鉄と鋼
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高温プロセス基盤技術
炭材存在下での石灰石熱分解挙動 −深層学習を用いた反応性評価−
杉浦 太郎 奥村 圭二
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2018 年 104 巻 12 号 p. 758-765

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Synopsis:

This paper discussed reaction on thermal decomposition of limestone and Boudouard reaction.

Thermogravimetric analysis of mixed powder samples of limestone and carbonaceous material was carried out. The ratio of the sequential reaction, αc was 0.65 when limestone powder with large particle size and graphite powder with small particle size were used. It was found that the reactivity varies depending on the states of dispersion and mutual coating of the powder particles. Deep learning by recurrent neural network (RNN) and convolutional neural network (CNN) was applied to calibrate weight loss curve of TG analysis and predict reactivity of samples. The TG curve corrected by RNN was almost equivalent to that processed manually. CNN required more learning to evaluate the reactivity of the sample more accurately in the present conditions. We presented that the constructed models are extremely powerful tool for evaluation of metallurgical reactions.

1. 緒言

日本の鉄鋼業はたゆまぬ省エネ努力により生産工程で世界最高水準のエネルギー効率を達成し,CO2削減に貢献している。今後は,地球規模で更なるCO2削減が望まれているが,そのためには,さらなる技術開発が必要であり,長期的には,革新的な技術が必要である。また,最近のCOURSE50では,2030年頃までにCO2排出量約30%削減の技術を確立し2050年までの実用化と普及を目指して,高炉への多量水素利用による還元促進などの研究が進行中である1)

これらの背景より,本研究では,高炉に石灰石を装入した場合2)を想定し,高炉における塊状帯の反応に着目する。塊状帯では,鉄鉱石の還元のほか,以下の反応が考えられる。

  
CaCO3=CaO+CO2(1)
  
CO2+C=2CO(2)

反応(1)は石灰石の熱分解反応,反応(2)はブドワー反応である。このとき,石灰石の熱分解で生じたCO2をそのまま反応(2)に用いることを考えると,全体として反応(3)の連続反応が得られる。

  
CaCO3+C=CaO+2CO(3)

反応(1)に関しては,これまで,石灰石の組織や大きさの違い,反応雰囲気によって分解速度,分解機構が異なることが報告されている38)。反応(2)に関しては,Al2O3,SiO2,Fe2O3,CaCO3のように様々な添加元素を加えた際の反応速度が評価されており912),特にCaOはブドワー反応の触媒として働くという報告13)がある。このように,反応(2)にCaCO3を添加したという報告はあるが,反応(1),(2)は,独立に反応していると考えられており,反応(3)については従来あまり検討されていない。しかし反応(3)の存在を示すことができれば,反応(1)から生じるCO2はそのまま高炉ガスとして炉頂から排出されているのではなく,反応(3)に用いられていることを示すことができる。つまりCOURSE50におけるCO2の排出抑制という命題に対して,新しいアプローチとなりうる。

また,最近,機械学習論の分野で深層学習(ディープラーニング)技術が急速に発展している。この中でも,再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:RNN)は音声認識や,自然言語処理の分野で大きな成果を上げている。特徴としては,系列内の要素の並び(文脈)に意味があるようなデータに対して有効であり,人間が物事を記憶することを模した演算を行うことである。代表的なRNNとしてはGoogleのNeural Machine Translation14)があげられ,長期記憶の役割を果たす,LSTM(Long Short-Term Memory)15,16)などを用いることでRNNを設計し,機械翻訳を行っている。また,畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)は,画像認識分野で大きな成果を上げている。特徴としては, 生物の視覚野に関する神経細胞を模した,畳み込みとプーリングという画像処理の基本的演算を行うことであり,代表的なCNNのひとつであるLeNet17)では,Fig.1のように,合計4回畳み込みとプーリングを行い,全結合層を2回用いることで,入力画像に対して,10通りの分類問題を解いている。材料研究において,Adachiら18)は,材料組織の画像データに対して分類名をラベリングしたデータセットに対して,CNNを適応している。そこで本研究では,石灰石の熱分解反応と,ブドワー反応間の連続反応(3)について調査検討することを目的とする。具体的には,炭材および粒子サイズを変化させ,熱重量分析(TG)を行って,反応率の評価を行った。また,反応(3)について詳細な考察を行うため,実験試料の反応開始温度を正確に取得するためのRNNモデルと,粉末試料の元素マッピングデータから,試料の反応性を予測するCNNモデルを作成した。

Fig. 1.

