Tetsu-to-Hagane
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Ironmaking
Formulation of Shrinkage Rate of Sinter During Softening Process
Naoto Yasuda Koki NishiokaSeiji Nomura
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2019 Volume 105 Issue 8 Pages 785-792

Details
Synopsis:

In order to formulate shrinkage behavior of sinter during softening process, the effects of load and reducing gas concentration on the shrinkage rate of sinter packed bed has been investigated using a softening-melting furnace. As a result, the shrinkage rate increased with increasing the load on the packed bed in temperature range from 1270 to 1440 K, and decreased with increasing the reduction degree of sinter in temperature range from 1470 to 1570 K. The results indicate that shrinkage mechanisms vary depending on temperature.

In this study, softening process of sinter was formulated by dividing into two temperature regions. In the region I, the shrinkage rate increased in proportional to the impressed load, and increased in inversely proportional to the softening viscosity. In the region II, the shrinkage rate increased in proportion to the generation rate of melt, and decreased with increasing the volume of metallic iron in the packed bed. The shrinkage in region II was inhibited with increasing the reduction degree of sinter since formed metallic iron served in the role of aggregate. The shrinkage rate of each region was expressed as functions of initial concentration of sinter, load, temperature, and reduction degree. The calculated values were in good agreement with the experimental ones.

1. 緒言

高炉プロセスにおいて,炉頂から装入された鉱石原料(焼結鉱,鉄鉱石ペレット,塊鉱石等)は,炉内を降下するに従い昇温・還元され,最終的には溶融して滴下する。この固体から液体へ変化する過程で,鉱石原料は軟化し粒子同士が融着して鉱石融着層を形成する1)ため,通気性が著しく低下する。高炉内において,鉱石融着層とコークス層が交互に積層した領域を一般に融着帯と呼ぶ。また,鉱石融着層間のコークス層をコークススリットと呼ぶ。融着帯では,ガスは鉱石融着層にはほとんど流れずコークススリットへ偏流するため,大きな圧力損失が生じる。局所的かつ大きな圧力損失は炉内のガスの流通を妨げるばかりでなく,鉱石の昇温・還元を阻害し,装入物の降下にも悪影響を及ぼす。ゆえに,融着帯における圧力損失を低減することは,高炉の安定操業のために必要不可欠である。

融着融着層の圧力損失を低減するための施策の一つとして,鉱石原料の還元を促進することが挙げられる。Onoら2)およびKawashiriら3)は予備還元率の異なる焼結鉱を用いて荷重軟化試験を実施し,予備還元率が高いほど鉱石層の収縮が抑制され,圧力損失が低減することを報告した。またNishimuraら4)は還元率の低位な鉱石層の上層部より圧力損失の上昇が生じることを報告しており,この要因としてFeOを主体とした融液の生成を挙げている。しかしながら,還元促進による圧力損失の低減効果について,定量的な評価は報告されていない。

これまで,軟化・融着過程における鉱石層の圧力損失の推定については,荷重軟化試験により多くの検討が実施されている2,57)。Onoらは,装入物の物理性状によって決まる通気抵抗指数と鉱石層収縮率の関係について検討した2)。Sugiyamaらは,Ergun式中の慣性項の係数を鉱石層収縮率の関数とすることにより,層収縮に伴う圧力損失の上昇を表現した6)。またIchikawaらは,軟化・融着過程で生成した液相のホールドアップが圧力損失に及ぼす影響を定式化した7)。これらの推定式において圧力損失は鉱石層収縮率の関数として表現されており,推定式の適用のためには鉱石の収縮率(速度)が既知である必要がある。

