Tetsu-to-Hagane
Online ISSN : 1883-2954
Print ISSN : 0021-1575
ISSN-L : 0021-1575
Regular Article
Effect of Drying Treatment after Granulating Sinter Raw Materials on Flame Front Speed and Sintering Yield
Masaru MatsumuraYasuhide YamaguchiMasaki HaraChikashi KamijoTakazo Kawaguchi
Author information
JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2017 Volume 103 Issue 6 Pages 280-288

Details
Synopsis:

For increase of sinter productivity, it is important to design sinter mixture granulation.

Moisture is indispensable for granulation as a binder between raw material particles. Once granulation is completed, moisture is dispensable during sintering because moisture vaporization is endothermic reaction.

Based on the above-mentioned view, a process of drying the granules after granulation with high moisture examined for sintering productivity by use of sinter pot test.

The main results obtained are described as follows:

(1) Drying in conjunction with high moisture granulation is effective to increase flame front speed with maintaining sintering yield;

(2) Increasing flame front speed is due to shorten the time to evaporate moisture in the wet zone of sintering packed bed in addition to increasing permeability of sintering packed bed. This effect is also evaluated and proved based on calculation of moisture transition in and out of sintering packed bed;

(3) Maintaining sintering yield is due to higher heat generation in sintering packed bed caused by higher coke combustion efficiency in addition to lower moisture concentration of sinter mixture.

(4) Collapse of granules in case of drying after granulation is avoided till the critical moisture, that is defined as the one left in the mix after higher moisture granulation makes granules to keep shape easy due to higher moisture quantity on the surface of granules.

1. 緒言

焼結生産性は,焼結原料層通気性と強い相関がある。それは,焼結反応の進行が焼結原料層を流通するガス流速に比例し,ガス流速は通気性に支配されることによる。さらに,高い通気性は,Ergun式に記述されるように,造粒後の擬似粒子径を高めることで,また焼結原料層の空隙率を高めることで確保される。ここで,擬似粒子は,粗粒鉱石を核として粉鉱石を雪だるま式に付着成長された形態や,粉鉱石同士が付着している形態を特徴としており,ドラムミキサー等の造粒機の機械的操作によって形成される。ここで,造粒における付着とは,主として水の毛管付着力で凝集させる現象である。さらに,擬似粒子径は,原料鉱石の鉱石特性および付着成長を助長する造粒操作に大きな影響を受ける。鉱石特性としては,粒度分布,粘着性,表面性状,粒子形状などが挙げられる1,2)。また造粒操作条件としては混合・造粒時間,回転速度,粒子転動距離などの造粒機設計3,4)や水・生石灰等のバインダー使用が挙げられる。

まず,造粒操作における造粒機設計に関する実用化技術として,単純に鉱石を一括混合する方法から,鉱石特性を考慮し,焼結鉱の品質と焼結生産性を図る複合造粒法が採用されている5,6,7,8,9)。複合造粒法とは,焼結原料を2系列以上で造粒する方法であり,これまで多くの実機焼結機で採用されてきたが,原理的には2層構造ペレットの基礎研究10)の技術思想に基づく。実際に,擬似粒子径を高めるミニペレット法11,12)では,高通気性が達成されている。最近では,パンペレタイザーを活用し擬似粒径5-15 mmまで極端に上昇し,空隙率までも高めるMEBIOS法13,14,15)が実用化されている。ここで擬似粒子径を高めるべく,実用化に際しては,造粒機の基本的な設計条件(傾斜角や回転速度等)3)も併せて検討された。

他方,造粒操作における水・生石灰等のバインダー使用に関する実用化技術として,返鉱バイパス添加技術16,17)や分散材添加技術18)が挙げられる。前者は乾燥状態の返鉱を造粒後に添加することにより,造粒時の水分を高めて擬似粒子化を促進する技術である。後者は,造粒における最適水分が焼結時の耐乾燥粉化における最適水分よりも高いことに着目し,分散材添加により湿潤時の最適水分を乾燥粉化に対する最適水分に近づけることを可能とする。これは鉄鉱石中の微粒子が水中に遊離することによる実質的な液相量の増加に起因している。いずれの技術も水に着目しているが,造粒段階では必要な水が焼成段階では不要となる事象にメスを入れた技術である。

