Tetsu-to-Hagane
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Ironmaking
Influence of Ore Assimilation and Pore Formation during Sintering on Reduction Behavior of Sintered Ores
Kenichi Higuchi Jun OkazakiYohei ItoToru FujiSeiji Nomura
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2021 Volume 107 Issue 3 Pages 185-193

Details
Abstract

Sintered ores with superior high-temperature reducibility can enhance indirect reduction at the shaft and permeability at the cohesive zone through improving the softening-melting behavior, resulting in stable operation of the blast furnace at low coke rates. As the depletion of high-grade ore deposits limits control of the chemical composition of sintered ores, small pores less than 10 µm in diameter in the microstructure of sintered ores were focused on to increase the high-temperature reducibility. Sintering conditions for increasing small pores in constant raw material conditions were examined. Furthermore, considering the heterogeneous structure of the sintered ores, reduction behaviors of relict ores and assimilated structures were estimated individually. The contribution of each structure to small pore formation during sintering and their influence on high-temperature reducibility was discussed. Sintering with a sharp temperature profile led to many small pores in the sintered ores by increasing the amount of relict ores with small pores even in constant raw material conditions. Both, for relict ores and assimilated structures, low-temperature reducibility was determined by the total porosity including large pores, whereas the Al2O3 content in gangue minerals, the <10 µm pore volume fraction, and the amount of gangue mineral influenced high-temperature reducibility. Assimilated structures involving granular hematite contained many small pores, compared with other types of assimilated structures. Results of plant trials for two different methods to increase small pores, in relict ores and in assimilated structures, revealed their potential for improving the high-temperature reducibility of sintered ores without controlling the chemical composition.

1. 緒言

高炉の低コークス比操業のためには,焼結鉱の品質改善,特に融着帯の通気性に直接関連する1000°C以上の高温性状(収縮性,軟化性,溶け落ち性など)の改善が重要である。高温性状を決定する一因として,被還元性の重要性が多く指摘されている1)。特に,炉内での間接還元を最大限に進める観点からも,初期の液相生成による構造変化を伴う高温被還元性が重要である2)。これまでに,高温被還元性に及ぼす焼結鉱の化学成分の影響が検討されてきた3,4)。実機でも,高温被還元性を含む高温性状に優れる,Al2O3やSiO2,FeO含有量の低い焼結鉱の製造が志向されてきた5)

一方で,今後の鉱石資源動向からは,将来的には鉄鉱石の劣質化が進行して,焼結鉱成分の悪化に伴う高温被還元性の悪化が懸念される。そこで,成分調整によらない高温被還元性の改善技術,例えば,焼成条件の制御や鉄鉱石銘柄特性の活用など,が必要である。その際は,強度を保証しつつ,被還元性を改善する必要があるので,気孔構造を変えることによる被還元性の改善技術が有効と考えられる。

従来から,被還元性に及ぼす因子は組織と気孔に大別され,特に気孔量の重要性を報告する研究例は多い。しかし,有効な気孔サイズについては,報告によって異なる3,6-8)。 この一因として,前述した焼結鉱の還元挙動の温度による差異が挙げられる。著者の一人3)は,オフラインで製造した焼結鉱とペレットの1000°C還元率と<15 µm気孔量の関係性を報告している。同様に,高温還元でも,<10 µm程度の気孔の重要性を指摘する研究は多い9)。そこで本研究では,焼結鉱中の<10 µmの気孔に着目し,その高温被還元性への影響を評価し,その増加手段の検討を行った。その際に,気孔量と気孔径の影響を精緻に切り分けるために,微細な気孔だけではなく,粗大な気孔も含んだ全気孔量の影響も評価した。

微細な気孔の増加による高温被還元性の向上については,いくつか報告例がある。Hosotaniら10)は,石灰石とコークスの微粉除去によって1~30 µmの気孔が増加し,1000°C以上の高温被還元性が向上すると報告している。さらにOyamaら11)は,気体燃料吹き込みにおいて,1 µm以下の気孔を含有した残留元鉱の増加による,還元率の向上を報告している。しかし,このような微細な気孔の形成機構や,焼結鉱組織との関連などの基礎的な知見は限られている。