軟化・融着過程における鉱石層の収縮速度の推定式として,見かけの軟化粘度の式が挙げられる。Nakamuraらは,鉱石の軟化収縮の速度すなわち塑性変形の速度に着目して見かけの軟化粘度を定義し,鉱石原料の種類や組成の影響を評価した8)。Nakamuraらの報告も含め,軟化粘度は鉱石原料の性状の評価指標として取扱われる場合が多く9,10),鉱石層収縮速度の推定という観点での知見は少ない。一方,Iwanagaは焼結鉱を異なる軟化粘度を有する鉱物組織(ヘマタイト,マグネタイト,ウスタイト,金属鉄,スラグ)の合成体として取り扱うことにより収縮挙動の推定を試みた11)。計算値は荷重軟化試験の実測値とよく一致したものの,鉱石層の収縮が進行するメカニズムについて十分な検討はなされていない。

そこで本研究では,代表的な鉱石原料である焼結鉱の軟化過程における層収縮の支配因子の解明を目的として,荷重軟化試験により充填層にかかる荷重および還元ガス条件が層収縮速度に及ぼす影響を評価した。さらに,焼結鉱の軟化過程を2つの温度領域に分け,見かけの軟化粘度や融液および金属鉄の生成挙動が各領域における層収縮速度に及ぼす影響を明らかにし,定式化した。

2. 実験方法

実験装置はFig.1に示す荷重軟化試験装置である。上下二段の黒鉛発熱体および反応管の内側に試料を充填した黒鉛るつぼおよびガイド管を設置し,所定の荷重および温度下において還元ガスを下部より試料充填層に流通させる。温度の上昇と還元の進行に伴い,装入物は軟化・溶融し,やがて滴下する。本試験により高温被還元性,軟化・溶融特性およびこれに伴う通気性の変化を評価できる12,13)。還元率の経時変化は,導入ガスおよび排ガス組成より算出した。変位計により充填層高の変化を測定し,コークス層は試験中の層高の変化は生じないと仮定して,鉱石層収縮率を求めた。

Fig. 1.

Experimental apparatus for measuring high temperature properties under load. (Online version in color.)

本研究では荷重軟化試験により,軟化過程における焼結鉱の層収縮速度に及ぼす還元ガス条件,焼結鉱層高,および充填層にかかる荷重の影響について評価した。使用原料はコークス(粒径:15-20 mm)と焼結鉱(粒径:10-15 mm,T-Fe=57.73 mass%,FeO=6.65 mass%,CaO=9.86 mass%,SiO2=5.08 mass%,Al2O3=1.73 mass%,MgO=0.87 mass%)である。下部コークス層厚60 mm,上部コークス層厚15 mm,焼結鉱層厚90 mmあるいは180 mmとなるようコークスおよび焼結鉱を内径φ72 mmの坩堝に充填した。

昇温パターンをFig.2に示す。垂直ゾンデによる実高炉内の温度分布測定結果に基づき,いずれの試験条件も,昇温速度は473~773 Kでは0.056 K/s,773~1173 Kでは0.044 K/s,1173~1873 Kでは0.077 K/sとした。試料温度が1873 Kに到達した時点で後述の還元ガスをN2ガスに切り替え,加熱を停止して試料を冷却した。なお,本試験で用いた焼結鉱の滴下開始温度は,後述の試験条件に依らず1770 K~1820 K程度であった。

Fig. 2.

Changes in sample temperature with time.

充填層にかかる荷重はFig.3に示す通り,473~1073 Kではいずれの条件も36 kPa,軟化・融着が想定される1223 Kより高温の領域では9.8,23,36,48,75,および98 kPaと設定した。

Fig. 3.

Changes in load with temperature.

Fig.4に還元ガス条件を示す。各条件でCOおよびH2の濃度は異なるが,CO/CO2比の温度依存性および総ガス流量(30 NL/min)はいずれも同様とした。還元ガス条件Bを焼結鉱の層厚180 mmの基準条件として,Aは焼結鉱の層厚90 mmの条件で装入した焼結鉱重量あたりの供給COガス量がBと等しくなるよう設定した。条件B~DのCO,CO2,およびH2組成の温度依存性は実高炉内の条件を模擬して設定した。また,本試験装置ではH2Oガスを流通できないため,想定されるH2Oガス流量分,N2ガス流量を増加させた。試験条件の一覧をTable 1に示す。

Fig. 4.

