鉄と鋼
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論文
Ni触媒担持潜熱蓄熱粒子によるエタノール水蒸気改質の反応熱制御
坂井 浩紀長谷川 裕大Ade Kurniawan能村 貴宏秋山 友宏
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2020 年 106 巻 8 号 p. 534-541

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Abstract

Waste heat recovery is important in steel making industry. Intermittency of waste heat from batch processes is a barrier to applying heat recovery systems to steel plant. Latent heat storage using Phase Change Material (PCM) is attractive technique to solve this problem. Moreover, effective thermal energy recovery can be achieved by the combination of waste heat utilization and endothermic reaction. In this paper, Ni/Latent-heat-storage grain was fabricated and catalytic performance about ethanol steam reforming was analyzed. The fabricated grains exhibited latent heat of 69.9 kJ kg–1 and the latent heat of product didn’t change after catalytic performance test. In the performance test, all of the ethanol was cracked and the maximum concentration of H2 in outlet gas flow was 62%. The result of the catalytic test indicated side reaction occurred in the experiment. Heat supply from PCM mitigated temperature change and the mitigation helped to stop decreasing H2 yield in the catalytic reaction.

1. 背景

鉄鋼業には多量のエネルギーが投入されており,2017年の日本全体のCO2排出量の約15%が鉄鋼業由来である。さらに日本の一次エネルギー供給量の約5%相当が排熱として放出されている。日本の主幹産業である鉄鋼業のCO2排出削減,省エネルギー化の意義は極めて大きい。そのため,様々な鉄鋼排熱有効利用技術が開発,研究されてきた18)

高温の排ガス,排熱が有するエネルギーを回収し再利用することができれば,鉄鋼業での大幅な省エネルギー化が可能である。エクセルギーの観点から高温の熱ほど取り出せる仕事量は大きい。そのため,高温排熱は高温熱源として利用することが望ましく,効率的な省エネルギー化のためには利用時の極端な温度低下は避けるべきである5)。また,熱を必要とするプロセスで熱源は安定している必要があり,高温排熱は安定した熱源として供給される必要がある。一方,鉄鋼業における多くのプロセスがバッチ型のプロセスであり,排熱の発生は断続的であり温度変化が大きい。これが,発生温度が400°C以上を見込める各種炉排ガスが高いエクセルギーを有しているにも関わらず大きなエクセルギー損失を伴う低圧水蒸気へと変換され,高温での熱回収,再利用が達成されない一因だと考えられる。

断続的に排出される高温排熱を安定した熱源として利用するためには,蓄熱技術の導入が不可欠である。そこで,近年,相変化物質(Phase Change Material,PCM)を用いた潜熱蓄熱技術が注目されている。潜熱蓄熱とは物質の相変化潜熱を利用した蓄熱法であり,従来高温域で用いられてきた顕熱蓄熱よりも蓄熱密度が高い点が特徴である。また,潜熱蓄熱は蓄・放熱時に蓄熱体であるPCMの相変化温度で一定になるため恒温熱源としても扱える。さらに潜熱蓄熱は熱の入出力のみで蓄熱可能であるため,基本的には複雑かつ精密なプロセスを導入する必要がない。これらの特徴から,電炉等のガス排出部分に高融点PCMを組み込み,排ガス温度の変動を抑え,排熱の利用率を向上させる機構が提案されている例もある911)。高温域での潜熱蓄熱技術は鉄鋼業での排熱有効利用のコアテクノロジーとなる可能性がある。

高温鉄鋼排熱を低エクセルギー損失で回収し,回収したエネルギーを中・長期的に貯蔵する方法として排熱回収と吸熱の化学反応の組み合わせがある。化学反応による排熱回収は,低質の熱エネルギーを高いエクセルギー率を持つ化学エネルギーへエクセルギー再生できる。また,メタン,メタノール,エタノール等の化学物質に変換することで,長期のエネルギー貯蔵が可能となり,利用が容易になる。さらに,吸熱反応を要する化学製品の製造には熱源として化石燃料の燃焼が用いられており,この熱源を鉄鋼からの排熱で置き換えることでCO2排出量の削減が見込める。

化学反応の制御には厳密な温度管理が求められるが,鉄鋼排熱は間欠的で時間変動が大きいものが多く,吸熱的化学反応とインテグレーションすることは困難である。一方,潜熱蓄熱デバイスを排熱部に組み込むことで,熱源が安定化し,吸熱反応の利用が容易になる。MaruokaらはPCMとしてCuを用い,吸熱反応にはメタンの水蒸気改質反応を用いた研究を提案した1214)