10 µm以下の気孔の起因としては,残留元鉱内の気孔と同化組織内の気孔に大別される。しかしこれまでに,これらの気孔の,焼結鉱の還元挙動への寄与率は不明である。そこで本研究では,高温被還元性に優れる焼結鉱の製造を目的に,焼成条件を変化させたオフライン焼成試験や微小充填粒子の基礎焼成試験を実施し,焼結鉱中の10 µm以下の気孔の形成条件を検討した。さらに,10 µm以下の気孔を増加させて高温被還元性の向上を図ることを目的とした,実機試験を実施した。

2. 実験方法

2・1 鍋試験方法と気孔評価方法

鍋試験装置(内径300 mm)を用いた試験を実施した。焼成速度と焼成温度(ヒートパターン)の,焼結鉱中の微細気孔形成への影響を検討するために,一定の原料配合条件のもとで,造粒水分とバインダーである生石灰配合を変化させた。Table 1に,本研究で使用した鉄鉱石の種類12)と化学成分を示す。Ore A~Dは豪州産,Ore E,Fはブラジル産,Ore Gはインド産である。鍋試験では,Ore C(新原29 wt%),Ore D(19 wt%),Ore E(8 wt%),Ore G(8 wt%),Ore H(ペレットフィード,16 wt%)を用いた。原料は約70 kgであり,ドラムミキサーによって,混合1分,造粒4分で,造粒後水分および生石灰配合を4.7~7.1 wt%,0~2 wt%とそれぞれ変化させた。造粒後原料を層厚600 mmとなるように装入後,点火時間1.5分,吸引負圧14.7 kPa一定で焼成した。

Table 1. Chemical composition of ores used in this study (3-5 mm, wt%). MH; Microplaty hematite, H; Hematite, IF conc.; Iron formation-hosted concentrate.
ClassificationTypeT.FeFeOSiO2Al2O3CW
Ore AChannel iron
deposit
High Al2O357.500.124.992.477.84
Ore BLow Al2O358.560.265.050.958.32
Ore CIron
formation-hosted,
High-grade
hematite
MH63.890.143.161.772.76
Ore DMH64.440.143.901.501.76
Ore EH66.780.222.010.901.06
Ore FMH67.680.170.440.681.17
Ore GMH60.180.142.902.516.51
Ore HIF conc.H67.900.131.380.550.49

焼結層内の温度は,グレートから450 mm, 300 mm, 100 mmの3点の高さで測定した。歩留は,焼成後のシンターケーキを2 mの高さから5回落下させた後の+5 mmの成品量から求めた。

成品を2~3 mmに破砕し,水銀圧入ポロシメータで<10 µm気孔量を測定した。全気孔率は,外周の粗大な入り江部も含むPAC気孔率7)を測定した。

2・2 モデル試料の焼成試験

焼結鉱中の残留元鉱と同化組織の,それぞれの気孔量と被還元性を評価するために,モデル焼成試料を作成した。残留元鉱を模擬すために,Table 1に示す3~5 mmの鉄鉱石を水洗後,実機のヒートパターン(最高温度Tmax 1300 °C)を模擬した条件で加熱処理した。次に,同化組織と残留元鉱から成る,焼結鉱を模擬したモデル試料を作成した。3~5 mmの水洗後鉱石に<0.125 mmの石灰石をCaO/Ore(鉱石に対するCaO濃度比)が0.1となるようにシャーレ内で手造粒した後,電気炉でTmaxが1275°Cとなるよう空気中で焼成した後,3~5 mmに破砕した。

