鉄と鋼
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ISSN-L : 0021-1575
特集号:今後の資源・環境問題解決に資する鉄鉱石処理プロセス
低スラググリーンペレットの焼結層下層配置による焼結生産性および品質向上
松村 勝 山口 泰英樋口 謙一村上 太一前田 敬之
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2021 年 107 巻 6 号 p. 471-482

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Abstract

In order to blend PF (pellet feed) or concentrates for 20 mass% in sinter mixture and to displace coke fines or anthracite to biomass for 25 mass% in BAR (Bonding Agent Rate), sinter packed bed has been designed in ISIJ Research workshop. Outline of the design is shown as below.

As designing, most important factor is permeability, and it has to be maintained even though fine materials as PF or concentrates is highly blended (20 mass%). For high permeability, GP [Green Pellet] granulated from fine materials, is placed in lower layer of raw materials packed bed. In the lower layer, mill scale and biomass char, which has characteristic of different oxidation or combustion temperature and rate compared to coke fine, are placed with coke fines for keeping high temperature (>1200°C), because GP needs longer sintering time due to large diameter. In addition, chemical composition of GP is low bacisity (1.5) and low CaO content for keeping its shape through restricting melt formation at sintering. Restricting melt formation has possibility of improving sinter quality (RI, RDI).

In this study, Effect of the packed bed mentioned above on sinter performance and quality has been confirmed by sintering simulator which has performance of continuous charging and igniting with moving pallet car.

The main results are shown as below.

1) Sintering speed and product yield are maintained at blending 20 mass% of PF. So, sinter productivity are also maintained.

2) Sinter reducibility (RI) has been improved in addition to maintaining sinter reduction disintegration index (RDI) because of low FeO and low SiO2 content and restricting secondary hematite formation as mineral of sinter.

3) Remaining object is recovering sinter strength (TI) at the condition of low CaO content in sinter.

1. 緒言

現下の焼結プロセスの課題は,焼結機からのCO2排出量削減および焼結原料における微粉増加対応である。

前者のCO2削減については,粉コークスを鉄系凝結材やバイオマスと代替する方法が直接的である。鉄系凝結材との置換については,1990年代に中山製鋼でミルスケール多配合粉コークスレス操業が試みられた1)。課題として,焼結層の通気抵抗の増大と未酸化残存材の増加であった。その後,鉄系凝結材配合時の通気性向上に関する研究2)が進展した。一方,バイオマスとの置換については,焼結鍋試験による評価検討3,4)が報告されているが,成品歩留低下が課題である。近年では,バイオマスを乾留しかつ粗粒化することが成品歩留低下抑制にとって有効である研究結果5)が報告されている。

後者の焼結原料における微粉(<125 μm))の増加は,焼結充填層の通気抵抗を上昇させ,生産性の低下を引き起こす。そのため,通気抵抗を低減すべく,これまで焼結原料の造粒技術が取り組まれてきた。その中で,焼結原料を二系統に分割して造粒する方法(分割造粒6),選択造粒7))が提案されている。ここで,分割造粒6)は二系統それぞれ造粒処理した後にコンベア上で合流させて焼結機へ搬送する方法である。搬送中に二種の造粒物が混合されるため,合流後には混合機は用いない。一方,選択造粒7)は特定の銘柄鉄鉱石の篩下を造粒した後に残りの原料と共に造粒する。特定の銘柄としてAl2O3成分の高い鉄鉱石を選択し造粒物の内部へAl2O3成分を濃化させて,その結果,Al2O3反応を抑制して焼結鉱の還元粉化性向上に結び付けている。なお,分割造粒,選択造粒いずれも成分偏在を狙った二層構造セミペレット8)の技術思想に基づく。

さらに,二系統に分割しない造粒強化技術として,全原料をパンペレタイザーで造粒するHPS(HPS:Hybrid Pelletized Sinter)9)プロセスが挙げられる。この技術は12台のパンペレタイザーを使用し微粉原料をすべて球形にグリーンペレット化して,凝結材は外装させる。また,パンペレタイザーは用いないが石灰石や粉コークスをミキサー出口側から添加し短時間混合する方法も外装化を狙ったものである。ここで石灰石や粉コークスを外装化することは,二層構造セミペレット8)の技術思想につながる。

