鉄と鋼
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特集「熱間圧延ロールの課題の克服」
熱間転動摩耗試験の有限要素解析
早川 邦夫
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2018 年 104 巻 12 号 p. 728-734

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Synopsis:

Finite element analysis of 3D hot rolling wear test was performed. This test consists of two disks, one of which is Material disk made of hot rolled material and another is Roll disk made of the material for roll for hot rolling. These two disks contacts with certain load, and the certain relative sliding velocity is given by rotating each disk with prescribed rotation speed. Firstly, axisymmetric heating process of Material disk was performed in order that heated disk with appropriate distribution of temperature as well as deformation was prepared for 3D hot rolling wear test simulation. Although the induction heating is used in the actual setup, radiant heating process was applied in the simulation. Then, the 3D hot rolling wear test was performed. Heating of Material disk and cooling of Roll disk by water was calculated by heat transfer process between two objects. Wear depth of two disks was estimated by using Archard’s model-based equation. As a result, the change in temperature of Roll disk with contacting with Material disk and cooling by water was evaluated appropriately. For the wear depth, the value was around 100 times larger than that obtained by the corresponding experiment. That was due to incorrect parameter used in wear estimation equation. It was revealed that the comparison to the corresponding experiment was inevitable for further precise simulation.

1. 緒言

熱間圧延ロールは,その過酷な使用状況においても耐摩耗性や耐損傷性が求められている。特に,近年高強度な鋼板の圧延のため,圧延機やロールへの負荷が増大する傾向にある。ロール材料の耐摩耗性を明らかにすることは,ロール材料選択において重要である。そのためには,実際の使用状況に近い環境での摩耗試験が有効であり,熱間でロール材料と被圧延材料からなる2つの円盤の側面同士をある荷重で押し当て接触させ,ある相対すべり速度を与えつつ回転させ,摩耗挙動を調査する,いわゆる熱間転動摩耗試験機が用いられている14)。この装置の大きな特長として,摩耗調査において重要となる荷重,相対すべり速度および温度を独立に制御できる。これまでに多くの研究例が報告されている。例えば,Hashimotoは,グレン鋳鉄,高クロム鋳鉄とハイス系白鋳鉄の摩耗量を比較し,その比が実際の圧延とほぼ同じであると報告している5)。Ichinoらは,ハイスロール材の摩耗特性に及ぼすCrとMoの影響について,この試験法を用いて調査を行った6)。また,Inoueらは,Roll diskに繊維強化複合金属4種類をはめ込み,同一条件で転動摩耗試験を行い,それらの摩耗特性を評価している7)。Yanagidaらは,あらたに転動摩耗試験機を設計し,その性能調査を行っている8,9)

本試験において,温度は,放射温度計などを用いて非接触で測定する。最も興味のある領域は,ロール材料と圧延材料とが接触している面であるが,その接触面そのものの温度を非接触で測定するのは困難である。また,実験中材料は温度分布により膨張している。また,熱軟化により,塑性変形の可能性もある。Hertzの接触理論により接触圧力の分布が高精度に予測できるが,もし材料が降伏していれば,予測精度の低下は避けられない。

以上のように,実験や弾性理論のみでは議論できない事象が実験中に生じている可能性は高い。この試験を有限要素法で模擬できれば,接触部の温度分布,圧力分布,塑性変形の有無などの情報が得られる。また,適切な摩耗予測式を適切な材料定数とともに用いることで摩耗深さの予測も可能となる。特に,材料の温度やひずみ速度依存性を考慮した変形抵抗式を用いることで,実験中の温度での材料挙動を解析できる。なお,実験結果との比較による精度検証は必須である。

本論文では,熱間転動摩耗試験機1,58)による実験を模擬した有限要素解析を試みる。解析では,誘導加熱コイルによる加熱ならびに流水による冷却過程については,解析コストを考慮し,熱伝達解析に置換したが,試験中の熱・力学過程をすべて考慮した。また,Archard10)の摩耗予測式により,試験中の摩耗深さの解析も実施した。