LeNet17).

2. 実験

石灰石とCの反応に及ぼす炭材の種類および粒子サイズおよび昇温速度の影響を評価するため,Table 1に示すような実験試料を作製した。ここで,A1,A2は,炭材とCaCO3の等モル混合粉末である。A1は CaCO3は粒径10 μm(純度99.0%),グラファイトは粒径−45 μm(45 μm以下)のもの,A2は炭材として活性炭を用いた。石灰石と炭材間の反応に及ぼす粒子サイズの影響を評価するため,CaCO3と炭材をモル比2:1で混合した粉末試料150 mgを作成した。これは,反応(1)で生成するCO2がCと反応しやすくするためで,CaCO3を過剰に加えることとした。CaCO3は粒径10 μm,75-150 μmの2種類,炭材としてグラファイトを粒径−45 μm,10 μmの2種類を用いて,粒径の異なる2つの試料を組み合わせたB1~B4の4種類の試料を作製した。実験には熱天秤重量測定装置を用いた。実験装置の模式図をFig.2に示す。Aの天秤機構部ユニットからN2ガスを流入する。ガスは反応管を通り,下部から試料の反応生成ガスと共に排出される。実験手順としては,各試料を3 g作成したのち,0.3 gもしくは0.15 gをはかりとり,アルミナるつぼ(外径13 mm,内径12 mm,高さ12 mm)に装入し,熱天秤に吊るす。窒素ガスを流量50 mL/minで流入する。昇温速度は20°C/minもしくは99.9°C/minで,1000°Cまで昇温して,10分間保持した。この間の試料の重量変化を測定した。

Table 1. Experimental conditions of samples.
No.Weight [g]Particle size [μm]Heating rate [°C/min]
CaCO3CTotalCaCO3C
A10.2680.0320.310–4520
A20.2680.0320.310*20
B10.14150.00850.1575-1501099.9
B20.14150.00850.1510–4599.9
B30.14150.00850.1575-150–4599.9
B40.14150.00850.15101099.9
B40.08930.01070.1101099.9
N0.26800.2681020

*activated carbon

Fig. 2.

Schematic illustration of experimental apparatus.

3. 実験結果と考察

3・1 石灰石−炭材間の反応に及ぼす炭材の影響

Fig.3にN,A1,A2の各試料の熱重量分析結果を示す。左縦軸は試料の重量変化,右縦軸は温度,横軸は時間である。2400 sから3000 sまで大きな重量変化が確認できた。このときの温度は800°Cから1000°Cに対応している。Nの理論重量減少の値は117 mg(0.268/100×44=0.117 g)であることから,CaCO3は完全に熱分解していると言える。また,A1,A2のグラフの重量損失もNとほぼ一致することから,A1,A2では炭材はほぼ反応していないと考えられる。ブドワー反応の活性開始温度は800°Cから1000°Cと知られているため,CaCO3の熱分解により生じたCO2がそのまま炭材近傍に残っていれば,ブドワー反応にCO2が使われる可能性が高い。しかし昇温速度が20°C/minと遅いため,CaCO3の熱分解反応が先に起こり,ブドワー反応が起きる前にCO2は炉内から排出されてしまったと考えられる。また,炭材の表面積はグラファイト,活性炭の順で大きくなり,一般的に反応界面積が大きいほど,反応は起きやすくなると知られているが,本実験では炭材の反応表面積の違いによる差は表れなかった。

Fig. 3.

Weight change for N, A1 and A2 samples.

