Tetsu-to-Hagane
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Development of High Temperature Oxidation Resistant Iron-Based Heat Storage Materials for Rapid Carbonization and Pulverization Process of Biomass
Daisuke Maruoka Kosuke SatoShun MiuraTaichi MurakamiEiki Kasai
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2020 Volume 106 Issue 8 Pages 527-533

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Abstract

Utilization of the solid phase transformation heat of the iron-based alloy as well as its sensible heat was proposed as a Heat Storage Materials, HSM, for the rapid carbonization and pulverization process of biomass. Aluminizing of the HSM is a promising way to improve focused to improve its high temperature oxidation resistance. In this study, behavior of solid phase transformation and high temperature oxidation behavior, and wear and impact resistances of the oxide layer are examined for Fe-Mn-C alloy as a candidate of HSM.

Latent heats and transformation temperatures were evaluated using a DSC. Mass change ratio of the samples were measured using a TG. Then, DSC measurements were carried out with the oxidized samples. Spherical segment samples were charged into lab-scale rotary kiln type furnace to evaluate wear and impact resistance of oxide layer formed during high temperature oxidation.

Endo- and exo-thermic heats of Fe-2%Mn-0.7%C showed similar with Fe-0.77%C alloy. Endo- and exo-thermic temperatures deceased with increase in Mn concentration. Fe-Mn-C alloy did not show sufficient oxidation resistance at high temperature, whereas the aluminized sample showed a superior oxidation resistance due to the formation of continuous Al2O3 layer. Thinner Al2O3 layer is formed on the alloy sample by the aluminizing with lower Al concentration and shorter time and its latent heat become larger. The Al2O3 layer of the aluminized and oxidized samples were not peeled and significant weight change did not also occur after the experiment using the rotary kiln type furnace.

1. 緒言

一貫製鉄プロセスにおいては主たるエネルギー源および還元材として石炭およびコークスが用いられており,温室効果ガス排出抑制対策として代替材料の検討が進められている。木質系バイオマス1)は国内外に広く存在すると共にカーボンニュートラルな特性を有する原燃料であり,化石燃料由来のCO2排出量削減への寄与が期待されている。一般的に,木質系バイオマスは輸送効率やエネルギー密度の向上を目的として事前に炭化処理される場合が多いが2),炭化過程は吸熱反応であり木質系バイオマスの一部を燃焼させて木炭を製造しているため,エネルギー損失が発生する3)。したがって,排熱等の未利用熱源を有効活用することが望ましい。銑鋼一貫製鉄所などの高温プロセスにおいては大量の高温排ガスが発生しているものの,大部分は有効利用されている。しかし,ダストや腐食性ガスを含有する場合や,間欠的に発生する排ガスにおいては安定的な顕熱回収,利用が困難であり,有害物質を除去後,大気中に放散されているのが現状である4)

これまでに著者らは金属球蓄熱体を介して排ガス顕熱を回収し木質系バイオマスの炭化粉砕処理を行うプロセスを提案している5)。本プロセスでは熱交換器内に蓄熱体を装入して排ガス顕熱を回収する。その後,蓄熱体は木質系バイオマスとともにロータリーキルン型炭化炉へ投入される。木質系バイオマスは蓄熱体からの伝熱により加熱され炭化が進行すると同時に,蓄熱体との衝突による粉砕が進行する。炭化された木質系バイオマス(バイオマスチャー)は,ロータリーキルン通過後に篩分などによって蓄熱体と分離される。蓄熱体は再び熱交換器へ送られ,再利用される。また,炭化炉内では木質系バイオマスの熱分解に伴い炭化水素を主成分とした乾留ガスが発生するため,その燃焼熱によって排熱を加温することも考えられる。得られたバイオマスチャーは,高温プロセスにおける炭材の代替材料として用いることを想定している。本プロセスは蓄熱体によって排熱を間接的に回収するため,排熱源の自由度拡大に寄与できると考えられる。

