2021 Volume 107 Issue 12 Pages 1057-1065
The test sample composed of 100 iron wires of 1 mmφ in diameter in the arrangement of 10 × 10 matrics was exposed to the temperature cycling between 0 and -20 °C. 0.1 w% NaCl solution was dropped on the surface to form an ice droplet, and the coupling current of each iron electrode against the other 99 electrodes was sequentially measured to obtain a coupling current map. The averaged coupling current of 100 electrodes fluctuated with temperature cycling. In the absence of an ice droplet, the coupling current increased at the relative humidity higher than ca. 65%, which was similar with atmospheric corrosion at the temperature higher than the freezing point. When an ice droplet exists, the coupling current increased with increasing temperature rather than the relative humidity. This behavior was interpreted that the thin solution layer of concentrated NaCl solution was formed at the interface between the electrode surface and ice due to the exclusion of NaCl from the growing ice crystal of pure water. In the coupling current map, an inner area of iron electrodes beneath the ice droplet tended to be a cathode, while an outer and a surrounding area tended to be an anode. An open circuit potential map was also measured using a quasi-Ag/AgCl electrode placed on the sample surface. The potential of the inner area was less noble against the outer and surrounding area and shifted with temperature cycling. The ice droplet shrank in the temperature cycling and left rust on the surface.
大気腐食は実用金属において重要な研究対象であるが1,2),特に積雪寒冷地では,降雪の蓄積や氷雪の凍結/融解,大量の腐食性融雪剤の散布など過酷な腐食環境となるため,近年材料保全の観点から暴露試験などが活発化している3–5)。環境中の金属腐食のみならず,コンクリート内部水の凍結融解によるコンクリートの破壊6–11)や結氷の付着抑止のための表面ナノ構造の構築に関する研究12–14),さらに氷結を利用した海水からの脱塩15,16)なども研究開発されている。一方低温での腐食現象に関しては,実環境での暴露試験以外に,環境制御したラボ試験環境における腐食機構の研究はあまり行われていない。特に氷下での金属腐食の試験方法は未だ確立していないため,様々な腐食試験を試行している段階である。
本研究では,氷下における腐食進行を把握するため,腐食分布測定に用いられてきたカップリング電流法を用いた(Fig.1)17–25)。鉄の湿食では,鉄のアノード酸化反応で放出される電子が鉄上のカソード反応により消費されることで反応が完結する。アノード反応とカソード反応が対となるこのカップリング電流は鉄内部を流れるが,金属試料を分割することでカップリング電流を外部に引き出して計測し,金属上の腐食反応分布を調べるのがカップリング電流マッピングであり,不均一腐食18–20),ガルバニック腐食17,24),溶接部の不均一腐食22),すきま腐食18,23),大気腐食21,22),塗膜評価21,22)などに用いられている。本研究では,鉄細線を10×10マトリクス状に配置した100 ch電極23–25)を用い,0.1 w% NaCl水溶液より形成した氷ドロップレット下での表面カップリング電流分布の経時変化を計測した。
Principle of coupling current mapping method. (Online version in color.)
試験装置の概要をFig.2に示す。試験体は直径1 mmφの鉄線(ニラコ社製,純度99.5%)を10×10の格子状に2.54 mm間隔で固定し,エポキシ樹脂に封止したものである。試料断面を機械研磨(最終仕上げは日本磨料工業社製ピカールを使用)および脱脂後,小型の環境セル中に固定し,恒温恒湿機(Yamato社製IW223型)のチャンバ内に設置した。環境セルはチャンバ内の送風を直接試料に当てないために使用したもので,密閉はされていない。環境セルにはデジタルカメラ(USB接続内視鏡,500万画素,オートフォーカス),白色LED照明,および温度湿度センサ(Sensirion社製 SHT-35)を設置した。試験体の100本の鉄線全てに配線を施し,アナログリレー(MOS-FET),電流/電圧変換回路,16 bit AD変換素子,マイクロコントローラから構成される100 chカップリング電流測定回路に接続した。チャンバ内の温度サイクルは,(i)0°C,1 h,(ii)温度直線遷移,1 h,(iii)-20°C,1 h,(iv)温度直線遷移,1 hとし,湿度制御は行なっていない。環境セル内部の温度は,チャンバ内の設定温度に対し遅れをともなって変化した。温度サイクルの途中で試料表面に0.1 w% NaCl水溶液滴を滴下した。この水溶液の融点は-0.006°Cと,ほぼ0°C付近であり,温度サイクルの低温側で氷結して試験体表面に氷ドロップレットを形成した。この温度サイクル中,100本の鉄線から順次1本の鉄線を選択して他の99本との間に流れるカップリング電流iCPを計測し,これを100本の鉄線について順次掃引することでカップリング電流マップを得た。100電極分の電流測定には10 s程度要した。試験体表面におけるカップリングの程度を示すため,全電極の平均カップリング電流iCP(av)を以下のように定義した。
Equipment of coupling current mapping method. (Online version in color.)