2. 熱間転動摩耗試験機の解析モデル

解析の対象とする熱間転動摩耗試験機の概略をFig.1に示す。Material diskをあらかじめ約800~900°Cに加熱した後,Roll diskを押し当てて,両者を規定の回転速度で回転させ,ロール材料ディスクの摩耗の挙動を調べる。実際には,Material diskの加熱には誘導加熱コイルが用いられるが,解析では,一定の温度の物体HeaterとMaterial diskとの間の熱伝達により,試験中の温度がほぼ一定になるように設定した。HeaterとMaterial diskには,隙間(5 mm)を空け,隙間があっても熱伝達が解析できるよう設定した。また,実験では,潤滑を兼ねて流水を当てるが,解析では,一定の温度(水温)に保持した物体Coolerによる熱伝達解析により冷却を模擬した。Coolerの位置および大きさは,実際の装置の冷却位置を模擬するように配置した。CoolerとRoll diskの物理的な接触はないが,熱伝達は解析できるように設定した。CoolerとRoll diskの隙間は,側面および端面ともに1.25 mmとした。

Fig. 1.

Schematic illustration of hot rolling wear test. (Online version in color.)

Table 1は,本解析に採用した実験条件を示す。Material diskの材料には,S45Cを想定した材料を割り当てた。一方,Roll diskの材料には,高速度鋼を想定した材料を採用した。ただし,これらは,熱・力学的のみの想定である。特に,圧延ロール材料は,炭化物の析出状態によりその力学的特性や耐摩耗性が大きく変化するが,本解析では,炭化物の特性を考慮していない。

Table 1. Experimental condition of hot rolling wear test for numerical analysis.
Roll disk (Test piece)Material (assumed)High Speed Steel
TemperatureApprox. 500 ~ 600°C
GeometryDiameter: DR = 80 mm
Thickness: tR = 10 mm
Material disk
(Opposite piece)
Material (assumed)S45C
TemperatureApprox. 800 ~ 900°C
GeometryDiameter: DM = 160 mm
Thickness: tM = 15mm
Load P1 kN
Rotating velocityRoll diskV1 = 2094 mm/s (500 rpm)
Material diskV2 = 2304 mm/s (275 rpm)
Relative sliding velocity vR210 mm/s (10% of V1)
Friction coefficient μ0.35
Revolution of roll disk (duration)500 (60 s)

両ディスクの寸法については,文献を参考に決定した。Roll diskのほうが,Material diskにくらべて厚さが小さいモデルとなっている。

Roll diskの回転数を500 rpmとした。その時の周速V1は2094 mm/sである。V1の約10%の相対すべり速度を与えるため,Material diskの回転数を275 rpm(V2=2304 mm/s)とした。

押付け荷重Pは1 kNとした。例えば,Inoueら7)は,繊維強化複合金属の熱間摩耗特性を調べる目的で,本研究と同様な熱間転動摩耗試験機を用いているが,その時はP=196 Nとしている。また,Yanagida and Ukai8)P=700 Nで実験を行っているが,この場合Hertzの接触圧力で約20%の差を生じる。実際には,材料は降伏していることが予想されるので,その差はさらに小さくなることが考えられる。

有限要素解析ソフトウェアとして,simufact.formingを用いた。このソフトウェアでは,Euler要素による動的陽解法あるいはLagrange要素による静的陰解法かを選択できるが,本論文では後者を採用した。

3. 有限要素解析

Fig.2は,本論文で採用した解析プロセスを示す。まず,Material diskを所定の温度まで加熱した。このとき,ディスク内の温度分布や熱変形を考慮した。このプロセスは,計算コスト削減のため,2次元軸対称解析とした。実験では,加熱には高周波誘導加熱を用いているが,本解析では,輻射で代用した。続いて,2次元軸対称問題の解析結果を用いて,3次元の熱間転動摩耗試験の解析を行った。

Fig. 2.

Process of analysis. (Online version in color.)

4. 軸対称加熱過程の有限要素解析

4・1 解析条件

Fig.3は,軸対称モデルによるMaterial diskの加熱解析のモデルおよび解析結果の温度分布を示す。熱源物体として,HeaterをMaterial diskから5 mmの隙間あけて設置した。Heaterは1500°Cに保持した。

Fig. 3.