そこで,本研究では,上記事象を確認し水分設計に対する指針を得ることを目的として,造粒段階と焼成段階における原料水分を独立パラメータとして,焼結過程における燃焼前線降下速度や成品歩留に及ぼす影響を評価した。具体的には,実験室レベルで焼結前に造粒と乾燥操作を行い,原料粒子の合体や崩壊,さらには 粉コークス燃焼効率を評価・考察した。

2. 実験方法

2・1 鍋試験方法

Table 1に焼結原料配合条件を示す。日本で使用されている主要鉄鉱石5種類を用いた。粉コークス配合比率は4.5 mass%とした。造粒および乾燥方法をFig.1に示す。ドラムミキサー(直径600 mm 長さ800 mm)で4分間混合後,所定の水分を添加しさらに4 分間造粒した。試験ケースによっては,焼結前に乾燥処理を行なった。乾燥方法は,原料厚み30 mmの厚さで,鉄板上に広げて所望の水分に到達するまで放置した。Table 2に,試験ケースを示す。試験ケースは6ケースとした。詳述すると,造粒後原料水分7.9 mass%のケースは,乾燥なしのケースと水分6.7 mass%および6.2 mass%まで乾燥させた計3ケースを設定した。造粒後原料水分6.5 mass%のケースは,乾燥なしのケースと水分5.3 mass%まで乾燥させた計2ケースを設定した。造粒後原料水分5.5 mass%のケースは,乾燥なしのケースのみとした。造粒後かつ乾燥前の水分および乾燥後の水分を本論文では,それぞれ“造粒後水分”“装入時水分”と称する。

Fig. 1.

 Method of granulation and dry treatment.

Table 1.  Blending conditions of sinter mixture. (mass%)
Raw materials Brand Composition
Iron ore R 8.5
Y 19.1
H 13.2
C 8.5
W 21.3
Serpentine 2.1
Limestone 12.3
Return fine 15.0
Sub total 100
Coke breeze (–5 mm) 4.5
Table 2.  Moisture conditions of raw materials. (mass%)
after granulating 7.9 6.5 5.5
at charging
without drying 7.9 6.5 5.5
at charging ◇ ○
after drying 6.7, 6.2 5.3

Symbol: use in fig.3-6, 11, 12, 14

擬似粒子径は,装入時の段階で計測した。計測方法は,試料を105°C 2時間乾燥処理し,ロータップ振トウ機を用いてタップなしで15秒間篩分けする方法とした。

焼結鍋は直径300 mm高さ500 mmであり,同一直径の風箱上に固定した。原料装入後,熱電対を鍋上面より240 mmおよび430 mmの高さの位置の垂直断面円中央部にセットした。なお,風箱中央部にも熱電対をセットした。

点火は風箱内圧力−5.2 kPaで吸引しながらLPGを燃料とするバーナーで1分間燃焼させた。点火後は風箱内圧力−10.3 kPa一定で行った。風箱内圧力は,風箱から送風機間のダクトに設置したダンパー開度で調整した。風箱内中央部に設置した熱電対で排ガス温度を計測し,焼結時間は排ガス温度ピーク時刻までの時間と定義した。点火終了から焼結終了まで,排ガスの一部を連続採取し,除湿除塵処理した後に,CO,CO2およびO2を分析した。COおよびCO2は赤外吸収法,O2は磁化法による方法で,ポータブル分析計を用いた。焼成中の通気性は,排ガスダクトに設置した流速計より風量を連続測定して,焼結原料層を流通するガス流量とした。この充填層鍋下負圧と充填層層高から下記,JPUの式で評価した。

JPU=v(⊿h/⊿P)0.6…a)

v:原料充填層空塔風速(m/min)

⊿h:原料充填層層高(mm)

⊿P(mmAq):鍋下圧力

焼結鍋から排出した焼結ケーキは,重量計測後に落差2.0 mで4回落下させ5 mmで篩分けし+5 mm重量を計測した。粉化により−5 mmとなる床敷はないものと仮定し,+5 mm重量から床敷重量(2 kg)を差し引いた値を成品焼結鉱重量とした。成品焼結鉱重量を焼結ケーキ重量から床敷2 kgを差し引いた値で割った値を成品歩留とした。

焼結生産率は,成品焼結鉱重量を焼結時間および焼結鍋底面積で割って算出した。燃焼前線降下速度(FFS)は,焼結鍋へ配合原料を装入した段階の層厚を,鍋直下計測の排ガス温度が上昇開始するまでに要した時間で割って算出した。なお,排ガス温度上昇開始時刻は,温度100°C到達時点の時刻とした。これは,焼結層の乾燥帯が焼結層の最下部に到達することを意味する。

2・2 粉コークス燃焼性評価方法

焼結配合原料中の粉コークスの燃焼効率を評価すべく,風量および排ガス組成(CO,CO2,O2)に基づいて算出した。

Fig.2に,焼結層入側および出側のガス量およびその組成の概略を示す。ガス組成については,H2Oの他,数百ppmと微量なSOx,NOxを無視し,CO,CO2,O2,N2の4成分でバランス計算した。

Fig. 2.

