Tetsu-to-Hagane
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Improvement of Sinter Productivity by Control of Magnetite Ore Segregation in Sintering Bed
Yuji IwamiTetsuya YamamotoNobuyuki OyamaHidetoshi MatsunoNoritaka SaitoKunihiko Nakashima
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2017 Volume 103 Issue 6 Pages 325-334

Details
Synopsis:

Recently, the quality of sinter feed ore used in sintering process has deteriorated. In particular, T.Fe has decreased and gangue component has increased in the sinter feed ore. Increase of gangue is not only the factor to influence sinter qualities, but also the factor to increase coke ratio in the blast furnace operation as the increase of slag ratio. Therefore, to cope with the deterioration of iron ore qualities, studies on alternative iron ore resources and development of its utilization technology have been required.

In that kind of new iron ore resources, authors focus on high grade magnetite fine. In the past, there are some studies about the effect of mixing ratio and size of magnetite fine on productivity and quality, but there are few studies about magnetite fine segregation in charging. In addition, magnetite fine decreases sinter productivity by the decrease of permeability of sintering bed. A new study for using large amount of magnetite fine is required.

In this research, the control method of magnetite fine segregation by magnetic force at charging and the improvement of sinter productivity by this method was studied. The effect of upper segregation of magnetite fine was studied through the analysis of melting behavior and interfacial reaction of calcium ferrite melts into hematite substrate and magnetite substrate.

1. 緒言

近年,鉄鉱石の品位の劣化が著しい。具体的には鉱石中のT.Feが低下し,それに対してSiO2,Al2O3等の脈石成分含有量が上昇している。自溶性焼結鉱の形成鉱物において,2CaO・Fe2O3,CaO・Fe2O3,CaO・2Fe2O3と比較し,SiO2を含むCaO・FeO・SiO2の被還元性は低いことが報告されており1),一方で粉鉱石中のAl2O3が増加すると,焼結反応において生成する融液の流動性が低下し,固体粒子同士の結合や気孔の再配列を阻害することで,焼結鉱の強度が低下してしまうことが知られている2)

これに対し,低品位鉱に代わり高品位微粉鉱を使用することで,原料品位の劣化に対応する方法が検討されている。高品位微粉鉱はそのまま焼結プロセスで使用すると通気性悪化により,減産してしまう。Sakamotoらは,将来の鉄鉱石の微粉化傾向を考慮し,ディスクペレタイザーを用いた新塊成鉱プロセス(HPS:Hybrid Pelletized Sinter process)を提案している3)。このような,今まで使われてこなかった鉄鉱石の新規銘柄の探索,およびその使用技術の開発による資源対応力強化が大きな課題となっている。

近年,そのような新規銘柄の中で,マグネタイト微粉鉱が注目されている。Ikenoらはマグネタイト原料の粒度影響を調査し,その粒度ごとの配合量と焼結鉱の生産性,および品質の関係を定式化している4)。また,Andoらは焼結反応にマグネタイト系原料が必要であることを述べ,さらにマグネタイト原料の適正な粒度を提案している5)。しかし,これらの知見に対し,給鉱部でのマグネタイト微粉鉱の偏析影響を調査した例は少ない。さらに微粉鉱石であることから,焼結生産性を低下させることが懸念され,その多量使用には新たな検討が必要である。

今回,著者らは偏析制御によるマグネタイト微粉鉱の使用と焼結鉱の生産性改善を検討した。一般に,焼結層内ではベッド上層の強度が低いことが知られている6)。本検討では,マグネタイト微粉鉱を上層に偏析させることで,強度改善を図ることを目的とし,まず焼結反応におけるカルシウムフェライト系融液の浸透性,界面反応挙動についてヘマタイト,およびマグネタイトに対する違いを調査した。さらに,磁気ブレーキ式装入装置7)を用い,焼結層内におけるマグネタイト微粉鉱の偏析制御方法を検討し,焼結鉱の生産性改善について検討したので,これを報告する。