全電極のiCPを単純平均すると0となってしまうため,ここでは全電極のiCPの自乗平均値を用いた。また必要に応じて電極表面上にAg/AgClインク(BAS社製)を用いた擬似参照電極(以下R.E.)を配置し,腐食試験中の各電極の電位Eimを計測して電位マップを得た。iCP(av)およびEimマップは100 s毎に,試料表面画像は600 s毎に記録し,両者の画像を合成してタイムラプス動画を作成した。別途,20 w% NaCl水溶液に浸漬した鉄の浸漬電位Eimの温度依存性を計測した。鉄試料(ニラコ社製,99.5%,10×10×0.5 mm)と20 w% NaCl水溶液を入れたセル(バイアル瓶)を低温恒温水槽(Eyela社製NCB-2510A型)に沈め,温度を20~-20°C間で5°C間隔で変化させながら,セル外に設置したAg/AgCl参照電極との電位差を記録した。水溶液の温度は,セル内の水溶液中に沈めた温度センサー(Analog Devices社製ADT7422)で計測した。
温度サイクル試験中の平均カップリング電流iCP(av),環境セル内の温度Tおよび相対湿度RHの時間変化をFig.3に示す。Tは温度センサで計測されたもので,実験セクションで述べたようにチャンバ内の設定温度に対して遅れを伴って変化した。図中の(i)において試料表面に0.1 w% NaCl水溶液を滴下した。滴下時の温度は約-20°Cであったため,溶液は短時間で氷結して氷ドロップレットを形成した。この後,ドロップレットは温度サイクルとともに蒸発/昇華して小さくなり,(ii)でほぼ消失した。このとき,チャンバ内の水分ならびに試料表面から蒸発/昇華する水分により環境セル内のRHが変化した。ここで示したT-RHサイクルのうち,典型的な軌跡をFig.4に示す。T-RHの関係は基本的に,(a)温度降下時には冷凍機が動作することで凝結によりRHが下がるが,-15°C以下では水蒸気の凝結効率が低下するとともに飽和蒸気圧が低下するのでRHがいくぶん上昇する(b)温度上昇時は氷の昇華あるいは液相の蒸発によりRHが増加する。なお(c)の領域は,恒温装置槽内の設定温度が0°C一定となるが,環境セル内の温度が徐々に0°Cに漸近している状態である。(b)から(c)への移行時に恒温装置は加熱動作から微弱な冷却動作に遷移し,これに伴い槽内の水蒸気が僅かずつ結露することでRHが低下すると推定される。
Time-transition of averaged coupling current (iCP(av)), temperature (T), relative humidity (RH) in the temperature cycling (0 / −20°C). At the point (a) 0.1w% NaCl solution was dropped on the surface to form ice droplet, and the droplet was vanished at the point (b). (Online version in color.)
Temperature (T)-relative humidity (RH) cycle in a chamber. (Online version in color.)