Schematic illustration of axisymmetric heating calculation of Material disk. (Online version in color.)

本解析では,HeaterとMaterial diskとの間の熱伝達は輻射のみを考え,次式で与えた。

  
Q=εσ(THeat4TMat4)(1)

ここで,Q[W/m2]は熱流束,σはStefan Boltzmann定数(5.67051×10−8 W/m2・K4),THeatおよびTMatはそれぞれHeaterおよびMaterial diskのある位置における温度である。また,εは放射率であり,ここでは,20°Cのとき0.4,1200°Cのとき0.75に線形に変化するように与えた。現実には,両者の熱伝達が輻射のみであることはないと思われるが,ここでは,Material diskに必要な温度分布および熱変形を与えることを主眼としているため,このような解析とした。この解析にかかる時間は1分程度であった。

Fig.4は,Material diskに与えた温度依存性を考慮した材料特性を示す。これらは,材料特性解析ソフトウェアJMatProを用いて作成した。(a)は変形抵抗,(b)はYoung率EMat,Poisson比νMatおよび線膨張係数αMatを示す。材料が900°C近くになると,材料は大きく軟化し,変形抵抗はほぼ35 MPa程度になる。また,約700°Cを超えると相変化が生ずるため,νMatおよびαMatが大きく変化する。

Fig. 4.

Characteristics of material for Material disk. (Online version in color.)

4・2 解析結果

Fig.3の温度分布を見ると,外径部の両角部で約900°Cを示した。外径部の中央付近では約880°Cとなった。一方,内径部は約280°Cであった。また,外径部の厚さは内径部のそれと比べて大きくなった。これは,外径部には熱による膨張と塑性変形が発生していることが原因である。それらの変形は,拘束の少ない厚さ方向および外径方向に向かう。そのため,外径部先端に最大で約0.07の相当塑性ひずみが発生した。また,外径部においては,厚さ方向に約0.23 mm,半径方向に0.48 mm大きくなった。

Fig.5は,板厚方向中心部の半径方向に沿った温度変化を示す。外径部で約880°Cであるが,両角部はそれより高く約900°Cを示した。内径部では,約280°Cとなった。Yanagidaらによる高周波誘導加熱の解析結果8,9)と比較すると,概ね同様であることがわかる。熱間転動摩耗試験においては,Material diskは約900°Cに加熱・保持されて実験が行われているため,この解析結果を引き継いで転動摩耗試験を行うことは妥当であると考えられる。

Fig. 5.

Temperature distribution along radial direction. (Online version in color.)

5. ロール材料の熱間転動摩耗試験の有限要素解析

5・1 解析条件

4章で解析した2次元軸対称モデルを,解析結果ごと対称軸を中心に360°回転させて3次元モデルを作成した。両ディスクの有限要素分割については,まず軸対称断面に対して四辺形ソリッド一次要素で離散化した後,その断面を対称軸に対して回転方向に延伸させて3次元6面体ソリッド一次要素を作成した。Fig.6は,Roll diskおよびMaterial diskの軸対称断面における要素分割を示す。円周方向の分割数は,Material diskが250,Roll diskが180であり,中心角でみるとそれぞれ約1.44°および2.0°で離散化した。それぞれの要素数は,Material diskが24892,Roll diskが44640である。断面内における要素の最小寸法は,それぞれRoll diskが0.17 mm,Material diskが約1.06 mmである。

Fig. 6.

Discretization of axisymmetric section of disks. (Online version in color.)

Fig.7は,Roll diskに与えた材料特性を示す。解析におけるロール材料について,室温での引張強さを約1000 MPaとするような高速度鋼を想定した仮想的な材料モデルとした。変形抵抗を(a)に示す。Material diskと同様に,JMatProを用いて作成した。実験中,材料温度が上昇し軟化することが予想されるため700°Cまでのデータを用意した。Young率ERoll,Poisson比νRollおよび線膨張係数αRollは,(b)に示されている。約700°Cを超えると相変化が生ずるため,線膨張係数が急落する。

Fig. 7.

Characteristics of material for Roll disk. (Online version in color.)