Changes in gas composition with temperature. (Online version in color.)

Table 1. Summary of experimental conditions.
Case Composition of reducing gas (Max. concentration of CO/Min. concentration of H2) Initial layer thickness of sinter (mm) Load above 1223 K (kPa)
A-90-9.8 A (23 vol%/0 vol%) 90 9.8
A-90-23 A (23 vol%/0 vol%) 90 23.0
A-90-36 A (23 vol%/0 vol%) 90 36.0
A-90-49 A (23 vol%/0 vol%) 90 49.0
A-90-98 A (23 vol%/0 vol%) 90 98.0
B-180-9.8 B (46 vol%/0 vol%) 180 9.8
B-180-23 B (46 vol%/0 vol%) 180 23.0
B-180-36 B (46 vol%/0 vol%) 180 36.0
B-180-49 B (46 vol%/0 vol%) 180 49.0
B-180-75 B (46 vol%/0 vol%) 180 74.5
B-180-98 B (46 vol%/0 vol%) 180 98.0
C-180-36 C (41 vol%/10 vol%) 180 36.0
C-180-98 C (41 vol%/10 vol%) 180 98.0
D-180-36 D (39 vol%/15 vol%) 180 36.0
D-180-98 D (39 vol%/15 vol%) 180 98.0

3. 実験結果と考察

3・1 焼結鉱の軟化過程における層収縮速度

還元ガス条件B,焼結鉱の層厚180 mmの条件で,充填層にかかる荷重が焼結鉱の軟化過程における層収縮速度に及ぼす影響をFig.5に示す。1270~1470 Kの温度領域では,荷重の増加に伴い収縮速度は上昇した。一方,1520~1570 Kの温度領域では,荷重が増加するほど収縮速度は低下する傾向を示した。なお,荷重条件と還元率の温度依存性に相関は認められなかった。

Fig. 5.

Effect of load on shrinkage rate during softening process. (Online version in color.)

最大荷重98 kPaの条件で,焼結鉱層の層厚を90~180 mm,還元ガス条件をA~D(Fig.4参照)とし,還元率の温度依存性を比較した結果をFig.6に示す。A-90-98とB-180-98では,装入した焼結鉱重量あたりの供給COガス量を揃えて試験を実施した。結果としてB-180-98の条件では,A-90-98に比べ高い還元率を示した。これは還元ガス中のCO分圧が高く,還元反応の駆動力が大きいことに起因すると考えられる。B-180-98のCOガスの一部をH2ガスで置換したC-180-98(最大水素濃度10%)およびD-180-98(最大水素濃度15%)の条件では,さらに著しく還元率が上昇した。これはCO還元に比べ,H2還元の反応速度が高いことに起因する。

Fig. 6.

Effect of gas composition on reduction degree of sinter. (Online version in color.)

Fig.6と同じ試験条件における層収縮速度の温度依存性をFig.7に示す。1270~1440 Kの収縮速度が急激に上昇する温度域では,収縮速度はガス条件や鉱石還元率に依存しなかった。一方1470~1570 Kでは,焼結鉱の還元が促進されるガス条件ほど層収縮速度が低下する傾向を示した。還元促進による層収縮抑制の要因としては,①FeOを含むスラグ融液生成の抑制4)および②生成した金属鉄による耐軟化性の向上11,14)が従来より指摘されている。

Fig. 7.

Effect of gas composition on shrinkage rate during softening process. (Online version in color.)

以上の結果より,1440 K以下の低温域と1470 K以上の高温域で,層収縮のメカニズムが異なることが示唆された。よって本報告では,焼結鉱の軟化過程を層収縮速度の最大値を境界として2つの温度領域(領域IおよびII)に分け,モデル化した(Fig.8)。なお,領域IIにおける変曲点は溶融還元に起因しており,変曲点前後で層収縮のメカニズムの変化は生じていないため,区別しなかった。詳細は3・3節で述べる。

Fig. 8.

