鉄と鋼
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特集号:今後の資源・環境問題解決に資する鉄鉱石処理プロセス
並列造粒設備におけるペレットフィード多配合焼結技術
大菅 宏児 足立 毅郎宮川 一也松村 俊秀野澤 健太郎
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2021 年 107 巻 6 号 p. 412-421

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Abstract

Kakogawa Works of Kobe Steel, Ltd. has a set of sinter and pellet plants for the production of blast furnace raw materials. Recently, the use of magnetite fine ore has attracted attention while deterioration of iron ore grade. We clarified the problem of granulation and firing in using large quantity of magnetite fine ore, and developed countermeasures.

The most serious problem is forming un-granulated fine and huge agglomerates which causes decrease of permeability and deterioration of productivity. Since the strength of huge agglomerates is low, they collapse during transportation and sintering process. And then, they decrease permeability of packed bed and reduce productivity.

Selective granulation of magnetite fine ore is effective to suppress un-granulated fine and huge agglomerate. We propose the parallel granulating process which produce the double layer mini-pellet of magnetite fine ore which consists of core and adhesive layer. Double layered structure prevents collapse effectively because of aggregate effect of core particle. In addition, as the adhering layer of magnetite fine ore become thinner, magnetite is fully oxidized. Using double layer mini-pellet improves productivity and reduces coke consumption.

1. 緒言

高炉の主たる原料は焼結鉱であり,自社ペレットプラントを有する加古川製鉄所においても,焼結鉱配合は鉄源の40-50 mass%を占める。従来,豪州産や南米産のシンターフィード(以下,粉鉱石)と呼ばれる高品位粉鉱石が焼結原料として使用されてきた。近年,ヘマタイト系粉鉱石の品位低下で焼結鉱の成品中Al2O3は上昇傾向にあり,歩留・強度および耐低温還元粉化性の悪化に加え,高炉スラグ比の増加,排滓性の悪化が懸念されている。

安定した高炉操業を維持するために焼結鉱品質の改善は必須であり,新たな低Al2O3鉄源として,マグネタイト系のペレットフィード(以下,微粉鉱石)が注目1)されている。マグネタイト系微粉鉱石は破砕・選鉱処理により鉄品位が高く,脈石成分が少ないが,粉鉱石に比べて非常に微細であり,20-30 mass%のFe(II)を含有する。微粉鉱石の多量使用時には造粒物が粗大化することが知られており,30 mass%以上の配合下では8 mm以上の粗大造粒物が過剰に生成する2)。粗大粒は強度が低く,造粒機から焼結機への搬送工程で崩壊し,通気性を低下させる。一方で,Fe(II)の酸化熱による凝結材の削減を期待できるが,適正な焼結鉱品質に対してFe(II)の酸化促進が重要である3,4)。粉コークス燃焼が併発する場での酸素分圧低下や石灰石共存下でのカルシウムフェライト融液による酸素遮断によってFe(II)の酸化が阻害されることが示されている5)。これらの結果に対して,残留Fe(II)を低減し,焼結鉱の強度と被還元性を改善する手段として,マグネタイト系微粉鉱石を石灰石や粉コークスと分離した分割造粒プロセスがMatsumuraら6)によって提案された。

マグネタイト系微粉鉱石多配合の工業化に向けては,通気性改善と酸化促進を両立できる造粒工程の最適化が必要である。そこで,並列造粒においてマグネタイト系微粉鉱石の2層構造ミニペレットと従来型の通常擬似粒子を作り分け,混合焼成するプロセスを提案する。本報では,マグネタイト2層構造ミニペレットの特性と生産性改善効果および粉コークス削減効果について報告する。

2. 実験

2・1 造粒実験[Test 1]

使用した鉄鉱石の粒度分布と化学成分をFig.1Table 1 に示す。鉱石AとBはヘマタイト系粉鉱石,鉱石M1とM2はマグネタイト系微粉鉱石である。造粒実験の原料配合条件をTable 2に示す。石灰石と珪石は焼結鉱の塩基度(CaO/SiO2)を2.1,SiO2含有量を5.4 mass%に調整するように加えた。通常の擬似粒子は,ドラム型造粒機(直径820 mm,長さ800 mm)を用いて,65 kgの混合原料に所定の水分(7.2 mass%を基準に6.2~7.7 mass%の範囲で調整)になるように加水し,13 rpmで2 min転動造粒した。造粒後,速やかに湿状態での粒度分布(試料500g,篩目:1,3,5,10 mm)を測定した。

Fig. 1.