Fig.3において,水溶液滴下前でも,RHが高い状態では結露による微小な結氷が観察され,また結露に伴う表面電導パスの形成にともない微小なiCP(av)の増加が見られた。水溶液滴下後,iCP(av)は顕著に増加してTあるいはRHサイクルとともに周期的に増減し,その振幅は氷ドロップレットの大きさ,および腐食進行状況により変化した。Fig.3中のa~cにおける温度1サイクル分のiCP(av)の変化をFig.5(a)~(c)に示す。Fig.5(a)は水溶液滴下前で,iCP(av)はTが上昇して0°C付近になると増加し,この温度付近でRHが約65%以下になると低下した。Fig.5(a')にiCP(av)–RHの関係を示す。RHが約65%以上でiCP(av)が増加しており,これはTomashov型の挙動と一致している26,27)。これより,氷点以下でも氷点以上の大気腐食と同様,RH増加とともに表面伝導を伴う腐食反応が進行し得ることを示している。
Time-transition of iCP(av), T, and RH in a single T-cycle before solution drop (a), in the existence of ice droplet (b), and after disappearance of droplet (c). iCP(av)-RH relationship before solution drop (a'), iCP(av)-T relationship in the existence of ice droplet (b'), and iCP(av)-RH relationship after disappearance of droplet (c'). (Online version in color.)
Fig.5(b)は氷ドロップレット形成後の応答である。iCP(av)はRHには依存せず,Tの上昇とともに増加した。またiCP(av)のピーク値はFig.5(a)よりも1桁以上大きかった。なお,氷ドロップレット存在下でのiCP(av)スパイクは,個々の単電極が氷被覆の状態から融解,乾燥に遷移することで,カップリング電流がカソードからアノードに遷移する際に発生すると考えられる。Fig.5(b')にiCP(av)のT依存性を示す。氷ドロップレット下でiCP(av)がTに対し正の依存性を示す理由は,後述するように,氷ドロップレットと電極界面で濃縮したNaCl水溶液の薄層が形成され,水溶液中と同様の温度依存性を示すためと考えられる。この液相はブラインと呼ばれ,氷内部でも生成して氷の各種物性に影響する28)。
上述のように,氷ドロップレット存在下におけるiCP(av)のピーク値は,存在しない場合に比べて1桁以上大きい。氷ドロップレットによる被覆率は全電極面積の半分以下なので,氷ドロップレット下で形成される濃厚NaCl水溶液薄層におけるイオン伝導電流が優勢になると推察される。すなわち,氷ドロップレットが形成されることで, Fig.5(a')に示した大気腐食的なRH依存性が見えなくなり,Fig.5(b')に示すような水溶液型のT依存性を示すようになる。
氷ドロップレットは,温度サイクルとともに蒸発/昇華して小さくなり消滅する。この過程は,氷が直接昇華する場合と,塩濃縮により生成した液相が蒸発する場合がある。特に錆のある表面では,液相が毛管現象により拡散して蒸発が促進されると思われる。Fig.5(c)に,氷ドロップレット消滅後の挙動を示す。基本的な挙動は水溶液滴下前のFig.5(a)と同様であるが,表面に塩および腐食生成物が残留することで表面のイオン導電率が増加するためiCP(av)は大きくなっている。Fig.5(c')に示すiCP(av)のT依存性は,Fig.5(a')と同様の大気腐食型挙動を示す。
3・2 氷ドロップレット存在下でのカップリング電流マップ0.1 w% NaCl水溶液の氷ドロップレット形成後のカップリング電流iCPマップの例をFig.6に示す。図中に示されている電流値はiCP(av)である。各電極上のiCPは,アノード電流が正(赤),カソード電流が負(青)で示している。右側の図は,試料表面像とiCPマップを合成したものである。Fig.6(a)は氷結直後の図で,氷ドロップレット中心がカソード,その周囲がアノードとなった。温度が低く,凍結直後であるため,表面の反応性が低くiCPはあまり大きくない。Fig.6(b)は滴下後3サイクル目低温時のiCPマップで,氷下でのiCP分担が明瞭になっており,氷ドロップレット内部がカソード,周囲がアノードとなった。これは,氷下で薄い濃厚塩水溶液層が形成されてイオン電流が増加したこと,および氷下の内側まで外部から酸素供給ができず,水素発生反応が起きたことを示唆している。実際,電流値が大きいときはビデオ画像で氷下での気泡発生が観察された。Fig.6(c)は0°C付近の結果で,T上昇によりiCPが増加して分担状況(凹凸)が明瞭になった。Fig.6(d)は氷が縮退した状態で,氷のあった表面には腐食生成物が見られるとともに,氷消失後もアノード電流が流れたことがわかる。Fig.6(e)は氷がほぼ完全に消失した状態で,氷消失後も腐食生成物ならびに残留塩により,氷のなかった表面と比較して大きなiCPが流れ続けた。
Typical video images, iCP maps, and merged image of them (in color) after freezing at T = ca.−20°C (a), at T = ca. −20°C after 5 cycle (b), at T = ca. 0 °C after 5 cycle (c), at T = ca. 0°C after 13 cycle (d), and at T = ca. 0°C after disappearance of ice droplet (e). (Online version in color.)