2. 実験方法

2・1 カルシウムフェライト系融体の溶融挙動に及ぼすFe2O3,Fe3O4基板の影響調査

焼成プロセスでは,鉱石中のFe2O3およびフラックス中のCaOを主成分とするカルシウムフェライト系融体が生成し,これが鉱石同士を結び付けるバインダーとなり,焼結鉱の強度を発現する要因となる8)。したがって,カルシウムフェライト系融体の鉱石中への浸透,融体と鉱石間の反応挙動が強度を評価する上での重要な指標となる。今回,ヘマタイト鉱に代わる鉄源としてマグネタイト鉱の使用を検討するため,Fe2O3とFe3O4のタブレット状基板を作製し,カルシウムフェライト系融体に対する界面物性評価を行った。

2・1・1 基板作製方法

基板作製に使用するサンプルとしてはFe2O3試薬(99.9%,平均粒径0.5 μm),およびFe3O4試薬(99.0%,平均粒径0.5 μm)を使用した。成形圧を調整することで,緻密質基板と多孔質基板の2種類をそれぞれ作製することとした。

まず,使用する試薬をボールミリングし,スラリーを作製した。ボールミリングでは,内容量500 mLのポリエチレン製ポットを用い,ZrO2ボールを使用した。ポットに使用する試薬とZrO2のボールを重量比で1:1とになるように装入した後に,試薬とZrO2ボールが浸る程度にエタノールを添加した(Fe2O3には200 g,Fe3O4には120 g)。また,多孔質基板作製用のパウダーバッチにはそれぞれの粉末にさらに小麦粉を1 wt%添加した。その後,ボールミリングしたスラリーについて,調湿乾燥機でエタノールを乾燥させた後,50×47 meshのふるいで整粒した。得られた粉末を30 mmのモールドで成形した。緻密質基板は一軸加圧成形(16 MPa)後,冷間静水圧加圧法により30 MPaで3 min成形し,多孔質基板は一軸加圧成形(3 MPa)のみで成形した。

得られた成形体を以下の条件で焼結した。Fe3O4基板の酸化を防ぐため,Fe2O3基板は大気雰囲気,Fe3O4基板は7%CO-93%CO2雰囲気で焼結した。緻密質Fe2O3基板は10°C/minで昇温し,1300°Cで3 hr保持した。緻密質Fe3O4基板は10°C/minで昇温し,最高温度1350°Cで3 hr保持した。また,多孔質Fe2O3,Fe3O4基板は5°C/minで昇温し,150°Cで0.5 hr保持することで混合した小麦粉を分解させた後,再び5°C/minで昇温し,900°Cで10 min保持した。所定時間での保持後は全て10°C/minで冷却した。得られた焼結体について1 μmダイヤモンドスラリーで振動研磨を行った。その後,石鹸水,超純水,プロパノールおよびアセトンの順によって各15 min超音波洗浄を行った。得られた焼結体について,アルキメデス法を用いて,相対密度を測定した。Fig.1にSEMによる焼結体断面写真,および相対密度と気孔率を示す。

Fig. 1.

 Physical properties of sintered tablets.

次にカルシウムフェライトタブレットを作製した。Fe2O3とCaOが=1:1(mol%)となるようにCaCO3試薬,Fe2O3試薬(99.9%,平均粒径0.5 μm)を秤量し,アルミナ乳鉢を用いて充分に混合した。混合粉末30 gを白金るつぼに入れ,大気雰囲気1600°Cで30 min保持して均一融体とした後,銅板上に急冷してカルシウムフェライトを作製した。作製したカルシウムフェライト試料を粉砕した後,0.2 gおよび0.5 gを156 MPaで加圧成形し,直径7 mmのカルシウムフェライトタブレットを作製した。

2・1・2 実験装置および実験方法

本実験ではシリコニット横型炉を使用した。耐熱れんが上に酸化鉄基板を置き,その上部に0.2 gのカルシウムフェライトタブレットを設置した。Fe2O3基板は大気雰囲気,Fe3O4基板は7%CO-93%CO2雰囲気で10°C/minで昇温し,1300°Cで0,3,10 min保持した。その後,室温まで下がった後に試料を炉より取り出し,樹脂埋め,切断した後に2・1・1と同じ条件で研磨,洗浄した。その後,0 min保持した試料は反応界面付近を1カ所,3,10 min保持した試料は反応界面付近,浸透中部,浸透最深部の3カ所について,EPMA(加速電圧20 kV)による組成分析マッピングを行った。また,3,10 min保持したものについてはEPMAマッピングデータを用いて浸透距離を測定した。