Particle size distribution of iron ores.

Table 1. Chemical composition of iron ores (mass%).
T.Fe FeO SiO2 CaO Al2O3 C.W.
Ore A 66.00 0.05 1.40 0.01 1.30 1.25
Ore B 58.60 0.05 4.60 0.07 1.54 9.05
Ore M1 68.90 28.30 2.04 0.39 0.64
Ore M2 67.50 28.20 5.22 0.16 0.15
Table 2. Blending condition of granulation test (mass%).
Base M10 M20 M30 M40 M60
Ore A 40.2 35.0 29.9 24.8 19.5 9.2
Ore B 40.2 35.0 29.9 24.8 19.5 9.3
Ore M1 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 60.0
Ore M2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
Silica sand 1.7 2.0 2.2 2.4 2.7 3.2
Lime stone 17.9 18.0 18.0 18.0 18.3 18.3
Total (a) 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
Sinter* 25.0 25.0 25.0 25.0 25.0 25.0
Coke* 4.2 4.2 4.2 4.2 4.2 4.2
Total 129.2 129.2 129.2 129.2 129.2 129.2

* excluded number

また,アクリル製円筒(直径130 mm)に擬似粒子を100 mmの高さまで充填し,下方より空気を300 L/minで供給し,圧力損失を測定して通気性を評価した。通気抵抗指数(J.P.U.)は式(1)で定義される。

  
J .P .U . = Q / A ( h / Δ P ) 0.6 (1)

ここで,Q:流量(m3/min),A:断面積(m2),h:層厚(mm),⊿P:圧力損失(mmAq)

2・2 ミニペレットの特性評価[Test 2,3]

マグネタイト系微粉鉱石のミニペレットは,タイヤ型造粒機(直径450 mm,30 rpm)を用いて造粒した後,通常擬似粒子の平均粒径と同等の3-5 mmに篩分けた。2層構造ミニペレットでは,まずタイヤ型造粒機に核粒子を装入し,次いでマグネタイト系微粉鉱石とバインダーを加えて転動させ(核と粉の比率20/80 mass%),水分6.2 mass%まで徐々に加水して造粒した。核粒子には1~3 mmの焼結返鉱または鉱石Aを水に浸漬(1日)させた後,表面の付着水を除いて使用し,バインダーには生石灰(-1.0 mm)または消石灰(-0.1 mm)を使用した。マグネタイト系微粉鉱石に対するバインダー添加量は0.2~2.0 mass%とした。

ミニペレットの強度評価[Test 2]には,アイ型タンブラー装置(直径110 mm,長さ500 mm)を用い,試料500gを20 rpmで2 min,回転させた後の+3 mmの残存割合を回転強度と定義した。

ミニペレットの酸化速度[Test 3]は,鉛直型電気炉(反応管直径70 mm)に試料を吊るし,N2雰囲気で所定温度(800~1200°C)に昇温後,空気中(流量5 Nl/min)で所定時間(1~5 min)酸化させ,再度N2雰囲気で室温まで冷却・回収した試料の化学分析値から求めた。酸化率は初期値を0%とし,試料中の鉄が全てヘマタイトまで酸化された状態を100%と定義した。

2・3 焼結鍋試験[Test 4, 5]

原料配合条件をTable 3,試験手順をFig.2に示す。Test 4は小型鍋(円筒型:直径130 mm×高さ400 mm),Test 5は大型鍋(角型:280 mm角×高さ590 mm)を用いた。小型鍋試験のミニペレットはタイヤ型造粒機を用いた前述の方法で製造し,大型鍋試験のミニペレットはドラム型造粒機を用いて同様の方法で製造した。残りの原料はTest 1と同様の造粒方法で擬似粒子を製造した。通常擬似粒子とミニペレットは撹拌機で1 min混合し,鍋試験に供した(Fig.2)。小型鍋試験は無偏析均一装入,大型鍋試験は実機相当の偏析装入とした。装入シミュレータ(シュート部:幅0.4 m×長さ1.1 m,角度59度,先端高さ1.2 m,パレット部:高さ590 mm×長さ2 m)を用いて原料造粒物を積み付けることで偏析状態を再現した。充填層を高さ方向に12分割し,各部位毎に造粒物の粒径分布(篩目:1,3,5,10 mm)と化学成分を分析した。