本研究では,Material diskとRoll diskの熱伝達を,Roll disk表面上のある位置からMaterial diskまでの距離δに応じて,次式で表現した。

  
Q={HCT(1δδnear)(TMatTRoll)+0.7σ(TMat4TRoll4),if0δδnearHCVE(TAmbTRoll)+0.7σ(TMat4TRoll4),ifδ>δnear(2)

ここで,HCTおよびHCVEはRoll diskとMaterial disk間の熱伝達係数およびRoll diskから環境への熱伝達係数であり,HCTについてはFig.8に示すような接触圧力pに依存するものと仮定し,HCVE=50 W/m2・K4とした。また,TRollはRoll diskのある位置における温度である。また,δnearは熱伝達の影響範囲を示す定数であり,本解析ではδnear=0.2 mmとした。さらに,輻射も考慮した。

Fig. 8.

Heat transfer coefficient between Roll and Material disks as a function of contact pressure. (Online version in color.)

前述のとおり,Roll diskの冷却には,一定温度(20°C)の物体CoolerをFig.1のように配置した。CoolerとRoll diskは接触していないが,熱伝達を行うように設定した。CoolerとRoll diskの間の熱伝達係数HCoolは40 kW/m2・K4とした。

さらに,本解析では,接触面におけるRoll diskおよびMaterical disk両者の摩耗速度 を,次のArchard10)の式を基本とする式を用いて予測した。

  
w˙=KpvRH(3)

ここで,Kは比例係数,pは接触圧力,vRは相対接触すべり速度,Hは材料の強度を表現する関数値である。すなわち,摩耗深さ速度はpおよびvRに比例し,Hに反比例するモデルである。Hは本来であれば,材料ごとの温度やひずみ速度などの関数とすべきであるが,本研究では,まず摩耗解析の可能性を確認する目的のため,本解析では,材料ごとに一定とし,Roll diskおよびMaterial diskにおけるHとしてそれぞれ1200 MPaおよび850 MPaを与えた。Kは,摩耗量を決定するのに支配的な役割を有しており,その正確な同定には実験との比較が不可欠であるが,本論文では,Hの設定と同様に,熱間転動摩耗試験をどの程度模擬できるかに注目し,摩耗の定量的評価は今後の課題と考え,K=0.0001として解析を実施した。

本解析では,式(3)から,累積摩耗量を算出し,それをもとに各要素において算出される摩耗深さdwを評価した。さらに,本解析では使用したソフトウェアの機能を用いて,dwだけ表面の節点を移動させた。これにより,摩耗深さの寸法への影響を考慮した。

両ディスクの回転数および摩擦係数は,Table 1に示すとおりとした。解析では,1ステップにつきRoll diskが2°回転するようにした。総ステップ数は90000(1周につき180ステップ)である。すべての解析結果を保存できないため,90ステップごとに(1回転中2回)データを保存した。注目したい時刻については,その時刻に最も近い直前のデータを用いて,新たに詳細なステップを設定した解析を実施し,データをより狭い間隔で保存することで調べることができる。

5・2 解析結果

5・2・1 温度分布の解析結果

Fig.9は,Roll diskおよびMaterial diskの接触領域近傍における温度変化を示す。具体的には,幅方向に中央の表面で最も温度が高い節点値の変化を示す。Roll diskは,試験開始後に温度が大きく上昇し約300°Cになり,その後は緩やかに約400°Cまで増加した。一方,Material diskについては,試験開始時には約880°Cであったが,Roll diskとの接触により温度が低下し約850°Cとなった。その後はHeaterからの熱伝達により,わずかながら上昇し,ほぼ900°Cで一定の温度を保っていることがわかる。この温度変化は,実際の熱間転動摩耗試験を模擬しているとみなせる。

Fig. 9.

Change in temperature of contacting region of Roll disk and Material disk. (Online version in color.)

Fig.10(a),(b)および(c)は,それぞれt=30 sにおけるRoll disk側面の温度分布,側面中央部の円周上の温度変化およびt=30 sでMaterial diskと接触する位置の約1周分の時間における温度変化を示す。円周上の位置は,接触位置からの中心角θで表している。接触位置および回転方向を(a)に,接触,冷却開始および終了位置を(b)および(c)にそれぞれ記す。

Fig. 10.

