鉄と鋼
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巻頭言
「未利用熱エネルギーの有効活用」特集号の発刊に寄せて
沖中 憲之
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2020 年 106 巻 8 号 p. 517

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現在鉄鋼業の未利用熱エネルギー,いわゆる排熱は一次エネルギーの4%程度に相当し,その温度域,形態およびその発生状況も多岐に渡っている。依然として固体顕熱(製品,コークス等),液体顕熱(スラグ)および気体顕熱(COG,LDG等)が未利用熱として存在し,その適当な回収方法が無いことや既存の水蒸気発生では温度低下を引き起こし大きなエクセルギー損失を伴うことが問題となる。これら未利用熱の有効活用は,その温度域に近い熱需要で再生利用することが最も熱力学的に優れていることは自明である。そのため所望の温度域で熱回収できる潜熱蓄熱材(PCM)は魅力的である。しかしながらPCMは120°C以下では実用化しているが,製鉄業で存在する200°C以上の実用的使用例はほとんど報告されていない。そのため,これらに関する研究会「未利用熱エネルギーの有効活用」が発足,その要素技術である蓄熱技術と熱交換・熱輸送技術に関わる研究活動を進めてきた。本特集号は,平成28年度から3年間活動を行った「未利用熱エネルギーの有効活用」研究会の成果を纏めたものである。

研究会の目的は,上記の未利用熱レベルに合致し,

1)高速熱交換可能な蓄熱材(PCM,化学蓄熱材)を実験的・解析的に開発し,その物性を明らかにする,とともに,

2)高速熱交換プロセスの提案・設計指針を確立し,産業間エネルギーネットワーク(エネルギーのカスケード利用)の基礎的知見を得る,ことにあった。研究会としての主たる提案・検討技術として,①中高温PCMまたは化学蓄熱材を用いたオフライン熱輸送システム,②蒸気の高品質化(=ケミカルヒートポンプ:CHP),③PCM含有流体(PCMスラリー)によるオンライン高密度熱輸送,④ヒートパイプ(HP)による近距離高速熱輸送(ただし,②~④は「次の次」に向けた基礎研究と位置付け),があり,

1)蓄熱材に関しては,

・500°C超の高温用合金系PCMの開発,

・(~250°C)中低温PCMに体積分率15%のフィラー混合で単体の40倍以上の熱伝導率を達成,

・量産化・実証試験規模の化学蓄熱材の開発,

2)高速熱交換プロセスに関しては,

・直接接触熱交換により約4~8倍の熱移動速度の向上,

・潜熱蓄熱の伝熱阻害要因であるPCM凝固相を機械的に剥ぎ取る新奇熱交換手法の提案,

・相変化機能性媒体の適用温度域を拡張,

・実効熱伝導率が銅の約200倍の超小型自励振動型ヒートパイプ(PHP)を開発,

等の成果が得られた。

本特集号は,日本鉄鋼協会編集委員会の提案により実現した。投稿方法や審査方法は通常号と同様であるが,研究会での研究に対象を絞り,通常号では範疇外とも考えられる研究成果も特別に掲載を許可して頂いた。研究会で得られた知見,あるいは得られた知見をもとに発展しつつある研究成果の一端を,協会の会員各位や読者各位に纏まった形で知って頂ければ幸いである。最後に,本特集号に尽力頂いた日本鉄鋼協会と編集委員会の皆様に,心から厚く御礼申し上げる。

 
© 2020 一般社団法人 日本鉄鋼協会

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