 Volume balance between inlet and outlet gas.

入側ガス組成はO2濃度21 vol%,N2濃度79 vol%とした。出側のN2濃度はCO,CO2,O2濃度の和を100 vol%から引いて求まる。この出側N2濃度より,入側ガスと出側ガスとの量比が定まる。そして,出側ガス量は入側ガス量よりも多く,その差分は,石灰石等炭酸物から生成するCO2量およびコークス燃焼で生じるCOの半量である。前者は酸素ガスを消費しない固体からの脱離ガスのため,後者は1モルの酸素分子から2モルのCOが生成するためである。そして,炭酸物から生成するCO2が求まれば,コークス燃焼によって生成するCO2が求まる。コークス配合量およびコークスに含有される固定炭素濃度から原料層中の固定炭素量が判り,コークス燃焼由来のCOおよびCO2も判るので,焼結後の未燃炭素量が求まる。本実験では,出側ガス量を連続分析しているので,粉コークスの完全燃焼(C+O2→CO2),不完全燃焼(C+1/2O2→CO)および未燃の各量が求まる。ここで,完全燃焼および不完全燃焼における発熱量は下記式の通り,408 kJ/molおよび125 kJ/molである。本論文では,コークス燃焼に関するパラメータとして,1)コークス燃焼効率は全固定炭素が完全燃焼した際に得られる熱量に対する比率,2)コークス燃焼熱はコークス燃焼効率を考慮した値とした。

なお,原料層熱収支は,コークス燃焼熱の他に,水の気化熱および炭酸物からの脱炭酸反応熱を考慮した。

C+O2 =CO2+408 kJ/mol:完全燃焼

C+1/2・O2 =CO+125 kJ/mol:不完全燃焼

3. 実験結果

3・1 原料通気性と燃焼前線降下速度

Fig.3に,装入時水分と擬似粒度−0.25 mm比率の関係を示す。乾燥なしのケース間で比較すると,造粒後水分の上昇と共に擬似粒度−0.25 mm比率が低下した。ここで,造粒後水分が同じで乾燥処理有無のケースを比較すると,乾燥処理によって,擬似粒度−0.25 mm比率が上昇する。但し,高水分で造粒したケースは,この上昇が小さい。さらに,装入時水分が同一でも,高水分(7.9 mass%)造粒した後に乾燥処理したケースは低水分(6.5 mass%)乾燥処理のケースよりも擬似粒度−0.25 mm比率が小さくなった。しかしながら,水分6.5 mass%で造粒後に乾燥処理したケースは,乾燥処理を行わない水分6.5 mass%および5.5 mass%の両ケースを結ぶ直線上に位置する。即ち,造粒後乾燥処理による効果は,高水分造粒にみられる傾向である。

Fig. 3.

 Disintegration of pseudo-particle by dry treatment to granulated sinter mixture.

Fig.4に,装入時水分と焼成時通気性の関係を示す。乾燥なしのケース間で比較すると,造粒後水分の上昇と共に焼成時通気性が上昇した。ここで,造粒後水分が同じで乾燥処理有無のケースを比較すると,低水分(6.5 mass%)造粒の場合,乾燥処理によって焼成時通気性が低下する。一方,高水分で造粒したケースは,乾燥処理しても焼成時通気性は維持される。さらに,装入時水分が同一でも,高水分(7.9 mass%)造粒した後に乾燥処理したケースは低水分(6.5 mass%)乾燥処理のケースよりも焼成時通気性が大きくなった。

Fig. 4.

 Influence of dry treatment on permeability at sintering.

Fig.5に,擬似粒度−0.25 mm比率と焼成時通気性との関係を示す。なお,焼成時通気性は,焼成開始時刻から排ガス温度が最高となる時刻までの通気性平均値とした。全ケースの焼成時通気性が,同一直線上に整理され,擬似粒度−0.25 mm比率の低下と共に焼成時通気性が上昇する。即ち,乾燥の有無によらず,擬似粒度−0.25 mm比率で焼成時通気性が整理される。

Fig. 5.