各試料の,還元前後の<10 µm気孔量を測定した。全気孔は,残留元鉱については水銀ポロシメータによる<400 µm気孔量を,同化後試料については水法7)(JIS K2151)による気孔率で,試料の形体に応じてそれぞれ評価した。残留元鉱と同化組織の体積率は,画像解析によってマクロ気孔(円相当径 52 µm以上)を除いたそれぞれの面積から求めた。体積率は,近似的に面積率を用いた。ここで,残留元鉱と同化組織は,事前に各鉱石銘柄の組織の特徴とSEM-EDSによるCaO分布を予め観察,対比した上で,CaO成分が十分に浸透していない部位を残留元鉱と判別した。

2・3 被還元性の評価

少量の焼結試料の被還元性は,小型の荷重軟化装置3)を用いて測定した(Table 2)。低温恒温還元(900°C, Test 1)と高温昇温還元(1000~1300°C,Test 2, 3)の2通りの方法で測定した。Test 1では,試料を黒鉛坩堝内に装入後,無荷重でN2中で900°Cまで昇温後に還元ガスに切り替えて,CO-N2ガスで60分還元させた。Test 2, 3では,高炉の熱保存帯を再現するために,試料を予め1000°C,CO/CO2=50/50,3時間の条件で還元率33%(ウスタイト)まで予備還元した。予備還元試料を黒鉛坩堝内に装入後,荷重をかけてN2中で7 °C/minで昇温させた。その後,1000°CからCO-N2 ガスに切り替えて,1300°Cまで昇温還元をした。還元中の排ガス成分を分析して還元率を評価した。実機試験の焼結鉱の還元性評価は,大型の荷重軟化試験装置(Test 4)13)を用いた。

Table 2. Reduction test conditions and evaluation index.
Test 1Test 2Test 3Test 4
Sample
condition
Sizemm3-53-510-1510-15
Weightgram5020620 -697
(70 mm bed height)
Pre-reduction
degree
%0330
Reduction
condition
Temperature°C9001000 to 1300800 to 1200
Timemin6043150
Heating rate°C/min-75, 10
Gas flow rateNl/min7.5534
Superficial gas velocityNcm/s6410
Gas compositionCO/N2 ;
30/70
CO/N2 ;
30/70
CO/H2/N2;
29.4/3.5/67.1
LoadkPa9898 (>800°C)
Evaluation index%R900R1300R1200

少量の還元実験では,900°Cと1300°Cの還元率を評価した(Test 1~3)。大規模還元実験(Test 4)では,試験中の鉱石充填層の融液生成に伴う焼結鉱の還元挙動を精緻に検出,評価するために,1200°Cの還元率を評価した。以降,900°Cでの還元率,1300°Cおよび1200°Cまでの還元率を,それぞれR900,R1300,R1200と表す。

3. 試験結果と考察

3・1 焼成条件が <10 µm気孔形成に及ぼす影響

Fig.1に,焼結時間(t)と生産率,最高温度(Tmax)に及ぼす水分添加量と生石灰配合率の影響を示す。図中のAとBは,Fig. 3に還元曲線を示した焼結鉱A, Bを示す。水分の増加によって,焼結時間が短縮し,生産率が上昇した。6 wt%以上の高水分条件では,生石灰配合によって焼結時間が短縮し,生産率が上昇した。焼成温度は,生石灰配合の有無によらず,水分6 wt%で高くなる傾向があった。これは,低水分域では造粒不足による通気性悪化,高水分域では高い焼成速度による伝熱不足,がそれぞれ影響していると推定される。

Fig. 1.

Changes in sintering time, productivity, and Tmax by moisture content and burnt lime rate in pot test. A and B indicates sinter A and sinter B in Fig.3.

Fig. 3.

Reduction curves of sinter A and sinter B.

Fig.2に,ヒートパターンの変化による焼結鉱の<10 µm気孔量の変化を示す。ここで,ヒートパターンは,焼成の最高温度Tmaxと焼結時間tの積で表した。ここで,小さいTmax・tは,時間が短く,かつ/または,低温焼成を示すヒートパターンである。よって,Tmax・tが20×103°C・min以下と低い場合は,低い歩留となった。しかし,80 wt%以上の歩留の範囲では,Tmax・tが40×103°C・min以下では,<10 µm気孔量が増加した。一方で,全気孔率へのヒートパターンの影響は不明瞭であった。

Fig. 2.