Table 3. Blending condition of pot test (mass%).
Test 4 Test 5
Reference Case.a Case.b Case.c Case.d Case.e Reference Case 1 Case 2
Ore A 40.2 24.8 25.5 25.4 25.6 24.5 40.2 25.3 25.3
Ore B 40.2 24.8 25.5 25.4 25.5 24.5 40.2 25.3 25.3
Ore M1 0.0 30.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
Ore M2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
Silica sand 1.7 2.4 2.4 2.4 2.4 2.4 1.7 1.5 1.5
Lime stone 17.9 18.0 18.0 18.0 18.0 18.0 17.9 16.8 16.8
Total (a) 100.0 100.0 71.4 71.2 71.5 69.4 100.0 68.9 68.9
Sinter* 25.0 25.0 25.0 25.0 18.4 18.2 25.0 12.9 11.7
Coke* 4.2 4.2 4.2 4.2 4.2 4.2 4.2 3.8 3.4
Granulation line 1 total 129.2 129.2 100.6 100.4 94.1 91.8 129.2 85.6 84.0
Ore M1 28.6 28.6 28.5 30.4 0.0 0.0
Ore M2 0.0 0.0 0.0 0.0 30.0 30.0
Slaked Lime 0.0 0.2 0.0 0.2 1.1 1.1
Total (b) 28.6 28.8 28.5 30.6 31.1 31.1
Sinter (+1mm)* 0.0 0.0 6.6 6.8 7.3 8.0
Sinter (−1mm)* 0.0 0.0 0.0 0.0 4.8 5.3
Granulation line 2 total 28.6 28.8 35.1 37.4 43.2 44.4
a + b 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
Total (Sinter)* 25.0 25.0 25.0 25.0 25.0 25.0 25.0 25.0 25.0

* excluded number

Fig. 2.

Scheme of pot tests.

焼成は吸引圧力一定(Test 4:-1000 mmAq,Test 5:-1600 mmAq)の下で行った。焼成後,焼結ケーキを高さ2 mから落下(Test 4:2回,Test 5:4回)させ,10 mm以上を成品として回収した。10~50 mmの焼結鉱を篩い分けて高さ2 mから更に4回落下させ,+10 mmの回収率を落下強度と定義した。

2・4 ミニペレット界面を模擬した拡散対実験[Test 6]

焼結鉱品質に大きく影響する溶融同化性について,タブレット拡散対実験における融液浸潤挙動による評価がOkazakiら7)によって報告されている。また,マグネタイト系鉱石同等のFe(II)を含むミルスケールは焼成過程で過溶融を示す8)ことが知られている。そこで,ミニペレット界面での反応を模擬したタブレット拡散対実験で溶融同化性を評価した。所定組成に調製したタブレット(直径10 mm×厚み10 mm)を白金製バスケットに入れ,N2雰囲気で所定温度(1200~1300°C)の電気炉に装入,2 min加熱後に空冷して回収した。回収したタブレット拡散対の断面を顕微鏡観察した。

タブレットA:高CaO混合物-マグネタイトの拡散対(通常擬似粒子とミニペレット外表面の接点を模擬)

タブレットB:焼結鉱粉-マグネタイトの拡散対(ミニペレット内の核粒子と付着粉層の界面を模擬)

高CaO混合物の組成は,並列造粒条件における通常擬似粒子(Granulation Line 1)の付着粉層と同等とした(Table 3)。

2・5 実機検証テスト[Test 7]

2系統並列の造粒機を有す加古川製鉄所焼結工場の概略フローをFig.3に示す。2層構造ミニペレットは第2造粒機で鉱石M2と焼結返鉱および生石灰で製造し,第1造粒機で製造した通常疑似粒子と共に焼結機に供給した。

Fig. 3.

Schematic diagram of sinter plant at Kakogawa works.

3. 結果および考察

3・1 マグネタイト系微粉鉱石の造粒への影響

造粒水分7.2 mass%における,マグネタイト微粉鉱石の配合率による擬似粒子の粒度分布への影響をFig.4に示す[Test 1]。粒径1 mm以下の未造粒粉は,マグネタイト微粉鉱石の配合率10 mass%までに急激に増加し,その後は緩やかに減少した。10 mm以上の粗大粒は単調増加を示した。化学分析から特定した構成成分をFig.5に示すが,マグネタイト微粉鉱石の低配合時の未造粒粉は,ヘマタイト系粉鉱石由来の微粉に起因している。また,未造粒粉中のマグネタイト微粉鉱石は,配合率の増加に伴い,徐々に増加した。一方で粗大粒は,その大半がマグネタイト系微粉鉱石からなり,マグネタイト系微粉鉱石が優先的に付着・造粒した結果,石灰石,粉コークスやヘマタイト系粉鉱石等が未造粒粉として残されたと推定される。核粒子減少の視点から,付着粉層厚増加による粗大粒化が促されたと推定される。

Fig. 4.