以上の結果より,氷点以下でも,氷の存在しない表面において大気湿度に応じてカップリング電流が流れること,温度上昇とともに電極表面の導電率が上昇すること,氷結状態でも,電極/氷界面において導電性が維持されていることがわかった。なおこれらの現象は,本研究で示したNaCl水溶液のみならず,milli-Qフィルタ水でも,カップリング電流は小さいものの同様の結果が得られた。またNaCl水溶液を滴下して氷ドロップレットを生成した場合,氷ドロップレットの内側がカソード,外側がアノードになる傾向が見られた。またカップリング電流が大きい場合,氷下で気体の発生(水素発生のカソード反応)が見られた。このように,氷結条件においても金属の腐食反応が進行しうることが明らかとなった。
3・3 氷ドロップレット存在下での電位分布温度サイクル中の各電極の浸漬電位Eimを測定するため,Ag-wire/Ag/AgClインクを極細チューブに入れた擬似参照電極(R.E.)を試料表面に配置した。試料表面に液滴を滴下することでR.E.が鉄電極と水溶液または氷を介して接続され,R.E.と100個の個別鉄電極間の電位差を掃引することでEimマップを得た。Fig.7に温度サイクル中のT,RH,iCP(av)の経時変化を示す。基本的な挙動はR.E.を用いないFig.3と同様であるが,水溶液の滴下は0°C付近でおこなった。
Time-transition of averaged coupling current (iCP(av)), temperature (T), relative humidity (RH) in the temperature cycling (0 / −20°C). At the point (a) 0.1 w% NaCl solution was dropped on the surface to form ice droplet, and the droplet was vanished at the point (b). (Online version in color.)
Fig.7中のa~dに対応する試料表面像,EimおよびiCPマップをFig.8に示す。写真左側の白い棒状のものがR.E.である。(a)液滴形成約5.5 ks後,凍結前の液滴内部の一部の電極表面がうっすらと黄変したことから,鉄が溶解していると思われる。Eimは-0.4 Vより若干卑となり,また黄変した電極でEimの低下が見られた。一方iCPに関しては液滴内部の一部の電極でカソード電流が流れ,これらの電極のEimが若干卑となった。(b)この後Tが低下して液滴が氷結した。このとき,Eimは-0.4 V付近となり,氷下の領域はその周辺に比べて卑となった。また(a)と比べEimマップ内の電位の振れ幅は小さく,iCPも全体に小さくなった。(c)氷結状態でTが0°C付近まで上昇すると,Eimが全体的に卑側に移動し,氷下では-0.5 V付近となった。一方iCPは増加し,氷ドロップレットの内側でカソード電流,外側ならびに周辺部でアノード電流が流れる傾向が見られた。なお,この同様の条件で氷下での気体発生が観察されることもあり,酸素供給の遅い氷下において水素発生反応が起こったと推察される。(c)における電位は水素発生が起こるほど卑ではないように見えるが,擬似参照電極を使用し氷媒体を経由しての電位測定が正確かどうかに関しては検討の余地がある。なお常温の鋼材暴露試験においては水素発生が見られている29)。(d)温度サイクルとともに氷の昇華・蒸発が進行することで電極とR.E. の液絡が切断された段階で,Eimは計測不能となった。一方iCPは小さくなった氷ドロップレットの下および周囲の腐食生成物堆積域で見られたが,全体としては(b)~(c)よりも小さな値となった。
Video images, potential Eim and iCP maps at the points (a)-(d) show in in Fig. 7. (Online version in color.)