Changes in <10 μm pore volume by the temperature profile index Tmax∙t. A and B indicates sinter A and sinter B in Fig.3.

Fig.3に,焼結鉱AとBの高温被還元性の測定結果(Test 3)を示す。<10 µm気孔量の多い焼結鉱AのR1300(66.5%)は,焼結鉱B(65.1%)よりも高かった。特に,焼結鉱Aは,1200°C以上の還元速度が高位に保たれていた。この結果は,石灰石と粉コークスの微粉除去によってヒートパターンがシャープ化し(Tmax・tが42から35 ×103 °C・minへ低減),< 15 µmが2 mm3/g増加して,R1300が上昇した報告10)とも一致する。なお本研究では,水銀ポロシメ-タにより測定される開気孔を主に評価している。しかし,1)2~3 mmに事前に破砕した焼結鉱を測定するため,相対的に閉気孔が減少している点,2)3・2・1節で後述するように,還元過程での亀裂発生によって,閉気孔が開気孔化する点,から高温被還元性に影響を及ぼしたものと推定される。

最も<10 µm気孔の多かった焼結鉱Aの組織中の,<10 µm気孔の多い部位を観察した(Fig.4)。同化組織よりも残留元鉱に<10 µm気孔が多かったので,残留元鉱中の気孔を主に観察した。Ore Dの残留元鉱に,<10 µm気孔が多かった(図中1)。Ore Gは,緻密な残留元鉱には気孔が少ないが(2),ゲーサイトの多い部分では亀裂と<10 µm気孔が多く観察された(3)。Ore Eの残留元鉱部に5 µm以下の気孔が見られるが,その量は少なく(4),ゲーサイトが存在していたと思われる部分は,逆に50 µm以上の粗大な気孔となっていた(5)。同化組織(一例として,マグネタイトと柱状SFCA(Silico-Ferrite of Calcium and Aluminum)の共存組織を示す)には<10 µm気孔は少なかった(6)。

Fig. 4.

Microstructure images of the sinter A in pot test. H: Hematite, M: Magnetite, CF: SFCA, S: Glassy silicate, P: Pore and crack.

これらの結果から,ヒートパターンがシャープ化して<10 µm気孔の多い元鉱が多く残留した結果,焼結鉱A中の <10 µm気孔量が増加したと考えられる。そこで,次節にて,焼結鉱の還元挙動に及ぼす,残留元鉱と同化組織それぞれの影響を検討した。

3・2 被還元性に及ぼす鉄鉱石銘柄の影響

3・2・1 残留元鉱の被還元性

Table 3 に,モデル試料の還元実験結果のまとめを示す。加熱処理後の鉱石のR900(Test 1)は,全気孔(<400 µm気孔量)と良い相関にあり,<10 µm気孔量との明確な関係は見られなかった(Fig.5)。Bristowら14)は,本研究と同様の手法の実験で,Ore Bに相当する高ゲーサイト鉱石は,加熱後の< 250 µm気孔量が多く,R900に優れると報告しているが,本研究ではむしろ,他の多くの報告6,7)と同様に,より粗大な気孔を含む全気孔量でR900が整理できた。