(a) Size distribution of agglomerate and (b) change of un-granulated fine and huge agglomerate [Test 1]. (Online version in color.)

Fig. 5.

Constitution of (a) un-granulated fine and (b) huge agglomerate [Test 1]. (Online version in color.)

通気性に対するマグネタイト系微粉鉱石の影響をFig.6に示す。マグネタイト系微粉鉱石の配合増に対して通気性は,未造粒粉発生によって初期に急激に低下し,その後は粗大粒形成によって更に低下した。この結果より,通気性改善には未造粒粉と粗大粒を抑制する造粒物粒度分布の適正制御が重要である。

Fig. 6.

Effect of magnetite ore ratio on packed bed permeability [Test1].

一般に未造粒粉の低減には水分増が有効である。30 mass%マグネタイト系微粉鉱石配合時において未造粒粉を基準値同等に低減するには約0.5 mass%の造粒水分増が必要である(Fig.7(a))が,水分増は同時に粗大粒を増加させ(Fig.7(b)),水分調整による造粒制御は困難であることが示された。

Fig. 7.

Effect of granulating water on (a) un-granulated fine and (b) huge agglomerate ratio [Test 1].

3・2 2層構造ミニペレットの設計

脆弱な造粒物は,搬送過程および装入過程で崩壊・粉化し,通気を阻害する。そこで,ミニペレットの強度改善が必要であり,その方策について以下に示す。

(1)2層構造化:核粒子による骨材効果で荷重による変形抑制

(2)バインダー添加:マグネタイト微粉鉱石の付着粉層の剥離抑制

各ミニペレットの強度比較[Test 2]をFig.8に示す。単層のミニペレットに対して核粒子を添加した2層構造ミニペレットの強度は高い。核粒子としては鉱石Aよりも焼結返鉱の方が強度向上効果は大きい。これは,焼結返鉱の飽和含水率が鉱石Aよりも低いため,マグネタイト微粉鉱に対して有効に作用する造粒水が多くなったためと考えられる。細孔内への浸水は数時間かかることが知られているが9),吸水性の低いことから焼結返鉱は核粒子として優位であると考えられる。

Fig. 8.

Effect of core type on strength of mini-pellet [Test 2].

単層ミニペレットの強度に対するバインダーの影響[Test 2]をFig.9に示す。生石灰と消石灰ともに添加率0.5 mass%程度で強度が大きく改善した。これは,造粒物中の粒子間接点におけるCa(OH)3超微粉の架橋10)による効果と考えられ,超微粉含有量が多い消石灰の方がより高い効果が得られたと推定される。また,造粒水分の安定の点でも水和反応がない消石灰の方が適している。

Fig. 9.

Effect of binder on strength of mini-pellet without core [Test 2].

マグネタイト微粉鉱石は凝集し易く,粗大凝集物は焼結性が悪い11)ことが報告されている。Fig.10に示すように,単層ミニペレットの焼結鍋試験[Test 4]の焼結ケーキ中に未酸化マグネタイトの残留が確認された。酸化試験の結果[Test 3],1000°C以上の高温においても完全に酸化するには数分かかり,付着粉層厚は薄い方が望ましい(Fig.11)。核粒子添加による2層構造化は,付着粉層厚を低減できるため,酸化促進の面からも有効と考えられる。

3・3 2層構造ミニペレットの生産性改善効果

小型焼結鍋試験[Test 4]の結果をFig.12に示す。マグネタイト系微粉鉱石配合30 mass%において,単純配合(case a)の生産性は大幅に減少した。単層ミニペレット配合(case b)では生産性は回復したが,配合0 mass%の基準までは戻らなかった。単層ミニペレットへのバインダー添加(case c)は効果が認められなかったが,核粒子添加による2層構造化(case d)は効果が認められ,更に2層構造ミニペレットへのバインダー添加(case e)では顕著な生産性改善効果が認められた。