また,0.5 gのカルシウムフェライトタブレットを用いて,同様の条件で保持時間を0 minにし,昇温過程における濡れ性評価した。本実験では画像処理ソフトを用いてカルシウムフェライト試料の左右両端をそれぞれ3回ずつ測定し平均値を見掛接触角とした。

2・2 マグネタイト微粉鉱の上層偏析の検討

磁気ブレーキ式装入装置は,装入シュートの背面に永久磁石を設置し,シュート上を流れる焼結原料のうち,磁化率の高いものに磁力を作用させる装入装置である。磁力が作用した原料は,シュート上での落下速度が低下し,結果として焼結ベッド上層に偏析する。そこで,磁化率の高いマグネタイト微粉鉱の使用することを目的に,磁気ブレーキ式装入装置により形成された磁場が焼結ベッド内におけるマグネタイト微粉鉱の偏析挙動に及ぼす影響について,離散要素法(DEM)を用いたシミュレーションモデルを用いて検討した。

2・2・1 離散要素法モデルの概要

本解析にはDEMの計算ソフトとして,PFC3Dを使用した。本計算では粒径の異なる4種類の粒子(A~D)を定義し,その内の1種類(D)にのみ,シュート上で力を作用させた。粒子のパラメータ,および配合率をTable 1に示す。

Table 1.  Parameter and mixing ratio of particles in DEM simulation model.
Particles A B C D
Diameter (mm) 30.0 20.0 12.5 12.5
Density (g/cm3)  2.5  2.4  2.1  2.1
Mixing ratio (%)  2.0 20.0 68.0 10.0

Fig.2に計算領域を示す。まず,高さ500 mm,幅200 mm,長さ5.0 mのパレットを設定し,計算負荷低減のため,内部に安息角より少し大きな角度50°で斜面を設置した。さらに,パレット底面には粒子の転動を抑えるため,粒径20 mmの粒子を敷き詰め,パレットに固定した。なお,パレットは4.35 m/minで移動するように設定した。装入シュートはパレット上面から110 mmの位置に実機同様に51°の角度で設置し,その長さは1000 mmとした。粒子はTable 1に示す配合率に基づき,シュート上端から10 kg/sの速度で装入した。ラボ給鉱シミュレーターにおける原料の堆積角とモデルにおける堆積角が合うように,粒子の粘性係数は法線方向,接線方向ともに0.5×104 N/mとし,壁は法線方向が2.0×106 N/m,接線方向が2.0×103 N/mとした。また,摩擦係数については,両条件とも0.65とした。

Fig. 2.

 Calculation field of DEM simulation model.

2・2・2 離散要素法モデルの計算条件

Fig.3にシュート上での磁場の印加条件を示す。1000 mmのシュートにおいて,下端500 mmの範囲で粒子Dにシュート法線方向下向きに力を作用させ,磁気ブレーキ式装入装置での磁力を模擬した。Case 1では力を作用させず,Case 2,Case 3,Case 4ではそれぞれ0.005N,0.05N,0.5Nの力を作用させた。

Fig. 3.

 Calculation condition of applied magnetic field on chute.

2・3 ラボ給鉱シミュレーターによる装入実験

2・3・1 実験装置概要

モデルによる計算結果を検証するため,ラボ給鉱シミュレーターを用いて,マグネタイト微粉鉱について,磁気ブレーキ式シュートでの装入実験を行った7)。本装置は倉敷3焼結と高さ方向での寸法条件を合わせ,装入幅のみを400 mmに縮小したものである。今回の実験におけるシュート角度は,モデルと同様に51°とした。シュート背面には永久磁石が設置されており,シュートと磁石の距離を調整することで,シュート表面上での磁束密度を調整することができる。装入パレットには高さ500 mm,幅400 mmのものを使用し,3.0 m/minの定速で移動させた。また,パレットにはあらかじめ,床敷鉱を20 mm高さまで敷き詰めた。また,パレットの一部は取り外しが可能な構造となっており,400 mm×400 mm,高さ500 mmの角鍋として鍋試験を実施することができる。