我々の研究グループでは金属系PCM/セラミックによるコア/シェル型のマイクロカプセルPCM(Microencapsulated PCM, MEPCM)の開発に成功した1519)。このMEPCMはコアにAl基合金系のPCMを,シェルにAl2O3セラミックを有するマイクロカプセルである。コアのPCMが融解・凝固することで潜熱蓄熱機能を発揮するが,セラミックシェルで覆われているためセラミック紛体として利用できるのがこの材料の特徴である。

そこで本研究ではMEPCMを用いて潜熱蓄熱粒子を作製し,さらに触媒を担持することで触媒/潜熱蓄熱粒子の調製を試みた。さらに調製した触媒/潜熱蓄熱粒子のエタノールの水蒸気改質反応における触媒性能を調査した。エタノールの水蒸気改質反応の反応式を式(1)に示す。

  
C2H5OH+3H2O6H2+2CO2ΔH298=174kJ/mol(1)

化石燃料由来である炭化水素の代替原料として,再生可能であるバイオマスエタノールが注目されており20),メタノールよりも毒性が低く,安全性が高いという特性を持つ。加えて,生成される水素ガスは炭素に代わるエネルギー源として注目を集めており,製鉄業でも重要な化学物質の一つである。本研究では,水蒸気改質の触媒としてNiを選択した。調製したNi触媒/潜熱蓄熱粒子は潜熱蓄熱と触媒性能を一つの試料で同時に達成できる可能性がある。本研究では用意した潜熱蓄熱粒子がエタノールの水蒸気改質反応の熱源として動作しうるかを確認するため,触媒反応槽の加熱部分への給電を停止した際の触媒性能を評価した。

2. 実験方法

2・1 原料

MEPCM原料としてヒカリ素材工業株式会社製Al-25 mass%Si合金マイクロ粉(<38 μm,Purity 99.0%)を使用した。MEPCM作製時の添加剤として高純度化学社製Al(OH)3(Purity 99.99%)を使用した。

潜熱蓄熱粒子製造時の焼結助剤としてAGC株式会社(旧旭硝子)製のガラスフリット(11 μm)を用いた。このガラスフリットの主成分はSiO2,B2O3,ZnO,BaO,Al2O3,La2O3である。

潜熱蓄熱粒子に担持する触媒のNi源には高純度化学社製硝酸ニッケル六水和物(Purity 99.9%)を使用した。水蒸気改質反応には関東化学社製エタノール(Purity 99.5%)を使用した。

2・2 触媒担持潜熱蓄熱粒子の調製

Fig.1は原料とするAl-25 mass%Si合金からNi担持潜熱蓄熱粒子(Ni/MEPCM粒子)の作製手順を示す。先行研究17)に基づいて作製したMEPCMを転動造粒法にて粒子状(粒子サイズ:2 mm)に成型し,含浸法によってNiを担持した。

Fig. 1.

Preparation of Ni/MEPCM grain from Al-25 mass%Si by (1) boehmite treatment, (2) precipitation treatment, (3) granulation, (4) impregnation treatment. (Online version in color.)

蒸留水300 mlにAl(OH)3を1 g投入し,100°Cで2 h保持し,Al(OH)3の一部を蒸留水に溶解させた。次にアンモニア水(1 mol L-1)を用いて水溶液のpHを8に調整した後,10 gのAl-25 mass%Si合金を投入し,その表面を化成被膜処理した。化成被膜処理後,液温を75°Cまで冷却し,16 h保持することで水溶液中に溶解したAl含有イオンを晶析させた。晶析操作後,Al-25 mass%Si合金由来の粉体を,混合しているAl(OH)3と水溶液からろ過,分離し,一昼夜乾燥させた。

次に,潜熱蓄熱粒子を転動造粒法にて成型した。ガラスフリットとMEPCMを1:1の重量比で遊星ボールミルにて100 rpm,15 min混合した。混合粉をパン型転動造粒装置に投入しエタノールをバインダーに粒状に成型した。成型した試料を空気雰囲気下,800°Cで1 h熱処理し,潜熱蓄熱粒子を得た。

触媒は10 mass%Ni/潜熱蓄熱粒子の調製を狙い,含浸法で潜熱蓄熱粒子に担持した。含浸装置としてロータリーエバポレーターを用いた。まず,フラスコ内で蒸留水50 mlに硝酸ニッケル六水和物を2.48 g添加し,溶解した。次に調製した処理液に潜熱蓄熱粒子を4.50 g投入し,溶液を90°Cに加熱してフラスコを回転しながら水を蒸発させNiを含浸した。得られた試料を105°Cで12 h乾燥し,空気雰囲気下,500°Cで4 h煆焼した。