Table 3. Sample conditions and results of Test 1 and Test 2.
Ore AOre BOre COre DOre EOre FOre G
Before assimilation
<400 μm after dehydrationmm3/g78.161.850.147.831.147.799.7
<10 μm after dehydrationmm3/g30.521.635.133.419.335.839.9
SiO2 after dehydrationwt%5.415.513.253.972.030.453.10
Apparent densityg/cc2.812.813.443.444.424.502.73
R900 in Test 1%81.576.766.568.756.868.883.0
R1300 in Test 2%69.970.976.874.678.883.989.1
<400 μm after pre-reductionmm3/g92.9104.977.776.656.0110.0145.2
<10 μm after pre-reductionmm3/g44.675.577.738.352.163.872.6
<400 μm after reduction at 1300°Cmm3/g25.316.029.939.9152.155.7203.3
<10 μm after reduction at 1300°Cmm3/g11.44.527.539.538.052.934.6
After assimilation
T.Fewt%58.5958.7061.2260.4562.4762.8759.05
FeOwt%1.511.441.871.801.871.581.08
CaOwt%9.89.89.39.29.29.29.7
SiO2wt%4.54.62.93.51.80.42.6
Al2O3wt%2.40.91.61.40.80.62.4
A12O3 / (CaO +SiO2+Al2O3)×100wt%14.26.011.79.66.96.116.1
Total porosity before reduction%61.364.457.154.655.159.056.5
<400 μm before reductionmm3/g79.946.432.039.734.728.7114.5
<10 μm before reductionmm3/g21.616.220.515.18.917.220.6
Apparent densityg/cc1.661.581.882.022.071.871.95
Area of relict ores%25.90.626.627.142.516.420.2
R900 in Test 1%86.491.678.077.873.189.084.6
R1300 in Test 2%90.388.889.797.188.697.783.9
Fig. 5.

Relationship between R900 and <400 μm pore volume after dehydration. A to G indicates the ore type shown in Table 1.

一方で,加熱処理後の鉱石のR1300(Test 2)は,鉄鉱石の加熱による脱水後のSiO2量と良い相関があった(Fig.6)。SiO2は鉱石脱水後の主要な脈石成分である(Table 1)。但し,その中でも< 400 µm気孔,特に10~400 µm気孔が多いOre Gは,還元率が高位であった。鉱石のR1300とAl2O3濃度には,明確な関係性が見られなかった。Test 2では,事前に鉱石を1000°Cでウスタイトまで予備還元している。還元過程で,微細気孔を含む気孔構造が大きく変化することが知られている15)。そこで,還元前,予備還元後,1300°C還元後の気孔量を比較した(Table 3)。いずれの鉱石も,予備還元で <10 µm気孔量が増加した。これは,マグネタイト相中の微細な気孔の増加16),同化組織での亀裂発生,および酸化鉄粒子の収縮によると考えられる。一方で,いずれの鉱石もその後,1300°Cまでの還元時に<10 µm気孔量は減少に転じた。Fig.7に,鉱石の1300°C還元後試料の<10 µm気孔量と脱水後のSiO2量の関係を示す。鉱石中のSiO2量が高いほど,<10 µm気孔量は減少した。高SiO2鉱石(Ore A, B)は,還元後は,FeOとスラグの共存組織となっていた(Fig.8)。これらの結果から,1300°Cまでの鉱石の還元に伴う融液生成では,主に<10 µmの気孔が閉塞されていくものと考えられる。FeO-SiO2系において,SiO2成分の上昇による,融液量の増加に伴う小さいサイズからの気孔閉塞と還元遅延が報告されている17)。さらに,Maedaら18)は,SiO2成分が微細に分布している鉱石は,2FeO・SiO2の生成速度が速く,1200°C還元率が低いと報告している。これらの結果は,本研究と一致した。

Fig. 6.

Relationship between R1300 and SiO2 after dehydration of ore. A to G indicates the ore type shown in Table 1.

Fig. 7.

Relationship between <10 µm pore volume after reduction and SiO2 content after dehydration of ore. A to G indicates the ore type shown in Table 1.

Fig. 8.