3・2 石灰石−炭材間の反応に及ぼす粒子サイズの影響

昇温速度20°C/minではCaCO3の熱分解温度とブドワー反応の温度域が異なることから,反応(3)は起こらなかった。そこで,昇温速度を99.9°C/minとして,急速に温度を上昇させることによって,反応(1)と反応(2)を同時に起こすことを考えた。

B1~B4の試料の重量変化と時間の関係をFig.4に示す。いずれの試料もCaCO3の熱分解による理論重量減少値よりも重量が大きく減少した。これは試料中の炭素がCaCO3の熱分解で発生したCO2と反応して,COになるガス化反応が起きたためであると考えられる。

Fig. 4.

Effect of particle size on weight change for different samples.

以下に試料中炭素の反応率を定義する。

  
αC=ΔWΔWCaCO3WC(4)

ここで,ΔWは反応前後の試料の重量減少量,ΔWCaCO3は反応(1)による理論重量減少量(化学組成から求めた),Wcは初期炭材量である。αcは反応(2)の反応率であり,本実験で反応(2)が起きるときは事実上反応(3)が起きていると同値であるので,αcは反応(3)の反応率となる。

αcと時間の関係をFig.5に示す。B1がαc=0.65で最も高くなった。これは,CaCO3の粒径を大きくすることで反応(1)の反応開始温度を上昇させ10),炭材の粒径を小さくすることで反応表面積を大きくしたことにより反応率が高くなったと考えられる。また,各試料の反応性には粒子相互の被覆効果12)が存在すると考えられる。本研究における被覆効果とは,CaCO3表面にCが付着することでCaCO3とCの反応界面積が増大することである。被覆効果に関しては以下で導出する被覆度を用いて考察する。

Fig. 5.

Effect of particle size on carbon reduction rate.

すべての粒子は球状と仮定する。成分Aの粒子一つの体積をvA,表面積をSA,粒子径をdAとすると,

  
vA=π6dA3(5)
  
SA=πdA2(6)

と表せる。また,この粒子がNA個集まった集合体を考えた場合,この集合体の体積をVAとし,試料中の成分Aの重量をWA,密度をρAとすると,

  
NA=VAvA(7)
  
VA=WAρA(8)

となる。CaCO3とCについての2種類の粒子から成る集合体において,両者の粒子の全表面積の比を被覆度Coverageと定義する。

  
Coverage=NCSCNCaCO3SCaCO3=VCVCaCO3dCaCO3dC(9)

ここで,本実験に用いた試料ではWCaCO3=141.5 mg,WC=8.5 mgであり,密度ρCaCO3=2.71 g/cm3(calcite)19)ρC=2.16 g/cm3 20)であるので,(8)式を用いて,

  
VCVCaCO30.075(10)

となる。つまり,被覆度Coverageは試料の粒子径にのみ依存するパラメータとなる。

  
Coverage=0.075dCaCO3dC(11)

この式を用いて,各試料について被覆度を求めたものがTable 2である。B1が0.75となり最も大きくなった。なお計算ではCaCO3が75-150 μmの粒子はdCaCO3=100 μm,Cが−45 μmの粒子はdC=45 μmとした。

Table 2. Calculated coverage rate of graphite to CaCO3.
No.CaCO3 [μm]C [μm]Coverage [–]
B175-150100.75
B210–450.17
B375-150–450.17
B410100.08

Fig.6にB2,B4の試料のSEM写真を示す。Fig.6(a)よりB2はCaCO3粒子が凝集していることがわかった。このことからCaCO3の粒子は凝集して10 μmよりかなり大きくなっていることがわかる。そこでdCaCO3=100 μmとした。一方,Fig.6(b)よりB4は粒子が互いに分散していることがわかった。そこでdCaCO3=10 μm,dC=10 μmとした。ここで,C-45 μmの試料は,dC=45 μmとしたため,被覆度は小さく見積もられている。被覆度の計算結果から,B2とB3は被覆度の観点からは同じような状況で反応していることがわかる。また,被覆度の大きさが反応率を特徴づけており,被覆度を計算することで反応率の大小を説明することができた。

Fig. 6.