 Influence of moisture and fine particle quantity on permeability at sintering.

Fig.6に,焼成時通気性とFFSとの関係を示す。焼成時通気性の上昇と共にFFSが上昇する。ここで,高水分(7.9 mass%)造粒したケースでは,乾燥処理によって,焼成時通気性は変化しないがFFSは上昇した。

Fig. 6.

 Influence of on permeability at sintering on flame front speed.

Fig.7に,高水分(7.9 mass%)造粒した3ケースについて,乾燥処理後の装入時水分が充填層に挿入した2本の熱電対温度情報により求めた上層0~240 mm間,下層240~430 mm間,および全層(0~430 mm)を通じたFFSそれぞれに及ぼす影響を示す。乾燥処理による水分低下によって,FFSが上昇する。

Fig. 7.

 Effects of dry treatment on flame front speed.

Fig.8に,高水分(7.9 mass%)造粒し乾燥しないケースと水分6.2 mass%に乾燥したケースについて,層内熱電対挿入位置(240 mmおよび430 mm)それぞれにおける熱電対温度立ち上がり時刻から最高温度到達時刻までの平均空塔風速と,温度立ち上がりから最高温度到達までの時間との関係を示す。

Fig. 8.

 Effect of dry treatment on moisture vaporizing and coke combustion time.

乾燥処理によって,空塔風速は変化しないが,温度立ち上がりから最高温度到達までの時間が短縮する。

3・2 原料層熱収支と成品歩留

Fig.9に,各ケースにおけるコークス燃焼状態,即ち,完全燃焼,不完全燃焼および未燃の構成比を示す。造粒後水分7.9 mass%と高い3ケースについては,CO2への完全燃焼率が高く,未燃カーボンが低い。未造粒粉率が低いため,より多くの粉コークスが流通ガス中の酸素と反応しやすくなった効果と考えられる。また,造粒後水分7.9 mass%の3ケース間で比較すると,造粒後乾燥処理によって装入時水分を低下させたケースにおいて,未燃カーボン比率が0となった。

Fig. 9.

 Improvement of coke combustion state by high moisture granulation.

Fig.10に,コークス燃焼熱およびコークス燃焼効率を示す。造粒後水分が7.9 mass%と高い3ケースにおいて,コークス燃焼熱や燃焼効率が高い。さらに高水分造粒後に乾燥処理するとさらに高くなった。これは,Fig.9の結果を反映したものである。

Fig. 10.

 Improvement of coke combustion efficiency at high moisture granulation.

Table 3に,コークス燃焼熱,水蒸発熱,および炭酸物の脱炭酸反応熱をまとめる。水蒸発熱は装入時水分に対応し,脱炭酸反応熱は配合が一定故,全ケースで同値となる。

Table 3.  Heat generation at sintering bed.
Moisture after granulating (mass%) Moisture at charging (mass%) Coke combustion (kJ/kg) Moisture evaporation (kJ/kg) Decomposition of carbonate (kJ/kg)
7.9 7.9 1.033 –0.188 –0.149
7.9 6.7 1.051 –0.162 –0.149
7.9 6.2 1.069 –0.149 –0.148
6.5 6.5 0.957 –0.157 –0.149
6.5 5.3 1.008 –0.126 –0.149
5.5 5.5 1.001 –0.131 –0.149

kJ/kg: Heat generation value for 1 kg sinter mixture

Fig.11に,コークス燃焼熱と水蒸発熱で焼結層発生熱量を評価する。高水分造粒は,気化熱上昇による吸熱量に対して,燃焼熱向上による発熱量が上回る。高水分造粒後,乾燥処理を行うとコークス燃焼熱および水気化熱両面から焼結層発生熱量が上昇する。

Fig. 11.

 Increase of heat generation at high moisture granulation and drying.

Fig.12に,コークス燃焼熱と水蒸発熱の和である焼結層発生熱量と成品歩留との関係を示す。先に,Fig.6にFFSを示したが,造粒後水分7.9 mass%および6.5 mass%の乾燥処理を行わなかったケースはFFSが22~23 mm/minであり,造粒後水分7.9 mass%で乾燥処理を行ったケースはFFSが24~25 mm/minであった。この両ケースを比較すると,コークス燃焼と水気化熱との和が異なるが,成品歩留は同等であった。これは,燃焼前線降下速度上昇による影響と焼結層発生熱量増加の影響が相殺されたものと考える。換言すると,高水分造粒後の乾燥処理はFig.11に記載の通り,焼結層発生熱量が上昇するもののFFSも上昇するため,成品歩留は改善せず,維持に留まる。

Fig. 12.