2・3・2 実験条件

Table 2にラボ給鉱シミュレーター実験で使用した原料の配合条件を示す。南米産ヘマタイト鉱石と豪州産ピソライト鉱石をベースとし,これにFeOが29.5 mass%の南米産マグネタイト微粉鉱を20 mass%配合した。Table 3に主要鉱石の化学成分,および125 μm以下の比率を示す。さらに,硅石粉や石灰石を用いてSiO2が5.0 mass%,塩基度が2.0となるように調整した。なお,配合原料における平均のFeOは7.1 mass%であった。本配合原料を給鉱シミュレーターのホッパーに装入し,400 kg/minで切り出し装入実験を実施した。

Table 2.  Blending ratio for charging test. (mass%)
Hematite ore 25.0
Pisolite ore 21.2
Magnetite fine 20.0
Silica sand  0.8
Return fine 20.0
Limestone 13.0
Table 3.  Chemical composition and under 125 μm ratio of ores. (mass%)
T.Fe FeO SiO2 Al2O3 –125 µm
Hematite ore 64.3  0.1 2.8 1.9 19.0
Pisolite ore 57.3  0.1 5.9 1.5  2.0
Magnetite fine 69.4 29.5 1.9 0.3 98.9

今回の装入実験では上記原料に対し,磁場を印加する条件としない条件で実験を行った。磁場を印加しない条件では,シュート背面の永久磁石を取り外し,印加する条件ではモデルで得た結果からシュート表面の磁束密度が0.12Tとなるようにシュートと永久磁石の距離を調整した。

2・3・3 評価方法

装入後ベッドにおいて,ベッド表面より0 mmから10 mm,および90 mmから110 mm,190 mmから210 mm,290 mmから310 mm,390 mmから410 mmの5つの範囲において原料をwetで1 kgサンプリングし,FeOを分析した。また,原料が装入された角鍋について鍋試験を実施し,強度,歩留,生産性について評価した。鍋試験では吸引差圧を9.9 kPaで一定とした。焼結ケーキ全量を2 mの高さから1回落とした際の10 mm以上の比率を歩留と定義し,歩留測定後のサンプルを用いてタンブラー強度を測定した。

3. 実験結果および考察

3・1 カルシウムフェライトのFe2O3,Fe3O4基板上での溶融実験

Fig.4に昇温過程におけるFe2O3基板上カルシウムフェライト試料の溶融挙動についての観察結果を示す。図中の破線枠はサンプルの初期外枠を示しており,本実験ではサンプル外枠が破線から外れた時点で溶融を開始したとみなした。緻密質Fe2O3基板上でのカルシウムフェライト試料は図中の(a)-4に示すように,1220°Cで溶融を開始したのに対し,多孔質Fe2O3基板上では(b)-2に示すように,1200°Cから溶融を開始した。これらの差異は,Fe2O3基板の反応面積の違いによる反応率の差により生じたと考えられる。Fig.5に緻密質Fe2O3基板におけるカルシウムフェライト試料の反応経路,および多孔質Fe2O3基板におけるカルシウムフェライト試料の反応経路を示す9)。緻密質Fe2O3基板では,カルシウムフェライト試料の初期組成であるモノカルシウムフェライト(以下,CFと示す)は1155°CからFe2O3基板と反応し,ヘミカルシウムフェライト(以下,CF2と示す)+ヘマタイト領域に入る。その後,1226°Cから固液共存領域であるCF2+Liq.領域へ入り,液相が生成を開始したものと考えられる。それに対して,多孔質Fe2O3基板では緻密質Fe2O3基板同様にCFが1155°CからFe2O3基板との反応を始めるが,多孔質基板のためカルシウムフェライト試料と基板との接触面積が低下し,反応率が低下したことでCF+CF2領域までしか反応が進まず1205°Cから固液共存領域であるCF2+Liq.領域へ入り,液相が生成を開始したものと考えられる。

Fig. 4.