これら実用化技術の根源となす二層構造セミペレットの技術思想8)は,造粒物の被覆層を二層化し内側層は非溶融型組成設計とし,外側層はCaO濃度の高い溶融型組成設計とする。これにより,溶融部分は高温下で高い流動性を有することが可能となり,焼結の結合強度が増すとともに被還元性が良好なカルシウムフェライトを形成可能となる。理想的には内核の鉄鉱石を溶融同化させなければ,晶出ヘマタイトを伴わないため,還元粉化性をも改善する。さらに,造粒を阻害する炭材を外装化することで造粒強化が可能であり,生産性が向上する。

2000年以降,分割造粒技術の発展形として,MEBIOS法10)が提言された。これは,非溶融造粒物と溶融造粒物が混在する分割造粒法において,造粒強化により非溶融型造粒物をさらに粗大化(グリーンペレット[GP]化)する。この手法では,Fig.111)に示すように,粗大粒子周囲のガス流れとそれに基づく焼結反応によって,粗大粒子と粉体層の境界部分に低充填密度領域が形成される。さらに,粗大粒子が上部からの荷重を受けて焼結層の収縮を抑制する。その結果,焼結層の通気抵抗が低減し,高生産性をも達成される。なお,造粒強化剤としてのバインダーとして,従来,一般的に生石灰や一部有機バインダーが使用されてきたが,近年,ゲーサイトを数μm以下へ破砕してバインダーとして活用する方法12)が実用化された。また,焼結層の収縮を抑制する素材として細粒ながら乾燥物質が有効である知見が得られた。乾燥粒子として返鉱が採用され,造粒後に添加する技術が実用化された。

Fig. 1.

Image of role of large particle placed in sintering bed (MEBIOS)11).

さて,本研究ではMEBIOS法に着目し,GPの下層配置における生産性や品質改善効果を検討する。通気性の視点では,粒径が大きい造粒物を下層へ配置することは有利であるが,これまで,下層配置に特化した検討は少ない。そこで,GP下層配置における適正配合比等は研究会で得られた知見を用いて実験条件へ反映させた。これを第2章で詳述する。また焼結試験としては原料重量1.3 t規模の大型シミュレータを用いて実機操業に近い条件で評価を行った。

2. ISIJ研究会における充填層設計

2・1 研究会目標値

研究会では資源劣質化対応として,PF(pellet feed)やコンセントレート等の微粉原料配合目標値が焼結新原料中20 mass%,排出CO2削減として,カーボンニュートラルなバイオマス炭配合目標値が燃焼カーボン源中25 mass%とした。

2・2 焼結層設計

微粉原料多配における技術的課題は,焼結層の通気抵抗である。通気抵抗上昇による焼結操業への悪影響として2点挙げられる。1点目は,焼結層を流通するガス量が低下し,焼結速度が低下する。2点目は,焼結層を流通するガスが偏流し,未焼結部生成による成品歩留が低下する。

焼結層通気抵抗低減には,Fig.2に示すように,MEBIOS法で提案された粗大造粒物(GP)は,焼結層下層配置が有利である。これは,上層から下層までの焼結過程のすべての時間帯で原料層通気抵抗を低減できる点,および粗大な造粒物であるGPの焼結化には高温保持時間の長い下層配置が優位な点が挙げられる。さらにこの下層部で燃焼開始温度や燃焼速度が異なる複数の凝結材を使用すると高温保持時間が伸延する。

Fig. 2.

Design of sinter packed bed for GP(green pellet) and biomass. (Online version in color.)

ここで,GPは焼結後も形状維持することが望ましい。これは,形状維持により層収縮を抑制し,その結果,焼結時の通気抵抗低減に結び付く。ここで,形状維持にはGPにおける液相生成を抑制する必要があり,低塩基度(CaO/SiO2)低CaOが望ましい。但し,塩基度(CaO/SiO2)が低すぎると難還元なシリケート生成しやすいため,限界値とされる塩基度(CaO/SiO2)1.5と設計した。なお,付随的効果として,GPの塩基度(CaO/SiO2)を1.5とするとGP以外の原料の塩基度(CaO/SiO2)を高めることができる。低歩留・低強度な上層はGPを含有しないため,高塩基度(CaO/SiO2)配合が可能となり,上層の歩留・強度改善が期待される。