本プロセスにおける蓄熱体は排ガスからの顕熱回収,木質系バイオマスの炭化および粉砕に関わるため,蓄熱体の性能向上が本プロセスの実現には重要である。本研究では,蓄熱量を向上させる手法として相変態を利用した潜熱蓄熱に着目した。潜熱蓄熱と顕熱蓄熱を併用することで蓄熱量を増大させるとともに,相変態温度において一定の熱量を供給することが可能になる。しかし潜熱蓄熱を利用する材料の多くは有機物の固-液変態を利用しており,室温から200°C程度の比較的低温度を対象としているが6),本プロセスの蓄熱体は600°C以上の排熱源からの顕熱回収およびバイオマスへの伝熱が想定されている。さらに高温酸化雰囲気において利用するため耐高温酸化性を有する必要がある。また炉内壁およびバイオマスと衝突・摩擦も生じるため,高い機械的強度を有する必要がある。そのため本研究では液相を介しない固相変態を利用した蓄熱体に着目し,Feを基材としたFe-Mn-C合金を選定した。Fe-C合金は723°Cにおいて共析変態することが知られており,加えてBenzら7)はMn添加量を増加させることで,γ相とα+θ相の共析点が低下することを報告している。したがってMn添加量を変化させることで,異なる排熱温度から潜熱回収が可能である。またFe基合金であるためバイオマスの粉砕に利用するには十分な強度を有しており,Mnは他の添加元素と比較して安価であることが利点として挙げられる。

Fe-Mn-C合金を蓄熱体として応用するうえで,以下のような課題が挙げられる。Fe-Mn-C合金は状態図が作成されているが7),本プロセスで想定するような昇降温速度および繰り返し昇降温における相変態挙動については検討されていない。またFe-Mn-C合金の耐高温酸化性は非常に低く,Al等の元素添加による耐酸化性の向上ではα相を安定化させるとともに,所望の合金組成を調製することが困難である。そのため本研究ではアルミナイジング処理に着目した。アルミナイジング処理は材料表面にAlを拡散浸透させてAl濃化層を生成し,酸化処理によってAl2O3皮膜を生成させる手法である8)。アルミナイジング処理によって蓄熱体の耐高温酸化性と潜熱蓄熱の両立が可能になると期待されるが,Fe-Mn-C合金へのアルミナイジング処理について検討した例はなく,アルミナイジングの処理条件および生成した酸化皮膜の耐衝撃性も不明である。

そこで本研究では,迅速炭化プロセスに適用可能な蓄熱体としてFe-Mn-C合金を提案し,各Mn添加量のFe基合金における相変態挙動を調査する。また各条件でアルミナイジング処理したFe-Mn-C合金に対して耐高温酸化性,相変態量の変化,耐衝撃性および耐摩耗性の検討を行う。

2. 実験方法

2・1 試料作製

本研究ではFe-0.77 mass%C(以下,0%Mn),Fe-2 mass%Mn- 0.7 mass%C(以下,2%Mn)およびFe-4.5 mass%Mn- 0.6 mass%C(以下,4.5%Mn)の合金組成を目標として,各試薬粉末を合計15 gとなるように秤量,混合し,トリアーク炉を用いてインゴットを得た。インゴットはAr-3%H2雰囲気において10°C/minで昇温し,1050°Cで3 h保持後,炉冷することで焼きなまし処理を行った。Fig.1に焼きなまし後の各試料のX線回折パターンを示す。X線源にはCu-Kα線を用いた。Fig.1より0%Mn,2%Mnおよび4.5%Mnはα単相であった。インゴットを切断,研磨し,厚さおよそ1.0 mm,縦横およそ1.5 mm,質量16~19 mgの板状試験片を作製した。

Fig. 1.

XRD profiles of samples.

また2%Mnにおいてはアルミナイジング後に生成する酸化皮膜の耐衝撃および耐摩耗性を検討するため,鋳造によって棒状試料を作製し,直径10 mmの球状に一部切削加工した球欠状試料を作製した。Fig.2に球欠状試料の外観を示す。いずれの試料も直径約5 mmの部分で切断した球欠状を呈している。

Fig. 2.

Appearance of spherical segment 2%Mn. (Online version in color.)