 Sessile drop images of slag sample on dense and porous Fe2O3 substrate.

Fig. 5.

 Reaction path of slag sample on (a) dense and (b) porous Fe2O3 substrate.

次に,Fig.6に昇温過程におけるFe3O4基板上カルシウムフェライト試料の溶融挙動についての観察結果を示す。緻密質Fe3O4基板上ではカルシウムフェライト試料は(c)-3に示すように1160°Cから溶融を開始したのに対し,多孔質Fe3O4基板では(d)-2に示すように,1150°Cからカルシウムフェライト試料の幅は一定で,高さだけが初期外枠から外れたことから,この温度近傍において溶け始めたと考えられる。本実験ではマグネタイト基板の酸化を防止するため,7%CO-93%CO2雰囲気での行っており,昇温中にカルシウムフェライト試料の還元が生じているものと予測される。したがって,ヘマタイト基板のように,初期カルシウムフェライト試料とマグネタイト基板の直接反応が生じているとは考えにくい。このことから,これは炉内の還元雰囲気によるものだと考えられる。CFは7%CO-93%CO2雰囲気では以下の反応が生じることが知られている10)。   

CF + 1 / 4 CO = 1 / 4 C 2 F + 1 / 2 CWF + 1 / 4 CO 2 (1)

Fig. 6.

 Sessile drop images of slag sample on dense and porous Fe3O4 substrate.

ここで,C2Fは2CaO・Fe2O3を示し,CWFはCaO・FeO・Fe2O3を示している。式(1)の還元反応の経路をFig.710),CaO-FeOnの2元系状態図をFig.8に示す11)。式(1)はCOガスを要する反応であり,今回COガスはCFタブレットとマグネタイト基盤の界面に十分侵入しうると仮定すると,CFは7%CO-93%CO2雰囲気において,Fig.7中に示す矢印の方向に反応が進む。この還元反応によって生じたCWFはFig.8より酸化鉄と反応することで液相生成開始温度が上昇することがわかる。そのため多孔質Fe3O4基板に比べて反応率の高い緻密質Fe3O4基板ではカルシウムフェライト試料の液相生成開始温度が上昇したと考えられる。また,多孔質Fe3O4基板ではカルシウムフェライト試料が濡れ広がる前に基板中に浸透していったためにカルシウムフェライト試料の幅は一定のまま高さが減少したと考えられる。

Fig. 7.

 Reduction reaction of CF under 7%CO-93%CO2 atmosphere.

Fig. 8.

 Phase diagram of the CaO-FeOn system.

また,Fig.9に昇温過程における各酸化鉄基板上のカルシウムフェライト試料の見掛接触角の変化を示す。いずれの酸化鉄基板においても見掛接触角は90°以下を示しており,濡れ性が良好であった。

Fig. 9.

 Temperature change of the contact angle of CF based melt on iron oxide substrates.

3・2 Fe2O3,Fe3O4基板における界面反応測定結果

Fig.10に緻密質Fe2O3基板,Fig.11に多孔質Fe2O3基板における0,3,10 min保持した基板断面のEPMAによる組成マッピング分析結果をそれぞれ示す。(a)-3,(a)-10と比較し,(b)-3,(b)-10では多孔質基板では基板に含有されないCaが連続して分布していることから,カルシウムフェライト試料が基板の気孔に沿って浸透したと考えられる。(a)-3,(a)-10と(b)-3,(b)-10における浸透最深部の同じ反応時間でのEPMAイメージを比較すると,緻密質基板と比較して多孔質基板はカルシウムフェライト試料との反応がより早く進んだことがわかる。これは,緻密質基板と多孔質基板における浸透メカニズムの違いによるものと考えられる。緻密質基板ではカルシウムフェライト試料中にFe2O3が溶解することで界面が移動する。一方で,多孔質基板では反応初期において接触面積が小さいのに対して,反応中期ではカルシウムフェライト試料が基板中の気孔に沿って浸透することによって接触面積が増加し,反応率が上昇したためと考えられる。

Fig. 10.