2・3 数値設定

(1)GP配合と設計

①GP中の微粉鉱石配合比は67 mass%上限である。粗粒の核粒子が造粒において一定量必要であることによる。

②GP成分は塩基度1.5に設計し,粉コークスを1 mass%配合する。焼結過程でGPの形状維持(流動化抑制)および強度低下抑制を狙いとする。

③下層におけるGP配合比は50 mass%とし,通常造粒物と混在させた。これは,GPのみでは,焼結後の強度確保が困難なため,通常造粒物由来の液相でGB焼結体同士を結合させる狙いである。

(2)上層下層比率

上記(1)①の微粉原料配合上限値および(1)③の下層におけるGB配合適正値より,研究会目標値である微粉配合比20 mass%を満足するためには,上層40 mass%下層60 mass%と定まる。

(3)GP量

上記(1)①記載の上限値より,研究会目標値である微粉配合比20 mass%を満足するためには,GP製造量は新原料に対して30 mass%となる。

(4)炭材設計

バイオマス炭をすべて下層配置し,研究会目標値であるバイオマス炭を全炭材25 mass%を満足するためには,下層はバイオマス炭配合比42 mass%となる。

なお,本検討において,バイオマス炭として,PKSを乾留処理したPKS炭を使用した。PKSはPalm Kernel Shellの略称で日本語訳は椰子核殻である。PKSは,油椰子からパームオイルを生産する際に発生する残渣である。具体的には,油椰子の果実の外側の柔らかい果肉の部分を絞った際に残る種子を,さらに絞った残りの種子外殻がPKSである。このPKSを乾留してPKS炭が得られる。本研究においてPKS炭は,ロータリーキルンを用いて,大気流通下でキルン外壁温度800°C一定条件にて5分間熱処理して得た。

3. 実験方法

3・1 試験ケース

Table 1に示す①~③の3ケースを設定した。

Table 1. Experimental cases.
(mass%)
Case0 Case1 Case2
upperlowerupperlowerupperlower
PF content002020033
PKS char: coke fine0:1000:10025:7525:750:10042:58
Mill scale content1.01.01.01.001.7
GP content50
PF content in GP67
CaO/SiO2 in ordinary materials1.81.81.81.81.91.7
CaO/SiO2 in GP1.5

①Case0:Base(一括造粒)

微粉配合およびPKS炭配合なく,スケールを新原料に対して1 mass%配合した。塩基度(CaO/SiO2)は1.8とした。上層および下層ともに同一配合とした。

②Case1:微粉多配(一括造粒)

微粉20 mass%配合およびPKS炭と粉コークスとの配合比を25:75とした。スケールを新原料に対して1 mass%配合した。塩基度(CaO/SiO2)は1.8とした。上層および下層ともに同一配合とした。

③Case2:微粉原料(分割造粒)

第2章で述べた条件で設計した。微粉原料,PKS炭と同様にミルスケールも下層へのみ配合した。ここで上層および下層を合わせた配合原料としては,Case1と合致させた。

3・2 配合

Table 2に各ケースの配合条件を示す。なお,Case2で配合したGPの配合条件も併せて示す。Case0においては,実機焼結機のブレンド鉱を使用し,フラックスとして石灰石を,凝結材として粉コークスおよびミルスケールを添加した。ここで石灰石配合量が少ないのは,ブレンド鉱中に石灰石を一定量含むからである。Case1およびCase2においては,上記のとおり,微粉20 mass%配合し粉コークスの25 mass%をPKS炭へ置換した。ここで,PKS炭への置換に際しては,固定炭素等価とした。GPは造粒強化のため,生石灰を3 mass%(対GP重量)配合し,GPの焼結後強度確保のため,粉コークスを1 mass%配合した。なお,微粉としてブラジル産ペレットフィードを用い,シンターフィードとして豪州産ゲーサイトを用いた。

Table 2. Blending conditions.
(mass%)
Case0 Case1 Case2
upperlowerupperlowerupperlowerGP
Pre-Blending ores38.6355.6726.3137.9238.5425.69
Geothite ore3.384.878.25(27.5)
Hematite PF8.211.820.0(66.7)
Mill scale0.410.590.410.591.00
Lime stone0.410.590.751.080.770.520.54(1.8)
Quick lime0.370.530.90(3.0)
Coke fine1.522.181.131.641.490.990.30(1.0)
PKS char0.420.611.03
GP30.0
Total41594159415930.0(100)