2・2 相変態温度および潜熱量の測定

各試料を直径5 mm,高さ2.5 mmのアルミナパンに入れ,示差走査型熱量測定装置(以下DSC)に設置し,α-Al2O3を参照試料として相変態温度および潜熱量の測定を行った。Arガスを流量500 mL/minで流通させ,1000°Cまで10°C/minで昇温し,1000°Cで10 min保持した後,200°Cまで10°C/minで冷却した。

2・3 アルミナイジング処理および酸化実験

板状および球欠状2%Mnに対して,パックセメンテーション法を用いたアルミナイジング処理を行った。2%Mnをアルミナ管内に装入し,1 mass%Al-1 mass%NH4Cl- 98 mass%Al2O3(以下,1%Al)および2 mass%Al- 2 mass%NH4Cl- 96 mass%Al2O3(以下,2%Al)の割合で混合した粉末試薬を充填後,耐熱接着剤を用いて密封した。密封したアルミナ管を横型電気炉に設置し,保持温度900°C,処理時間3,12 h,Ar-3%H2雰囲気において熱処理し,炉冷後,試料を取り出した。

アルミナイジング処理後の試料に対して,示差熱天秤(以下TG)を用い,α-Al2O3を参照試料として酸化実験を行った。試料をアルミナパンに設置後,1000°Cまで10°C/min,大気雰囲気(N2-21%O2)で昇温し,1000°Cで24 h保持中の重量変化を測定した。重量変化量と実験前の試料重量の比から重量変化率を算出した。

その後,酸化による試料の潜熱量変化を調査するため,DSCを用いて再度相変態温度および潜熱量を測定した。参照試料にはα-Al2O3を用いた。Arガスを流量500 mL/minで流通させ,1000°Cまで5°C/minで昇温し,1000°Cで10 min保持した後200°Cまで5°C/minで降温させ,潜熱温度および潜熱量を測定した。

さらに,SEMおよびEDSにより,各実験後試料の断面観察および元素分析を行った。

2・4 保護性酸化皮膜の耐摩耗性,耐衝撃性評価

酸化皮膜の耐衝撃性および耐摩耗性を評価するため,ラボスケールのロータリーキルン型電気炉を用いて炭化粉砕実験を行った。装置詳細は迅速炭化粉砕プロセスの検討に関する前報に示す5)。アルミナイジング処理した球欠状2%Mnを電気炉に設置し,大気雰囲気下で1000°Cまで10°C/minで昇温し,1000°Cで24 h保持し,酸化皮膜を生成させた。その後試料を直径10 mmのSUS304球97個とともにロータリーキルン型電気炉の加熱部に装入し,N2(0.5 L/min)流通下,10 rpmで反応管を回転させ,800°Cまで予熱した。800°C到達後,回転数を30 rpmまで上昇させ,バイオマス試料として1辺10 mmの直方体に加工したヒノキを100個装入した。1 h保持後,回転と加熱を止め,室温まで冷却した後に球欠状2%Mnを取り出した。実験後の球欠状2%Mn試料に対して,SEMおよびEDSを用いて酸化層の観察および元素分析を行った。

3. 実験結果および考察

Fig.3に各Mn濃度試料のDSC結果を示す。吸熱温度はMn添加量の増加に伴い低下する。一方,発熱温度はMn濃度の増加に伴い顕著に減少する。潜熱量に着目すると,0%Mnおよび2%Mnの吸熱量はそれぞれ70.4および76.9 J/gであるが,4.5%Mnでは43.8 J/gと大きく減少する。発熱量についても同様の傾向を示す。これは平衡状態における共析温度が減少するにつれて,より大きな過冷却が生じるためと考えられる。Fe-Mn-C状態図を作成する際に7%Mnに相当する合金組成では17 h共析点温度直上で保持されていたことから7),本研究の実験条件では4.5%Mnは十分に相変態が発現しないものと考えられる。そのためMn添加量が大きい場合は高温・長時間での熱交換を想定し,本迅速炭化粉砕プロセスに導入する必要がある。

Fig. 3.

DSC profiles of the samples observed with heating and cooling rates of 10ºC/min.