 EPMA mapping images of interface between CF sample and dense Fe2O3 substrate.

Fig. 11.

 EPMA mapping images of interface between CF sample and porous Fe2O3 substrate.

Fig.12に緻密質Fe3O4基板,Fig.13に多孔質Fe3O4基板における0,3,10 min保持した基板断面のEPMAによる組成マッピング分析結果をそれぞれ示す。いずれの基板においても実験温度において液相領域の組成が見られた。(c)-3,(d)-0中のA点,B点ではそれぞれ,A:20%CaO-74%FeO-6%Fe2O3,B:20%CaO-66%FeO-14%Fe2O3の組成が観測されており,Fig.7に示した反応経路に基づくと,緻密質基板に比較して多孔質基板は反応が進行していたと考えられる。また,いずれの基板においても,液相領域の組成が確認できたことについては,Fig.7に示した還元反応が更に進んだ後,Fe3O4基板と反応したためと考えられる。

Fig. 12.

 EPMA mapping images of interface between CF sample and dense Fe3O4 substrate.

Fig. 13.

 EPMA mapping images of interface between CF sample and porous Fe3O4 substrate.

また,Fig.14にEPMAによるカルシウムフェライトの酸化鉄基板中への浸透距離測定結果を示す。いずれの基板においても緻密質基板と比較して多孔質基板に対するカルシウムフェライトの浸透距離が大きかったことについては,前述のように緻密質基板では溶解反応によって界面が移動するのに対して多孔質基板ではカルシウムフェライトが基板中の気孔に沿って浸透するためと考えられる。また,Fe2O3基板とFe3O4基板を比較すると緻密質基板では,Fe3O4基板中への浸透距離が大きいことから,カルシウムフェライト試料とFe3O4基板の反応性が良好であると考えられる。それに対して多孔質基板ではFe2O3基板中への浸透距離が大きい。これは各基板の焼結性の違いによるものだと考えられる。Fig.15に多孔質Fe2O3基板および多孔質Fe3O4基板の後方散乱電子(BSE)画像を示す。Fe2O3基板では気孔が多く存在するのに対し,Fe3O4基板では気孔がほとんど見られなかった。このことから多孔質Fe3O4基板では2・1節に示す実験を行った際に比較的焼結が進行していたため,気孔が少なくなり浸透距離が低下したと考えられる。

Fig. 14.

 Penetration depth of slag sample melt as a function of annealing time at 1300°C.

Fig. 15.

 BSE image of interface between CF sample and porous Fe2O3 and Fe3O4 substrate.

3・3 離散要素法モデル計算結果

Fig.16にモデルにおける焼結ベッドの断面イメージを示す。図中において,緑色の粒子が磁力を受ける粒子Dを示している。全ての条件において粗大粒子である赤色の粒子A,黄色の粒子Bが下層に偏析していた。これは,粒子A,粒子B,粒子Cは磁力を受けておらず,いずれの条件においても同様に粒度偏析の影響が表れたものと考えられる。一方,磁力を受ける粒子Dについては,条件ごとに大きな差が見られた。磁力を与えないCase 1では,青色の粒子Cと緑色の粒子Dは粒径,密度ともに同じであるため,同一種の粒子として計算されており,粒子Cの分布範囲内に分散していた。Case 2では0.005 Nの磁力を粒子Dに与えているが,Case 1と同様に粒子Cの分布範囲に粒子Dが分散していた。Case 3では粒子Dに0.05 Nの磁力を与えることで,粒子Cの分布範囲の上方に粒子Dが偏析している様子が確認された。Case 4では粒子Dに0.5 Nの磁力を与えているが,シュートに粒子Dが付着してしまい,パレットへの正常な装入ができなかった。Fig.17にCase 1,Case 2,Case 3における粒子Dの偏析状況の比較を示す。この図からも,Case 1とCase 2では粒子Dの偏析状況に大きな差はないが,Case 3では,粒子Dが上層に大きく偏析していた。

Fig. 16.

 Cross section view of charged bed with DEM simulation model.