SEM images of samples. (a) B2, (b) B4

3・3 Recurrent Neural Networkを用いた熱重量曲線の補正法

試料の反応性を評価する方法の一つに反応開始温度がある。熱重量曲線から反応開始温度は求めることができる。一般に,標準試料を用いて熱重量曲線を補正する場合と,測定曲線をトレンド直線で補正した場合とでは,異なる結果となる場合がある。このため,反応開始温度を一意的に求めることができない。また,トレンド直線の選び方でも結果が変わってくる。このように異なったDetrend法によって同じ実験データから複数の反応開始温度が得られることが問題である。この問題の解決策として,実験データに対してDetrend法学習済みRNNモデルを統一的なDetrend手法として用いることで,反応開始温度を一意的に取得することを考える。

Fig.7に学習に用いたデータセットを示す。試料量が0.1-0.3 g間で粒径10,75-150 μmのいずれかのCaCO3粉末試料を用いた。実験条件としては窒素ガスを流量50 mL/minで流入し,昇温速度は99.9°C/minで,1000°Cまで昇温して,10分間保持した。この間の試料の重量変化を測定した。その後,実験で得られた熱重量曲線とそれに適当な補正を加えたDetrended dataの組をひとつのデータセットとして,26組作製した。ここでグラフ縦軸は無次元重量変化とした。図に示した小さいグラフのデータ26組を学習に用いて,大きいグラフのデータ2組をテストに使った。

Fig. 7.

Datasets used for RNN learning.

Python上でtensorflow,kerasを動かした。設計したモデルをFig.8に示す。Inputとして,時系列データであるExperimental dataはBLSTM Block(Bidirectional21)LSTM)でEncodeされ,時系列データの特徴をニューロンが認識する。その後,LSTM BlockでOutputに合うようにDecodeする。さらに,Affine,Linear Layerで形を整えてOutputを出力する。BLSTM,LSTMの隠れ層の数は200,lossはMean Squared Error(MSE),epoch数は800,OptimizerはSGD(Stochastic Gradient Descent)を用いて学習率は0.1とした。

Fig. 8.

RNN model. (Online version in color.)

Fig.9に学習済みRNNによるDetrend結果(Detrended data by RNN)を示す。図に示すようにマニュアルで補正した重量減少曲線(Detrended data)とRNNによって補正した重量減少曲線はほぼ一致した。Detrended dataではグラフ後期に意味のない重量増加が残っているが,RNNではそれが消去されていることがわかる。また,RNNによる結果が,微妙にDetrended dataと異なる点は,用いたモデルがDetrendの詳細を学びきれていない点が表れており,学習に用いるデータ数を増やすことや,データ数に応じてモデル構造を変えることで対応は可能である。RNNにより,Detrendを正確に行うことができたので,重量減少曲線から,反応(3)の反応開始温度を一意的に得ることができると考えられる。また,RNNモデルを用いることで,試料の熱重量曲線の補正を正確に自動で行うことができると考えられる。

Fig. 9.

Analyzed data by RNN. (a) B2, (b) B3

3・4 Convolutional Neural Networkを用いた試料の反応性の予測

B4の試料を用いて3回の実験を行った結果をFig.10に示す。なお試料重量は0.1 gとした。図に示すように,試料によって重量変化量が異なる結果が得られる場合がある。これは,試料ごとに粒子の混合の様子が異なるためと考えられる。実験前の試料に対してSEMで元素マッピングを行い,OとCの分布状態を調べた後,実験を行い,元素マッピングデータに高反応性または低反応性のラベルをつけたデータを作った。ここで,CaCO3とグラファイト10 μmの試料を等モルで手動で混合した試料1 gを作成し,そこから元素マッピング用の試料と反応性実験に用いる試料0.1 gを取り出し,実験を行った。実験条件は,窒素ガスを流量50 mL/minで流入し,昇温速度は99.9°C/minで,1000°Cまで昇温して,10分間保持した。この間の試料の重量を測定し,反応率αcを求めている。αcから,反応率5%未満のグループを低反応性,50%以上のものを高反応性とした。今回の実験では反応率が5~50%の間のものはなかった。元素マッピングデータに反応性を記したデータセットをFig.11に示す。ここで,緑がO,赤がCである。つまり,緑がCaCO3,赤がCの分布に対応している。データ数は学習用に12枚,テスト用に4枚を用いた。画像は高さ190ピクセル,幅256ピクセルのRGBカラー画像である。このデータセットを用いて,Convolutional Neural Networkに試料の反応性評価を学ばせることで,試料の反応性を判定するモデルを作製した。

Fig. 10.