Fig.4に各条件でアルミナイジング処理した2%Mnにおける酸化実験中の重量変化率を示す。比較としてアルミナイジング処理を未実施の2%Mnの重量変化率も合わせて示す。アルミナイジング処理を未実施の試料は実験後から質量変化率が増大し,24 h後には40%程度に達していた。一方アルミナイジング処理を実施した2%Mn試料は,いずれも重量変化率が0.5~1%程度まで低下している。Fig.4より同じ12hのアルミナイジング処理時間であれば,2%Alの方が1%Alよりも24 h時点の重量変化率が大きくなっている。先行研究において9),2%Alで900°C,12 hのアルミナイジング処理を実施した試料ではAl2O3層が200 µm程度まで成長していた一方で,本研究で行った1%Al,900°C,12 hでアルミナイジング処理を実施した2%Mn試料において,生成したAl2O3層厚は5 µm程度であった。このAl2O3層の生成厚さの違いによって重量変化率に差が生じたと考えられる。また同じ1%Alの条件でも3 hの処理時間で実施した試料の方が12 hの条件よりも重量変化率が大きい。

Fig. 4.

TG profiles of the 2%Mn after aluminizing under different conditions.

Fig.5(a)~(f)に1%Al,900°C,3 hのアルミナイジング処理を実施した2%Mnの24 h酸化実験前後の断面SEM像および元素マッピングを示す。Fig.5(a)~(c)に示す酸化実験前の試料断面において,AlおよびFe濃度の異なる2層と,2層界面から内側へ向かって黒いコントラストの領域が観察される。元素分析結果から試料表面に近い層はFe2Al5であり,その内側はFeAlであると考えられ,黒いコントラストの領域はFeAl3であると推定された。アルミナイジングの処理時間を10 min程度に短くしてもFeAl3およびFeAl層が現れていたため,アルミナイジング初期にFeAl3が生成するとともにFeAl層が成長し,その後表面をFe2Al5層が覆ったものと思われる。またEDXの元素分析結果から1%Al,900°C,3 hのアルミナイジング処理を実施した場合はFeとAlからなる化合物相の厚さは約45 µmである。同様に1%Al,900°C,12 hのアルミナイジング処理を実施した試料を分析した場合は約55 µmであった。Fig.4で示したアルミナイジング処理時間が短い3 hの方が12 hの条件よりも重量変化率が大きかった要因の1つとして,薄い化合物層ではAl2O3が連続的な酸化皮膜として成長するまでに一部の基材まで酸化が進行した可能性が考えられる。Fig.5(d)~(f)に示す酸化実験後の断面SEM像から厚さ5 µm程度の連続的なAlの元素マッピングが認められるため,Al2O3層が生成していたとみられる。

Fig. 5.

Cross sectional SEM images and corresponding EDS mappings of the 2%Mn after aluminizing at 900ºC for 3 h with 1%Al. (a)~(c); Before oxidation test, (d)~(f) After oxidation test. (Online version in color.)

Fig.6に各条件でアルミナイジング処理を実施し,酸化実験後の2%MnのDSC測定結果を示す。各試料の吸発熱量は,Fig.3で示したアルミナイジング処理を未実施の2%Mnより低下しているものの,1%Al,900°C,3 hの条件でアルミナイジング処理を実施した2%Mnが最も大きい吸発熱量を示している。これは酸化実験後にFe母相中に残存したAl濃度が低く,α相の安定化による影響が小さいことに起因していると考えられる。Fig.7に1%Al,900°C,3 hのアルミナイジング処理を実施し,酸化実験後の2%Mnの繰り返しDSC測定結果を示す。3回の測定において,いずれも吸発熱量に有意な差は認められない。そのためアルミナイジング処理によって生成したAl2O3皮膜の剥離や試料の酸化は認められないといえる。

Fig. 6.

DSC profiles of the 2%Mn after aluminizing and oxidation test with heating and cooling rates of 10ºC/min.

Fig. 7.

DSC profiles during a heating-cooling cycle of the 2%Mn after aluminizing at 900ºC for 3 h with 1%Al and oxidation test at 1000ºC for 24 h in air.