Microstructure images of ores after reduction at 1300°C. M: Metal, P: Pore, W: Wustite, S: Slag

Ore Dは,予備還元後の<10 µm気孔量が低かったにも拘わらず,脱水後のSiO2含有量が低いために,Ore A, Bよりも1300°C還元後の<10 µm量が多かった。Ore Dの予備還元後の低い<10 µm量の原因は,還元過程の鉱物変化と関連していると推定されるが,詳細は不明である。今後,予備還元中の気孔構造に及ぼす鉱石種の影響について,更なる検討が必要である。

3・2・2 鉱石同化後の被還元性

鉱石同化後のR900は,残留元鉱を模擬した鉄鉱石のR900に比べて高かった(Table 3)。Bristow and Waters19)も同様の結果を報告しているが,その原因を,SFCAの還元過程で生成する1 µm以下の微細気孔としている。本研究では,全気孔率(水置換法)とR900に相関がある(Fig.9)ことから,鉱石の同化によって,数mmまでのマクロな気孔が増加したことが主要因であると考えられる。

Fig. 9.

Relationship between R900 of sample after assimilation and total porosity before reduction. A to G indicates the ore type shown in Table 1.

殆どの鉱石で,残留元鉱よりも,同化後のR1300の方が高かった(Table 3)。これは,高温還元では,残留元鉱のみならず,同化組織の高温被還元性の影響も無視できないことを示している。R1300は,主に脈石(CaO+SiO2+Al2O3)中のAl2O3濃度で整理された(Fig.10)。しかし,Ore E, Ore Bそれぞれで,<10 µm気孔量と脈石量の影響も観察された。焼結鉱のAl2O3の上昇による,還元過程での融液量増大に起因する高温被還元性の悪化については,多く報告されている3,4)。この原因として,2CaO・SiO2-2CaO・Al2O3・SiO2-FeO系の3元共晶組成での融液生成(1250°C)の他,低温域での2CaO・SiO2へのOlivine 系融液の溶解,再固化の抑制4)が挙げられている。

Fig. 10.

Relationship between R1300 and Al2O3 content in gangue. A to G indicates the ore type shown in Table 1.

3・2・3 同化組織の<10 µm気孔量

Fig.11に,焼結鉱のマクロ構造の模式図を示す。同化試験後の試料は,残留元鉱と同化組織から構成されている。そこで,同化後焼成試料中の<10 µm気孔量PTを以下の式(1)~(4)を用いて,残留元鉱由来の<10 µm気孔量PRと同化組織由来の<10 µm気孔量PAに切り分けた。

  
VR+VA=100(1)
  
ρA=(100ρTVRρR)VA(2)
  
PR=pRVRρR100ρ(3)
  
PA=PTPR(4)
Fig. 11.

Schematic diagram of macro structure of sintered ore. V, Volume; ρ, Apparent density; W, Weight; P, Pore volume; Suffix: R, Relict ore; A, Assimilated structure; T, Sinter or sample after assimilation test. (Online version in color)

ここで,Vは体積率(%),ρは見掛密度(cm3/g),pは<10 µm気孔量(mm3/g),Pは同化後試料1 g中の<10 µm気孔量(mm3),添字Rは残留元鉱,添字Aは同化組織,添字Tは同化後試料全体である。

Fig.12に,<10 µm気孔量の切り分け評価と,同化組織の単位重量当たりの<10 µm気孔量の評価結果を示す。下図の同化組織の<10 µm気孔量は,算出された気孔量と,実測された同化組織の重量から評価した。Ore Eは,算出された残留元鉱中の<10 µm気孔量が,同試験後の試料中の気孔量よりも大きかった。この不整合は,測定精度に起因すると思われ,より精緻な鉱石同化挙動の定量化が今後必要である。各鉱石の同化組織を,既往研究3,20)を参照して4種に分類した。その結果,斑状ヘマタイトを多く含む同化組織中に,<10 µm気孔が多く含有される事が分かった。その例として,Ore Bの同化後の組織写真をFig.13に示す。40%のピソライト(Ore Aに相当)多配合実機試験でも,<10 µm気孔量の増加が報告されている21)

Fig. 12.

<10 µm pore volume of assimilated part and relict ores in samples after assimilation test. Numbers denote types of assimilated structure, 1: Granular hematite+glassy silicate and granular hematite+SFCA, 2: Granular hematite+SFCA, 3: Granular hematite+SFCA and single phase of SFCA, 4: Single phase of SFCA.