ここで,Case1とCase2とは上層と下層を合わせた配合を一定とした。

Table 3に試験で用いた原料の成分を示す。微粉鉱石は鉄純度が高く,低SiO2低Al2O3である。

Table 3. Chemical compositions of raw materials.
(mass%)
t-FeFeOM-FeCaOSiO2Al2O3MgOLOI
Pre-Blending ores53.133.198.044.281.430.748.98
Geothite ore58.640.090.064.391.580.0810.2
Hematite PF67.260.160.012.000.640.00.37
Mill scale74.1565.93.980.830.590.210.05
Lime stone55.10.140.030.3544.0

Table 4に焼結鉱としての化学成分設計を示す。Case0については,2019年における標準的な実機焼結鉱組成とした。Case1は鉄純度の高い微粉配合の影響で低SiO2低CaOである。なお,前述のとおり,Case0およびCase1は上層下層間の成分差は無い。Case2はGP配合ケースであるが,微粉を含むGPは下層にのみ配合しているため,上層下層の成分差が大きく,上層はCase0よりも高SiO2高CaOであり,一方,下層は大幅な低SiO2低CaOである。この下層におけるSiO2値はこれまでの実機操業で記録したHPS(Hybrid pelletized Sinter)よりも低い。

Table 4. Design of chemical compositions after sintering.
(mass%)
Case0 Case1 Case2
upper
(40%)
lower
(60%)
upper
(40%)
lower
(60%)
upper
(40%)
lower
(60%)
(GP)
T-Fe57.8457.8458.9858.9857.3359.9463.99
CaO9.269.267.877.879.866.594.21
SiO25.175.174.324.325.193.782.81
Al2O31.541.541.311.311.541.160.90
MgO0.800.800.540.540.810.370.03
CaO/SiO21.791.791.821.821.901.741.50

3・3 造粒

GPは高速撹拌ミキサーで1分間バッチ処理した。ここで水分を9.0 mass%となるように調湿した。高速撹拌ミキサー処理後,パンペレタイザーで連続供給,連続排出しながら造粒処理した。造粒物は篩分処理を行い,5-20 mmへ整粒した。Table 5に示す通り,篩分後に粒度区分毎に重量計測して粒度分布を把握した。

Table 5. Size distribution of green pellet (GP).
size (mm)5-1010-1515-20
occupation (mass%)45.224.730.1

GP以外はドラムミキサーでバッチ処理した。混合開始から4分間は水添加せずに処理し,その後の1分間で水を添加しながら混合し,注水完了後さらに3分間混合した。但し,Case2においては,ドラムミキサー造粒後にPKS炭を添加してドラムミキサー処理した。

3・4 給鉱および焼成

(1)設備概要

本装置は,実機と同様にパレット移送しつつ給鉱および点火が可能である。点火後は,所定のWB(Wind Box)までパレット台車を移送し,静止状態で焼結する。

ここで,パレット台車の寸法は,幅400 mm機長800 mm高さ750 mmである。4台連結することで機長3200 mmとなる。4台の内先頭と最後尾のパレットはヒートロスがあり,先頭から2台目のパレット台車にて焼結諸元を評価する。このため,このパレット台車において測温や風量計測,ガス分析を実施する。1パレットあたり,焼結ケーキは350 kg回収できるため,層高方法で5分割して焼結鉱品質を評価することが可能である。

(2)給鉱

まずパレットへ床敷鉱を層高40 mmとなるように敷いた。

次に下層原料を装入した。下層原料は極力粒度偏析をつけない方法を用いた。具体的には,板状プレートで給鉱角60°にてパレット台車は静止状態で原料を一定量装入した。その後,装入を停止してパレット台車を400 mm移送して停止させ,原料を装入した。この手順を繰り返した。この段階では,パレット機長方向に原料の山が等間隔で配置された状態となり,機長方向幅方向共に原料層高が不均等であった。そこで,人力で原料を平らに均すことで均等化した。