 Maintaining yield at high moisture granulation and dry treatment.

上記,Fig.9からFig.12,およびTable 3の結果に基づいて,高水分造粒後の乾燥処理の成品歩留へ及ぼす効果をFig.13にまとめる。高水分造粒後の乾燥処理は,コークス燃焼効率向上と減水による蒸発熱が減少するため,焼結層中の発生熱量が増加する。一方,燃焼前線降下速度が上昇するが,成品歩留は維持可能となる。

Fig. 13.

 Effect of high moisture granulating and dry treatment on yield.

Fig.14に,各ケースの成品歩留結果を,燃焼前線降下速度との総合評価として示す。生産率は,成品歩留と燃焼前線降下速度の積に比例するため,図中に等積曲線を描いた。高水分(7.9 mass%)造粒の3ケースは,燃焼前線降下速度が高いため,成品歩留と燃焼前線降下速度の積が高く,特に,水分を6.2 mass%まで低下させたケースで最も高い。一方,水分6.5 mass%で造粒し5.3 mass%まで乾燥したケースや低水分(5.5 mass%)で造粒したケースは成品歩留と燃焼前線降下速度の積が小さい。従って,造粒後乾燥処理を行う場合,高水分造粒が前提となる。Fig.15に生産率を比較する。高水分(7.9 mass%)造粒後,6.2 mass%まで乾燥したケースで最も生産率が高くなった。

Fig. 14.

 Mapping of FFS and yield.

Fig. 15.

 Improvement of sinter productivity at high moisture granulation and dry treatment.

4. 考察

4・1 擬似粒子表面水からみた乾燥に伴う擬似粒子崩壊抑制条件

Fig.3に示すとおり,高水分造粒後の乾燥処理では,擬似粒子の中の−0.25 mm比率上昇は少ない現象を示しており,擬似粒子の崩壊が造粒後水分に依存することを示す。

Fig.16に,造粒および乾燥における擬似粒子構造を示す。造粒は,擬似粒子を構成する粒子同士が水架橋力で近接する。粒子同士の近接によって,余剰となった水が擬似粒子表層部へ移動し,水架橋力には関与しなくなる。高水分造粒においては,擬似粒子表層に存在する水が多いので乾燥しても水架橋力の消失は起こらない。一方,低水分造粒においては,造粒後水分が少ないため,粒子同士の近接が起こりにくく,擬似粒子表層へ移動する水量も少ない。従って,造粒後の乾燥によって擬似粒子の近接が解かれ,崩壊する。

Fig. 16.

 Image of pseudo-particle construction before and after dry treatment.

そこで,擬似粒子表層の水分量を調査すべく,粒径3-5 mmに整粒した擬似粒子を遠心分離器で処理し,処理前後の重量差を表面水量と定義して,表層の水分濃度を評価した。遠心分離器の処理条件は回転直径500 mm,回転速度2300 rpm,処理時間40分とした。供試料は,8ケ所のセルに1セルあたり,擬似粒子を5 g詰めた。

ここで,処理時間については,予め,処理時間と処理前後の重量差との関係より,重量差がある値に漸近する傾向となることを確認した上で,この漸近値を評価できる処理時間として40分を採用した。漸近値は,遠心分離処理しても脱水できない水分を意味しており,粒子内部に存在する水であると考えた。一方,遠心分離処理して脱水される水を粒子表面水であると考えた。

遠心分離処理によって粒子表面水を評価する方法は,既報2)の考え方に基づく。

今回の実験水準である造粒後水分5.5 mass%,6.5 mass%,7.9 mass%の各ケースについて,遠心分離機による減水量をTable 4にまとめる。

Table 4.  Separating moisture quantity from granulated sinter raw materials (Configuration Separator). (mass%)
Case 1 2 3
Moisture after granulating 7.9 6.5 5.5
Separating moisture quantity (centrifugal separator). 2.9 1.2 0.3