2・3 エタノール水蒸気改質反応による触媒試験

石英管(φ20 mm)を反応管として用いて触媒試験を実施した。Fig.2は,触媒試験装置の全体模式図を示す。石英管にNi担持潜熱蓄熱粒子を3.5 g充填した。この際,触媒充填層の高さは20 mmであった。触媒試験前に触媒を水素気流中に500°Cにて1 h保持し,還元処理した。その後炉1,炉2の温度を550°C,炉3の温度を650°Cまで昇温した。炉3の温度が650°Cに到達後,Fin,Ar=200 ml min-1の条件の下,エタノールと蒸留水の混合溶液を定量送液ポンプ(東京理化機械製MP-4000)を用いて投下した。混合溶液の濃度はエタノール/蒸留水のモル比1:5とし,送液速度は0.1 ml min-1とした。液滴は触媒に到達する前に石英管内の550°Cに加熱されている部分で石英ウールに吸収され,気化した状態で連続的に触媒充填層に流通する。排出ガスが定常となった後,炉1,炉2を550°Cで保持し,炉3のみ熱供給を停止して30 minの間触媒試験をした。また,比較用として潜熱蓄熱粒子と同様の手順で調製したNi担持Al2O3粒(粒子サイズ:2 mm)も触媒試料に用いた。四重極質量分析計を用いて排出ガス組成を測定した。

Fig. 2.

Experimental apparatus of catalytic performance analysis for steam reforming of ethanol. (Online version in color.)

触媒性能を評価するために,以下の式(2)で表される水素収率を指標として用いた(Fin:入口流量,Fout:出口流量)。

  
FH2,out6FC2H5OH,in×100(2)

2・4 試料の特性評価

反応前後の試料の形状をFE-SEM(日本電子株式会社製JSM-7001F)にて観察した。試料の相同定をX線回折装置(Rigaku, Mini Flex)にて実施した。試料の蓄熱密度をDSC(METTLER TOLEDO DSC823e)にて測定した。

3. 結果と考察

3・1 調製後の試料の特性評価

Fig.3は作製した潜熱蓄熱粒子とNi/潜熱蓄熱粒子の外観を示す。作製した潜熱蓄熱粒子の大きさは1~3 mmだった。含浸処理後,潜熱蓄熱粒子表面の色が灰色から黒色に変化したが,粒の形状,大きさには変化がなく,担持前と同様の形態を維持していた。この結果より,ガラスフリットを焼結材として成型された潜熱蓄熱粒子は含浸処理に耐え得る耐久性を持つことがわかった。Fig.4は潜熱蓄熱粒子と含浸処理後のNi/潜熱蓄熱粒子表面のSEM画像とEDSによるマッピング結果を示す。含浸処理前後の試料両方で球状のMEPCMが観察された。また,含浸処理後のMEPCMの表面には多数の100~200 nm程度の粒子が出現した。EDSによるマッピング結果より,これらの粒子がNiであることが分かった。以上より,含浸処理により,潜熱蓄熱粒子上に粒径100~200 nmのNi触媒を担持することに成功した。

Fig. 3.

The appearance of MEPCM grains a) before and b) after impregnation treatment. (Online version in color.)

Fig. 4.

SEM images and Ni and C mapping by EDS of MEPCM grain a) before and b) after impregnation treatment. (Online version in color.)

Fig.5はMEPCM単体と潜熱蓄熱粒子と含浸処理後のNi/潜熱蓄熱粒子と焼結に用いたガラスフリットのXRD回折結果を示す。潜熱蓄熱粒子と含浸処理後のNi/潜熱蓄熱粒子の両方でMEPCM単体が持つAl,Siのピークが検出された。このことより成型した粒の中でコアとなるAl-Si合金は,粒状化,および含浸処理中にも保護され,化学的に変化しなかったことが判明した。含浸処理後の試料からは,NiOを示すピークが検出された。これはNi源として用いた硝酸Ni六水和物が,含浸処理後の熱処理工程で空気雰囲気,500°Cでか焼したことでNiOへと酸化されたためである。また,Ni含浸処理前後でNiO以外の新たな組成はNi/潜熱蓄熱粒子からは検出されず,Al,Si,NiOを除く全てのピークはガラスフリットが示すピークと一致した。従って,これらのピークは全て焼結材を示すものである。

Fig. 5.