最後に上層原料を装入した。上層原料は粒度偏析をつける方法でかつ連続給鉱とした。具体的には,パレット台車を再度給鉱開始地点へ戻してパレット台車を移送しながら給鉱した。装入装置は分散型で縦型スリットのISF (Intensified Sifting Feeder)13)を用い,給鉱角度は45°とした。層厚は280 mmとなるように,給鉱ゲート幅,ロールフィーダー回転速度およびパレット速度を調整した。

(3)焼成

点火炉は機長方向800 mmであり,パレット速度1.15 m/minで通過させた。点火燃料はLPGを使用し,焚き量10 Nm3/hで空気比1.2とした。焼成終了はパレット先頭から2台目および3台目のパレット台車直下のWBに配置した熱電対(計4本)で計測される排ガス温度のピーク時刻の中で最も遅い時刻から3分後とした。焼結時間は,焼成パレットの排鉱側から先頭から2台目のパレット中央部が点火炉中央部へ到達した時刻から,上記焼成終了時刻より-3分とした。焼結層内温度は,パレット機長方向中央部に高さ方向3点の測温孔を設けて,Al2O3保護管をパレット幅方向中央まで挿入し,その保護管にR熱電対をセットし計測した。

焼成後30分間冷却した後,排鉱側からパレット2枚目のケーキを供試料として,ブレーカーで高さ方向5分割して,層別の供試料とした。ブレーカ破砕後の焼結ケーキをシャッター試験機で2 mの高さから4回落下処理し,粒径5 mm以上の回収物を成品とした。

3・4 評価項目

焼結生産性に関わる原料通気性,焼結速度,成品歩留を評価した。原料通気性は,下層および上層を給鉱後所定位置までパレットを移送し,静止状態で吸引圧15.0kPaで大気を流通させて熱線風速計で風速を計測し,JPU値として評価した。焼結速度は焼結層温度が上昇開始面の降下速度(FFS; Flame front speed)および燃焼完了点である焼結層最高温度面の降下速度であるBTS(Burn through speed)で評価した。

また得られた焼結鉱について,層高方向5分割し層別に,冷間強度(TI),被還元性(RI)および還元粉化性(RDI)評価を行った。冷間強度については,成品歩留を評価する際に篩分けた10 mm~40 mmサンプルから15 kg回収し,TI試験用ドラムにて20 rpm 10分間処理して5 mm以上の存在比率で評価した。被還元性(RI)および還元粉化性(RDI)試料については,TI試験用サンプルを回収後の残試料および+40 mmサンプルをジョークラッシャーで破砕した試料を篩分け処理して供試料とした。なお,15-20 mmサンプルおよび19-21 mmサンプルをそれぞれRDI用RI用とした。ここで,Case2の下層試料については,GP由来とそれ以外の焼結鉱が存在するが,無作為に選定した。多くの焼結鉱はGP由来部とそれ以外の部分が結合した形態が多かった。一部,GP由来焼結鉱が割れた試料も存在した。

さらに考察として,GPの焼成前後の組織観察,EPMAおよび気孔形状を評価した。

4. 実験結果

4・1 通気性および焼結速度

Fig.3に原料通気性,焼結速度および焼結時間を示す。GP配合は冷間通気に及ぼす効果が大きい。冷間通気と比較すると,焼結速度の向上効果が小さい。その結果,焼結時間としては,微粉増配による悪化(48.1⇒58.1分)を回復するに(58.1⇒49.0分)にとどまった。

Fig. 3.

Comparison of permeability and sintering speed. (Online version in color.)

Fig.4に各層の温度情報より得られる燃焼前線降下推移を示す。Case2のGP配合ケース(□)は,GPが集中する下層において降下速度が加速する。その結果,最下層位置では微粉非配合のCase0に近づく。

Fig. 4.

Transition of flame front. (Online version in color.)

焼結層における炭材が燃焼している状態は,層内温度上昇開始時刻から層内最高温度時刻まで継続すると考えてよく,炭材燃焼時間と称する。炭材燃焼時間の焼結層高さ方向分布をFig.5に示す。Case2のGP配合ケースは下層において,燃焼前線降下速度の加速にも拘わらず,炭材燃焼時間が長くなった。この要因として,GPへ配合した粉コークスの燃焼遅れの他,下層に配置した粉コークス,PKS炭の燃焼速度が異なる点が挙げられる。またこの下層にはミルスケールも配置されており,その酸化反応も温度履歴へ影響を及ぼしたものと考えられる。炭材燃焼時間の伸延は粒径の大きいGPの焼結化において有効である。但し,炭材燃焼時間の増大は,Fig.3に示した冷間通気性(JPU)上昇度合いに対して焼結時間短縮が鈍化した要因でもあると考えられる。

Fig. 5.