Fig.8にアルミナイジング処理および酸化処理を行った球欠状2%Mnの球面部断面SEM像および元素マッピングを示す。アルミナイジング処理は1%Alの粉末を用いて900°C,3 h,Ar-3%H2雰囲気で実施し,その後1000°C,24 h,空気組成雰囲気中で球欠状2%Mnを酸化させた。試料表面にはそれぞれ厚さ5 µm程度の2層構造が認められる。最表面はAl2O3からなる酸化皮膜であり,その内側は鉄系酸化物とみられる。Al2O3皮膜は一部粒状で存在しており,粒状のAl2O3が連なることで一様な酸化層を生成したと考えられる。一様なAl2O3皮膜が生成するまで基材は酸化性雰囲気に曝露されていたと考えられるため,2層構造を形成したとみられる。Fig.9にアルミナイジングおよび酸化処理を行った球欠状2%Mnを用いて,ロータリーキルン型電気炉によりバイオマスの迅速炭化粉砕実験を実施後の球面部断面SEM像および元素マッピングを示す。Fig.9と同様にAl2O3皮膜が認められ,内側に鉄系酸化物が存在しており,一部Al2O3皮膜と混合している様子が観察される。ロータリーキルン型電気炉内では球欠状2%Mn試料は他の蓄熱体や炉壁と衝突するため,最表面のAl2O3皮膜が衝突によって圧縮され,機械的に鉄系酸化物と混合したと考えられる。試験前後の重量変化率を測定したところ0.01%以下と極めて小さかった。これは,実験中の酸化皮膜の剥離や酸化層の成長が顕著でないことを示す。なお,同時装入していたバイオマスは蓄熱球の衝突などを受けて粉砕されており,大半は2.8 mmメッシュの篩を通過した。

Fig. 8.

Cross sectional SEM images and EDS mappings of spherical segment 2%Mn after aluminizing at 900ºC for 3 h with 1%Al and oxidation test (before the experiment by the rotary kiln type furnace).

Fig. 9.

Cross sectional SEM images and EDS mappings of spherical segment shape 2%Mn after aluminizing at 900ºC for 3 h with 1%Al and oxidation test (after the experiment by the rotary kiln type furnace).

4. 結論

本研究では,バイオマスの迅速炭化プロセスに用いる熱回収,伝熱,粉砕メディアとして固相変態を利用した潜熱顕熱併用型蓄熱体の開発を目的として,Fe-Mn-C合金の潜熱蓄熱挙動を調査した。また材料組成を極力変化させず耐高温酸化性の向上を実現する手法としてアルミナイジング処理を提案し,試料表面にAl2O3皮膜の形成を試み,その耐高温酸化性と耐摩耗性を調査した。得られた結果は以下のとおりである。

(1)各Mn濃度試料のDSC結果より,吸発熱温度はMn添加量の増加に伴い低下した。一方,4.5%Mn試料の吸熱量は43.8 J/gであり,0%Mnおよび2%Mn試料と比較して大きく減少しており,発熱量についても同様の傾向を示した。

(2)アルミナイジング処理を実施した2%Mnは,いずれも0.5~1%程度の重量変化率に留まり,高い耐高温酸化性を示した。1%Alの混合粉末を用い,900°C,3 hのアルミナイジング処理を実施した2%Mnは5 µm程度の薄いAl2O3層が観察された。酸化実験後の本試料に対して再度DSCを実施し,吸発熱量を測定した結果,他の条件でアルミナイジング処理を実施した2%Mnよりも大きな吸発熱量を得た。同試料を用いたDSCによる繰り返し昇降温の結果より,吸発熱量の低下および温度の変化は認められなかった。

(3)アルミナイジング処理および酸化処理を行った球欠状2%Mn試料の球面部には,厚さ5 µm程度のAl2O3層が認められた。またAl2O3皮膜は一部粒状で存在していた。ロータリーキルン型電気炉を用いたバイオマスの迅速炭化粉砕実験を行った後の球面部においても実験前と同様にAl2O3皮膜が認められ,試験前後の重量変化率も0.01%以下と極めて小さかった。

謝辞

本研究の一部はJSPS科研費JP18K14166および(一社)日本鉄鋼協会の「未利用熱エネルギー有効活用」研究会活動の結果によることを記し,ここに謝意を表する。

文献
 
© 2020 The Iron and Steel Institute of Japan

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