バインダー添加2層構造ミニペレットでは,(1)湿潤帯での圧壊が核粒子の骨材作用により抑制され,(2)乾燥帯における付着粉層の剥離が超微粉消石灰の接点架橋によって抑制される。この2つ作用によって通気性が改善され,大きく生産性が改善したと推定される。また,Fig.10に見られる様な未酸化ミニペレットの残留は認められなかった。

拡散対実験[Test 6]の結果をFig.13に示す。焼成温度1200°CのタブレットA界面(ミニペレット外表面での通常疑似粒子との接点を模擬)には溶融同化が認められなかったが,タブレットB界面(ミニペレット内部の核と付着粉層の界面を模擬)では認められた。これは焼結返鉱中の低融点のカルシウムフェライトによる溶融同化と推定される。1250°Cでは高CaO含有相や焼結鉱相とマグネタイト微粉鉱石相の同化が認められ,1300°Cでは完全に溶融した。焼結鉱を核とする2層構造化はミニペレットの内部と外部の両方から同化が進行する点で優位である。

3・4 2層構造ミニペレットの粉コークス消費量の削減効果

実機同等の造粒物の崩壊と偏析を模擬した装入シミュレータを用いて,並列造粒での2層構造ミニペレット化の有効性を総合的に評価した[Test 5]。まず充填層の偏析状態について,造粒物の平均粒径と含有FeOの充填層高さ方向の分布を,Fig.14に示す。高さ0 mm(充填層底面)から400 mmまでの領域では偏析は小さく,400 mmから層表面にかけて細粒が多いという基準条件同様の偏析を示した。また,FeO分布からミニペレットが局所的偏在していないことが示された。

次に大型鍋試験[Test 5]の結果をFig.15に示す。小型鍋試験と同様の生産性改善効果が認められた。焼結鉱強度は,case 1(粉コークス配合3.8 mass%)では基準よりも高く,case 2(粉コークス配合3.4 mass%)では低い値が示された。また,焼結鉱中FeOの分析値に大きな差はなく,配合したマグネタイト系微粉鉱石は十分に酸化しており,核粒子添加による付着粉層厚みの低減が酸化に優位に作用したと考えられる。

最高到達温度と高温保持時間の比較をFig.16に示す。粉コークス配合3.8 mass%では,高最高到達温度は基準条件とほぼ等しく,高温保持時間は基準条件よりも長かった。粉コークス配合3.4 mass%では,最高到達温度は低く,高温保持時間は短かった。

ここで,0.4 mass%の粉コークス配合量は配合されたマグネタイト微粉鉱石のFe3O4からFe2O3までの酸化熱に相当し,case 1の発熱量(粉コークス3.8 mass%,マグネタイト系微粉鉱石30 mass%)は基準条件(粉コークス4.2 mass%,マグネタイト系微粉鉱石0 mass%)と等しい。投入熱量一定下では強度と生産性が向上したが,この要因はマグネタイト酸化と粉コークス燃焼の伝熱機構の差によるものと推察される。固体自身が発熱源となるマグネタイト酸化は,気固間の対流伝熱による粉コークス燃焼よりも着熱効率に優れたと推定される。したがって,成品焼結鉱の強度一定の条件では,2層構造ミニペレットはマグネタイト酸化熱以上の粉コークス削減効果が期待できる。

3・5 実機テストによる効果検証

加古川製鉄所焼結工場での実機テスト[Test 7]の結果をFig.17に示す。マグネタイト系微粉鉱石の増配に伴って低下した生産性が,2層構造ミニペレット化の適用によって回復した。成品焼結鉱のFeO変化は小さく,配合されたマグネタイト微粉鉱石は十分に酸化されたと推定された。また,粉コークス削減効果も検証された。

4. 結言

2系統並列造粒設備における微粉鉱石多配合を実現するため,マグネタイト系微粉鉱石を用いた造粒・焼成試験を行い,以下の知見を得た。

(1) マグネタイト系微粉鉱石の並列造粒による2層構造ミニペレット化は,通気性の改善を介して生産性を向上させた。通気性改善は,核粒子によるミニペレットの変形抑制と消石灰バインダーによる剥離粉の生成抑制による。

(2) 2層構造ミニペレットは核のない単層ミニペレットに比べて,被酸化性と同化性に優れる。その結果,マグネタイトの酸化発熱相当量以上の粉コークス消費量の削減が期待できる。

(3) 加古川製鉄所焼結工場の2系統並列造粒設備での実機テストで2層構造ミニペレットの効果を実証した。

文献
 
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