Transition of coke combustion time. (Online version in color.)

4・2 成品歩留および生産率

Fig.6に生産率および成品歩留を示す。微粉20 mass%配合によって,生産率が17%低下するものの(27.4⇒22.7 t/Dm2;Case0とCase1の比較),造粒強化によって回復する結果(22.7⇒27.0 t/Dm2 Case1とCase2の比較)を得た。

Fig. 6.

Comparison of productivity and product yield. (Online version in color.)

成品歩留については,Case1において高値を示した。これは焼結速度の低下によるものと考えられる。次にCase2はCase0との差異が0.1%でほぼ同値であった。Fig.3に示した通り,Case2はCase0と焼結時間が同等ではあるがTable 4に示す通り,1.4%もの低CaO(9.26;Case0,7.87;Case1,2)である点を考慮すれば,Case2の層構造が成品歩留にとって有効であると評価される。

Fig.7に層厚方向の成品歩留分布を示す。GP配合のCase2において,上層で増加し下層で低下した。前者は焼結鉱成分における高CaO濃度および高塩基度(CaO/SiO2)効果,後者は低CaO低塩基度(CaO/SiO2)影響であるが,直径5-20 mmの粗大なGPでも致命的な成品歩留低下を引き起こさなかった。Fig.8にCase2下層部の焼結ケーキを示すが,粗大なGPでも銀色に変色し,焼結されていることが分かる。

Fig. 7.

Distribution of product yield in vertical direction. (Online version in color.)

Fig. 8.

Appearance of sinter cake. (lower layer of Case2) (Online version in color.)

Fig.9およびFig.10に層高方向の層内温度最高温度変化および高温保持時間変化を示す。Case2において下層(GP層)は最高温度が低下し,かつ1200°C以上の高温保持時間が低下した。Fig.5に示した炭材燃焼時間伸延が現れていないが,最高温度低下が要因である。他のケースは,Fig.10に示す通り,下層ほど高温保持時間が長くなった。

Fig. 9.

Distribution of maximum temperature of sinter packed bed in vertical direction. (Online version in color.)

Fig. 10.

Distribution of keeping time over 1200°C of sinter packed bed in vertical direction. (Online version in color.)

4・3 焼結鉱品質

(1)総括

Fig.11に焼結鉱強度,被還元性,還元粉化性の結果を総括する。

Fig. 11.

Comparison of TI,RI and RDI. (Online version in color.)

焼結鉱強度については,Case0に対してCase1および2は低値であった。これは大幅なCaO成分低下の影響と考える。但し,Case2はCase1に対して高値であった。これは,GP以外の原料のCaO成分を高めて液相を確保すると共に,GP部の焼結においては,溶融が抑制されながらも強度が発現できたものと考えられる。

焼結鉱被還元性については,Case0に対してCase1は高値であった。これはSiO2成分低下影響と考えられる。Case2はさらに高値となった。GP以外の原料配合ではSiO2はCase0,1に対して高いのでGP部の被還元性向上効果が大きかったと考えられる。

焼結鉱還元粉化性については,Case0に対してCase1は高値であった。これはSiO2低下影響と考えられる。Case2はCase1と全原料は同一配合にもかかわらず,Case0とほぼ同値となった。GP以外での高SiO2およびGP部での低SiO2の影響に加えて,GP部での特異な還元粉化性悪化抑制要因があり,第5章で考察する。

(2)焼結鉱強度

Fig.12に焼結層厚方向の冷間強度TI分布を示す。Case2は上層で増加し下層で低下した。成品歩留と同様に,高CaO濃度および高塩基度(CaO/SiO2)効果,後者は低CaO低塩基度(CaO/SiO2)影響であると考えられる。

Fig. 12.

Distribution of sinter strength in vertical direction of sinter packed bed. (Online version in color.)

