は少なく,灰分除去処理を行わなかった場合と比較して溶融灰の濡れ性は悪い。これらの理由から,溶融灰が障壁として振る舞う可能性は低い。灰分中のNaは昇温実験の過程で減少している可能性もあるが,本実験条件における加熱時間は5分以内であり加熱温度も1500 K以下であることなどからも,その減少量は非常に少ないと考えられる。このような理由から,本考察においてはNa成分の減少については考慮していない。

Fig. 12.

 Schematic illustration of role of ash during iron carburization reaction in this experiment.

本研究では,浸炭反応に及ぼす灰分含有量の効果と灰分の物性の効果の寄与率について明らかにすることはできなかった。本件については,今後さらなる検討が必要であるが,これら灰分が及ぼす効果は,微粉炭材を用いるため多くの浸炭反応界面を有する石炭ベースのDRI製造プロセスなどにおいて大きな影響を与える可能性が示唆される。

4. 結言

炭材中含有灰分の含有量と溶融挙動が浸炭反応に及ぼす影響について,直接観察によるFe-C初期融液生成温度の測定を行うことにより調査し,以下の知見を得た。

炭材中灰分含有量を減ずると,浸炭反応の反応界面における妨害要素が減少するため,Fe-C初期融液生成温度は低下した。

酸による灰分除去処理によって灰分中のNa含有量も減少した。このNa含有量の変化は,灰分溶融温度を上昇させ,鉄と炭素に対する濡れ性を悪化させた。

灰分除去処理を行わなかった場合,浸炭反応の反応界面において溶融灰はFe-C初期融液生成温度よりも低い温度から,その濡れ性の良さから障壁として作用した考えられた。

謝辞

著者らは,学術的助言を賜った日本鉄鋼協会「低炭素高炉実現を目指した固気液3相の移動現象最適化研究会」に謝意を示します。なおこの研究は日本学術振興会科学研究費助成事業(24686084)によって援助を受けたことを記します。

文献
 
© 2016 The Iron and Steel Institute of Japan

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