Surface temperature of Roll disk at t = 30 s. (Online version in color.)

式(2)より,Roll diskのある位置がMaterial diskに近づくと接触していなくても熱伝達が開始するため,接触点の手前(θ=358°付近)から温度上昇が開始する。ただし,接触圧力は0であるので,Fig.8の通りHCTは低い値を取る。

Roll diskのある位置がMaterial diskと接触すると,接触圧力が上昇し,HCTは大きくなる。温度Tは,接触位置から約2°進んだ位置でピーク温度に達していることがわかる。Roll diskとMaterial diskの円周方向接触距離は約1.4 mmであり,その接触時間は約0.67 msである。また,ピーク温度を取る時刻は,接触が開始してから約1.3 ms後である。すなわち,接触部において熱伝達により熱がRoll diskに移動した後,温度が上昇するまでの時間差があるものと考えられる。

5・2・2 摩耗挙動の解析結果

Roll diskとMaterial diskの接触領域におけるvRは,想定上は210 mm/sであるが,解析では,約225 mm/sであった。Material diskの直径が熱膨張により設計上の数値160 mmより大きくなっていることが原因の一つとして考えられる。4・2節の議論より,熱膨張により半径が約0.48 mm大きくなっていることが予測される。このとき,Roll diskの直径は設計値通りとすると,vRは223.3 mm/sとなり,解析結果に近い値となった。

Fig.11は,t=1.2 sおよび30 sにおいて,Roll diskの接触部における接触圧力の分布を示す。摩耗がそれほど進んでいないt=1.2 sでは,接触圧力はほぼ均等に作用しているが,摩耗が進んだt=30 sでは,両端部に圧力が大きな領域があることがわかる。

Fig. 11.

Distribution of contact pressure at contacting region. (Online version in color.)

Fig.12は,Roll diskの摩耗深さdwの分布と,幅方向変化の時間変化を示す。本解析の条件では,t=60 sで,幅方向の中央部付近のdwは0.6 μmと算出されたが,これは,実験とほぼ同様であった。このdwの大きさは,主に式(3)におけるHおよびKの値による。本解析では,熱間転動摩耗試験の模擬が可能かどうかを検討することをおもな目的としたため,HおよびKを実験的に求めることはしなかったが,本解析を有効に利用するためには,これらの正確な同定が必要となる。また,dwの分布を見ると,両端部の摩耗が中央部に比べて大きい結果となった。これは,Fig.11からわかるように,時間の経過とともに両端部付近の接触圧力が高くなることが原因であると考えられる。

Fig. 12.

Wear behavior of Roll disk. (Online version in color.)

この熱間転動摩耗試験の解析には,CPUはIntel Xeon E5-2699v3(18コア),メモリ128 GBのHP Workstation Z840を用いた。解析では,8コアによる共有メモリ並列化を利用した。解析中の使用メモリは約7~8 GB,解析時間(total wall time)は約90日であった。計算コスト削減には,対称性を考慮した2分の1のモデルでの解析が考えられる。

6. 結言

熱間転動摩耗試験を有限要素解析にて模擬を試みた。ロール材料,被圧延材料は仮想的な材料を想定したが,温度依存性,ひずみ速度依存性を考慮した。また,高周波誘導加熱解析の代替として,通常の輻射解析ならびに接触しない状態でも熱伝達が発生するモデルを用いた熱伝達解析を実施した。得られた結果は以下の通りまとめられる。

(1)2次元軸対称熱・力学解析において,高周波誘導加熱を模擬した輻射解析により,誘導加熱とほぼ同様な温度分布を与えることができた。

(2)適切な材料モデル,熱伝達係数,摩耗モデルを用いる事により,3次元熱間転動摩耗試験を模擬できる。

(3)熱間摩耗試験における接触によるロール材料の温度変化について,回転速度が大きい場合,Roll diskのピーク温度は接触部ではなく,そこからある程度進んだところで発生する。

(4)摩耗深さ解析について,予測式の材料定数同定のために,実験との比較は不可欠である。

文献
 
© 2018 一般社団法人 日本鉄鋼協会

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