Difference between high and low reactivity samples.

Fig. 11.

Datasets for CNN learning.

Neural Network Console22)(:NNC)を用いて設計したモデルをFig.12に示す。入力は元素マッピングの画像であり,Convolution Layerを用いて画像から特徴を取り出す。その後,MaxPooling Layerにて特徴を集約し,集約した特徴をAffine Layerで形を整えて,最終的に2つのニューロンに情報が集約する。そのニューロンにSoftmax Layerをかけることで,2つの確率に変換する。この2つの確率は高反応性である確率と低反応性である確率を示す。lossはCategoricalCrossEntropyを用いた。Dropout23)を用いることで,一般的にモデルは汎化性能が向上すると言われており,今回のモデルでは,学習データに適合しすぎてテストデータでうまく予測ができない過学習23)とよばれる問題を回避するために組み込んだ。

Fig. 12.

CNN model.

モデルが予想した反応性確率の結果をまとめたのがTable 3である。4つの試料中3つの試料については反応性を当てることができた。高反応性試料はCが分散,CaCO3が凝集している元素マッピングデータが該当し,また,予想が当たった低反応性試料はCが凝集して,CaCO3が分散しているものが該当していることがわかる。3・2節の実験結果から得られた試料の特徴と一致した。予測がはずれた試料は,CとCaCO3がそれぞれ凝集しており,CNNは低反応性の特徴ではないと判断したと思われる。これは,外れた画像のもつ低反応性の特徴は,学習データにあまり含まれていなかったことから,予想を誤ったと考えられる。より高精度に反応性を予測するには,さらに多くのデータを用いて学習させることにより可能になる。従来,混合度合から反応性を予測する際,画像から面積比,組成比などの特徴量を用いて反応性を予測していた。元素マッピング写真から反応性を予測する手法の例として従来のロジスティック回帰モデル24)を用いた場合,モデルは全てを高反応性と予測した。これは,モデルが低反応性の特徴を捉えられなかったと考えられる。しかし,本研究で用いたCNNモデルはロジスティック回帰モデルに比べて,低反応性試料を一つ当てることができた。このことから,本CNNモデルは用いたデータからモデル内で最適な特徴量を抽出したため,低反応性の特徴をある程度捉えることができたと考えられる。

Table 3.

Comparison of reactivity between CNN prediction, Experimental result and Logistic regression.

このようにCNNを用いることで,工業的なスケールの反応器においても,試料の元素マッピング写真から反応器内の反応率を予測しながら操業を行うことができるので,安定操業に貢献できると考えられる。

4. 結言

CaCO3と炭材の混合粉末について,熱重量分析を行いCaCO3+C=CaO+2COの反応について反応性の評価を行った,以下の結論を得た。

(1)CaCO3と炭材の混合粉末に対して,昇温速度20°C/minで1000°Cまで昇温しながら反応を行ったところ,CaCO3は完全に熱分解したが,炭材はほとんど反応しなかった。炭材を変更しても実験結果に差は生じなかった。

(2)昇温速度を99.9°C/minとすることによりCaCO3の熱分解反応とブドワー反応を同時に起こすことができた。CaCO3の粒径を大きく,炭材の粒径を小さくすると,CaCO3上に炭材が被覆することで,炭材の反応率がαc=65%まで大きくなった。

(3)Recurrent Neural Networkを用いた熱重量曲線の補正では,従来マニュアルで行っていた補正を精度よく,自動で行うことができた。このRNNモデルによって試料の反応開始温度などの反応性の評価に役立てることができる。

(4)Convolutional Neural Networkを用いた試料の反応性の予測を行った。十分な精度を得るにはより多いデータを用いて学習させる必要があった。

(5)今回作成したモデルは,工業的にスケールアップする際に非常に強力なツールとなると考えられた。

文献
 
© 2018 一般社団法人 日本鉄鋼協会

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https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
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