造粒後水分7.9 mass%,6.5 mass%および5.5 mass%においては,遠心分離による水はそれぞれ2.9 mass%,1.2 mass%,0.3 mass%であった。造粒後水分6.5 mass%から5.3 mass%まで乾燥するケースでは,表面水がすべて消失する計算となり,擬似粒子内における構成粒子合体が多くの箇所で解かれたものと考えられる。一方,造粒後水分7.9 mass%から6.2 mass%まで乾燥するケースでは,表面水がまだ1.2 mass%存在する計算となり,擬似粒子内における構成粒子合体が維持されたものと考える。

4・2 水分凝集現象と乾燥処理の効果

Fig.3に示すとおり,高水分造粒後の乾燥処理では,擬似粒子の中の−0.25 mm比率上昇は少ない。このように,擬似粒子径がほぼ等しく擬似粒子水分が低下すると,Fig.8に示す通り,原料層温度の立ち上がりから最高温度の到達までに要する時間が短縮する。ここで,焼結層における乾燥現象に着目した気化時間を試算した。

Fig.17に,焼結層における水の気化現象の考え方を示す。まず,焼結層をコークス燃焼と水の気化の視点より,湿潤帯,乾燥帯,燃焼帯,冷却帯と大別される。単位断面における単位時間当たりの湿潤帯における水量変化は,乾燥帯からの移動による増加と排ガスへの移動による減少である。

Fig. 17.

 Concept of moisture vaporization and condensation in sinter packed bed.

前者は,以下1)~3)の積で記述される。

1)乾燥帯降下速度

2)焼結原料の充填密度

3)湿潤帯における焼結原料中の水濃度(水分)

ここで乾燥帯降下速度が燃焼前線降下速度(FFS)を意味する。ここで,実際の計算では,単位断面を充填層高さ方向と直交する一辺1 cmの正方形として試算した。また,湿潤帯における焼結原料中の水濃度は,初期値として装入時原料水分を与えた。

後者は,以下4)~5)の積で記述される。

4)湿潤帯を流通するガス温度における飽和蒸気密度

5)充填層を流通する空塔風速。

上記計算に基づき,湿潤帯における水の凝集量は前者と後者の差で求まる。

さらに,熱量変化に着目すると,湿潤帯における水の凝集に伴い,湿潤帯温度は上昇する。温度計算における前提として,下記設定した。

ア)FFSおよび空塔風速は実験値を採用する。

イ)湿潤帯における焼結原料温度および湿潤帯を流通するガス温度は,初期温度(焼結開始時)15°Cで水の凝集熱のみで変化する。

ウ)湿潤帯における焼結原料温度と湿潤帯を流通するガス温度は常に等しい。

エ)ウ)を満たすために,単位時間(1分)あたりの水の凝集熱は湿潤帯原料および単位時間(1分)あたりに流通するガスへ,等温となるように分配される。

オ)湿潤帯における焼結原料温度および焼結原料中の水濃度(水分)は一定とする。即ち,焼結充填層高さ方向の温度勾配および濃度勾配は0である。

Fig.18に,造粒後水分7.9 mass%において乾燥処理しないケース(装入時水分7.9 mass%)および乾燥処理するケース(装入時水分6.2 mass%)について,乾燥帯から湿潤帯への,および湿潤帯から排ガスへの移動水量の試算結果を示す。

Fig. 18.

 Moisture transition into and out of wet zone.

両ケース共に,焼結開始直後は,乾燥帯から湿潤帯への移動水量が湿潤帯から排ガスへの移動水量よりも,遥かに大きい。これは,湿潤帯への水の凝集量が多いことを意味する。時間経過と共に,湿潤帯から排ガスへの水移動量が急激に上昇する。これは,水の凝集に伴う湿潤帯の温度上昇により,飽和水蒸気量が増加するためである。この間,乾燥帯から湿潤帯への水移動量もわずかに上昇するが,これは水の凝集に伴う湿潤帯水分上昇により,乾燥水量が増加するためである。やがて,乾燥帯から湿潤帯への移動水量,および湿潤帯から排ガスへの移動水量が合致する。即ち,水の凝集は起こらず,湿潤帯の水分は平衡状態となる。即ち,気化した水は,全量,湿潤帯を通過し排ガスとして放出される。平衡状態到達後の乾燥帯で気化する水量は,乾燥処理しないケース(装入時水分7.9 mass%)で0.42 g/min,乾燥処理するケース(装入時水分6.2 mass%)で0.37 g/minである。

Fig.19に,湿潤帯水分の経時変化を示す。乾燥処理しないケース(装入時水分7.9 mass%)および乾燥処理するケース(装入時水分6.2 mass%)において,平衡状態到達後の湿潤帯の水分はそれぞれ9.8 mass%および7.9 mass%まで上昇する。なお,水分の変化幅はそれぞれ1.9 mass%および1.7 mass%であり,乾燥処理したケースの方が小さい。

Fig. 19.