Fig.13に高温保持時間と冷間強度との関係を示す。高温保持時間の上昇とともに冷間強度は上昇した。最上層は高温保持時間が極端に短いため,冷間強度も極端に低い。但し,Case2では高温保持時間では説明できない上昇効果があり,前述の高塩基度(CaO/SiO2)の影響であると考えられる。Case2の最上層以外の4点(■)は高温保持時間6分近傍に収れんしているが,この中では上層第二層の冷間強度が他の2点よりも高い結果となった。GPは低CaO低塩基度(CaO/SiO2)組成であり,さらに焼成速度も速いため,焼結後の冷間強度は低位であるが,致命的な強度低下に至っていない。

Fig. 13.

Influence of keeping time over 1200°C on sinter strength. (Online version in color.)

(3)被還元性および還元粉化性

Fig.14に成品FeOの焼結層高さ方向分布を示す。各ケース共に最上層においてFeOが極端に高かった。一方,Case2のGP配合ケースにおける下層はGP層であるが,この領域でFeOは低下した。なお,Case1はさらにCase0よりもFeOが上昇した。両ケース共にGP無配合であるが,Fig.8に示した通り,Case1ではCase0に対して下層部の最高温度が高くなった。そのため,マグネタイトが多く晶出したものと考えられる。ここで最高温度が高くなった要因として,焼結速度が低いことによる固体気体の熱交換が遅くなったことが考えられる。

Fig. 14.

Distribution of FeO in sinter in vertical direction of sinter packed bed. (Online version in color.)

Fig.15にRIの焼結層高さ方向分布を示す。一般的に,焼結層上層では気孔率増により高RI(%)となる。しかしながら,GP配合ケースにおいては,上層でRI低下し下層でRI上昇し,その結果,上層から下層までほぼ等しいRIとなった。

Fig. 15.

Distribution of RI in sinter in vertical direction of sinter packed bed. (Online version in color.)

Fig.16にRDIの焼結層高さ方向分布を示す。Case2のGP配合ケースにおいて,下層(GP層)においてRDIが低下した。

Fig. 16.

Distribution of RDI in sinter in vertical direction of sinter packed bed. (Online version in color.)

Fig.17に成品FeOとRIとの関係を示す。各ケースに共通して,最上層は高FeOながら高RIという特異性を示した。中層から下層までの3点については,FeO低下と共にRIが向上する傾向が見られ,GP配合ケースについてはRIが向上した。

Fig. 17.

Influence of FeO in sinter on RI. (Online version in color.)

Fig.18に成品FeOとRDIとの関係を示す。最上層は高FeOながら高RDIという特異性を示した。中層から下層までの3点については,FeO低下と共にRDIが上昇する傾向が見られたが,GP配合ケースについては低FeOながら低RDIを示した。2次ヘマタイト形成抑制であると推察される。

Fig. 18.

Influence of FeO in sinter on RDI. (Online version in color.)

Fig.16およびFig.17より,最上層の焼結鉱の特異性については,着火時の低酸素濃度や炭材濃化によってFeOは上昇するが,高温保持時間が短かく,上部からの荷重も受けないので,凹凸が大きく多孔質な低強度な焼結鉱が形成される。その結果,被還元性は向上するものの,強度要因の還元粉化性が悪化する。その中で,GP配合ケースでRIが低下したのは高塩基度(CaO/SiO2)高CaOによる気孔減少が要因であると考えられる。

5. 考察

本検討において,GP層は,FeOの低下による被還元性向上が見られたが,RDIも向上する特異性を示した。この点について,気孔および鉱物組織の点から考察する。

Fig.19およびFig.20に焼成前後のGP断面の光学顕微鏡写真を示す。焼成前のGPは直径数 mmの粗粒近傍に1 mm~2 mm程度のマクロ空隙認められた。微粉同士で接している部分は小さな空隙が認められた。微粉部は,主としてPFと生石灰で構成されている。

Fig. 19.

Microscope of GP before sintering. (Online version in color.)

Fig. 20.

Microscope of sintered GP. (Online version in color.)