Fig. 17.

 Calculation results of segregation of particle D in sintering bed.

次に,モデルで得られた適正磁力0.05 Nの実機における適用を考えた。今回,モデルではその計算負荷を低減するため,実際よりも粒子径を大きくし,粒子数を低減している。したがって,今回得られた適正磁力は実際の粒子に対しては大きすぎることが考えられる。そこで,ラボ給鉱シミュレーターによる実験で用いる装入前原料において,モデルの粒子C,粒子Dに該当する粒度範囲の疑似粒子について平均重量を測定し,適正磁力の補正を行うこととした。まず,原料装入前の疑似粒子を1 kg採取し,粒度分布を測定した。この粒度分布において,粒子Cおよび粒子Dの粒度範囲に該当する粒子径が小さい方から78%の粒度範囲にある疑似粒子を抽出し,ランダムに50個の疑似粒子を選び,その平均重量を測定した。その結果,平均重量は約0.1 gであり,モデルにおける粒子Dの重量の約0.4%であることから,装入シュート表面上で同様の加速度を得るためには,0.05 Nの0.4%である2×10−4 Nの磁力が必要であると考えられる。本検討では,この必要磁力をえるための磁束密度を計算した。

磁界の原点からxの距離に中心が置かれた粒子に作用する磁力FMは次式で表される12,13)。   

F M = m χ ( H H x ) (2)

ここで,mは粒子の質量(kg),χは粒子を構成する物質の帯磁率(−),Hは磁場の強さ(A/m)を示している。またHは実験式から次式のように表される。   

H = A e x p ( b x ) (3)

ここで,A,bは磁石によって決まる定数である。したがって,(2)式と(3)式から磁力は次式で表される。   

F M = m χ ( A 2 b e x p ( 2 b x ) ) (4)

ラボ給鉱シミュレーターの磁石は,計測によりA=25.6(m/s),b=33.5(m−1)であると特定した。また,マグネタイト微粉鉱を含む疑似粒子の磁化率は測定結果からχ=0.004であった。これらのパラメータから,2×10−4 Nの磁力を得るために磁石とシュートの間隔を計算した結果23 mmとなり,その際のシュート表面上での磁束密度は0.12Tであった。本研究では,この条件を給鉱シミュレーターの磁力条件としたが,実際は疑似粒子ごとにマグネタイト微粉鉱の含有比率が異なること,およびマグネタイト微粉鉱の品位によって磁化率が異なることが考えられ,適正な磁力範囲を別途検討する必要がある。

3・4 ラボ給鉱シミュレーターによる装入実験結果

Fig.18に磁力の有無におけるFeOの偏析状況を示す。配合原料の平均FeOが7.1 mass%であるのに対し,シュート表面に磁束密度が0.12Tの磁場を印加した条件では,ベッド表面のFeO濃度が11.5 mass%に達していた。したがって,マグネタイト微粉鉱が上層に偏析していた。さらに,ベッドの上層からの深さに伴い,FeOの含有量も少なくなっていた。一方,磁場を印加しない条件においても,上層のFeO濃度が高くなっていたが,磁場を印加した条件ほど急な偏析にはなっていなかった。

Fig. 18.

 Experimental result of segregation of FeO in sintering bed.

Table 4に装入試験で得られたベッドについての鍋試験結果を示す。タンブラー強度が0.8%向上し,歩留が2.4%向上した。さらに焼結時間が約40 s短縮し,結果として生産率が約8%向上した。マグネタイト微粉鉱を使用した条件では,マグネタイト微粉鉱を上層に偏析させる条件において,偏析させない条件と比較し,強度と歩留が向上していた。本実験による強度と歩留の改善は,マグネタイト微粉鉱の偏析による上層の強度改善によるものと考えられる。

Table 4.  Result of pot test.
With magnet Without magnet
Tumble index (%) 63.4 62.6
Yield (%) 74.3 71.9
Sintering time (min) 32.8 33.5
Productivity (t/h·m2) 0.99 0.91