Modeling of shrinkage rate of sinter. (Online version in color.)

3・2 領域Iにおける層収縮速度の定式化

収縮速度が急激に上昇するFig.8中の領域Iでは,荷重と収縮速度に相関関係が認められることから,式(1)に示す見かけの軟化粘度の式8)が適用できると仮定した。また,式中の見かけの軟化粘度ηの温度依存性を式(2)により表現した。

  
d S r d t = W η (1)
  
η = η 0 exp ( c 1 T ) (2)

ここで,dSr/dt:収縮速度[1/s],W:荷重[kPa],η:見かけの軟化粘度[Pa·s],T:温度[K],η0:定数[Pa·s],c1:定数[K]を示す。すなわち層収縮速度は充填層にかかる荷重に比例し,見かけの軟化粘度,換言すれば装入物の収縮抵抗に反比例する。式(1)および式(2)を変形すると,式(3)となる。

  
ln η = ln W ln d S r d t = c 1 T + ln η 0 (3)

1270~1440 Kの温度域(領域Iに相当)における,lnηと1/Tの関係をFig.9に示す。領域Iにおいて,両者の関係は直線近似でき,その直線の切片と傾きより定数η0およびc1を求めた。求められる見かけの軟化粘度は鉱石原料固有の値であり,強度,気孔構造,および軟化溶融特性等が影響因子と想定されるが,詳細な検討は今後の課題である。

Fig. 9.

Relationship between ln η and 1/T ranges in temperature from 1273 K to 1443 K. (Online version in color.)

3・3 領域IIにおける層収縮速度の定式化

Fig.6およびFig.7に示すとおり,鉱石還元率が上昇するほど領域IIの層収縮速度が低下する傾向を示した。この結果から,還元率上昇による融液生成量の減少および充填層に占める金属鉄の体積割合の増加を考慮し,定式化を検討した。

まず,焼結鉱の軟化過程における融液生成速度と層収縮速度を比較した。本報告では熱力学平衡計算により,融液生成量に及ぼす温度および還元率の影響を評価した。融液生成開始温度(1493 K)よりも高温では鉄の存在形態はFeおよびFeOのみであると仮定し,鉱石還元率よりFeおよびFeO重量を求めた。FeOおよび脈石成分(CaO,SiO2,Al2O3,MgO)の重量から汎用の熱力学平衡計算ソフトウェア15)により融液生成量に及ぼす温度および還元率の影響を評価した。初期の焼結鉱重量に対する融液生成量の重量割合と温度および還元率の関係をFig.10に示す。今回の試験に用いた焼結鉱では,還元率によらず1493 K付近から融液が生成した。また,鉱石還元率の上昇に伴い融液生成量は減少した。融液生成量を融液の密度(2490+12[mass%FeO]kg/m3)で除して生成する融液の体積を求め16),これを温度と還元率に関する1次式すなわち式(4)で表現した。

  
V l i q = c 2 T c 3 R + c 4 (4)
Fig. 10.

Effect of temperature and reduction degree on ratio of melt. (Online version in color.)

ここで,Vliq:焼結鉱1 kgあたりの生成する融液の体積[m3/kg],R:還元率[−],c2:定数[m3/(kg·K)],c3:定数[m3/kg],c4:定数[m3/kg]を示す。さらに,式(4)により計算した融液生成体積を時間で微分し,装入した焼結鉱重量を乗じて融液生成速度を求めた。この融液生成速度と荷重軟化試験により測定された収縮速度の比較例をFig.11に示す。融液生成開始(1493 K~)以降,両者の挙動はよく一致した。すなわち,領域IIにおける層収縮速度は,式(5)のように融液生成速度に比例することが示唆された。

  
d S r d t = β M S P V 0. S P d V l i q d t (5)
Fig. 11.

Comparison between shrinkage rate and generation rate of melt. (Online version in color.)