 Transition of moisture concentration in condensed zone.

Fig.18で示した平衡状態到達後の単位時間当たりの気化水量比は0.88(=0.37/0.42),Fig.19で示した平衡状態到達後の湿潤帯水分比は0.80(=7.9/9.8)である。造粒後の乾燥処理により,当然,気化水量比および湿潤帯水分比は共に1より小さくなる。重要な点は,前者よりも後者が小さくなる点である。その比は,0.91(0.80/0.88)である。これは,乾燥処理によって,水の気化に要する時間が短縮することを意味し,原料充填層通気性以外の因子である乾燥速度上昇がFFS上昇に寄与することを意味し,Fig.6の高水分造粒における焼成時通気性が同等でもFFS上昇する事象を説明できる。実際に,高水分(7.9 mass%)で造粒した場合,乾燥処理によって水分を6.2 mass%まで低下した場合,Fig.4に示すように焼成時通気性を維持しつつ,Fig7に示すように,平均FFSは23.5 mm/minから25.0 mm/minへ6%向上した。前述の,気化水量比および湿潤帯水分比の比率0.91の逆数がFFSの向上度であり1.10となる。増分の10%はFFS向上度6%に近い値であり,概ね定量的に説明できる。

以上の結果および考察を踏まえ,造粒後の乾燥処理の燃焼前線降下速度へ及ぼす効果をFig.20にまとめる。

Fig. 20.

 Effect of high moisture granulating and dry treatment on flame front speed.

Fig.3に示した通り,造粒後原料の乾燥処理によって,擬似粒度−0.25 mmが増加した。但し,造粒における水分が高い場合,その増加は少なかった。これは,Table 4に示したとおり,表面水量が多いため,乾燥処理後も表面水が残存したものと考察した。

さらに,Fig.4-6に示した通り,造粒水分の高い場合,造粒後原料の乾燥処理によって,焼成時通気性は維持でき,燃焼前線降下速度は向上した。擬似粒度−0.25 mm上昇にもかかわらず,焼成時通気性維持できた要因については,Fig.19に示したように,湿潤帯水分差が造粒後水分差以上に低くなり,通気抵抗低減に結び付いたものと考察した。さらに,燃焼前線降下速度が向上した要因は,Fig.8に示したとおり,原料水分の低下によって,水気化開始から炭材燃焼開始までの時間が短縮された効果と考察した。

5. 結言

本研究では,水分設計に対する指針を得ることを目的として,造粒段階と焼成段階における原料水分をパラメータとして,焼結過程における燃焼前線降下速度や成品歩留に及ぼす影響を評価し,以下の知見が得られた。

(1)焼結原料造粒後の乾燥処理は,造粒後水分が高いケースでは成品歩留を低下させずに燃焼前線降下速度が上昇する現象を確認した。

(2)(1)において,燃焼前線降下速度上昇は,造粒強化による通気性向上に加えて,装入時水分低下による充填層内乾燥速度向上が要因である。

(3)(1)において,燃焼前線降下速度上昇にも係わらず,成品歩留が維持された要因として,蒸発熱低減および粉コークス燃焼効率向上が挙げられる。

(4)乾燥処理による擬似粒子崩壊は,遠心分離機で計測される擬似粒子表層部の水分が乾燥による減少水分よりも大きい場合に抑制される。従って,高水分造粒においては,表層水分が多いため,擬似粒子崩壊が起こりにくい。

(5)焼結原料充填層における水の移動速度試算より,焼結原料造粒(水分7.9 mass%)後の乾燥処理有りのケース(装入時水分6.2 mass%)は乾燥処理無しと比較すると,湿潤帯水分の平衡状態到達後において,湿潤帯水分比0.80=(7.9/9.8)と対して,単位時間当たりの気化水量比0.88(=0.37/0.42)が高い。よって,上記(2)記載の充填層内乾燥速度向上が説明できる。

文献
 
© 2017 The Iron and Steel Institute of Japan

This article is licensed under a Creative Commons [Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International] license.
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
feedback
Top