GPは焼結後,流動化せず形状を維持していた。従って多量の液相は生成していない。これは塩基度(CaO/SiO2)が1.5でCaO濃度も4.22 mass%(SiO2は2.81 mass%)と低いことによる。原料段階では微粉間の空隙よりも,寸法の大きい気孔が形成された。液相率が低いため,1 mm程度の狭い領域で微粉同士の反応と空隙統合による気孔形成が生じたものと考えられる。また,白色の粒子が観察されたが,これは未反応鉄鉱石と考えられる。

Fig.21にCase2の最下層から2段目(上段側からは4段目)から採取したGPの気孔径分布を示す。比較のため,同じ高さから回収したCase1の焼結鉱と比較する。ここで,気孔径は試料断面の視野67.4 mm2における画像解析法で評価した。

Fig. 21.

Distribution of pore diameter. (Online version in color.)

焼結されたGPの気孔径の特徴として,100 μmを超える気孔数が少なく,40 μm以下の気孔数が多かった。このことからも明らかに焼結過程における気孔統合が抑制されていることが判る。

ここで,両ケースの総気孔数が同程度(GP:687,焼結鉱(微粉多配):708;図表無し)より,還元反応における反応界面積はGPの方が小さい。従って,被還元性としてはGPの方が抑制側に働く。従って,Fig.15に示したGP層の被還元性向上は気孔影響でないことは明確となった。主要因は,Fig.16に示したように焼結鉱FeO低下を主とした化学成分や形成鉱物の影響であると考えられる。

次に形成鉱物について考察する。

Fig.22およびFig.23に焼成前後のSEM像を示す。それぞれ倍率4水準(40,100,400,1000倍)で観察した。さらに,Fig.24およびFig.25に1000倍画像についてのEPMAによる主要元素マッピングを示す。

Fig. 22.

SEM image of GP before sintering(40, 100, 400, 1000 magnification). (Online version in color.)

Fig. 23.

SEM image of sintered GP(40, 100, 400, 1000 magnification). (Online version in color.)

Fig. 24.

Distribution of chemical component (EPMA) in 1000 magnification of GP before sintering.

Fig. 25.

Distribution of chemical component (EPMA) in 1000 magnification of sintered GP.

焼結前のGPについては,40倍画像よりGPが粗粒を内包した微粉造粒物であることがわかる。微粉部分を拡大していくとFe濃度の高い短冊形組織と間隙をCa含有物質で埋められている。前者は微粉鉱石,後者は生石灰である。

焼結されたGPについては,40倍画像より固体粒子の結合とその間隙は気孔(樹脂)で構成されている。固体粒子を拡大していくと,1000倍画像において粒子内に異なる組織が共存しているのがわかる。EPMAより,この共存組織は組成的には2種類存在する。Feが非常に高くCaやSiを含まない組織とFe,CaとわずかなSiが存在する組織である。前者のFeが非常に高い組織は,角が丸みを帯びているものの鉱石形状が維持されており,1次ヘマタイトであると考えられる。後者は前者の空隙を埋めるような形状であり,カルシウムフェライトである。

焼成前後の組織を比較すると,焼成前の生石灰へ鉄が拡散してカルシウムフェライトが形成されたものと考えられる。また焼成前後で酸化鉄の形状が類似している点から焼成による形状変化は小さく,液相の発生とその移動は限定的であると考えられる。さらに,2次ヘマタイトは観察されなかったが,この限定的な液相生成および移動に起因すると考えられる。そして,2次ヘマタイト形成抑制により,低FeOでもRDIは好転したものと考えられる。

6. 結言

産学連携として取り組んだISIJ焼結研究会において,粉コークス配合の25 mass%をバイオマス炭(PKS炭)へ置換かつ微粉原料20 mass%対応を目標に,微粉原料造粒強化した低スラグGP(グリーンペレット),高速燃焼炭材であるPKS炭およびスケールを下層配置した焼結層設計の有効性を,原料1.3 t規模の焼結シミュレータで検討し,以下の知見が得られた

(1)微粉原料20 mass%配合しても生産性が維持された。微粉原料の造粒強化(グリーンペレット化)効果である。

(2)高速燃焼するPKS炭を25 mass%置換しても成品歩留が維持された。燃焼・酸化速度がより遅い粉コークスとミルスケールを下層で併用した効果である。

(3)焼結鉱冷間強度は低下した。焼結鉱CaO濃度低下影響である。

(4)焼結鉱還元粉化性を維持しつつ被還元性が向上した。GP溶融抑制によって2次ヘマタイト晶出が抑制された上での低SiO2低FeO効果であると考えられる。

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