Fig.9 に,異なる状態におけるEimマップの試験体中央付近での断面図を示す。(i)と(ii)は氷ドロップレット存在下でTが異なる場合で,(i)T=-1°CのときにEim=-0.51 V付近,(ii)T=-19°CのときにEim=-0.43 V付近であった。また(iii)液絡が切断した場合はEim のばらつきが大きくなった。ここで示したEimの妥当性を調べるため, 20 w% NaCl水溶液に浸漬したFe試料の浸漬電位の温度依存性を測定した。前述のように,電極/氷界面では氷相から排除されたNaClが濃厚塩水溶液層を形成するため,–20°C付近でも液相を維持する。Fig.10に,20 ~-20°C間でステップ状に温度掃引(5°C間隔,各温度で10 min保持)した際のEimの温度依存性を示す。温度掃引は2サイクル行った。EimはT低下とともに貴側にシフトし,T=0°CでEim=-0.55 V程度,T=-20°CではEim=-0.5 V程度となった。Tに対するEimの負の依存性はFig.10の結果と同様であったが,その値は破線で示したFig.10の結果よりも卑方向にずれている。この差の成因は,R.E.が氷を介して電位を測定していること,腐食反応条件が異なることなどが考えられる。擬似参照電極と100個の鉄電極との間には,氷と,氷表面および試験体表面/氷界面に存在する濃厚NaCl水溶液の薄層が存在しており,測定される電位はこうした媒体を経ての値となるため,通常の均一溶液系よりも場所(条件)依存性が大きくなると考えられる。従ってFigs.8,9で得られたEimの絶対値については検討の余地があり,現状では各電極の相対電位の目安程度にすべきと考える。
Spatial distribution of potential Eim at the dotted line in the right potential image at three elapsed time. (Online version in color.)
Temperature dependence of immersion potential Eim of iron. (Online version in color.)
以上の結果より,氷下での腐食モデルをFig.11にまとめた。氷点以下で氷が形成された状態でも,金属/氷界面では氷から排除された塩などが濃縮され融点が低下した液相が形成されている可能性がある。氷が存在しない表面では,常温での大気腐食と同様に相対湿度に応じたTomashov型の腐食が進行する一方,氷下では水溶液中と同様の湿食が進行する。氷下では,内側がカソード,周辺部がアノードとなる傾向があった。氷下の金属表面に対する酸素供給速度は制限されるため,内側のカソード反応では水素発生となることがある。通常のすきま腐食では,酸素供給が制限される狭隘部はアノードとなるが,本研究で見たように氷下がカソードとなる機構については現在とのところ不明である。氷は氷点以下の温度サイクルにおいて昇華または液相部分が蒸発することで縮小してゆき,氷が消失した表面には腐食生成物が残される。
Corrosion process of iron partly covered with ice. (Online version in color.)
10×10マトリクス鉄電極上に0.1 w% NaCl水溶液を滴下し,0°C/-20°Cの温度サイクルで形成された氷ドロップレット存在下でのカップリング電流マップを計測した結果,以下の知見を得た。
(1)氷点以下においてもRH>60%で結露(氷結)にともない金属表面でイオン電流が流れた。氷で覆われていない表面のイオン電流は,氷点以上の場合と同様,RHに依存する大気腐食型となった。
(2)氷に被覆された金属表面では,純氷より排除された塩水溶液層形成によりイオン電流が流れ,温度に対する正の依存性を示す水溶液型腐食挙動を示した。これは,氷中で純氷結晶の成長にともない氷相から排除された塩イオンが濃縮された液相を形成することによる。
(3)NaCl水溶液より形成された氷ドロップレット下では,氷の周辺部がアノード,内側がカソードを分担する傾向にあった。
(4)氷下の鉄電極は,氷に覆われていない鉄電極に対して卑側の電位を示し,また氷下で水素発生によると思われる気泡発生が見られた。