XRD patterns of MEPCM, MEPCM grain and MEPCM after impregnation treatment.

Fig.6は作製した潜熱蓄熱粒子とNi/潜熱蓄熱粒子の降温時のDSC測定結果を示す。両方の試料でPCMの凝固に伴う放熱ピークが観察された。潜熱量は潜熱蓄熱粒子,Ni/潜熱蓄熱粒子でそれぞれ78.0,69.9 J g-1だった。Ni担持後に潜熱量が約90%に減少したことは,潜熱蓄熱粒子上へ10 mass%のNiを担持し,MEPCMの重量比が減少した割合とほぼ一致した。凝固温度は潜熱蓄熱粒子,Ni/潜熱蓄熱粒子でそれぞれ557,558°Cだった。これらの値はMEPCMの原料であるAl-25 mass%Si合金の融点である577°Cより低い。これは過冷却現象によるものである。Al-25 mass%Si/α-Al2O3コア/シェル構造MEPCMは凝固する際に過冷却現象が起こることが報告されている16)。加えて,Al-Si合金系MEPCMは放熱ピークを2つ持つことも報告されている15)。そのため,Fig.6においてもそれぞれの蓄熱粒子から放熱ピークが2つ観測された。

Fig. 6.

DSC curves of MEPCM grain before and after impregnation treatment during heat release (Tm: Melting point, ΔH: Latent heat).

3・2 エタノールの水蒸気改質反応による触媒試験

Fig.7はNi/潜熱蓄熱粒子を用いて触媒試験をした際のa)出口ガス濃度と,b)水素収率および充填層温度の変化を示す。排出ガスからは原料に用いたC2H5OHは検出されず,H2,CO2,CO,CH4,H2Oが検出された。試験開始時はH2濃度が約62%,CO2濃度が約9%,CO濃度が約8%,CH4濃度が約3%,H2O濃度が約18%だった。時間経過とともにH2濃度,CO濃度は低下し,CH4濃度,H2O濃度は増加した。30 min後はH2濃度が約38%,CO2濃度が約10%,CO濃度が約0%,CH4濃度が約12%,H2O濃度が約40%だった。エタノールの水蒸気改質はエタノールが炭素原子を二個含むことにより,メタンやメタノールの水蒸気改質と比較して多くの副反応が存在することが知られている21)。以下にエタノールの水蒸気改質において主要な副反応の一部を示す。

  
2)C2H5OH+H2O4H2+2COΔH298K=256kJmol1(3)
  
3)C2H5OH+2H22CH4+H2OΔH298K=157kJmol1(4)
  
4)C2H5OHCO+CH4+H2ΔH298K=49kJmol1(5)
  
5)CO+H2OCO2+H2ΔH298K=41kJmol1(6)
Fig. 7.

a) Concentration of outlet gas and b) H2 yield and temperature of catalytic packed bed with time over Ni/MEPCM grain during heat release (Inlet material: 17 mol% ethanol solution 0.1 ml min–1 and career gas: Ar 200 ml min–1). (Online version in color.)

排出ガスからCOやCH4が検出されたことから,目的とする反応の他,上記の副反応も進行したと考えられる。

触媒試験の際,触媒充填層は放熱状態にあるため時間経過とともに温度は降下した。Fig.7b)が示す通り温度の降下とともに水素収率も低下した。触媒充填層の温度が650°Cの時は水素収率は約52%だったが,触媒充填層の温度が450°Cの時の水素収率は約26%であった。触媒試験中,温度はなだらかに降下したが約550°C付近にて温度変化の緩和が見られた。これはPCMが凝固したことにより凝固潜熱を放出したためである。また,触媒試験中は水素収率も温度と同様に降下したが,温度変化が緩和した約550°C付近にて収率変化の緩和が見られた。これはPCMからの放熱が触媒充填層の温度を維持したことで,水素収率も維持されたことを示唆している。

Fig.8はNi/Al2O3粒子を用いて触媒試験をした際のa)出口ガス濃度とb)水素収率および充填層温度の変化を示す。出口ガス濃度はNi/潜熱蓄熱粒子を用いた場合と同様の傾向が得られた。水素濃度はNi/潜熱蓄熱粒子を用いた場合と比較してわずかに低かった。

Fig. 8.

a) Concentration of outlet gas b) H2 yield and temperature of catalytic packed bed with time over Ni/Al2O3 grain during heat release. (Inlet material: 17 mol% ethanol solution 0.1 ml min–1 and career gas: Ar 200 ml min–1). (Online version in color.)