3・1節に示したように,Fe3O4基板上において,Fe2O3基板よりも低温でカルシウムフェライトタブレットが溶融した。雰囲気が還元雰囲気であることも一因であるが,焼結プロセスにおける温度上昇の初期では,周囲で粉コークスが燃焼しており,還元雰囲気が形成される。したがって,今回マグネタイト微粉鉱を上層に偏析させることにより,上層にはFe3O4の緻密質な層が形成されており,より低温から融液が生成することで,上層の熱不足による強度低下を抑制できるものと考えられる。さらに,3・2節では,緻密質基板において,Fe2O3よりもFe3O4の方がカルシウムフェライト系融体の浸透距離が大きいことを述べた。したがって,上層にマグネタイトの緻密質な層が形成されることにより,より低温から融液が生成し,さらに層内に浸透することで鉱石同士を結合させるため,強度が上昇したものと考えられる。

また,Hidaらは焼結排ガス中からのNOx低減に関する検討の中で,マグネタイト鉱を凝結材の一部として使用できる可能性にも触れている14)。このように,上層にマグネタイト微粉鉱を偏析させることで,その酸化熱により上層における熱量を補填できたことも,強度と歩留を改善できた要因の一つと考えられる。

高品位微粉鉱の使用には,焼結層内の通気性悪化に伴う減産が懸念される。しかし,Table 4に示すように,今回の実験では,マグネタイト微粉鉱を上層に偏析させることで,焼結時間が短縮し,生産率が向上した。これは微粉鉱を選択的に上層に偏析させたことに起因するものと考えられる。焼結層内における圧力損失は主に,水分凝縮ゾーン,および反応,溶融ゾーンで生じている15)。一方で,焼結ケーキゾーンにおける圧力損失は非常に小さい。このことから,通気性を悪化させる要因となる微粉鉱を上層に偏析させ,焼結反応の初期に焼結ケーキとすることにより,通気性の悪化を低減できたと考えられる。したがって,本実験ではマグネタイト微粉鉱を焼結層内に均一に分散させた条件よりも,上層に偏析させることにより通気性が向上し,焼結時間が短縮したものと考えられる。

以上の結果から,マグネタイト微粉鉱の使用については,装入偏析制御により通気性悪化に伴う減産影響を低減させつつ,焼結鉱の強度,歩留を向上させることが可能であると考えられる。

4. 結言

近年注目されているマグネタイト微粉鉱の焼結原料としての使用について,気孔率を変更したFe2O3,Fe3O4基板とカルシウムフェライト系融体との反応性を調査した。また,その知見を踏まえ,マグネタイト微粉鉱の装入偏析制御による焼結鉱の生産性改善の可能性を見出した。詳細を以下に示す。

(1)ヘマタイト・マグネタイト,いずれの酸化鉄基板に対しても,カルシウムフェライト系融体の濡れ性は良好であった。また,気孔率を変化させることで,カルシウムフェライト系融体の溶融温度を操作することができた。緻密質基板においてはFe3O4基板中へのカルシウムフェライトの浸透距離が比較的大きいが,多孔質基板においてはFe3O4基板の気孔率が低いためFe2O3基板中への浸透距離が結果的に大きくなった。

(2)シュート上に磁場を印加することで,原料中のマグネタイト微粉鉱石を選択的に上層に偏析させることが可能であることが分かった。また,シミュレーションモデルの結果から,偏析させるための磁力には適正範囲が存在することが分かった。

(3)マグネタイト微粉鉱を上層に偏析させることで,偏析させない条件と比較し,焼結鉱の強度,歩留が上昇した。これは,上層に偏析したマグネタイト微粉鉱により,比較的緻密なマグネタイト領域が形成されることで,カルシウムフェライト系融体が溶融,浸透しやすくなり,上層における熱不足を改善したためと考えられる。

(4)マグネタイト微粉鉱を上層に偏析させることで,偏析させない条件と比べて,焼結時間が短縮し,結果として生産率が向上した。これは,微粉鉱を上層に偏析させることで,焼結反応初期に焼結ケーキとし,微粉鉱の使用による通気の悪化影響を低減させることができたためと考えられる。

文献
 
© 2017 The Iron and Steel Institute of Japan

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