ここで,MSP:焼結鉱の重量[kg],V0.SP:軟化収縮以前の鉱石層の体積[m3],dVliq/dt:融液生成速度[m3/(kg·s)],β:定数[−]を示す。式(5)の右辺は軟化収縮以前の鉱石層の体積と単位時間あたりに生成する融液の体積の比を示している。1570 K近傍において,融液生成速度および収縮速度は急激に低下した。対応する温度において溶融還元に起因する還元速度の上昇が確認された。この溶融還元は大きな吸熱反応であるため,試料の昇温速度は一時的に低下した。これら還元速度の上昇および昇温速度の低下により,融液生成速度が低下し,結果として層収縮速度が低下したと推察される。

式(5)中の係数βは層収縮速度と融液生成速度の比を示し,β=1のとき,生成した融液の体積と層収縮による鉱石層の体積の減少量が等しいことを意味する。このβは,充填層全体の収縮抵抗に依存し変化すると考えられる。そこで,生成した金属鉄が充填層の収縮を抑制する耐軟化性を有すると仮定し,充填層に占める金属鉄の体積割合とβとの関係を評価した。Fig.12に領域IIにおける金属鉄の体積割合XFeβの関係を示す。XFeは式(6)により求めた。XFeが0.05~0.20の範囲におけるβの変化は,ばらつきはあるが,右下がりの直線で近似できる。βXFeに関する1次式で表すと式(7)となる。

  
X F e = V F e V 0. S P ( 1 S r ) (6)
  
β = c 5 X F e + c 6 (7)
Fig. 12.

Relationship between XFe and β in region II. (Online version in color.)

ここで,XFe:充填層に占める金属鉄の体積割合[−],VFe:生成した金属鉄の体積[m3],Sr:層収縮率[−],c5:定数[−],c6:定数[−]を示す。なおVFeは,鉄の存在形態はFeおよびFeOのいずれかであると仮定し,鉱石還元率よりFe重量を求め,Feの密度(7600 kg/m3)で除して求めた。

領域IIにおける層収縮速度は,融液生成速度に比例し,充填層に占める金属鉄の体積割合の増加に伴い低下する。還元速度および還元率が高位であるほど,融液生成速度が低下し,金属鉄の体積割合は増加するため,鉱石層の収縮は抑制される。また還元率が等しく金属鉄量が一定の条件では,収縮率が大きくなるほど充填層に占める金属鉄の体積割合は増加するため,領域IIにおける収縮速度は低下する。

3・4 計算値と実測値の比較

焼結鉱の軟化領域における層収縮速度の温度依存性をFig.13に示す。図中のプロットは荷重軟化試験による実測値を,実線は計算値を示す。B-180-36の領域Iではやや乖離がみられるが,両者は概ね良く一致した。

Fig. 13.

Effect of (a) load and (b) gas composition on shrinkage rate during softening process: Plots; Experimental value, Solid lines; Calculated value. (Online version in color.)

充填層にかかる荷重が層収縮速度に及ぼす影響をFig.13(a)に示す。領域Iでは層収縮速度は荷重の増加に伴い上昇したが,領域IIの1470 K以降では実測値,計算値ともに低荷重の条件の方が層収縮速度は高位となった。昇温および還元ガス条件が同一であるB-180-36とB-180-98の鉱石還元率に大きな差は認められず,軟化領域の層収縮挙動が還元率に及ぼす影響は小さいと考えられる。ゆえに,領域IIにおける層収縮速度の差異は1470 K以前の収縮率差に起因する。前述のとおり,収縮率が大きくなるほど充填層に占める金属鉄の体積割合は増加し,領域IIにおける収縮速度は低下する。B-180-36は領域Iにおける収縮速度が低く収縮率が低位となるため,領域IIにおいては逆に収縮速度が上昇すると考えられる。