Ni/Al2O3粒子を用いて触媒試験をした際の水素収率と充填層温度の変化はFig.8 b)が示す通り温度,水素収率ともに降下し続けた。また,Ni/潜熱蓄熱粒子を用いた場合に見られた変化の緩和は温度・水素収率のどちらにも見られなかった。従って,Ni/潜熱蓄熱粒子を用いた場合に見られた温度,水素収率の変化の緩和は,PCMの放熱機能によるものと考えられる。以上より,潜熱蓄熱材料であるPCMにより触媒反応熱を制御できる可能性が見出された。

3・3 触媒試験後の試料の特性評価

Fig.9は触媒試験後のNi/潜熱蓄熱粒子の外観を示す。触媒試験前と比較して粒子の形状や大きさに変化はなく,粒径は1~3 mmだった。粒子表面の色は黒色物と灰色物の二種類の粒子が得られた。Fig.10は触媒試験後のNi/潜熱蓄熱粒子のSEM画像とEDSによるマッピング結果を示す。黒色に変色したNi/潜熱蓄熱粒子の表面が繊維状の析出物で覆われた。EDSマッピングの結果,この析出物が炭素であることが分かった。一方で灰色の粒子の表面に炭素の析出は見られなかった。長時間の触媒試験により全てのNi/潜熱蓄熱粒子が炭素に覆われ,触媒が失活する可能性がある。

Fig. 9.

The appearance of Ni/MEPCM grain after catalytic test.

Fig. 10.

SEM images and Ni and C mapping by EDS of Ni/MEPCM grain after catalytic test, a) black grain and b) gray grain. (Online version in color.)

Fig.11は触媒試験後のNi/潜熱蓄熱粒子のXRD回折結果を示す。a) は水素還元のみをしたNi/潜熱蓄熱粒子,b)は水素還元後,触媒試験をしたNi/潜熱蓄熱粒子のXRD回折結果である。どちらの試料にも,触媒試験前のNi/潜熱蓄熱粒子で検出されたPCMを示すAl,Siピークと焼結材と一致するピークが出現した。従って,触媒試験中もコアであるAl-Si合金は保護され,化学的に変化しなかった。触媒試験前はNiOのピークが出現したが,還元処理後,触媒試験後はNiOのピークは出現せず,Niのピークが出現した。これは触媒試験前に水素によりNiOがNiに還元したためである。

Fig. 11.

XRD patterns of Ni/MEPCM grain after reduction and Ni/MEPCM grain after catalytic test and glass frit.

Fig.12は触媒試験後のNi/潜熱蓄熱粒子の放熱時のDSCカーブを示す。触媒試験前と同様にPCMの凝固に伴う吸熱のピークが観察された。潜熱量は70.2 J g-1であり,凝固点は557°Cだった。これらの値は触媒試験前のNi潜熱蓄熱粒子が示した値と一致する。即ち,触媒試験にNi/潜熱蓄熱粒子を使用しても蓄熱材料としての性能は劣化しないことが分かった。

Fig. 12.

A DSC curve of Ni/MEPCM grain after catalytic test during heat release. (Tm: Melting point, ΔH: Latent heat)

4. 結論

MEPCMと焼結材であるガラスフリットを質量比1:1で混合し,転動造粒法で成型することで潜熱蓄熱粒子(粒子サイズ:2 mm)を作製した。作製した潜熱蓄熱粒子に含浸処理にてNiを担持し,Ni/潜熱蓄熱粒子を調製した。温度を下げながらNi/潜熱蓄熱粒子を触媒としてエタノールの水蒸気改質を実施した結果,触媒充填層の温度が650°Cの時は52%の水素収率を得たが,温度が450°Cまで低下した際の水素収率は26%まで低下した。触媒試験中,約550°CにてPCMの凝固熱による温度変化の緩和が見られた。これに伴い,水素収率の変化にも緩和が見られた。この現象は,Ni/Al2O3粒子を触媒とした場合の結果には見られなかった。

以上より,潜熱蓄熱材料であるPCMは吸熱反応系へ熱供給可能であることが分かった。

謝辞

本研究の一部は,一般社団法人日本鉄鋼協会 環境・エネルギー・社会工学部会 未利用熱エネルギー有効活用研究会のご支援によるものです。ここに謝意を表します。

文献
 
© 2020 一般社団法人 日本鉄鋼協会

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