Fig. 13.

<10 µm pores in assimilated structure of Ore B containing 'granular hematite (white) and SFCA (gray)'.

一方で,微細なSFCA中には微細な気孔が多く含有されると報告されているが19),本結果では,SFCAの多い同化組織中に,<10 µm気孔は多く観察されなかった。これは,SFCAが,製造条件によって多種多様な形態を有するためと考えられ,今後詳細な検討が必要である。

3・2・4 実機焼結鉱の<10 µm気孔量増加手段

以上から,焼結鉱中の<10 µm気孔を増加させる手段として,2通りの方法が考えられた。すなわち,<10 µm気孔の多い鉱石銘柄の残留元鉱を増加させる方法(Fig.1中のOre D およびTable 3 中のOre C, D, F, G),および<10 µm気孔の多い同化組織を選択的に多く形成する方法(Fig.12中のOre A, B, G)である。そこで,2通りの方法による<10 µm気孔量を増加させる実機試験を実施した。Table 4に試験条件と結果を示す。

Table 4. Conditions and results in plant tests.
Oita 2DLMuroran 6DL
BaseTestBaseTest
Ore Dwt% in new feed10.120.10.00.0
Ore Bwt% in new feed0020.159.3
Area of relict ores%12.815.5
<10 μm pore volumemm3/g10.411.59.513.2
Total porosity%37.540.038.742.0
JIS-RI%67.767.066.070.0
R1200%76.177.463.968.7

選択造粒設備22)を有する大分2焼結で,特定の鉱石銘柄を選択造粒ラインに多く配合して,残留元鉱を増加させる試験を実施した。対象とする鉱石銘柄は,加熱後の<10 µm気孔量が多いOre Dとした。Ore Dは,微粉部分のAl2O3量が高いので,選択造粒ラインでの使用によって,粗粒の融液との同化が抑制されて残留元鉱が増加することも期待できる。試験の結果,残留元鉱率が上昇し,<10 µm気孔量が増加した。JIS-RIは大きく変化しなかったが,R1200が向上した。

さらに,室蘭6焼結で同化組織中の<10 µm気孔量の多い,Ore Bの配合量を増加させた。この時,FeOを含む焼結鉱成分と生産率は,ほぼ一定となるように調整された。その結果,<10 µm気孔量,全気孔率とも上昇し,JIS-RI,R1200とも上昇した。

4. 結言

大幅な化学成分の変更によらない,焼結鉱の高温被還元性改善を目的に,<10 µm気孔を増加させる焼結鉱製造技術を検討した。鉱石の種類と特性が,同化後の気孔形成を介して,焼結鉱の還元挙動に大きな影響を与えた。以下の知見が得られた。

(1)焼成ヒ-トパターンがシャープなほど,焼結鉱中の<10 µm気孔量が増加した。小気孔の多い焼結鉱中には,<10 µm気孔が多い残留元鉱が観察された。

(2)残留元鉱の900°C還元率は,全気孔率で整理された。一方で,1300°C還元率は,還元中の融液量と融液による気孔閉塞に関連する,SiO2含有量と<400 µm気孔量で整理された。同化後試料の900°C還元率も,全気孔率で整理された。一方で,同化後試料の1300°C還元率は,主に脈石中のAl2O3濃度で整理され,<10 µm気孔量,脈石量の影響も見られた。

(3)鉱石の同化特性によって,<10 µm気孔量の由来が異なった。同化組織は斑状ヘマタイトを多く含む組織中に10 µm以下の気孔が多く,柱状SFCA中には少なかった。

(4)<10 µm気孔量の多い残留元鉱,および同化組織を増加させる事を志向して,鉱石配合を調整した実機試験を実施した結果,いずれも焼結鉱中の<10 µm気孔量が増加し,高温被還元性が改善された。

文献
 
© 2021 The Iron and Steel Institute of Japan

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