還元ガス条件が収縮速度に及ぼす影響をFig.13(b)に示す。領域Iにおいては,収縮速度は還元ガス条件に依存しない。Fig.6に示す通り,1490 K~1570 Kの温度域においてC-180-98の還元率の絶対値はB-180-98に比べ高位であるが,還元速度すなわち還元率変化の傾きに大きな差異は認められない。ゆえに,1490 K~1570 KにおけるC-180-98の層収縮率は主に充填層中の金属鉄の体積割合の増加に起因し,低下したと考えられる。一方B-180-98は,1570 K近傍で生じる溶融還元に起因する還元速度の上昇および昇温速度の低下が著しく,融液生成速度が低下することに起因し,1570 K近傍で急激に収縮速度が低下したと考えられる。すなわち領域IIにおいては,1570 K近傍の変曲点以下の温度域では充填層中の金属鉄の体積割合が層収縮速度に及ぼす影響が大きく,変曲点以上の温度では融液生成速度の影響が顕著であった。

Fig.14に焼結鉱の軟化領域における層収縮率の温度依存性を示す。図中の点線は荷重軟化試験による実測値を,実線は計算値を示す。層収縮率の計算値は,層収縮速度を積分することにより求めた。充填層にかかる荷重が増加するほど,層収縮の開始温度が低温側に移行した。また,鉱石の還元が促進される条件ほど,1470 K以上の温度領域において層収縮が抑制された。本報告における提案式により,これらの層収縮挙動をよく表現できた。前述の通り,従来の軟化過程における圧力損失の推定式は収縮率の関数として報告されており,本提案式との組合せにより鉱石融着層の圧力損失の上昇挙動を評価できるようになった。

Fig. 14.

Effect of (a) load and (b) gas composition on shrinkage degree during softening process: Dotted lines; Experimental value, Solid lines; Calculated value. (Online version in color.)

本報告においては鉱石層の還元率は排ガス分析結果に基づき算出しており,鉱石層の平均還元率を用いて鉱石層全体の平均収縮率を推定した。しかしながら,Nishimuraらの報告4)の通り,鉱石層内には還元率分布が存在し,還元率が低位な上層から収縮が進行する。ゆえに,軟化過程における収縮挙動をより精緻に評価するためには鉱石層内の還元率分布を考慮し,高さ方向の収縮率分布を推定する必要がある。また今回は充填層内の金属鉄の体積割合に着目し,焼結鉱粒子内の金属鉄の賦存状態の影響について考慮しなかった。例えば鉄鉱石ペレットのようにトポケミカルに反応が進行する鉱石原料においては金属鉄の賦存状態の影響が無視しえないことも想定されるため,今後,焼結鉱以外の鉱石原料についても検討を進める。

4. 結言

本報告では,焼結鉱の軟化過程を層収縮速度の最大値を境界として2つの温度領域I,IIに分け,各領域における層収縮速度dSr/dtを装入物の初期組成,充填層にかかる荷重W,装入物の温度T,および装入物の還元率Rの関数として定式化した。

(1)領域I

  
d S r d t = W η
  
η = η 0 exp ( c 1 T )

低温域である領域Iでは,見かけの軟化粘度の式8)を適用できることを明らかにした。このとき,層収縮速度は充填層にかかる荷重Wに比例し,見かけの軟化粘度ηに反比例した。

(2)領域II

  
d S r d t = β M S P V 0. S P d V l i q d t
  
V l i q = c 2 T c 3 R + c 4
  
β = c 5 X F e + c 6
  
X F e = V F e V 0. S P ( 1 S r )

高温域である領域IIにおける層収縮速度dSr/dtは,融液の生成速度dVliq/dtに比例した。また,比例係数βは充填層に占める金属鉄の体積割合XFeの増加に伴い,低下した。還元率Rが高位であるほど融液生成速度が低下し,金属鉄の体積割合は増加するため,鉱石層の収縮は抑制された。以上の結果より,領域IIでは融液生成挙動および生成した金属鉄による耐軟化性向上効果が層収縮速度を決める主な支配因子である。

文献
 
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